「金曜日の午後3時に15分」やるだけで仕事が劇的に早くなる…サザエさん現象とは無縁な人の"4つの準備"
プレジデントオンライン / 2024年1月24日 15時15分
※本稿は、越川慎司『仕事は初速が9割』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■仕事の初速を上げるために「身軽」な状態を作っておく
初速を上げて、早く成果にたどり着くためには、これから始めるタスクの解像度を上げるだけでなく、前向きにタスクと向き合えるように感情をコントロールするなど、さまざまな準備が必要です。
まずは、何から手をつければいいのか?
本稿でお伝えするのは、「身軽」な状態を作るということです。
そのためのポイントを順に解説していきます。
新たなタスクを始める際には、ある程度は「身軽」な状態を作っておかなければ、早いスタートが切れなくなります。
現在のタスクを丸ごと抱えたままでは、作業のための時間が足りなくなり、すぐに身動きが取れなくなります。
誰にでも適正なキャパシティ(容量)がありますから、その容量以上に仕事を抱え込んでしまうと、効率が悪くなるだけでなく、すべてのタスクが未消化に終わる危険性が高まります。
大事なポイントは、「一つ仕事が増えたら、他の仕事を一つ減らす」という視点を持つことです。
常にこの視点を意識していれば、新たなタスクを始めるときだけでなく、日常的にムダな仕事を減らすことができます。
ビジネスパーソンの間でよく話題に上がる「週報」の作成などは、最初に検討すべきタスクといえます。
週報とは、1週間の行動を上司に報告するための「ウィークリーレポート」のことですが、面倒で時間がかかる作業のわりには、生産性はゼロです。
管理する側の上司は必要不可欠と思っているのかもしれませんが、実際にはあまり効果がなく、形骸化した習慣になっていることが珍しくありません。
会社や上司が週報を評価するのであれば、その作成に1時間とか2時間を費やしてもいいでしょうが、提出することが目的なのであれば、コピペなどを多用して5分で終らせる必要があります。
これが仕事を「減らす」ことにつながります。
■週の43%を社内会議に費やしている現状
初速が遅れてしまう原因の1つは、自分が「良かれ」と思ってやっていた作業が、実はムダだった……ということがよく起こるからです。
「社内の常識は非常識」というケースは意外にたくさんあります。
仕事というのは、常に「チェックの目」を持っていないと、次々と増えてしまう性質を持っていますから、気がついたら「残業沼」にはまり込んで、自宅に持ち帰って作業を続ける……という状態が、すぐにでき上がってしまいます。
私の会社では、仕事の効率を高めるために、「社内会議」を禁止しています。
17万3000人に行ったアンケート調査によって、現代のビジネスパーソンは1週間の労働時間の実に43%を社内会議に費やしていることがわかりました(図表1参照)。
週休3日制、1週間30時間の労働時間で働いていますから、社内会議に多くの時間を使ってしまうと、実作業に当てる時間が大幅に減ってしまいます。
「社内会議はあって当然」と思い込んでいる人も多いと思いますが、実際にはメールやチャットを使えば不都合はありません。
初速を上げるというと、作業を早く進めることばかりに目が向きがちですが、自分が抱えている仕事を冷静に見つめ直して、「やめる覚悟」と「手放す勇気」を持つことが大切です。
仕事を効率的に進めるためには、「引き算」が圧倒的な効果を発揮します。
「この仕事はゼロにできないか?」という視点を持って、ムダな仕事は可能な限り減らしていく工夫を続けることが、初速を早めることになります。
■1カ月分の時間を取り戻す方法
私の会社では、クライアント企業に対して、「毎週金曜日の午後3時から、15分だけ1週間の振り返りの時間を作る」ことを推奨しています。
スマホのカレンダーやスケジュール帳に予定として組み入れ、その時間が来たら、作業を中断して、コーヒーでも飲みながら1週間の仕事を冷静に見つめ直してもらっています。
「今週も会議が多かったな」とか、「提案資料が通らなかったな」など、その週の仕事に関するものなら、どんなことでもいいと思います。
たった15分のことですが、これを実施した結果を追跡調査すると、「ムダ」と気づいた仕事の13%を実際にやめられたことがわかりました。
わずかな数字と思うかもしれませんが、1週間の労働時間が37.5時間としたら、13%は約4時間に相当します。
年間50週以上はあるので、ムダな仕事をやめたら、1年で200時間も削減できることになり、丸々1カ月分の時間を取り戻すことができます。
その1カ月分の時間があれば、もっと多くのタスクを手がけられ、休むこともできますから、今よりも「身軽」な状態を作り出すことが可能になります。
