これでダメ上司の下でもストレスフリーで仕事できる…成果を出し続ける人がやっている魔法の声かけ
プレジデントオンライン / 2024年1月25日 15時15分
※本稿は、越川慎司『仕事は初速が9割』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■成果を出し続けている人は、作業20%の段階で確認をとっている
本稿では、日常の仕事で大きなウエイトを占める作業について、初速を上げるためのポイントやコツを紹介します。
日常の作業には、自分では気づかなかったところに、仕事が遅くなる原因が隠れていますから、その作業に慣れていればいるほど、根本的な原因を見過ごしがちです。
これまでの仕事の進め方の、どこに問題があるのか?
日頃の働き方を、改めて見つめ直してみることが大切です。
提案書や報告書など、仕事で作成する資料にはたくさんの種類がありますが、すべての資料作りに共通する大事なポイントは、「作業興奮を適度に抑えること」です。
勢いに乗って最後まで仕上げてしまうと、次のような問題が後から追いかけてきます。
②「この内容で大丈夫か?」と自信が持てなくなる
③上司から修正指示が出ると、作業時間が増える
こうした不安や作業時間の圧迫が、作業の手を止めさせることになり、初速が遅くなる原因を作り出しています。
成果を出し続けている人は、進捗(しんちょく)状況が20%くらいの段階で、提出先に「こんな感じで進めていますが、何か修正すべき問題点はありますか?」と確認をとっています。
■上司からの差し戻しが74%減り、営業の成約率は22%アップ
この確認作業は「フィードフォワード」と呼ばれています。
でき上がったものに対して意見を聞くのが「フィードバック」であり、完成前に感想を聞いて確認するのがフィードフォワードです。
報告書や議事録などの社内文書であれば、提出先は上司になりますから、作業が20%くらい進んだら、上司のチェックを受けます。
提案書などの社外向けの文書の場合は、上司の確認の後に、提出先企業の担当者に確認を求めます。
この確認作業によって、「もっとデータを入れてくれ」とか、「グラフを増やしてほしい」、「できるだけページ数を減らしたい」などの意見が得られますから、それを反映させて文書を完成させれば、後からムダな修正をしなくて済むのです。
このフィードフォワードの作業を1万9000人のビジネスパーソンで行動実験したところ、上司からの差し戻しが「74%」減っています。
20代の若手社員に限定すると、「89%」も差し戻しが減少したのです。
提出先が取引先の企業である場合には、営業の成約率が「22%」上がっていますから、フィードフォワードは極めて効果の高いテクニックといえます。
■ダメな上司やチームリーダーほど、指示の出し方が曖昧
フィードフォワードとは、作業完了後ではなく、途中の段階で相手と「イメージ合わせ」をしておくことです。
作成する文書に対して、上司や取引先の担当者と思惑が異なることもありますから、「こんな感じで進めていますが、イメージは合っていますか?」と確認しておくことで、先に「正解イメージ」を知ることができます。
相手の要望を事前に把握できれば、差し戻しのリスクを回避したり、ムダな作業を省くことができるのです。
ダメな上司やチームリーダーほど、指示の出し方が曖昧です。
「わかりやすい資料を作れ」という漠然とした指示だけでは、どんな資料を作ればいいのかわからず、不安を抱えたまま作業をすることになります。
ダメな上司ほど、「あれ」、「これ」、「それ」、「どれ」などの不明瞭な指示代名詞を使いがちですから、早い段階でイメージを確認しておかないと、時間をかけて不必要に豪華な資料を作ることになります。
仕事の差し戻しというのは、上司にとっても、部下にとっても不幸なことです。
また一から作業をやり直す部下の負担はもちろんですが、終業時間の間際に差し戻しを命じることは、上司にとって相当な精神的負担になります。
管理職が取り扱う情報量は、10年前と比べて2倍から3倍も増えており、確認すべきメールやチャットや資料、文書は膨大な量になっています。
早い段階のフィードフォワードは、上司の負担を軽くすることでもあります。
大事なポイントは、作業を始める前に、「進捗20%くらいの段階で、1分だけチェックしてもらってよろしいですか?」と確認をとっておくことです。
事前に報告しておけば、上司の方も、「あの資料はどうなっているんだ?」と余計なマイクロマネジメントをしなくて済みます。
「進捗20%」→「1分だけチェック」であれば、お互いの行動ハードルが下がり、精神的な負担も軽くなるため、初速を早くすることに役立ちます。
■これから始める作業の「戦略」と「戦術」を明確化する
資料というのは、それを作成することが目的ではなく、作った資料で「相手をどう動かすか?」が一番の目的です。
その目的には、大きく分けて3つあります。
②「決定」を促す
③「協力」を得る
作成した資料によって、誰にどう動いてもらいたいのか?
