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400字の作文は「80字を5回書く」と考える…だれでもすぐに論理的な文章が書ける「R80メソッド」とは

プレジデントオンライン / 2024年1月16日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/paylessimages

論理的な文章を書くには、どんなことに気をつければいいのか。数多くの東大合格者を指導してきた茨城県立並木中等教育学校の元校長・中島博司さんは、「40文字程度の2文を接続詞でつなぐ『R80』を使えば、だれでもすぐに論理的な文章が書けるようになる。このメソッドは大学入試で急増している小論文の対策としても非常に有効だ」という――。

※本稿は、中島博司『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

■親世代と大きく異なる現在の大学入試事情

そもそも「現在の大学入試」がどう変化しているのか、ピンと来ない人は少なくないでしょう。

中高生の子を持つお父さんお母さん世代に聞いても、「大学入試は一般入試か推薦入試、それにせいぜいAO入試でしょ?」というイメージで止まっているかもしれませんね。

大学入試は、2021年から大きく変わりました。

制度としては以下の3種類があります。

①学校推薦型選抜(旧・推薦入試)
②総合型選抜(旧・AO入試)
③一般選抜(旧・一般入試)

パッと見てわかることとして、名称が「入試」から「選抜」になっていますね。

特に、なぜ①と②の名称が大きく変更されたかというと、従来の推薦入試やAO入試では、学生の学力が担保されないということが問題化したからです。

AO入試の場合、面接だけで合格とか、自己推薦文を事前提出して面接で終了、といったケースがありました。

推薦入試でも、学校の推薦さえあればあとは面接だけということも。

安易な入試があると、高校時代に勉強せずに大学進学する生徒が出てきます。

その結果、基礎学力の乏しい彼らが大学の学問についていけないというケースが多発しました。

この問題が表面化したことで、文部科学省が「ちゃんと選抜しなさい」という方向性を示し、それに伴って名称も変わりました。

ちなみに①と②の一番の違いは、校長の推薦文が必要かどうかということです(①は必須)。

そしてここからが大事なポイントです。

現在、①と②の選抜で、私立大学への入学者は5割を超えています。

国公立はまだ2割程度ですが、ゆくゆくはもっと増やすという目標が掲げられています。

では、大学はどうやってそれだけの学生を「選抜」していると思いますか?

選抜方法で圧倒的に重きを置かれているのが、小論文なんです。

■大学入試で求められる「書く力」と「読解力」

大学によって違いはありますが、小論文に面接やプレゼンテーションがついてくるというのが基本です(東大の推薦だと共通テストも)。

つまり、書く力や話す力を測られて大学に入る時代へと変化してきているわけです。

付け加えると、③の一般選抜も、以前とは様変わりしています。

1つは、一般選抜にも記述問題が増えているということ。

やっぱり書く力が重視される時代になってきたという表れですね。

もう1つは、2021年から大学入試センター試験が「大学入学共通テスト」になり、出題傾向が変わったことです。

センター試験の頃は、単純な知識問題が多く、ほぼ記憶によって解答できるものでした。

私は日本史の教員でしたが、教科書を暗記していれば8〜9割は解けたものです。

ところが大学入学共通テストになってからは違います。

日本史でも、覚えているだけでは半分ちょっとしか解答できません。

4割前後は、問題文をよく読み込んで考える力がないと解けないようになったのです。

さらに日本史だけでなく、国語や英語などでも問題文が長文化しています。

つまり、長文の読解力が不可欠になったのです。

■入試対策に最適な「R80」とは

そんな変化著しい現在の大学入試に対応できるメソッドが、「R80」です。

私はR80を、「思考力・判断力・表現力を身につけ、論理力を育成する」アイテムとして考案しました。

この「R80」の取り組みで、生徒たちの学力がうんと上がったことは第1回、第2回の記事でもお伝えしました。現在、全国推定1000校以上で導入されている、論理力と学力アップの効果が実証済みの文章メソッドです。

R80のルールはたった2つだけです。

①2文構成で80字以内
②2文目の最初に必ず接続詞を使う

2文目の最初に使用する接続詞には、次のようなものがあります。

・順接(したがって、ゆえに、だから)
・逆接(しかし、だが、ところが)
・並列(また、ならびに、かつ)
・対比(一方)
・換言(つまり、すなわち)
・理由説明(なぜなら)

