不安を感じている部下に「心配しても仕方ないよ」はNG…「コミュ力の高い上司」が返す"神コメント"
プレジデントオンライン / 2023年12月24日 13時15分
※本稿は、新田龍『「部下の気持ちがわからない」と思ったら読む本』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。
■「コミュ力」を高めるための2つの要素
私たちのコミュニケーションには、2つの要素があります。
ひとつは、「言葉」や「文字」「表情」など、我々が比較的容易に感知できる「コンテンツ」。もうひとつは、相手の「感情」や「意識」「価値観」など、表から見えにくく感知が困難な「コンテクスト」。この両方に気を配ることが重要です。
俗にいう「コミュニケーション力が高い」状態を目指すにあたり、多くの人は前者の目に見えてわかりやすい「コンテンツ」を強化しようとするものです。
具体的には、
「面白く相手を惹(ひ)きつける話題を提供する」
「ロジカルでわかりやすい構成で伝える」
「大きな声でハキハキと、笑顔で話す」
などが挙げられます。
■相手の気持ちを意識し、共感することが重要
もちろんこれらも重要ですが、実は効果が大きいのは後者の「コンテクスト」を意識することです。
たとえば、会話をする上でも、
「なんとなく反応が鈍いから、この話は早々に切り上げて次の話題に移ろう」
「スポーツ観戦が好きだという相手に合わせて、サッカーにたとえて話してみよう」
「相手はハードワーク肯定派だから、単に『残業するな』じゃ通じないだろうな」
などと、相手の状況や感情を意識しながら会話するほうが、効果は大きいのです。
特にビジネス上のコミュニケーションの場合、相手が自分と同じ感情や共通の価値観を持っていることはあまり期待できません。
なので、「そもそも、根本的に相手とは理解し合えていない」という前提で、「相手の気持ちを意識し、共感すること」が重要になってくるのです。
■「聴く」は受け身ではなく、能動的な行為
とはいえ、「コンテクストを意識する」といっても、具体的に何をすればよいのでしょうか。まずは日々のコミュニケーションにおいて、次の2点を実践するところから始めることをお勧めします。
(1)「話す」よりも「聴く」
大切なのは、「聞く」ではなく、「聴く」こと。つまり「相手の話に関心を持ち、積極的に耳を傾けること」です。
コミュニケーションの方法論では、どうしても「話す」方面のノウハウが重宝され、「聴く」ことはあたかも受け身の行為であるかのような印象を持たれがちです。
でも、実態は真逆です。
「聴く」とは、「頷き」や「相槌」、視線や身振り手振り、態度も含めた「反応」によって、「あなたの話を真剣に受け止めていますよ」と全身で伝える、能動的な行為です。
■「相槌」のレパートリーは多いほうがいい
たとえば、部下が話している最中もパソコンの画面に目を向けたままだったり、「次に何を言おうか」「どう突っ込んでやろうか」などと考えていたりして、肝心の会話内容の記憶はあいまいな上司は少なからずいるものです。でも、自分の大切な話をあたかも上の空のように聞き流されていたら、部下が嫌な気分になることは間違いないでしょう。
「何かタメになることを言ってやろう」と無理矢理教訓めいた話で締めようとするよりも、相手の「話したい気持ち」を推し量り、誠意をもって「聴く」ことのほうがはるかに重要です。
中でも大切なのが、相槌です。
会話における相槌の効用は、少しの配慮で好印象を得られる大変大きなものですが、意識的におこなっている人はさほど多くありません。
「はい」「ほう」「ええ」「なるほど」「おや」「おぉ」「ほほう」「ふーむ」……などといったバリエーションを使い分けるだけでも、相手は自分の話をしっかりと聴いて受け止めてくれている、という確かな印象が伝わってくるものなのです。
また、相槌は相手の話への積極的な興味関心を示す方法でもあります。
「ええー!」「そうなのか⁉」「驚いた!」「すごいなあ」「なんだって⁉」「そんなことってあるんだね!」「知らなかった!」「本当か⁉」などという積極的な反応が返ってきたら、話し手としても「自分の話に興味を持って聴いてくれているな」と張り合いが出るものですよね。
■「自分が2割、相手が8割」が理想
さらには、相槌には相手の話を促し、会話を広げる働きもあります。
「それからそれから」「で、どうなったんだ⁉」「続きを聴かせてもらえる?」などの能動的な反応が返ってくれば、話し手は確実に盛り上がり、もっといろいろなことを話したい気分になることは間違いありません。さらには、積極的な興味を持って聴いてくれている相手に対して親近感を抱くようになるのです。
特に、自分自身を「話し下手だ」と感じている方ほど、相槌を積極的に打つよう心がけるとよいでしょう。実際、会話全体を10とするなら、自分が話すのは相槌も含めて2割程度、相手に残りの8割の部分を話してもらうくらいのバランスが最適です。
■仕事のことで喜んでいる部下には共感する
(2)相手の気持ちを受け止め、共感する
