「それはない」悪条件の継続雇用を即捨て…損保営業一筋62歳が畑違いの結婚相談業で"成婚料ガッチリ"の満足度
プレジデントオンライン / 2024年1月20日 11時15分
※本稿は、金澤美冬『おじさんの定年前の準備、定年後のスタート 今こそプロティアン・ライフキャリア実践!』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。
■定年退職2年前より準備、定年後1年半で仕事ゲット
三井宏文さん(62歳/定年から2年経過)
■継続雇用をきっぱり捨てセカンドキャリア形成の実践へ
――定年退職後のセカンドキャリアを意識され始めたのはいつ頃だったのですか?
【三井】会社の定年は60歳なのですが、57歳のときに方向性を定めなくちゃいけないなと思いました。今思うと遅いですけど、それまでは「60歳がゴールだ」と思っているだけでした。もちろん、当初は継続雇用も視野に入れていたのですが、人事に聞いてみると「それはないだろう」という雇用条件でした。「継続雇用の間、副業をして新しいことにチャレンジしたい」と考えていましたが、人事部からの回答は「副業はいっさい認めない」と。しかも、継続雇用後は研修も必須ではなく、評価制度もない。さらに、報酬も下がると。
会社によっても条件は異なるとは思いますし、継続雇用を選択する人を否定するわけではありません。ちゃんと中身を理解して自分に合うのであれば、そういう選択も当然あると思います。
しかし、私の知る限り「ただ何となく継続雇用を選ぶ」というケースが多いように思います。ということは「別に評価されなくてもいいや」という人だけが残っていくわけですね。これは企業にとっても良くないことですし、私自身もそういう環境に身を置くのはイヤだなと思いました。こんなやりとりをしているとき、私は大阪に単身赴任で行っていたのですが、黙っていれば同じポジションのまま60歳まで過ごすこともできました。
しかし、様々な現実を知るうちに「まず東京に戻ろう」と思いました。人事に「東京に戻りたい」という話をしたら「降格になりますけど、良いですか?」と言われました。「全然問題ないです! 降格してください」と言って、念願叶って東京に戻りました。東京に戻ってからは「定年」「専業主夫」関連の本を60冊くらい読みました。
それらの中には「マイカーを手放そう」「年賀状もやめよう」という、社会を狭めていくことをすすめる本もありましたが、これは収入の問題を解消するためのもの。定年退職後は収入が減ることが普通ですから、「今までと同じ生活じゃダメよ」というもので参考にはなりましたが、直接的な定年後のプランのイメージは湧きませんでした。
そんな中『あゝ定年かぁ・クライシス』原沢修一(ボイジャー)という本に出会いました(第1章参照)。この本は定年前に思い描いていたことと、定年後のギャップを綴ったもので興味深く読みました。著者の原沢さんは58歳で早期退職され、キャリアコンサルタントの資格を取られたそうです。
この本を読むまでは、キャリアコンサルタントの中身もよく分からなく、そんな資格があることも知りませんでした。それで、まず私も真似をしてキャリアコンサルタントの資格を取ってみたのですが、この資格を持って定年後の就職活動をしてもうまくいきませんでした。何十社あるいは大学のキャリアセンターなどを受けても、年齢を理由に書類だけで「ごめんなさい」と断られるんです。
正直辛いものがありましたが、「会社には残らない!」という宣言をした以上、後戻りはできません。「もし仕事が見つからなければ、派遣でもパートでもバイトでも良い」と、そういった求人に応募することもありました。
ただ、それでもまだ救いだったのは「まとまった退職金がもらえる」「住宅ローンもそろそろ終わる」の二つです。それから、自分で積み立てた個人年金もありました。金銭的にすぐに仕事をしなくても良かったのは、長年サラリーマンをやってきたおかげです。ですので、もちろん会社に感謝もしていますし、それまでの自分の経験も良いことだったと自負しています。でも、それはそれ。「定年はゴールではなくスタートである」ということを、書類で落とされるたびに痛感する次第でした。
■セミナー講師+結婚相談業+人材紹介業の仕事を掴んだ
――「専業主夫」という選択もありましたか?
【三井】妻が35年間、国際交流の仕事に関わっていて、幼児から大学生までの子どもたちに英語劇を作ったり、発表に向けての合宿、海外へのホームステイのお手伝いや引率業務をしていました。
また、海外の子どもたちやシャペロン(引率者)のホームステイ受け入れのお手伝いなどもやっていました。こういった事務処理を全て一人で行っているため、この際、“専業主夫”として妻のサポートに専念することも考えました。
しかし、やはり収入が全くなくなるという問題と、せっかく勉強して取得した国家資格「キャリアコンサルタント」が活かせないということで、決心には至りませんでした。
――そんな中、プロティアンと出会うことになります。
【三井】相変わらず就職活動を行っていたのですが、ある人材紹介の窓口になってくれたのがプロティアン株式会社の前身である株式会社EDUCI代表の金澤美冬さんでした。金澤さんから初めてお電話をいただいた際、「できれば直接お会いして話がしたい」「自分の思いを直接聞いてほしい」と伝えました。書類で落とされるばかりで面接まで行けないから、「直接会っていただけないか」と。
金澤さんはそのことを覚えていてくれて、後日お会いすることになりました。そこで「おじさん向けセミナー」「人材紹介」をやりたいという気持ちが通じて、ビジネスパートナーとしてスタートすることになりました。
またBNI(「与える者は与えられる」の精神に基づくアメリカ発祥の世界的な異業種交流会)に加入した後、「結婚相談業」をしている池津和子さんと出会い、この仕事もスタートさせました。それまでは「結婚をした人から報酬として何十万円ももらうなんて……」と思うところもありましたが、実際にやってみると、お見合いの申込みや日程と場所のセッティングなどかなり神経を使う仕事だということが分かってきました。それだけに結婚が決まった場合には、本人から「お世話になりました」ということで気持ち良く成婚料をいただけるように頑張っていきたいと思っています。
――定年退職をして1年半でこれだけ仕事や人間関係の幅が広がったわけですが、手応えとしてはいかがですか?