■R80なら論理的な文章が簡単に書ける

では、R80で書くと実際どういう文章になるのか。2つの実例を挙げてみましょう。

【図表1】R80で書いた文章実例

大学入試の記述問題や小論文で必要とされるのは、文学的な文章ではなく、論理的な文章です。

R80は接続詞を使うことで、読む人に対して補助的に、もっと言うなら強制的に、展開を示していきます。

そのことで論理的な文章にしていくわけです。

R80をやってみて最初に実感するのは、文章を書くハードルがぐんと下がることでしょう。

続ければ、スタート時点の学力に関係なく、自分の考えを論理的かつ簡潔に書くことができるようになります。

ある程度慣れれば、誰でも80字が2分以内で書けるようになります。

■400文字の小論文は「R80×5回」

さて、現在の大学入試において、小論文が大変重要視されていることは先述しました。

小論文となると、80字よりうんと長文を書けるようにならないといけません。

そこで提唱したいのが、「R80の因数分解法」です。

難しそうな名称ですが、すごく簡単です。

小論文の字数を因数分解すれば、R80×○回というふうに考えられる、という話なんです。

たとえば作文の課題を出されたとします。

原稿用紙を渡されて「はい、400字で自由に書いてね」と言われたら、文章の苦手な子の頭にはまず、指定された400という字数が浮かぶでしょう。

そして、それだけの字数を埋める方法が思いつかず、途方に暮れてしまいます。

そういう子たちが「自分は文章が書けない」と思い込んでいる気がします。

ところが、R80という「型」を知っている子だと、反応が違います。

「R80を5回」ということが浮かびます。

そこから、まずは結論的なR80を書けるかな、といった考えを展開していくことができます。

ルールのないスポーツがないように、文章にも一定のルールがあったほうが、どうプレーすべきかが見えてくるのです。

■「R80」で小論文を書く方法

それでは、R80の因数分解法を具体的に見ていきましょう。

やり方は以下の3段階です。

①字数をR80×○回と因数分解する
②1:3:1に配分し、序論・本論・結論を書く
③本論は3つの具体例を等分に書く

「序論・本論・結論」というのは、論文でよく使われる構成のことです。

序論では、課されたテーマに対する自らの認識を整理し、論点を示します。

本論では、論点について具体例を展開します。

結論では、ここまでの内容をまとめ、課されたテーマに対する結論を出します。

【図表2】R80×因数分解法 イメージ図
図版=『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』より

たとえば400字の場合、R80の因数分解法でいうと、R80×5回ですよね。

その5回を1:3:1に配分すると、

序論(R80×1)、
本論(R80×3)、
結論(R80×1)、

ということになります。

本論のR80×3は、3つの具体例にそれぞれR80×1を振り分けます。

■「R80」を使った小論文の例

では実際にR80の因数分解法を使った400字の小論文を見てみましょう。

「地域に開かれた学校づくり」というテーマで私が書いた例文です。

序論(R80×1)
開かれた学校づくりが望まれている今日、高校では地域との連携が充分進んでいるとは言い難い。そのため、私は学校改革の一環として3つの方策を実行したいと考えている。

本論(R80×3)
まず、我が校の授業の様子を知ってもらうために年間4回の公開授業を実施する。しかも、保護者・学校関係者だけでなく、小中学生や近隣住民の方にも見学に来ていただく。

次に、近隣の小中学校への出前授業を推進するとともに、先生方同士の交流の場を設ける。なぜなら、生徒募集という観点からも近隣校との連携は不可欠だからである。

さらに、課題を設定して地域に飛び出し、主体的に探究する学習を実施する。たとえば、聞き取りの実施は、コミュニケーション能力や社会形成能力を高め、キャリア教育にもつながる。

結論(R80×1)
地域密着型の高校は、定員を確保するとともに、地域に愛される学校になる。そのことで、生徒が学校にプライドを持つようになり、教職員にとってもやりがいのある職場となる。

書き方のイメージが湧いたでしょうか?

型を使うことで、書き手(自分)が書きやすくなるのはもちろんなのですが、読み手にとっても構成のバランスのよさを感じさせることができます。

小論文は、人に読んでもらい、納得してもらうための文章です。そのためには読みやすい形を作らないといけません。その意味でも、R80の因数分解法は理想的な構成を作り出すことができるのです。

■上手でもつまらない文章の特徴

説得力を増すために特に大事なのが、本論で3つの具体例を挙げることです。

なぜ具体例が大事かというと、生成AIにヒントがあります。

私は生成AIの代表格であるChatGPTを、リリース直後から使ってきました。

ChatGPTが優れている点は、文章がスッキリしていることです。要点を箇条書きにしてくれるなど、とにかく読みやすいんですよね。

一方で、論文やレポートを書かせてみると、つまらないなと感じることが多くあります。

先日、英語講師の第一人者である安河内哲也さんが、卒業式での校長の式辞をChatGPTに書かせてSNSにアップしていました。

元校長の私としては興味津々、ちょっぴり脅威も感じつつ読んでみましたが、やっぱりつまらなかった。

いくら文章が上手でもつまらない理由は、エピソードがないからです。

校長の挨拶文でいえば、その校長にしか語れないような話がないから、それらしいことは書いてあっても一般論でしかありません。

独自性を出して唯一無二の論文にするには、具体例なりエピソードが不可欠なのです。

■根拠は3つ出すことで説得力が増す

ただ論文の場合、自分の主張の根拠となる具体例が1つだけでは、説得力に欠けますよね。2つでもちょっと寂しい。

ある程度の長文で何かを論理的に説明しようと思ったら、3つ具体例を挙げることで説得力が増すと私は考えています。

中島博司『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(飛鳥新社)
中島博司『R80 自分の考えをパッと80字で論理的に書けるようになるメソッド』(飛鳥新社)

R80の因数分解法に慣れれば、R80の延長の感覚で、長文を書けるようになります。

大学入試の小論文どんと来い、ですね。

さらに大学でのレポートや試験、さらには社会人になってからもいろんな機会に活用することができるはずです。私も、雑誌から依頼された原稿を書く時などに使っています。

「R80なら書けるよね」
「R80で考えればいいんだよね」

こう言えるようになれば、大学入試の小論文もドンと来い、ですね!

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中島 博司(なかじま・ひろし)
元茨城県立並木中等教育学校校長
株式会社FCEエデュケーション参与。1959年生まれ。茨城県立土浦第一高等学校、筑波大学人文学類卒業。専門は日本考古学・日本史。茨城県の高校で日本史を教えていた時、オリジナル「スーパー日本史ノート」を開発。それを書籍化した『はじめる日本史 要点&演習』(Z会出版)はロングセラーになっている。校長就任の2015年から「アクティブ・ラーニング」について研究を始め、「R80」「TO学習」「AAL」を考案。全国各地で170回以上研修会講師をつとめている。定年退職後の2020年より、教員研修総合サイト「Find!アクティブラーナー」や振り返り力向上手帳「フォーサイト」に携わるとともに、日本の教育の未来に貢献するために活動している。

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(元茨城県立並木中等教育学校校長 中島 博司)

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