あなたが今日稼いだお金は他の人の涙を吸っている…お金の使い方がガラッと変わる人生の気づき
プレジデントオンライン / 2024年1月1日 11時15分
※本稿は、宍野史和『運をつかむ心のほぐし方』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■お金が満たしているものは「将来の安心」
約1万6000年前から約3000年前まで日本列島に住んでいた縄文人の姿を見てみると、体の形自体は現代人となんら変わりがありません。科学技術は進歩しているけれど、人類の進化としてはその時点である意味完成されているのです。
日本では683年頃に製造された富本銭、708年の和同開珎などが古代のお金として知られていますが、「お金」が流通する以前には、狩猟採集もしくは物々交換によって欲しい物を手に入れていたようです。
その頃の人がお金を必要とせずとも生きていたことを考えれば、極論を言うとお金などなくても生きていくことはできます。
とはいえ、令和の今、東京のど真ん中で尖らせた石を木の棒の先に付けてウサギを追いかけるわけにもいきませんし、柿の実を取ろうとするとそれは隣の家の柿の実だったりする。
日本でも山の中で自給自足の生活をしている人はおり、私はそういう人たちを尊敬しているわけですが、しかしながら、全国民にその生活を推奨するというのはあまりにもナンセンスだというのは誰でもわかることだと思います。
お金というのは今となっては生命を維持するためには必要不可欠なものであり、その存在を否定するなどということは、するべきではありません。
先ほど人類の進化はある意味完成されていると述べましたが、今も少しずつは進化しているはずです。しかし、食べずに生きるということは不可能。
つまり、お金の最大の目的は食料を確保するところにあるのです。
けれども、お金という「チケット」をいくら持っていようとも、それだけでお腹がいっぱいになることはありません。100万円のチケットを目の前に置かれたとしても、それ自体は食べることはできません。
ならば100万円より1升のお米のほうが嬉しいかというと間違ってもそういうわけではない。
それは、お金が満たしているものは空腹ではないからです。では何を満たしているかというと、それは「将来の安心」なのではないでしょうか。では、その将来の安心はどうすれば満たされるのか。それを考えないことにはお金について考えることもできないはずです。
■たとえ5万円のコースでも食事の量は決まっている
老後には最低でも2000万円の貯金が必要である、などと言われていますが、それは個人の感覚の違いであって、500万円で足りてしまう人もいれば、1億円あっても足りない人もいることでしょう。
しかし、どれだけお金を持っている人でも、1回の食事で1升の米を平らげることはまず無理なはずです。
ホテルのレストランでコース料理を頼むと、3000円のコースでも1万円のコースでも5万円のコースでも、食事の量というのは500~600グラムほどと決まっているそうです。
だって、5万円のコースだからといって、ご飯を3升、牛1頭、ワインを樽で出されたら満足するどころかほとんどの人が怒って帰ってしまうでしょう。
ということは、人間が1日に食べられる量はある程度決まっているように、娯楽にせよ、なんにせよ、何事も消費できる量というものは決まっている。
単に、その決まった量の中で、どれだけ質のいいものを得られるか、どれだけの独占欲を満たせるか、そういった細々とした差が生まれているだけかもしれません。もちろん、その差にお金をつぎ込むことは個人の自由なので悪いことではないと思いますが、逆に個人の自由である以上、自分と他人を比べる必要もないのではないでしょうか。
■あなたが今日使った「お金たち」は、喜んで出ていったか
初めて入る店にお昼ご飯を食べに行ったとき、可もなく不可もない1杯500円のうどんが出てきたら、あなたはどんな気持ちでお金を払うでしょうか。
「あんまり美味くなかったけれども500円ならこんなもんだよな」と心の中で考えながら無言でお金を払うのか。それとも、「寒いときに温まらせてもらった。忙しいときによくしてくださってありがとう。また寄らせてもらいます」と声に出してお金を払うのか。
どちらも同じ500円なのですから、どうせなら後者の気持ちで払ってみるのはどうでしょうか。
感謝の一言とともに丁寧にお金を渡せば、人間は相手に息を合わせて応えるものです。「ありがとうございます。どうぞまたお越しを。お気をつけて行ってらっしゃい」と送り出してくれるはずです。
どちらの払い方がお金にとっても嬉しいか。それはお金に聞かずともわかることかと思います。
あなたが今日使った「お金たち」は、喜んで財布の中から出かけていったでしょうか。
「あの旦那さん、あの奥さんは気持ちよく使ってくれた。ほな、またあそこへ戻ろか」「もう、私らを投げるように支払って。痛い思いしたで。あそこところへはもう戻らへんで」とお金たちが言っていませんか。
現実においては必ずしも順守されているとは言いませんが、日本では最低賃金というものが決められています。基本的には、何か仕事をすれば少なくとも一定の額のお金をもらうことができる世の中です。わかりやすく言えば、3時間働くよりも8時間働いたほうが多く稼ぐことができる。1日24時間以上働くことはできませんが、人より稼ぎたければ人よりたくさん働けばいい。実に単純明快で、見方によっては「お金を稼ぐ」という行為は簡単なものなのです。
■お金は稼ぐことよりも使う方が難しい
しかし、お金を稼いだら次は「使う」という行為が待っています。これがけっこう難しい。
あなたのもとに集まってきたお金は、人々の涙を吸ってやってきています。あなたがその場所で働かなければ、別の人が働き稼ぐことになっていたからです。大企業の営業マンが月末に300万円の仕事をひとつ取ってきたとしましょう。
その会社にとっては小さな仕事であるかもしれないけども、夫と妻とひとりの従業員でやっている零細企業にとっては、その仕事がひとつ入れば不渡りを出さずに済んだかもしれない。たったひとりの従業員を解雇せずに済んだかもしれない。会社をたたまずに済んだかもしれない。
大企業の営業マンは自分が取った仕事の裏でそんなことが起きているなんて、知る由もありません。きっと、世の中にはそんな話はあふれるくらいにあるでしょう。
では、人の涙を吸って集まってきたお金を手にした者は、どういった立ち居振る舞いをすればいいのでしょうか。それは、誰かが泣いて財布に入ってきたお金を、今度は笑って出してあげればいいのです。
お金に意志はありません。しかし、使う人の意志がお金に宿るのです。
まるで足が生えているかのように行ったり来たりすることから、お金を「お足」と呼ぶことがあります。お金には足が付いているのです。
自分の財布から出ていくお金に感謝の気持ちを宿すことができれば、その足でそのうちあなたのもとに戻ってくることでしょう。
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富士道十二世、神道扶桑教六世管長
本名:宍野史生。元亀3年、藤原角行が富士山北口登山道を拓いて始めた富士山信仰を受け継ぐ「富士道」の教主。1962年香川県高松市生まれ。食品メーカー加ト吉社員、衆議院議員秘書、大臣秘書官などを経て管長を襲任。(写真撮影=門間新弥)
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(富士道十二世、神道扶桑教六世管長 宍野 史和)
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