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3分歯磨きでは「食べられない」老後が待ち受ける…歯周病とむし歯を生涯防ぐ「鉄板の口腔ケア」の中身

プレジデントオンライン / 2024年1月16日 10時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PeopleImages

何歳になっても食べる力を保つには何をすればいいか。基本は歯周病やむし歯のリスクをチェックし、正しい口腔ケアを心がけることだという。歯科医師の栗原丈徳さん、医師の栗原毅さんが書いた『70歳の壁を越える 食べる力』(エクスナレッジ)より紹介しよう――。

※本稿は、栗原毅、栗原丈徳『70歳の壁を越える 食べる力』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

■歯周病リスクがわかる5つのチェック項目

本稿では、知らない間に低下してしまった食べる力をよみがえらせるオーラルケア(口腔(こうくう)ケア)の方法をご紹介します。

これらの方法は、今は問題がない人が、10年後の食べる力の低下を予防するのにも効果があります。

本書で詳しく述べているように、食べる力の低下にはオーラルフレイルが深く関わっています。そして、オーラルフレイルを進めるもっとも大きな要因の1つが歯周病であることもお話ししました。

そこでまず、あなたは歯周病のリスクがあるのかどうかをチェックしてみましょう(図表1)。ただし、歯科医院で歯周病を治療中の人は、このチェックは飛ばしてもかまいません。

今まで歯周病で歯科医院にかかったことがない人でも、歯周病になっている可能性があります。

チェック項目は5つありますが、どれか1つ以上当てはまるものがあれば、歯周病の疑いがあります。

【図表1】歯周病リスクのチェックリスト
出典=『70歳の壁を越える 食べる力』

■年に1回は歯医者で定期健診するのが望ましい

①の「治療していない歯がある」に当てはまる人は、歯医者が嫌いな人ではないでしょうか。

むし歯などがあるのに、何年も歯医者に行ってない人は、歯周病のリスクがあるかもしれません。

本音をいえば、治療すべき歯のあるなしに関わらず、1年に1回くらいは歯科医で歯周ポケットの深さなどを調べてもらったほうがよいのです。

レントゲン写真を見ながら患者に説明をする歯科医師
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

②の「歯と歯の間に食べものが詰まりやすい」にチェックが入った人は、歯と歯の間のすき間が開いている可能性があります。

歯周病が進むと、歯肉がやせて下がってくるため、すき間が広がって、食べものが詰まりやすくなることがあるのです。

また、食べものが詰まるのは、詰まる歯に小さなむし歯などができている可能性もあります。いずれにしても、原因が歯周病かどうかを一度調べておく必要があるでしょう。

③の「歯みがきにかける時間が5分以内」に当てはまる人は、十分な歯周病予防ができていないと考えられます。

歯周病の原因であるプラーク(歯垢)をきれいに取り除くには2~3分くらいの歯みがきでは短すぎます。歯周病ケア(歯みがき)には、最低でも5分以上かかります。

■歯肉炎は歯周病の初期段階

④の「歯をみがくと歯ブラシに血がつく」にチェックを入れた人は、歯肉炎の可能性があります。本書の第2章で述べたように、歯肉炎は歯周病の初期段階で、歯肉の出血や腫れで気付く人が多いのです。

ただし、もっと進んだ歯周炎でも出血することがあるので、出血だけで初期だと断定することはできません。歯周炎では歯がグラグラする(動揺する)症状が出ていることもあります。

もしかしたら、歯を強くみがきすぎて歯肉を傷つけ、出血している可能性もありますが、その場合も歯科医院に行かないと原因が究明できません。

逆に、歯肉から血が出るほど強くみがいているなら、歯科衛生士に正しい歯みがきの仕方を教わったほうがよいでしょう。

⑤の「家族に口臭が気になるといわれた」に当てはまる人も、歯周病が疑われます。歯周病は口臭の大きな原因の1つだからです。

歯周病菌(嫌気性菌)は代謝の過程で、硫化水素やメチルメルカプタンを産生し、これが口臭の原因になります。また、舌苔(ぜったい)から起こっていることもあります(舌苔については後述)。

ただ、胃腸の病気など、歯周病以外の原因でも口臭が起こることがあります。いずれにしても家族から口臭を指摘されたなら、まず歯科医院で原因が歯周病かどうかを調べてもらったほうがよいでしょう。

■食事の時間が10分以内の人はオーラルフレイルに注意

歯周病のチェックはいかがでしたか? 歯周病は成人が歯を失う最大の原因なので、とくに自覚症状がなくても、歯医者に何年も行ってない人は調べておいたほうがよいと思います。

次に、オーラルフレイルのチェックもしてみましょう(図表2)。こちらもチェック項目は5つ。

1つでも当てはまるものがあれば、オーラルフレイルもしくはその予備軍(プレ・オーラルフレイル)が疑われます。そして当てはまる項目が多いほど、オーラルフレイルが進んでいる可能性があります。