資料を作る際には、目的を事前に把握してから、動き出すことが重要です。
私の会社では、この確認作業を「事後行動デザイン」と呼んでいます。
資料には、相手との「情報共有」という意味合いもありますが、そこで踏み留まったのでは、あまり効果は期待できません。
大事なのは、その共有した情報によって、「どうしてほしいのか?」を伝えることですから、先に事後行動デザインを設計しておかなければ、相手を動かすことはできないと考える必要があります。
成果を出し続けている人は、上司から仕事を受けたときに、「この提案資料は、本部長に決定してもらうことが目的ですよね?」と先にゴール地点をすり合わせています。
資料を作る目的を事前に把握しておけば、「そのためには、こんなデータが必要だ」とか、「こういう図表を入れなければ、理解を得られない」など、これから始める作業の「戦略」と「戦術」が明確になります。
「誰に対する、どんな目的の資料か?」を知らずに作業を進めると、独りよがりな内容になって、その効果を得られない確率が高くなります。
見当違いな方向に走ったり、余計な作業に追われてしまうのは、事後行動デザインを設計していないことに理由があります。
資料作成を依頼されたら、「この資料の目的は、こういうことですよね?」、「相手をこう動かせばいいんですよね」と確認しておけば、ムダな作業をカットして、初速を早めることができます。
■成果を出し続けている人のほとんどは2色で資料を作成する理由
社内会議や取引先に対するプレゼンなど、スライドを作成する機会が多くなっていますが、「どのくらいの枚数を作るか?」は難しい問題です。
その昔は「1スライド、1ストーリー」が鉄則でしたから、自社プロダクトのストーリーを伝えるために、多くのスライドを準備することが当然とされてきましたが、あまりにも長いスライドは、逆に迷惑と受け取られる傾向にあります。
現代では、「1分あたり1スライド」が主流になっていますが、企業の意思決定者826人にヒアリング調査をしたところ、「スライドの枚数と時間を、もっと減らしてほしい」という回答が78%もありました。
「スライドの時間が長すぎる」と答えた意思決定者に、理想的な時間を聞いてみた結果、その平均時間は「持ち時間×0.75枚」であることがわかりました。
持ち時間が20分であれば、これまでは20枚前後のスライドを用意するのが一般的でしたが、現代のビジネスでは、「20分×0.75枚」=15枚が適正ということです。
適正なスライド枚数を知っておけば、取引先に誠意を示すために、ムダに多くのスライドを作る必要がなくなり、作成枚数で悩むこともなくなります。
「このスライドは15枚で作ればいいんだな」とわかっていれば、それに合わせてコンテンツを用意すればいいのですから、自然と作業が早く進みます。
私の会社では、資料作成術についても、さまざまな行動実験を繰り返していますが、「コンパクトな資料の方が、人を動かしやすい」ことがわかっています。
効果的な資料には、3色以内のものが多く、成果を出し続けている人のほとんどは2色で資料を作成しています。
時間と労力を注いで7色も使ったカラフルな円グラフを作っても、それで人が動くことはまずありません。
資料を作る際には、カラーでごまかさないことも大事なポイントです。
■短い文面でコンパクトに要件を伝える
仕事の通信手段としては、メールよりもチャットの方が効率がいいと思います。
チャットであれば、コミュニケーションが完了するまでの時間が、メールよりも2~3倍は早くなります。
社内や先方の都合でチャットを導入できない企業もありますから、ここではメールに絞って初速を上げるためのテクニックをお伝えします。
メールのポイントは、「伝える」ではなく、「伝わる」を重視することです。
「伝える」ことにウエイトを置いてしまうと、説明の文章が長くなって、相手に意図が伝わり難いだけでなく、最後まで読んでもらえなくなる確率が高まります。
