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駅から「徒歩10分」と「徒歩15分」では雲泥の差…「中古になっても価値が上がる物件」の4条件

プレジデントオンライン / 2024年1月16日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Orthosie

どんな物件を選ぶのがお得なのか。住宅コンサルタントの寺岡孝さんは「東京近郊でも、中古マンションが新築当時の価格と比較して1.5倍になるなど、驚くほど高騰している。こうした市場価値も無視はできないが、住宅においていちばん重要なことは実際に住んだときの満足度だろう」という――。

※本稿は、寺岡孝『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。

■「戸建てかマンションか」は人それぞれ

本書は、「お金と住まい」に関する有用な視点を、読者の方に伝えるという使命を持って書いています。

その一つが、「不動産における3つの価値」です。

不動産には、「使用価値」「希少価値」「市場価値」という3つの価値があります。これを覚えておいて、自宅を購入する際の判断基準としてください。すでに自宅を購入している人は、自分の家・マンションがこの3つの価値に照らし合わせてどんなレベルなのか知っておく必要があります。

①「使用価値」

これは、戸建てやマンションを手に入れて使ったときの満足感の度合いを指します。買い手はこの満足感に対して金銭を払います。この満足感を想像して見極めた上で「マンションの方がいい」という人もいますし、「戸建ての方がいい」という人もいますから、どれがベストかというのは一概には言えません。

また、「中古と新築ではどちらがいい?」という話になったときにも、「知らない人が住んでいた家はイヤだ」と言う人もいれば、「全く気にしない」という人もいます。

新築なのか中古なのか、戸建てかマンションか、都会暮らしか田舎暮らしかなど、人それぞれによって満足感は異なります。

したがって、自分の住まいを考える場合には、使用価値という観点で満足度が高いことが重要で、最も優先される価値です。

■立地条件が良い物件は希少価値が高い

②「希少価値」

これは主に購入する物件の立地条件の良し悪しを指します。立地条件とは、「駅から5分」や「環境が良好」といった要素で、希少価値を決める一番大きな要因になります。駅や学校、病院までの距離やスーパーなどの有無についてなど、生活の利便性を高めてくれるものが近くにあれば、希少価値が高いと言えるでしょう。

また、景観も希少価値に数えられます。鴨川や大文字送り火が見える京都のマンションや、東京ならばスカイツリーや東京タワーが見えるところは価格が相場より高めです。

■駅から「徒歩10分」と「徒歩15分」では大違い

③「市場価値」

不動産の取引は有効需要があればそこに価格が成立し、その価値が市場価値となります。どんなに機能やデザインが優れた物件でもほしい人がいなければ取引も価格も成立しないので、市場価値はゼロとなります。したがって、市場価値が高いものは概ね都市部の周辺物件に限られてしまうのが現状です。

単純に市場価値だけを見るならば、首都圏なら最寄り駅から近いところがやはり優位になります。例えば、東京23区内で築10年の中古マンションを最寄り駅からの所要時間でどれだけリセールバリューがあるかを見てみると、徒歩3分以内では価格が分譲当初より上昇しています。徒歩10分以内でも上がっているところがありますが、15分以上の場合はほとんどが下落傾向となります。

戸建てやマンションの構造も資産価値に大きく関わってきます。鉄骨よりもRC造のマンションの方が市場価値は高いと言えますし、ローコスト住宅よりもメジャーな住宅メーカーの戸建ての方が市場価値は高いのは言うまでもありません。

■中古になっても売れる物件の4つの基準

ここで「リセールバリュー」という言葉が出てきたので少し説明しましょう。リセールバリューとは、一度購入したものを販売する際の再販価値のことで、中古不動産や中古車に使われることが多い言葉です。

リセールバリューは、個々の物件について用いられるとともに、ロケーション(立地)に関しても使われることが多く、町ごとのリセールバリューを算出している資料も見られます。

リセールバリューは、主に次の4点で評価されます。

1 交通利便性

都心やターミナル駅へのアクセスがいいかどうかが問われます。複数の路線が利用できたり、急行が利用できて、都心に短時間でアクセスできるなどの公共交通機関の利便性がよいほど価値は高まります。

2 生活の利便性

日常生活に必要な施設が揃っているほど価値が高いといえます。商店街やスーパーなどの商業施設や学校、病院、役所といった公共施設も生活する上では不可欠です。ひと言で言えば暮らしやすい街かどうかです。

3 居住の快適性

周囲の環境が生活することにふさわしいかどうかが評価の基準になります。公園などの緑があるか、近くに騒音を出す工場がないか、高速道路や幹線道路で排気ガスや騒音がないかなどが問われます。

4 安全性

災害の危険性がないか、治安が保たれているかの2点が問われます。特に東京の場合には、水害のリスクが高い地域が混在していますので注意が必要です。

■六本木一丁目駅は10年後、2.5倍に値上がり

2023年5月に発表された東京カンテイによる「2022年 中古マンションのリセールバリュー」を元に、首都圏のリセールバリューを検証していきましょう。

10年前の2012年前後は価格高騰局面には入っていない時期で新築マンションの価格はかなり割安感が強かったのですが、コロナ禍、ウクライナ侵攻などを契機に、現在の中古マンション市場では実需・投資のニーズを背景に価格は一段と上がってきています。

都23区のみならず都下、千葉・埼玉・神奈川の近郊、郊外エリアの大半の駅において新築分譲時の販売価格を上回る状況となっています。

出所=東京カンテイ「2022年 中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」
出所=東京カンテイ「2022年 中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」

