1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

肥満の人はやせている人より1日2時間長く座っている…中年太りを食い止める"活動量"を無理なく増やすコツ

プレジデントオンライン / 2024年1月17日 9時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Vadym Petrochenko

中年太りを食い止めるにはどうすればいいか。肥満や運動を専門に研究する山田陽介さんは「まとめて運動しても、消費できるカロリーはそれほど多くはない。逆に、家にいるときも、ちょこちょこ動いていたほうが、トータルでの消費カロリーは多くなる。ポイントとしては、『食べたら動く』ことを意識することだ」という――。

※本稿は、山田陽介『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』(エクスナレッジ)の一部を再編集したものです。

■「減量に運動は不要説」への反論

本稿では、運動や身体活動の重要性について、詳しくお話ししたいと思います。よく「運動によるカロリー消費は微量だから、ダイエットにはほとんど役に立たない」といったことをいう人がいますが、まずこういう意見に反論しておきたいと思います。

現代のように、活動量が少なくても生きられる時代であれば、基礎代謝が低下していなくても、たった10キロカロリーの摂取カロリーが消費できずに残ってしまう可能性があります。実際にはそれ以上かもしれません。

「運動してもやせない」という人がいますが、やせはしなくても、運動量が足りないと、1日10キロカロリーの積み重ねが20年で10kgの体重増につながっていくというようなことが起こるわけです。

1日たった10キロカロリーでも、余ったカロリーは体脂肪として蓄積されます。それによって、10年後、20年後の中年太りが決まるわけですから、消費カロリーとしては微量でも、運動することには意味があるのです。

現代のように、動かない生活を続けていると、中年太りはもちろんですが、生活習慣病のリスクも高くなります。家電に頼らずに家事をするとか、デスクワークの途中でも動く習慣をつくるとか、こまめに動くことで、1日10キロカロリーの未消費分を帳消しにできるわけです。

■中年太りの体脂肪は運動で燃やすのが最適

また、運動すると筋肉の質が変わってきます。同じ体重でも、アスリートのように、筋肉量が多くて体脂肪が少ない体であれば、BMI30以上でも病気になりません。

逆に、体脂肪が多くて筋肉量が少ない肥満は、BMI25~30くらいでも、生活習慣病を発症してしまう危険性があるのです。

体脂肪は運動によってしか減らすことはできません(基礎代謝は除く)。もちろん、食事で摂取する量を減らすことも重要ですが、中年太りを改善したいのであれば、運動量(活動量)を増やして蓄積された体脂肪を燃やさなければならないのです。

また、運動不足だと筋肉の質も変わってきます。運動習慣がある人の筋肉は筋細胞がみっちりあるのに対し、運動不足の人は筋細胞の間にすき間ができて筋肉がスカスカになっていきます。

スカスカになった筋細胞の間には、異所性脂肪の1つである筋肉脂肪もついてくるので、これもまた生活習慣病のリスクを高めてしまうことになります。

このように、運動には健康上のいろんなメリットがあります。運動によるカロリー消費量は少ないけれども、中年太りが気になるような年代の人にとって、運動はとても重要であることがおわかりいただけたでしょうか。

太ったおなか
写真=iStock.com/chokja
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chokja

■血糖値スパイクが脂肪をためる

生活習慣病と運動の関係で、よく知られているのが糖尿病です。糖尿病になると高血糖の状態が続いて、それが動脈硬化を進めて、いろんな合併症を引き起こします。

糖尿病を発症した人は、食事や運動で血糖コントロールすることが大事ですが、中年太りで、まだ糖尿病になっていない人でも、血糖コントロールは重要です。

食事をすると血糖値が上がります。その後、インスリンというホルモンが分泌され、血糖はエネルギーとして消費されます。その結果、血糖値が下がります。

炭水化物などの食事をたくさん摂ると、血糖値は急激に上昇し、インスリンが分泌された後、今度は急激に下がります。

わかりやすくいうと、血糖値が短時間のうちに高くなったり低くなったりします。このような状態を「血糖値スパイク」といいます。

血糖値スパイクが起こっているときは、インスリンが多量に分泌されるので、脂肪細胞に脂肪をため込みやすくなります。

どういうことかというと、血液中の糖の濃度が高いと、脳は血液中にエネルギーがいっぱいあるから、それをためておこうとして、体脂肪に換えてたくわえるのです。

■食事の前後の運動で血糖値の急激な上下を防ぐ

また、血糖値スパイクは血管にダメージを与えて、動脈硬化を進めることもわかっています。そこで、肥満や動脈硬化を防ぐには、血糖値の上がり下がりをゆるやかにすることが重要だといわれています。