「時間をかけてパワポで派手な資料を作ったけど、本当に効果があったのかな?」
「会議のための打ち合わせは、絶対に必要だったのだろうか?」
日常の仕事に関する問題点は、振り返ることによって、初めて浮き彫りになります。
あえて先に振り返りの時間を作っておけば、その時点での修正点が明らかになりますから、ムダを省けるだけでなく、道に迷うことがなくなります。
1週間を振り返ることによって、ムダな時間を見つけ出し、それを自分のスキルアップの時間として使えば、新たな可能性を切り開くことができます。
・身につけておきたい思考法を勉強する
・新たなITツールにチャレンジする
毎週末のわずか15分のことですから、あらかじめスケジュールに入れておけば、無理なく実践できるテクニックだと思います。
■自己否定に走らず、ポジティブに捉える
頑張って仕事をしている人ほど、振り返りは苦痛に感じるかもしれません。
私も含めて、自分のやっていることが間違っているとは思いたくなく、逆に自分を褒めてあげたい気持ちの方が強いかもしれません。
その思いは最前線で働いている人であれば、誰にでも共通してあると思いますが、先述の図表1で示したように、「社内会議」、「資料作成」、「メール」という仕事の約7割を占める3大タスクは、振り返って冷静に見つめ直してみないと、上手く機能しているのかどうか、判断することができません。
振り返ることを習慣にしてしまえば、苦痛よりも、その効果の大きさの方を実感できるようになり、「身軽」な状態を作り出すことができます。
ここで大事なのは、1週間を振り返ることによって、「自分は今まで、こんなムダなことを繰り返してきたのか……」と自己否定に走るのではなく、「これをやめれば、こんなことができるな」と自己効力感を高めて、ポジティブに捉えることです。
■仕事終わりに一日を振り返る習慣が理想
仕事のムダを見つけ出すことは、自分の失敗を探すことが目的ではありません。
働き方の改善点を発見して、それをスキルアップに活用し、仕事の幅を広げることが目的ですから、ネガティブな気持ちになる必要はありません。
「間違い探しゲーム」に挑むくらいの感覚で、前向きに続けることが大切です。
この「15分」という時間設定は、何度も実証実験を繰り返した結果、最も再現性が高かったことから得られたものです。
5分や10分では、スケジュールに組み込んでも時間が短すぎて見落としてしまうことが多く、30分や1時間では他のタスクの時間を圧迫してしまうため、現実的に継続が難しくなります。
スケジュール的にも、しっかりと振り返るという点でも、15分が適切という判断によるものです。
理想をいえば、毎日の仕事終わりに、その一日を振り返る習慣が持てれば効果が高くなりますが、それもまた大変な苦痛を伴います。
毎週金曜日の午後3時から15分だけその週を振り返ることが、無理なく続けられる時間設定だと思います。
■月曜日の動き出しを鮮明にイメージできる
この習慣を身につけると、漠然とした不安を解消して気持ちが軽くなるだけでなく、翌週の動き出しを早めることができます。
日曜日の夕方になると、翌週の月曜日が憂鬱(ゆううつ)に感じる「サザエさん現象」は、ビジネスパーソンの実に6割が経験しているといわれますが、その原因は、月曜日にやるべき仕事が明確になっていないため、漠然とした不安に襲われるケースがほとんどです。
夕方放送のTVアニメ『サザエさん』を観るから憂鬱になるのではなく、休日が終わることが寂しいのでもありません。
明日の仕事が明確化されていないから、それが心配や不安の原因となって、気持ちが重く沈んでしまうのです。
その心理を山登りに例えるならば、登るべき山はハッキリと見えているけれども、どのルートからどんな方法でアプローチすればいいのか、その登り方がわかっていない状況に似ています。
きっと大変だろうな、疲れるのかな、寒いのかな……と想像しただけで鬱々(うつうつ)とした気分になり、会社に行くのが面倒臭くなってしまうのです。
金曜日の午後3時に15分だけ振り返りをしておけば、「今週はこの部分が進まなかったから、来週はここから手をつけ始めよう」とか、「この2つの改善点を先にやっておく必要があるな」など、月曜日の動き出しを鮮明にイメージすることができます。
金曜日の段階で「旅のしおり」を作って、「何時までに何合目まで登るか?」というスケジュールができていれば、週明け月曜日の初速が早くなります。
こうした仕組みを作っておけば、不安なく休日を楽しむこともできるのです。
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株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)
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