2022年でもっともリセールバリューが高かった駅は、東京メトロ南北線の六本木一丁目の251.6%で築10年の中古マンションが10年後に2.5倍に値上りしているという計算になります。

上位10位まででも170%以上という数値となっており、新築当時の坪単価が概ね300~350万円であったものが500万円以上となっています。

ランキング上位では麻布、赤坂、青山など港区にある駅や渋谷区、千代田区というような都心区部でリセールバリューが高い数値となっています。

■東京近郊でもマンション価格は上がり続けている

また、都内以外でリセールバリューが高かった駅は小田原江ノ島線の片瀬江ノ島駅が166.1%、JR根岸線の桜木町駅が164.5%、JR南武線の尻手駅で163.4%、東武野田線の新船橋駅で160.9%、つくばエクスプレスの流山おおたかの森駅で152.7%、JR京浜東北線の浦和駅で145.3%という数値です。

このように東京近郊でも新築当時の価格から1.5倍という価格になっているのには驚くばかりです。

今回の調査では資産価値が2割以上目減りした駅は皆無でしたが、新築時の価格を下回ったのは京王八王子駅や鴨宮駅、北小金駅、川越駅など9駅だけであり、いかにマンション価格が高騰を続けているかがよく理解できます。

【図表】2022年 首都圏 リセールバリュー
出所=東京カンテイ「2022年 中古マンションのリセールバリュー(首都圏)」

■使用価値より希少価値のほうが優先されている

2013年のリセールバリューを見ると、1位の東京メトロ日比谷線の広尾駅で144.1%、都23区のエリア平均のリセールバリューが96.2%でした。ところが2022年の首都圏のリセールバリュー平均は132.5%となっており、この数値を見てもマンション価格は相当高くなっていることが理解できます。

また、2013年では100%を超える駅は今ほど多くありませんでしたので、これほどまでにマンション価格が高騰するとはだれも思っていなかったでしょう。

最近では、投資対象として首都圏のマンションを購入しているケースも多く、希少価値の方が使用価値よりも優先されていると言えます。

お気づきかとは思いますが、「希少価値」と「市場価値」はリンクしています。希少価値の高い物件はほぼ例外なく市場価値も高いと言えます。ここでは頭をシンプルにするために、「希少価値」と「市場価値」を一緒にして「資産価値」という言葉に置き換えて話を進めていきましょう。

室内にいる親子のイメージ
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■銀座のど真ん中に住むのが正解なのか

不動産購入のポイントは、この「使用価値」と「資産価値」の両方を満たすことが重要です。

ただし、二つの価値をマックスで得ようとすると、コストが大変高くついてしまいます。その場合には、私は、「使用価値」を優先することをお勧めしています。

居住用の不動産に関しては、使用価値以外のリセールバリューといった資産価値を優先してしまうと、間違った買い方をしてしまう危険性があるからです。

首都圏にいると、資産価値として得なのか損なのかという話に必ずなりますが、自分の住まいに関して資産価値のみを前提にすることは、住宅業界に身を置いてきた人間にとっては甚だ疑問です。

誰しも損したくはないでしょうが、例えば資産価値が高いからと銀座のど真ん中にマンションを購入しても、すべての人が満足するわけではありません。物価が高すぎて生活しにくい、病院が遠い、夜は明るすぎて眠れない、といった生活する上でのマイナスの側面もあるわけです。

■住んで満足できる「マイホーム投資」を

投資として見た場合には「資産価値」を重視すべきだと思われるかもしれませんが、居住用の不動産は、使用することによって満足を得られることが自宅を持つことの一番の価値なのです。これも私は投資と呼んで差し支えないと思っています。

寺岡孝『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)
寺岡孝『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』(クロスメディア・パブリッシング)

「資産価値」は、マーケットにおけるものさしであり、基準は自分の外にあります。それに対して「使用価値」は自分にとっての満足感ですから、基準は自分の中にあると言えます。住まいに求める価値観や判断基準は人それぞれ違います。本来住まいは、自分の価値観に合わせて選ぶものですから「使用価値」を優先するべきなのです。

ただし、「資産価値」を無視するという話ではありません。

例えば、「使用価値」に照らして、ローコスト住宅で十分だという人もいるでしょう。その場合には、立地を重視して土地の「資産価値」を高めるという方法もあります。

ファミリータイプのマンションであれば、都心へのアクセスをある程度犠牲にしつつも、駅近で高級感のある物件を取得することで、「資産価値」を維持することもできます。

「使用価値=住まいへのこだわりや満足感」を優先しつつ、「資産価値」への目配りも忘れないことが、「マイホーム投資」へつながっていきます。

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寺岡 孝(てらおか・たかし)
住宅コンサルタント
1960年東京都生まれ。アネシスプランニング株式会社代表取締役。住宅セカンドオピニオン。大手ハウスメーカーに勤務した後、2006年にアネシスプランニング株式会社を設立。住宅の建築や不動産購入・売却などのあらゆる場面において、お客様を主体とする中立的なアドバイスおよびサポートを行っている。これまでに2000件以上の相談を受けている。NHK名古屋「ほっとイブニング」「おはよう東海」などTV出演。東洋経済オンライン、ZUU online、スマイスター、楽待などのWEBメディアに住宅、ローンや不動産投資についてのコラム等を多数寄稿。著書に『不動産投資は出口戦略が9割』『学校では教えてくれない! 一生役立つ「お金と住まい」の話』『不動産投資の曲がり角で、どうする?』(いずれもクロスメディア・パブリッシング)がある。

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(住宅コンサルタント 寺岡 孝)

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