これに対し、食事の前後に運動をすると、筋肉への刺激によって、血糖値の上がり方がゆるやかになり、また下がるときもゆるやかになることがわかっています。

血糖値がゆるやかに上下すると、血糖を体脂肪としてため込まず、すぐに使えるエネルギーとして消費されるので、肥満になりにくいのです。

低糖質ダイエットもこのような考えが基本にあります。糖質の摂取量を減らせば、血糖値が上がりにくいので、肥満になりにくいというわけです。

しかし、私は血糖値を上げない生活を長く続けていると、ある種の時差ボケのような状態が起こるのではないかと危惧しています。

私たちは血糖値を上げて生活のリズムをつくっているので、体を動かすときに血糖値をしっかり上げておかないと、夜眠れなくなったりする危険性があります。

もちろん、血糖値を上げるときは、血糖値スパイクを起こさないようにゆるやかに上げる必要があります。そのためには、食事の前後に軽い運動をすることが有効なのです。

■座っている時間を減らそう

食事時間とのタイミングなどもありますが、まとめて運動しても、消費できるカロリーはそれほど多くはありません。運動で消費するカロリーというのはそれほど多くはないということです。

逆に、家にいるときも、ちょこちょこ動いていたほうが、トータルでの消費カロリーは多くなります。

もちろん、ジムで行うような運動も大事ですが、まずは日々の身体活動によって消費するカロリーに目を向けてほしいのです。

家事をして疲れた女性
写真=iStock.com/kazoka30
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazoka30

ポイントとしては、「食べたら動く」ことを意識するとよいと思います。例えば、食べてすぐ座らないことを習慣にしてはいかがでしょうか。

自宅で食事するなら、食べた後もずっと座りっぱなしでいないで、片付けや洗いものをすませるとか。ランチが外食だったら、すぐに会社に戻って座らない。ランチが終わったら、少し散歩をしてから会社に戻るような時間を持つことが大事です。

前述のように、食事の前後の運動は血糖値をゆるやかに上げて、血糖値スパイクを防ぐというメリットもあります。そうやって、日常の活動時間を少しずつ増やしていくとよいと思います。

■目的のある運動以外にもNEATを有効活用しよう

座っている時間が長いほど短命であるといった研究は、世界中で行われていますが、『サイエンス』に掲載された興味深い論文があるので紹介しましょう。

人間は目的のある運動以外にも、日常生活に関連する姿勢や動きの変化によってエネルギーを消費します。これをNEAT(非運動活動性熱発生)といいます。簡単にいえば、運動ではない日常生活の活動によるエネルギー消費です。

肥満におけるNEATの役割を調べるために、やせた人10人と、軽度肥満な人10人を対象にして、10日間、両群の人たちの0.5秒ごとの体の姿勢と動きを測定しました。

肥満の人は、やせた人より、1日平均2時間長く座っていました。しかし、肥満の人が体重を減らしても、やせた人が体重を増やしても、姿勢の割り当てには変化がないことがわかりました。これは生物学的に決定されていると思われます。

しかし、肥満の人がやせている人のNEATを強化した行動を取り入れた場合は、1日あたり350キロカロリー消費する可能性があることがわかりました。

つまり、肥満の人がやせた人と同じくらい立ったり、歩き回ったりすると、消費カロリーが大幅に増える可能性が明らかになったということです。

【図表1】こまめに動くことで座る時間を減らそう
出所=『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』

■テレワークでエネルギー消費量は400キロカロリー低下

みなさんは普段から、体を動かすことを心がけているでしょうか。まとまった運動はもちろん大事ですが、それ以上に24時間の活動量をいかに増やすかが、中年太りの改善にはとても重要です。

ところが、まだ記憶に新しい新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の大流行は、逆に24時間の活動量を減らすことになってしまいました。

コロナ禍に太ったという人がたくさんいて、「コロナ太り」などと呼ばれていますが、コロナ禍では多くの企業が通勤からテレワーク(在宅勤務)にシフトしました。その結果、会社員の1日の活動量が激減してしまったのです。

具体的なデータもあります。デスクワーク中心の仕事をしている30代の男性の場合、1日の総エネルギー消費量は2800キロカロリーぐらいあったのに対し、テレワークになると2400キロカロリーまでに低下するという研究報告があります。

仕事がデスクワークであっても、通勤のために歩いたり、職場のちょっとした移動など、体を動かす機会はテレワークの人たちよりも多いのです。それが、400キロカロリーもの差になっています。

やはり、日常生活の中のちょっとした動きの積み重ねは、意外にカロリー消費に役立っているのです。

■コロナによる運動量の低下=筋力低下に注意

高齢者の場合はもっと深刻で、若い人よりも感染による重症化リスクが高いため、外出を極端に控えるようになりました。

それによって筋力低下が進み、今までのように歩けなくなる人が増えたともいわれています。もともと運動の機会が少ない高齢者にとって、さらに活動量が減ることは、筋肉量の減少を招きやすいのです。

コロナの法的位置づけが2類から5類になってから、テレワークから再び通勤のスタイルに戻す企業も増えていますが、今後もコロナのような感染症が流行することは十分考えられます。そんなときには、日常生活の活動量を減らさないような工夫が必要ではないかと思っています。

