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部下はあなたより重要な役割を果たしている…「部下が働いてくれない」と嘆く上司が見落としている仕事の本質

プレジデントオンライン / 2023年12月31日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/metamorworks

「部下と信頼関係が結べない」と悩む上司に欠けている視点。それは、「部下はあなたより重要な役割を果たしている」という見方だ……食品会社社員、国会議員秘書、大臣秘書官などの異色の経歴をもつ富士山信仰の「富士道」の教主がビジネスパーソンに、職場の人間関係をアドバイスする――。

※本稿は、宍野史和『運をつかむ心のほぐし方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

■ビジネスで大切なのは、お偉いさんの部下への対応

「将を射んと欲すれば先ず馬を射よ」という言葉を知っているでしょうか。

敵の大将を射ようとするならば、まずはその大将が乗っている馬を射る。目の前にある大きな目標を達するためには、周辺の事柄から一つひとつ達成していくことが近道になるという意味です。

これはまさにビジネスの場にもそのまま言えることです。あなたがもし、あるお偉いさんに取り入りたいと思ったとき、どんな行動をするでしょうか。おそらく何かあるごとに、そのお偉いさんに礼状を書いたり、お土産を持って行ったり、挨拶をするために顔を出したりすると思うのですが、それと同等に、いやそれ以上に大切なのは、後ろに立っているそのお偉いさんの部下への対応です。

今後、その相手と付き合っていく場合、実際に仕事をするのはお偉いさんではなく部下のほうです。だから、そこをおろそかにしてはいけない。

同じ礼状を書き、同じお土産を持って行き、必ず挨拶をする。そこに差を設けるのは悪手でしかありません。私は衆議院議員の秘書として長らく働いていたので、よくわかるのです。

■衆議院議員の秘書の視点から見える部下の役割

つまり、視点を変えてみれば、あなたの部下も、実はあなたよりも重要な役割を果たしているということです。部下は召使いではありません。もし、仕事がある意味「戦い」であるとするならば、上司と部下の関係は大将と軍曹の関係であり、戦友なわけです。

「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」

武田信玄はいくら立派な城を築いても、人がいなければ役に立たないと言いました。人こそ財産。人を使い捨てにしてはいけません。まずは、自分が部下に対して誠実であるか。部下からの信頼を得たいのならば、まずは自分が信頼をしなければならない。自分が誠実であれば、信頼は必ず返ってくるはずです。

■もっとも弱い者に基準を合わせることが必要

しかし、信頼関係を築いたとはいえ、部下の仕事のスピードや精度に不満を抱くこともあるでしょう。

富士山信仰として行われる富士山登拝では、5人から10人の団を組んで山を登ります。その際、先達は体力の強い者に歩みを合わせるのではなく、子ども、ご婦人、お年寄りなど、いちばん体力の弱い者に歩みを合わせることを常としています。「元気のいいやつだけ先に行け」ということはしません。

神道扶桑教の富士山登拝。体力の弱い者に歩みを合わせ、ひとりとして残すことなく頂上を目指す。
写真提供=神道扶桑教
神道扶桑教の富士山登拝。体力の弱い者に歩みを合わせ、ひとりとして残すことなく頂上を目指す。 - 写真提供=神道扶桑教

ただ単に頂上まで登れればいいというわけではなく、ひとりとして残すことなく頂上に立つということが、リーダーに課された最大のミッションなのです。そして、世の中も本来そうあるべきだと思います。もっとも弱い者に基準を合わせるということが必要だと思うのです。

■山本五十六の言葉に見る「上司の本質」

私の知人に、「部下がしていることをまったく把握していない」人間がいます。「気にするから、気になるんだ」と彼は言いますが、別に部下について何も考えていないわけじゃない。

重要なことは本質が間違っていないかどうか。形式や作法は大事です。しかし、それだけが合っていてもどうにもならない。「部下が思い通りに働いてくれない」と嘆く上司は、何をもって「思い通りにならない」と感じているのでしょうか。

「こいつは俺が教えたやり方通りにやってくれない。もどかしい」

それは、部下が本質をわかっていないことに対してもどかしさを感じているのか。それとも、上司のあなたが本質をわかっていないから、もどかしさを感じているのか。どちらでしょうか? 本質がわかっていない上司というのは、とにかく形式を気にします。本質がわかっていない場合、とりあえず決められたものを守ることしかできないからです。神道の儀式においても、形式や作法が重要視されますが、それ以上に本質が大切なのです。

■「任せてやらねば人は育たず、信頼せねば人は実らず」

人間にはそれぞれの美学があります。本当に性能の良いマシーンは、見た目もなぜだか美しい。その美しさというのはとても重要で、形式や作法はやはり必要です。そして、人間はそれを美しいと感じる。そういった部分で、やはり人間は感性が備わった、美学を持った生き物なんだなと思うわけです。

宍野史和『運をつかむ心のほぐし方』(プレジデント社)
宍野史和『運をつかむ心のほぐし方』(プレジデント社)

けれど、その先にきちっとした本質が見つけられていないと、それはただの姿であって美しさではありません。「綺麗」かもしれませんが、「美しさ」ではない。形式や作法がなっていることに越したことはありませんが、どちらを選ぶかと言われれば、「形式」を捨ててでも、本質を選ぶべきだと思うのです。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」山本五十六が残したこの言葉こそ、まさに上司の本質です。

私たち現代人の悩みは、すでに先人たちが解決してくれているのです。『古事記』『日本書紀』『大鏡』『平家物語』『増鏡』。山ほど宝物があるのに、その宝に埋もれながら「宝がない」と嘆くのはいかがなものでしょうか。

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宍野 史和(ししの・ふみお)
富士道十二世、神道扶桑教六世管長
本名:宍野史生。元亀3年、藤原角行が富士山北口登山道を拓いて始めた富士山信仰を受け継ぐ「富士道」の教主。1962年香川県高松市生まれ。食品メーカー加ト吉社員、衆議院議員秘書、大臣秘書官などを経て管長を襲任。(写真撮影=門間新弥)

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(富士道十二世、神道扶桑教六世管長 宍野 史和)

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