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新NISA投資なら「トヨタ、キーエンス、任天堂」どれがいいか…「優良だけど割高な株」の賢い購入法

プレジデントオンライン / 2023年12月25日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

新NISAで高配当の優良株を買うのはどうすればいいのか。元サラリーマン投資家の長期株式投資さんは「過去の平均よりは安くなったときに買う、それまでは待つというスタンスが負けにくい投資を実現してくれる。そのためには予想PERレンジ、PBRレンジが参考になる」という――。

※本稿は、長期株式投資『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■新NISAを使い倒して資産を増やす

2024年1月からいよいよ新しいNISAが始まります。新しいNISA制度は個人投資家にとって使い勝手がよいものとなっており、制度をうまく活用して超長期での運用を考えていくことが重要となります。

ルールが変わったときは、①まずルールを理解すること、②次にルールをどのように利用できるか、を考えることが大切です。まずは、新しいルール(制度)を再確認しておきましょう。

年間投資枠は、つみたて投資枠が120万円、成長投資枠が240万円の計360万円です。また、非課税保有期間は無期限化され、非課税保有限度額は1,800万円(つみたて投資枠600万円+成長投資枠1,200万円)と大幅に拡充されています。

更に、簿価残高方式での管理となっており、売却した際には簿価ベース(投資した時の取得価額)で枠の再利用が可能となっています。

非課税保有限度額は世帯当たりではなく、一人当たりとなりますので、18歳以上の世帯人数×1,800万円が事実上の非課税枠と考えることもできます。これは多くの個人投資家にとって、事実上、非課税で投資できる環境が整ったと言っても過言ではないでしょう。

【図表】新しいNISA制度の仕組み
出所=金融庁のHP

■配当収入がほしいなら個別株投資

新しいNISA制度のルールを確認したところで、次に、活用の仕方を具体的に考えていきましょう。

まず、配当は不要という若い投資家向けです。超長期での平均的なリターンを求めるのであれば、つみたて投資枠と同様にインデックスファンド、例えば、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)へ投資するのも選択肢の一つだと思います。

その場合、配当や株主優待などがないため、短期的な成果が実感しにくいため、モチベーションをどのように維持するかが課題となります。

また、40代から50代の定年後の生活を見据えた投資家向けで、定期的な配当収入を目的とする場合は、個別株への投資が必要となります。

その場合、NISA口座では損益通算ができないため、個別株へ投資する際には、業績が安定しており、配当が増配傾向にあるなどの鉄板銘柄を選択することが肝要となります。連続増配銘柄、累進配当銘柄などから選択するのも一つでしょう。

天秤の皿には積み重ねて置かれたコイン
写真=iStock.com/sommart
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/sommart

■月23.5万円の不労所得を手に入れた投資ルール

この点、2冊目の拙著『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資 日経平均リターンを3.86%上回った“割安買い”の極意』(KADOKAWA)では、成長投資枠での買い方について詳述していますので、ご参考にしていただければ幸いです。

内容を超簡潔に記載させていただくと、①20銘柄を1株ずつ買い、②各銘柄への投資金額を均一に調整、するというものです。

20銘柄については一例として、INPEX、JT、花王、アステラス、大塚ホールディングス、ブリヂストン、コマツ、クボタ、伊藤忠商事、三井物産、三菱商事、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、日本取引所グループ、東京海上ホールディングス、NTT、KDDI、アサヒグループホールディングス、全国保証、オリックスを紹介しています。

上記、以外にも多くの銘柄を紹介していますが、ここでは人気があるため株価が高値で推移してなかなか買いにくい、トヨタ自動車、キーエンス、任天堂について、買い時の判断とあわせ紹介していきたいと思います。

■銘柄選び、買い時の見極め方

〇 トヨタ自動車

トヨタ自動車は、利益率、一株利益とも2023年3月期は減少に転じたものの、長い目で見れば上昇傾向にあり、業績は堅調であることが読み取れます。配当は増加傾向にあります。

自己資本比率は30%台後半で推移しており、この業種としては問題のない水準です。ROE(自己資本利益率)は、概ね10%程度で推移しており、資本効率に問題はありません。営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで推移しており、手元キャッシュも潤沢です。事業継続に何の不安もありません。

ずらりと並んだレクサスUX
写真=iStock.com/Tramino
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Tramino

株価は業績の堅調さを反映して高値圏で推移しており、株価だけを見ると以前よりも高くなっていると感じるため、手が出しにくい状況かと思います。そういう場合は、予想PER(株価収益率)レンジ、PBR(株価純資産倍率)レンジを確認して、指標面から買える水準にあるのかを確認しましょう。

株価は自分が買いたいと思っても、都合良く安くなってくれるわけではありません。かといって、割高なときに無理して買ってもリターンは期待できません。そこで、少なくとも、過去の平均よりは安くなったときに買う、それまでは待つというスタンスが負けにくい投資を実現してくれると考えます。

なお、予想PERレンジ、PBRレンジはSBI証券の株アプリで、「銘柄分析」⇒「株価指標」とタブを選択していくことで簡単に確認ができ、私も通常はこのSBI証券の株アプリを利用しています。

■PERは割安、PBRは割高

それでは具体的に見ていきましょう。

トヨタ自動車の過去5年間における予想PERの数値は、最低値が7.1倍、最高値が27.9倍、平均値が12.1倍です。このことから予想PERのレンジは7.1倍~27.9倍、レンジ内の平均が12.1倍ということが分かります。

2023年12月7日現在の予想PERは9.6倍となっていますので、業績面(予想PER)の観点からは、株価は過去5年の平均よりも安い水準にあると考えることができます。

同様にPBRについても確認して見ましょう。トヨタ自動車の過去5年間におけるPBRは、最低値が0.81倍、最高値が1.36倍、平均値が1.05倍となっています。2023年12月7日現在のPBRが1.18倍となっています。つまり、資産面(PBR)の観点からは、株価は過去5年の平均よりも高い水準にあると考えることができます。

PERは割安、PBRは割高となっているので、敢えて今の株価で買うのであれば、セクター分散のため等、投資する理由を明確にしておく必要があると思います。安全域が確保できるのは、予想PERのレンジ、PBRのレンジにおいて、ともに低い水準にあるときです。その機会を待つのも立派な選択肢の一つであることを覚えておいて損はありません。

【図表】トヨタ自動車の経営指標等
筆者作成

■人気銘柄は投資妙味がないケースが多い

〇 キーエンス

キーエンスの利益率は驚愕の高さで推移しています。1株利益は堅調に推移し、配当も安定的です。自己資本比率は90%以上で推移し、その財務基盤は堅牢堅固、難攻不落の要塞が如きです。

ROE(自己資本利益率)は、高い水準で推移しており資本効率も良好です。営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで推移し、手元キャッシュも十分に確保されており、その経営基盤は盤石と言えます。

キーエンス本社ビル
キーエンス本社ビル(写真=W236/CC-BY-3.0/Wikimedia Commons)

キーエンスは超高収益企業としてマスメディアでたびたび取り上げられている企業です。経営指標的には完璧と言っても過言ではなく、非常に魅力的な企業ではありますが、このような人気のある銘柄は株価も高くなってしまっていることから投資妙味がないケースが多いことに留意が必要です。

どんなによい銘柄であったとしても、妥当な株価水準で投資しなければ、リターンは期待できないため指標面からの確認は必要不可欠です。

■安値圏にあることを確認するのがいい

前述のトヨタの例と同様に予想PERレンジ、PBRレンジを確認していきましょう。

キーエンスは業績予想の開示をおこなっておりませんので、SBI証券のアプリで予想PERの推移を確認することはできません。そこで、有価証券報告書に記載されている株価収益率(PER)の実績の推移を確認しましょう。

2019年から2023年までの推移は、40.08倍、43.38倍、72.24倍、47.13倍、44.85倍となっています。2023年12月7日現在の株価をベースにして、利益水準が前年程度と想定するのであれば、予想PERは概ね40倍強となります。これらのことより、現在の株価はPERの観点からは安値圏にあるとも考えられます。