最悪の場合は、読まずにスルーされてしまうこともありますから、資料作成と同じように、短い文面でコンパクトに要件を伝えることが大切です。
■仮説を立てメールの回数を減らす
「メールに時間を取られて、仕事を圧迫している」というのは、ビジネスパーソンに共通する悩みのタネです。
その一番の原因は、「質問を送信」→「答えを受信」→「また質問を送信」→「また答えを受信」……という無限地獄のようなメールのラリーを延々と繰り返していることにあります。
ムダなラリーを断ち切るためには、相手に求めるアクションは一気に伝えることが大切です。
若手のビジネスパーソンには、「一問一答」というか「一メール一問」を習慣にしている人がたくさんいますが、これがラリーが延々と続く原因となっています。
「今回お聞きしたいことは3つです」と質問を先に書いて送れば、相手も返答しやすくなり、メール作成で貴重な時間を奪うこともなくなります。
メールの回数を減らすためには、ここでも仮説を立てることが役に立ちます。
「こういう質問をしたら、相手はこう返してくれるだろう」ということを先に考えて、それを導き出すために、質問項目を工夫すれば、メールにかかる時間を大幅に短縮することができます。
■成果が出ない人のメールに共通する特徴
メール件数の多い人は、管理職を含めてほとんどがスレッド表示(件名ごとにグループ分けされている表示方法)に設定していますから、やり取りの途中で件名を変えてしまうと、該当メールを探し出すのに時間がかかってしまいます。
送り先が上司の場合は、これまでの経緯を一覧で確認する必要がありますから、件名の途中変更はNGと考える必要があります。
件名は「顧客名」や「プロジェクト名」にしておけば、どの案件についてのメールなのか、すぐに判断することができます。
成果が出ない人のメールには、「クロスリバー越川です」というような件名をつけているケースが少なくありません。
それは件名ではなく、単なる自己紹介ですので、すぐにやめることが大切です。
■率先して要件を箇条書きにできるか
メールは文字数が増えるほど、最後まで読んでもらえる確率が低くなりますが、どんな件名であっても、冒頭の文面だけは閲覧率が高いことがわかっています。
この冒頭部分に、「何についてのメールなのか?」、「相手に求めるアクションは何か?」など、メールの重要ポイントを100文字程度でコンパクトにまとめておけば、相手の理解を早めることができます。
「先日は、ありがとうございました。表題の議事録について、明日5時までにご確認ください」
まずは冒頭で一番大事な要件をできるだけシンプルに伝えて、それ以外のことは1行空けて、次の段落に書いておけば、無用な混乱を回避できます。
だらだらとした長文が続くと、読むことが大変なだけでなく、返信にも時間がかかりますから、あくまでもシンプルな文面を心がけることが大切です。
メールの文面が長くなるのを防ぐためには、できるだけポイントを整理して、要件を箇条書きにすることが大切です。
簡潔な箇条書きにして番号をつけておけば、その後のメールや打ち合わせの際にも「メールの③番に書いた件ですが」と伝えれば、混乱なく情報交換ができます。
情報交換が多くなりそう案件ほど、箇条書きが効果を発揮します。
こちらが率先してメールの文面を箇条書きにすれば、相手も箇条書きで答えてくれますから、お互いのメールを読むスピードが早くなって、作業効率が高まります。
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株式会社クロスリバー代表
元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。
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(株式会社クロスリバー代表 越川 慎司)
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