■やせるためには筋トレより有酸素運動のほうが大切

日常生活での活動量を意識的に増やしていくことによって、1日の総エネルギー消費量が増えれば、少しずつ体重が増えていく中年太りをストップさせることができる可能性があります。

ただ、それだけではエネルギー消費量としては少ないので、これ以上の体重増を防ぐことはできるかもしれませんが、体重を減らしていって中年太りを改善するには十分ではありません。

ということで、いよいよ「運動」が必要になってきます。運動というと、ジムへ行って筋トレするようなイメージがありますが、やせるためには筋トレよりも有酸素運動のほうが重要です。

本書(『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』)では両方やることをすすめてはいますが、今まであまり運動してこなかった人であれば、優先順位としては有酸素運動から始めてほしいと思います。

そして、有酸素運動が習慣化できたら、筋トレも始めるとよいでしょう。といっても、やせることが目的であれば、きつい筋トレはやらなくても大丈夫です。

スクワットはみなさん、ご存じだと思います。自分の体重を負荷にして、下肢の筋肉を鍛える筋トレで、道具なしでできるので、本書でもすすめています。

ラップトップを見ながら運動する親子
写真=iStock.com/petesphotography
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/petesphotography

マシンを使って行うような高い強度の筋トレは必要ありませんが、スクワットのような中等度の筋トレはやったほうが、中年太りの改善のために得なことが多いと思います。

有酸素運動だけでも筋肉の質の向上はみられますが、筋トレをすると、筋肉の質の向上とともに確実に筋細胞が大きくなって、筋肉量が増えます。それによって、わずかであっても基礎代謝も上がっていくので、筋トレをしたほうが、将来的に同じ運動をしても消費カロリー量が大きくなる可能性があります。

ですから、運動をがんばれる人はスクワットなどの筋トレもやるとよいと思います。

ただ、有酸素運動も筋トレも継続することが大事です。継続させるためには、日常生活のルーティーンにするとよいと思います。「この時間は運動する」と決めたら、やらないと気持ちが悪いと感じるくらい習慣として根付けば、継続も苦にならないでしょう。

■運動してこなかった人は、まず散歩から始めよう

有酸素運動には、ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどがあります。ウォーキングはご存じのように、やや早いペースで歩くこと。早歩きのイメージがあるウォーキングに対し、ジョギングは走るイメージがありますが、おすすめしたいのは、スロージョギングです。

スロージョギングのスピードは、信号が間に合わないときに急いで渡るぐらいの速さです。できる人なら、ウォーキングよりもエネルギー消費効果が高まります。

ただ、今までほとんど運動の習慣がなかった人や、運動が苦手な人は、これでもハードルが高いでしょう。そんな人は、まず歩くことから始めましょう。

スマホの歩数計のアプリを使って、自分がどのくらい歩いているか確認してみましょう。リモートワークの人なら、1000歩以下という人も珍しくありません。できればトータルでまずは、1日最低5000歩以上は歩いてほしいと思います。

例えば、歩いて5分くらいかかるコンビニなら、自転車で行くのをやめて、徒歩で行くことから始めてもよいでしょう。

健康な人が普通に歩くと、だいたい10分で1000歩ぐらいです。家から徒歩5分のコンビニなら、往復で1000歩歩けます。

■駅ビルをブラブラ歩き雨の日でも歩数をかせぐ

また、最寄りのバス停よりも1つか2つ前で降りて歩くというのもよいでしょう。バス停は一般的に250~500m間隔で設置されているので、間隔が短いなら2つ前くらいでも歩けてしまうでしょう。

山田陽介『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』(エクスナレッジ)
山田陽介『科学がつきとめた 中年太りのすごい解消法』(エクスナレッジ)

通勤している人なら、駅ビルなどをブラブラ歩くのもよいと思います。これなら、雨の日でも歩数をかせげますね。ショッピングセンターなども、天気が悪いときの散歩コースとして利用できます。

最初は早く歩くことは考えなくてよいので、1日あたり、今までの歩数プラス1000歩を目標に歩くことから始めてください。

その際、注意してほしいのが土日です。通勤の途中で歩く工夫をしている人でも、土日はほとんど歩かないという人がいるからです。土日は消費カロリーが減って、カロリーオーバーの蓄積につながりがちです(ホリデー・ウエイト・ゲイン)。土日もできるだけ歩くようにしてほしいものです。

----------

山田 陽介(やまだ・ようすけ)
国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所運動ガイドライン研究室長
神戸大学大学院保健学研究科准教授。1980年、埼玉県生まれ。専門は身体活動科学・栄養代謝学・健康長寿学。2021年、2022年には『Science』誌、2023年には『Nature Metabolism』誌に共同責任著者の論文が掲載されるなど、エネルギー代謝に関する研究の第一人者。

----------

(国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所運動ガイドライン研究室長 山田 陽介)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください