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なぜ東大生の親は「子供に勉強を教えない」のか…わが子を「勉強好き」に育てるために本当に必要なこと

プレジデントオンライン / 2024年1月10日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mizoula

東大生の親は、わが子にどう接しているのか。現役東大生の西岡壱誠さんは「東大生は『親から勉強を教わったことは一度もない』『親から勉強しろと言われたことはない』という人がとても多い。それは親が教えるのではなく、一緒に勉強する、というスタンスだからだろう」という――。(第2回)

※本稿は、西岡壱誠『教えない技術 「質問」で成績が上がる東大式コーチングメソッド』(星海社新書)の一部を再編集したものです。

■東大生を生んだ家庭の指導法

まずは、指導する側の根本的なスタンスをお教えしましょう。今回、この本を執筆するにあたり、よく参考にしたのが「東大生の親御さん」の子供に対する接し方でした。東大に合格するような子を育てる親御さんは、どんな風に子供に勉強させていたのでしょうか。

多くの家庭にアンケートを取って、調べてみました。意外なことに、東大生の親御さんでも、自分で勉強を教えるという家庭は少数派でした。

「親から勉強を教わったことは一度もない」「親から勉強しろと言われたことはない」という生徒がとても多いのです。

「じゃあなんで東大生は、最初から自分から勉強するような習慣が付いていたの?」「やっぱり生まれつき?」と思うかもしれませんが、そこはやはり、流石は「東大生の親」と納得のテクニックがあるのです。

教えないけれど、一緒に成績を上げるような手法を展開していたのです。それは、「一緒に勉強すること」です。

■「教える」のではなく「一緒に考える」

一例を挙げると、「毎朝1問ずつ苦手科目の過去問をコピーして親と一緒に解いた」という家庭がありました。親御さんが教えるのではなく、親御さんも一緒に解いていたのです。

そうして、できなかったところは見せ合うなどしていたそうです。同じように、特定の問題でつまずいているときには、「どの問題? これか。どうやって解くんだろうね? 一緒に考えてみよう!」と言って、答えを知っていたとしても教えず、一緒に考えてあげていたのです。

ここで、親御さんが答えを見て、「こういう風にやるみたいだよ」と言ってしまうのはNGです。答えがわかっている状態で、「こう解くのよ」と言われても、「いや、そもそもなんでその発想ができるのか、と悩んでいるのに」と思われてしまいます。それに「できなくても、親が答えを教えてくれる」という感覚になって、自立できなくなっていってしまいます。

だからこそ、「一緒に悩む」という姿勢を持って子供と向き合って、子供と一緒に遊んでいるかのような感覚で勉強することが大事なんです。上から目線で「こうしなさい」とは言わないようにして、子供を導く。これが東大生の親の手法なのです。

■教えなくても勝手に学ぶようになる仕組み

また、勉強は教えないけれど、「考えさせる」ように心がけているという話もよく聞きます。「この花の名前って『ヘビイチゴ』って言うんだよ」などと、知識を教えようとはしません。

その代わりに、「この花の名前って『ヘビイチゴ』って言うんだけど、蛇と苺(いちご)なんて不思議だよね。何でヘビイチゴって言うんだと思う?」と、答えを話すのではなく、名前の由来や理由を質問し、自分で考えてもらうようにするのです。

ヘビイチゴの実
写真=iStock.com/prill
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/prill

一方的に何かを教えられるのと、質問をされてそれを自分で考えるのには、大きな差があります。子供は、質問に対して「どうしてだろう?」と自分で考えるようになるからです。

単純に「ヘビが出るような湿気の多い場所に育つからヘビイチゴと言うんだ!」と理由もセットになっていれば覚えやすいですし、さらにこのプロセスが子供にとって習慣化すれば、普段からものを考える習慣がつきます。

そして親御さんが質問していないときにも、子供は花を見て、「ああ、そう言えばヘビイチゴと同じように、この花の名前にも意味があるのかもしれない」と普段から頭を使って考えるようになるかもしれません。これこそ、教えなくても勝手に学ぶようになるということだと思います。

■「○○させる」はNG

この本ではずっと、「教えない」ことをテーマにしていろんな手法を紹介させていただいておりますが、いまのような「質問する」ことは「教える」こととは違います。

指導しているときに、「こうした方がいいよ」と答えを与えるのではなく、この親御さんたちのように「なんでこうしたの?」「これでうまくいくのかな?」と、ただ質問するスタンスを持っておくことは、自主性を育む上でプラスになるのでどんどんやってほしいのです。

また、こんな話もあります。東大生の親御さんは、子供に「○○させる」という言い方をあまりしないのです。「勉強させる」とか「片付けさせる」と極力言わないように心がけている家庭が多いんです。

なぜかというと、「○○させる」というのは、上の人が下の人に何かを命令してやらせるニュアンスを含んでいるからです。この言葉は、子供の自立を阻害することになってしまいます。誰かの命令を聞いてやっているうちは、自分で考えて行動することになりませんよね。

だから、極力「親が言ったから子供がそういう行動をする」状態を作らないようにしているのです。「え、でもそれだったら、子供のことを叱れないんじゃないの?」と思うかもしれません。

■子どもが勉強していない時にかける言葉

よくあるシチュエーションとして、子供が勉強していないときに、「勉強しなさい!」と怒る親御さんは多いと思います。「つべこべ言わずに、勉強しなさい! 口答えしない!」と叱ってしまい、子供が「なんだよ!」と反抗して、どんどん勉強しなくなってしまう……と。経験のある方も少なくないのではないでしょうか。でも、これではいけませんね。

では東大生の親御さんは、「勉強しなさい!」と言わないで、どんな風に指導しているのでしょうか?

正解は、先ほどと同じく、「質問」です。

勉強していない子供を見たら、「ねえ、どうして勉強しないの?」と問うのです。「勉強しなさい」と押しつけるのではなく、ただ勉強をしない理由を質問するのです。正直、この質問に対してきちんと答えられる子供は少ないでしょう。ただなんとなく、「なんか、勉強したくないなぁ」と思って、遊んでいる場合が多いでしょう。

しかし質問されて、改めて勉強について考えていると、「あれ、聞かれて初めて気づいたけど、あの宿題やってないな」「そういえば、あの勉強やろうと思ってた」と、自分で「やるべきこと」がわかり、動きだすきっかけになるのです。

■「どうして勉強しないの!」は絶対にダメ

もし子供が「こういう理由で、今自分は勉強しないんだよ」と反論したとしましょう。もしその理由が稚拙なものであれば、親御さんはもっと質問していくことでその理由を崩すことができます。「でもそれってこうじゃないの?」と、質問を繰り返していくことで、「まあ、たしかに親の言うことも一理あるな……」と考えるようになります。

仮にその理由が真っ当なもので、「なるほど」と親御さんが感じられるようなものだったのであれば、「そうなんだ、わかった! 聞いてごめんね!」としっかりと受け入れるのも重要なことだと思います。

ここでやってはいけないのは、「どうして勉強しないの!」と、質問を装った叱り方をしてしまうことです。なぜなら子供がプレッシャーを感じてしまうからです。そうなると子供は萎縮して、親御さんがそんな気はなかったとしても、「勉強しなさい」と言われているのと同義に捉えてしまうからです。

息子に説教をする母親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■子どもの進路はどう決めればいいのか

先ほど述べた通り、勉強を強制することは良くありませんよね。進路決めでも同じように、東大生の親御さんは子供に質問をすることが多かったそうです。

たとえば、「こういう進路に行きたい」と子供が話したとして、「こっちの方がいいんじゃない?」「こうした方がいいよ!」とは言わないのです。ただ、「なんでその進路に進もうと思ったの?」ということだけを、とにかく繰り返し質問して、より具体的な話に持っていくのです。

この場合のよくある失敗例として、子供が親に進路を相談するとき、子供は親からどんなフィードバックを受けたとしても、否定されたような感覚になってしまうことがあります。

子供が「○○大学を志望したいんだけど」と相談したとして、親としてはその子の将来を心配して、「本当にそこでいいの?」「合格できるかどうかはどれくらいの確率なの?」「その大学に行って、将来はどういう道に進もうと思っているの?」と聞きたくなるかもしれません。気持ちはよくわかります。

しかしそのときに、子供はその質問の全てが、「否定」に聞こえてしまうのです。親としてはただ確認しているつもりでも、子供からすると「その進路じゃダメだ」と言われているように感じられてしまうことが往々にしてあります。

そうならないようにするための聞き方があります。とにかく「どうして本人がそう思ったのか」を深掘りしていくのです。

■子どもの意見を尊重する

もし、子供の考えが甘かったとしても、それを指摘する必要はありません。聞かれる側からすると、「どうしてそこに行きたいのか」という質問に対する答えを考えているうちに、「あれ? そういえばなんでだろう?」と、内省することができます。

西岡壱誠『教えない技術 「質問」で成績が上がる東大式コーチングメソッド』(星海社新書)
西岡壱誠『教えない技術 「質問」で成績が上がる東大式コーチングメソッド』(星海社新書)

子供が自分で気づけるように、ただ質問することだけを繰り返し、否定にならないようにする。これが非常に重要な観点なのだと思います。

さて、これらの話でわかることは、東大生の親御さんは、子供のことを尊重する育て方をしているということです。

子供のことを、大人と同様に扱って、子供扱いをあまりしない。相手に質問して、相手の意見を聞き、相手と同じ立場に立って考えるスタンスを取ることで、子供に自立を促す。まさに、「教えないけれど子供が勝手に育つ」ということが体現されていると思います。

ちなみに、「○○させる」という言葉が良くないのは、教育学的にも証明されている話です。これは笑い話ですが、「教育」という言葉は教育効果が非常に低いことがわかっています。授業で先生が「今から君たちに教育します」という言葉を言うと、生徒のやる気が著しく下がるのだそうです。

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西岡 壱誠(にしおか・いっせい)
東京大学経済学部4年 カルペ・ディエム代表
1996年生まれ。偏差値35の無名校から東大を目指すものの、2年連続で不合格に。二浪中、独自のスマホ勉強術を駆使して東大合格を果たす。自身のノウハウを全国の高校生に教える傍ら、人気漫画『ドラゴン桜2』(講談社)に情報提供を行う「ドラゴン桜2 東大生チーム『東龍門』」のプロジェクトリーダーも務める。『東大式スマホ勉強術』(文藝春秋)、『東大思考』『東大読書』など著書多数。

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(東京大学経済学部4年 カルペ・ディエム代表 西岡 壱誠)

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