【三井】「60歳からの就職先は極めて少ない」ことを知った一方で、自ら動いたことで様々な方と出会い、仕事につながったことは本当に嬉しいことでした。ですので、手応えは感じていますし、やはりアレコレと行動したことでつながったのだと考えています。
また、この1年は世界中が新型コロナウイルス感染の拡大で大きく変わりました。生活様式だけでなく現役の方の働き方も変わりましたし、この影響で失業したり、自殺した方も多数いると聞いています。そんな中でも収入を得て、充実した生活を送れていることは、本当に幸せなことだと思っています。
■ネットツールは、定年後のコミュニケーションに不可欠
――現役時代と現在で、三井さんの1週間のスケジュールはどう変化しましたか?
【三井】現役の頃は完全に週休2日でした。稀に休日出勤となったら「ええ⁈」とか思って、「絶対に代休を取ってやるぞ」と思ったりしていました(笑)。しかし、今は「丸1日休み」という日がなくなりました。ただ、朝はゆっくりできて、空き時間もあるので、その合間に趣味のランニングをするようなことはあります。
その代わりに「夜にZoomでプロティアンの会議がある」「BNIの定例会がある」みたいことがあるので、日々何かしらの用事が入っています。忙しく暮らしていますが、今の生活で一番良いなと思うのは「朝9時に会社に行かなくていい」ということです。会社というのはたいした用事もない日でも、朝礼がある9時には絶対に出勤しなければいけません。これがなくなったのは嬉しいですね。
もう一つ、良いなと思っているのがZoomです。リアルで移動時間を含めて考えると絶対に無理なこともありますが、Zoomなら時間の節約ができるわけです。
――三井さんはSNSにも積極的に取り組んでおられているようですが、こういったオンラインに抵抗はありませんでしたか?
【三井】ありませんでした。確かに苦手な方もいるかもしれませんが、周りとつながる意味でも必要不可欠だと思います。定年はゴールではなく新しい生活の始まりですし、SNSやZoomといったものは積極的に取り組んだほうが良いと思います。
■サラリーマンは井の中の蛙…定年後に向け調査&行動
――現役時代と現在とを比べてみて、どちらが楽しく過ごせていますか?
【三井】会社にいた頃が楽しくなかったわけではありません。「転職する」とか「会社を辞める」なんていうことを考えませんでしたから。会社自体もずっと成長していたし、自分のポジションも上がっていき、給料もそれによって増えていきました。それはそれで本当にありがたく、幸せなことでした。原則的に、保険会社の社員は大半が大卒です。
しかし、仮にBNIとかに参加してみると、もう学歴とか全然関係ないわけです。そういう人たちが頑張っていたり、自分で道を切り開いて仕事につなげている姿を見て「サラリーマンは井の中の蛙なんだな」と実感しました。
これまでにお話をした通り、定年後いきなり仕事を作るのは簡単なことではないです。でも、自分次第で様々なチャンスを引き寄せることはできるかもしれません。定年後の生活で悩まれている方、不安に思う方はじっくり考え、様々なリサーチをして、行動という意味でセミナーやコミュニティに積極的に参加してみると良いと思います。何か答えにつながること、仕事につながることがあるかもしれませんよ。
■キャリアコンサルタント金澤さんのひと言
三井さんと接していて思うのが、「いまさら始めても」という言葉を聞いたことがないということです。60代ともなれば人生も後半戦、そんな言葉を言ってもおかしくないのに決して言いません。「新卒で会社に入る」とか「女優になる」とか物理的にムリなこと以外は、全て挑戦しちゃうんだと思います。人はいつからでも挑戦できるし、むしろ定年をしたからこそ挑戦できる! ということです。そんな三井さんも定年前は個人事業主、起業なんて思いもよらなかったそうです。
でも、実際に再就職活動などの行動をしたことで、こっちの道ではなくてあっちの道! というのが見えてきて、新たな行動につなげたのです。決して受け身にはならず自律的な姿勢があるからこそだと思います。損保会社でのたくさんの転勤や趣味のマラソンで培ってきた人脈をセカンドキャリアに活かしているというのも、ライフキャリアの集大成という感じで素晴らしいなあといつも思っています。この本を出版するにあたり、特に原稿締切前、本当に助けてもらいました。私はボーっとしている方なので、いつもフォローしてくださいます。感謝です。
婚活倶楽部Just Meet-A
Note
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おじさん未来研究所 理事長、プロティアン株式会社 代表、キャリアコンサルタント
早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、三菱倉庫、JACリクルートメント、帝京短期大学(キャリアサポートセンター)等を経て2018年に転職エージェントとして独立。50代、60代の方が、重ねてきた経験、身につけたスキル、知識を活かし、自律的にライフキャリアを開拓するための支援をする。定年前の準備や定年後のセカンドキャリアを支援するため、おじさんLCC(ライフキャリアコミュニティ)を運営。著書に『おじさんの定年前の準備、定年後のスタート 今こそプロティアン・ライフキャリア実践!』(総合法令出版)、監修『定年後でも困らない! 誰でも稼げる小さな仕事』(宝島社)、現在、時事通信社で「令和おじさん進化論」連載中。その他、多数メディアから取材を受けている。
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(おじさん未来研究所 理事長、プロティアン株式会社 代表、キャリアコンサルタント 金澤 美冬)
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