次にPBRについても確認して見ましょう。キーエンスの過去5年間におけるPBRは、最低値が4.20倍、最高値が9.40倍、平均値が6.13倍となっています。2023年12月7日現在のPBRが5.58倍となっています。つまり、資産面(PBR)の観点からは、株価は過去5年の平均よりも安い水準にあると考えることができます。

PERの観点からは割安、PBRの観点からも割安、となりますので、もしポートフォリオに組み込む場合は、買える水準にあるという考え方も一つです。

【図表】キーエンスの経営指標等
筆者作成

■財務基盤は鉄壁だけど…

〇 任天堂

任天堂は、利益率、1株利益ともに高い水準にあるものの、やや下落傾向です。配当は業績連動型のため、振れ幅は大きくなっています。

自己資本比率は80%前後で推移しており財務基盤は鉄壁です。ROE(自己資本利益率)は高い水準で推移しており資本効率に問題はありません。営業活動によるキャッシュ・フローはプラスで推移しており手元キャッシュは潤沢です。事業継続に何の問題もないでしょう。

任天堂の業績はここ数年、好調を維持しています。好調が続けばいいのですが、ゲーム業界というものはヒットが生まれなければ業績は急激に悪化し、業績連動型の配当政策を採用している任天堂も大幅な減配を余儀なくされます。

ヒットが生まれなかった10年ほど前は、かなり苦しい経営を強いられており、2012年3月期と2014年3月期は赤字でした。当然、配当も大幅な減配となり株価も大きく下げています。そのようなリスクを内包した銘柄であるということを理解しておくことは必要と考えます。

■予想PERレンジ、PBRレンジを見ると「買いの水準」にある

それでは、予想PERレンジ、PBRレンジを確認していきましょう。

長期株式投資『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』(KADOKAWA)
長期株式投資『半オートモードで月に23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』(KADOKAWA)

任天堂の過去5年間における予想PERの数値は、最低値が15.7倍、最高値が36.3倍、平均値が22.3倍です。2023年12月7日現在の予想PERは19.0倍となっていますので、業績面(予想PER)の観点からは、株価は過去5年の平均よりもやや安い水準にあると考えることができます。

同様にPBRについても確認して見ましょう。任天堂の過去5年間におけるPBRは、最低値が2.47倍、最高値が4.82倍、平均値が3.49倍となっています。2023年12月7日現在のPBRが3.24倍となっています。つまり、資産面(PBR)の観点からは、株価は過去5年の平均よりも少しだけ安い水準にあると考えることができます。

予想PERのレンジ、PBRのレンジにおいて、ともに平均よりも低い水準にありますので、平均的な水準よりも買える水準にあるという判断も可能でしょう。

【図表】任天堂の経営指標等
筆者作成

■「レンジの最低値」を狙い、割安な優良株をコツコツ買い続ける

ここまで、予想PERレンジ、PBRレンジを活用して判断する方法を確認してきました。平均値よりも現在の数値が低ければ割安という判断もできようかと思います。しかし、最も投資妙味があるのは、予想PERもPBRもレンジ内の最低値に位置しているケースです。

特段の事情がなければ、そのような条件が揃ったときに投資することで、大きな失敗を避けることができるでしょう。負けにくい投資手法の一つとして、ぜひ活用してみてください。

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長期株式投資(ちょうきかぶしきとうし)
個人投資家
1977年、熊本県生まれ。2004年から株式投資を始める。2009年、ポートフォリオを大型配当株メインにスイッチ。以降は「どのような相場でも安定的に配当を受け取るには?」を日々模索し、安定的に資産を増やす。2022年の税引き後の手取り配当額は、282万5128円と過去最高を更新し、運用資産1億円を突破。近年は、19年間の投資生活で磨いた技術やノウハウをTwitterやブログにて発信。2023年3月、長年勤めた会社を早期退職し、オンラインサロンを開設。「途中で挫折することがないよう、焦らずゆっくりと」をモットーに投資教育をライフワークとする。著書に『オートモードで月に18.5万円が入ってくる「高配当」株投資』(KADOKAWA刊)。

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(個人投資家 長期株式投資)

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