【図表2】オーラルフレイルのチェックリスト
出典=『70歳の壁を越える 食べる力』

①の「食事の時間が短い、10分以内は普通」に当てはまる人は、よく噛まずに食べているのかもしれません。

噛まずに食べられるということは、やわらかい食べもの、もっと具体的にいえば、炭水化物が中心の食事になっている可能性があります。

また、本書の第1章で述べたように、噛まずに食べると栄養素の吸収も悪くなるので、食事時間が短い人は要注意です。

②の「口の中がよく乾く、水をよく飲む」にチェックが入った人は、唾液分泌が悪くなっている可能性があります。

食べ物の味の物質は、唾液を介して舌にとどくので、唾液が出ないと食事がおいしく感じられません。食事がおいしくないと、食べたいという意欲も失われるので、低栄養になって、全身のフレイルが進む可能性もあります。

また朝起きたときに口が乾いている人は、口を開けて寝ている可能性があります。眠っているときの呼吸が、鼻呼吸ではなく、口呼吸になっているのかもしれません。

もしも、朝起きたとき口が乾いている人で、家族にいびきを指摘されているなら、睡眠時無呼吸症候群(後述します)の疑いがあります。

■オーラルフレイルの進行は口腔機能の低下につながる

③の「食事中、むせたり、せきこむことが多い」に当てはまる人は、本書の第2章で述べたように飲み込む力(嚥下(えんげ)力)が落ちている可能性があります。以前よりも、むせる回数が増えたという人はオーラルフレイルが進んでいるかもしれません。

④の「滑舌が悪くなった、発音しにくい言葉がある」にチェックした人は、舌の動きが悪くなっている、あるいは舌の筋力の低下が疑われます。

舌は噛んだ食べものを唾液と混ぜ合わせて食塊をつくり、飲み込みやすくする働きがあるので、舌の動きが悪くなると食べる力も低下します。

⑤の「頬のたるみが気になってきた」に当てはまる人は、表情筋などの口まわりの筋肉が衰えている可能性があります。これらの筋肉の衰えは、口腔機能の低下にもつながります。

また、美容の観点からみてもよくないですね。とくにコロナ禍のマスク生活で、頬がたるんできた人が多いのではないかと思います。

■歯周病ケアの基本は「バス法」

歯周病を予防して、8020(80歳で残っている歯が20本)を目指すためには、毎日の歯周病ケアが重要です。

栗原毅、栗原丈徳『70歳の壁を越える 食べる力』(エクスナレッジ)
栗原毅、栗原丈徳『70歳の壁を越える 食べる力』(エクスナレッジ)

歯周病ケアとは、要するに歯みがきのことです。歯みがきを全然やらない人はさすがにいないと思いますが、歯周病を防ぐ歯みがきにはコツがあります。ただ漫然とみがいても、歯周病は予防できません。

逆にいうと、正しい歯みがきをしていれば、歯周病は予防できますし、治療のため頻繁に歯科医院に行く必要もありません。結果的に、医療費の節約にもなるのです。

歯周病予防のための歯みがきは、プラークを取ることが目的です。

プラークは歯の表面にもつきますが、とくに大事なのは歯周ポケットのプラークを取ること。そのためには、歯と歯ぐきの間に歯ブラシを当てることが大事です。

みがき方のコツとしては、ペンを持つように歯ブラシを持ち、歯ブラシを歯に対し45度に当てて、20~30回、小刻みに震わせるように前後させます。

このみがき方のことを「バス法」といいます。歯周病菌は夜寝ているときにプラークの中で繁殖するので、夜寝る前の歯みがきはこのくらいやらなければなりません。

【図表3】歯周病を防ぐ歯みがきのやり方
出典=『70歳の壁を越える 食べる力』

歯ブラシを45度で当てるのは、歯周ポケットに入った食べかすをかき出すことが目的です。力を入れすぎると歯肉を傷つけるので注意しましょう。

■むし歯予防のみがき方「スクラビング法」

もう1つ、歯ブラシを歯に対して垂直に当てる「スクラビング法」というみがき方もあるのですが、こちらはおもにむし歯予防のためのみがき方です。

健康な歯のためには、歯周病予防だけでなく、むし歯予防も大切ですが、バス法でも歯の表面の汚れはある程度とれますし、食べる力を落とさないための優先順位としては歯周病予防のほうが大事なので、バス法を基本のみがき方としてよいと思います。

バス法は歯肉のマッサージにもなります。適切な圧力をかけて小刻みに歯ブラシを震わせると、歯肉の血流もよくなります。毛先を歯肉に当てて、細かく気持ちよく感じるくらいの強さで震わせるのがコツです。

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栗原 毅(くりはら・たけし)
医師
1951年新潟県生まれ。北里大学医学部卒業。東京女子医科大学で消化器内科学、特に肝臓病学を専攻し、同教授を歴任、2007年より慶應義塾大学教授。2008年に消化器病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病の予防と治療を目的とした「栗原クリニック東京・日本橋」を開院。『1週間で勝手に痩せていく体になるすごい方法』(日本文芸社)など著書多数。

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栗原 丈徳(くりはら・たけのり)
歯科医師
1982年、東京都生まれ。鶴見大学歯学部卒業。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科中退。栗原ヘルスケア研究所所長・歯科医師。「予防歯科」「食と健康」をテーマに活動をしている。とくに「口の健康と全身疾患との関連性」に興味を示す。大学や介護施設などで講演も行っている。日本抗加齢医学会、日本咀嚼学会、日本摂食嚥下リハビリテーション学会会員。

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(医師 栗原 毅、歯科医師 栗原 丈徳)

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