相槌、頷きといった基本的な反応が無意識的にできるようになったら、次のステップとして「相手の気持ちを受け止めて反応する」に進みましょう。
これは、「会話している相手が今どのような心境にあるのかを察し、相手が感じているであろう感情を自分なりの言葉で適切に表現することで、相手への共感を示す」というテクニックです。そのためには、「人の様々な感情」を表現するボキャブラリーを増やし、相手が抱いているであろう感情をあなた自身の言葉で言い換えて伝えると効果的です。
例1) 喜びへの共感
部下「先日アドバイスを頂いた業務改革プロジェクトの提案、プレゼンが無事通りました!」
NG「そうか、プロジェクトの準備はきちんとしている? 提案が通っただけで安心するなよ」
OK「それはよかった! これからの展開が楽しみだな! 次はプロジェクト自体がうまくいくように、自分もサポートするから、困ったことがあれば相談してくれ」
例2) 疲労感への共感
部下「クライアントの●●部長、いい人なんですけどお話が長いんですよね……」
NG「そうは言ってもクライアントだから、きちんと対応してくれよ?」
OK「確かに、こう言っちゃ悪いがあの長電話にはゲンナリするよな……。いつも負担をかけて悪いなぁ」
■「心配しても仕方ないだろう」はNG
例3) 不安感への共感
部下「クライアントへの提案の回答がもうすぐ返ってくるんですが、心配で……」
NG「なるようにしかならないんだから、心配しても仕方ないだろう。心配する暇があったら手を動かせ」
OK「やはり連絡があるまでは落ち着かないものだな。ただ、万全の提案だったと思うから、あとはゆっくり結果を待とう」
上司や先輩目線だと、つい感情面よりも実務的な返答をしてしまいがちですが、反応時に相手の感情を代弁するような適切な言葉を選び、付け加えてコメントしましょう。
話し手は、あなたが自分の気持ちに共感してくれたことに対して心がオープンになり、双方の関係性の強化に繫がることは間違いありません。
■「いい加減にしろ‼」より「残念だ」が効果的
部下がやらかしたミスや問題行動に対して、つい声を荒らげて怒り、無理矢理行動を矯正したくなるという方も多いでしょう。気持ちはわかりますが、一連の行動は部下指導においてまったく本質的ではありません。本来のゴールは、その部下が同じミスを二度と繰り返さなくなり、かつ引き続き組織に貢献したいという前向きな気持ちを持てるようにすることのはずです。
「何をやってるんだ⁉」「ふざけるな‼」などと怒りの一言を放ちたくなった際には一歩踏みとどまり、「なぜ自分はそんな気持ちになってしまったのか?」と振り返り、その源となる感情を整理したうえで、冷静に伝えるほうが効果的です。
NG「何をやってるんだ⁉」
↓
OK「そのやり方でうまくいくのか、私には心配だなぁ」
NG「またミスしたのか‼ ふざけるな‼」
↓
OK「今回こそはしっかりやってくれるはずだと期待していたから、不本意な気持ちだよ」
NG「この前の話を聞いてなかったのか⁉ いい加減にしろ‼」
↓
OK「繰り返し『頼むぞ!』とお願いしていたけれども、伝わっていなかったようだな。残念だ」
怒りから生まれる強い調子の言葉よりも、相手の言動や行動によって生まれたあなた自身の感情をそのままの言葉で、自分を主語にして伝えるほうがより効果的で、相手の心に伝わります。
結果、相手の主体性を引き出し、前向きな行動改善に繫がるでしょう。
■怒りの原因を遡れば「最善のひとこと」が言える
仮にあなたが怒りの感情を抱いた場合、「なぜ怒りを感じたのか」を遡ることが肝心です。
たとえば、部下があなたから見たら無茶としか思えない提案をした場合、「そんなことで本当にうまくいくと思っているのか⁉」と怒りを感じるかもしれません。
でも、その「最初から『うまくいくはずがない』と思っている」という認識はどこからきているのでしょうか? おそらく、
「こいつにできるかどうか心配だ」
「もっと他のやり方はないのだろうか」
「失敗したらオレはどうなる。実に不安だ」
など、様々な感情が原因になっているはずです。
このように、あなた自身の心配や不安感が怒りの原因かもしれない、という構造が分かれば、逆に「うまくいくという根拠があれば安心できる」と考えられるようになります。
その場合は、「そんなことでうまくいくと思っているのか!」と一喝する前に、「あなたが大丈夫だと思っている根拠を教えてほしい」と伝えるべきでしょう。
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働き方改革総合研究所株式会社代表取締役
働き方改革総合研究所株式会社代表取締役。労働環境改善、およびレピュテーション改善による業績と従業員満足度向上支援、ビジネスと労務関連のトラブルと炎上予防・解決サポートを手がける。厚生労働省ハラスメント対策企画委員。
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(働き方改革総合研究所株式会社代表取締役 新田 龍)
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