特別な食事制限は必要ない…中年特有の「ぽっこりお腹」を直すために今すぐやるべきこと
プレジデントオンライン / 2024年1月28日 7時15分
※本稿は、犬飼奈穂『背中をゆるめると健康になる』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
■体の不調は「歳のせい」ではなく「背中」
肩や首がいつも重い。体があちこち痛む。すぐに疲れてしまう。ぐっすり眠れない。イライラすることが増えた。体型も崩れて下腹がポッコリ。着られない服が増えた。年齢を重ねるほどに増えていく、肩や腰などに慢性的な痛み、メンタルの不調やコンプレックス――。なんとか改善させたくて、高いお金を払って整体に通いつめたり、何軒も病院をはしごしたりしていませんか?
もし効果を感じていないのであれば、一度ご自身の「背中」に目を向けてみて下さい。
冒頭に挙げたさまざまな痛みや不調、体形の崩れは、「歳のせい」や「疲れがたまっているせい」ではなく、実は、知らないうちに「背中が固くなっている」ことで引き起こされていることが多いのです。背中が固い状態に気づかずに放置している限り、なかなか改善されません。
「背中が固くなっている」と言っても、すぐにはイメージしづらいかもしれません。
具体的には、「体の後ろ側の筋肉=背中の筋肉」が、こり固まっている状態を指します。多くの人は、日常生活で「体の前側」の筋肉ばかりを使っています。ものを掴む、パソコンやスマホの操作をする、料理をする、歩く……普段の生活では、残念ながら「体の後ろ側」の筋肉はほとんど動かせていないのです。
動かせていないと、筋肉は固くなります。ただ、肩や首の固さと違って、背中の固さはなかなか自分では気づきにくいかもしれません。背中に意識を向けること自体がそもそもあまりないからです。
■固くなった広背筋には要注意
日ごろは意識しない背中の筋肉ですが、人間の体の構造上、とても重要です。「広背筋(こうはいきん)」と呼ばれる背中の大きな筋肉の一つは、肩甲骨や上腕、骨盤などに付着しています。この広背筋が固くなると、あらゆる不調を引き起こすと言っても過言ではありません。
背中の周囲の筋肉が不自然に引っ張られるので、肩こりや巻き肩、腰痛、O脚などを誘発し、呼吸も浅くなります。筋肉が固くなると血流が滞り、リンパの流れも悪くなって、代謝も下がります。体はどんどん元気を失っていきます。
「背中が固くなっているなら、それこそ整体やマッサージに通えばいいのでは?」こう思われるかもしれません。確かにマッサージで一時的にはほぐれます。ただし、施術を定期的に続けない限り、すぐに元に戻ってしまいます。時間とお金を捻出し続けることになります。
■マッサージや整体よりも「ゆるめる」がいい
背中の固さは自分で改善できます。大切なのは、体の緊張をほぐして、背中の筋肉を「ゆるめる」ことです。ウォーキングスタジオを主宰し、これまで7000人以上の生徒さんに直接指導してきた中でたどり着いた私の結論が、これです。
かつては私自身も、厳しい食事制限と運動でリバウンドを繰り返してきました。背中が固い状態のまま、どんなにストイックに運動をがんばっても効果は出ませんでした。体形のコンプレックスは改善されず、肩こりや腰痛もひどくなる一方。でも、あることがきっかけで、体がどんどん変わっていくことを体感しました。それは「余計な力を入れずに、ラクに立ち、ラクに歩く」という姿勢と歩行の指導者との出会いでした。
ただラクに立ち、ただ心地よく歩くということを意識するだけで、こり固まっていた体がゆるみ、本当に軽くなっていったのは衝撃でした。悪化する一方だった腰痛が1カ月でなくなり、猫背や巻き肩も改善したのです。
それだけではなく、将来的には手術が必要と言われていた臼蓋(きゅうがい)形成不全や、足が痛くて歩けなかったモートン病も解消しました。首こりや肩こりも軽くなり、O脚も改善していくという大きな手ごたえを得ることができました。
■背中をゆるめることで得られる3つのメリット
背中がゆるむと、骨は本来の正しいポジションに戻ります。無理やり戻すのと違い、勝手に戻ってくれるのです。それまで動かせていなかった筋肉が動かせるようになります。自然と呼吸は深く安定し、血流やリンパの流れも改善し、さらに背中がゆるんでいく。この良いスパイラルの中で、体が整い、不調が改善していくのです。
私の教室の生徒さんも、「痛いのが当たり前だったのに数年ぶりに痛みのない体になれた」(50代・女性)、「坐骨神経痛もしびれもなくなって腰痛も解消された」(40代・女性)、「整体師さんも困ってしまうほど固かった体が、スムーズに動かせるようになった」(40代・女性)など、背中をゆるめたことで生活の質が大きく向上しています。
この記事では、背中をゆるめることで得られる3つの大きなメリット「呼吸の質が上がって血行が良くなる」「ぐっすり眠れる」「体重を減らさなくてもスリムになれる」について紹介していきます。
■浅く、速くなった呼吸を改善できる
背中が固くなると、呼吸が浅くなってしまいます。呼吸が浅くなると、肺に酸素を十分に取り込めないので、体内の酸素量が減少します。疲れやすさ、冷え、集中力の低下、自律神経の乱れなどを引き起こします。呼吸の質を上げるためには、「深い呼吸」が大切です。しっかり息を吐いて、深くたっぷりと吸う。このためには、筋肉をゆるめる必要があります。
呼吸について説明します。呼吸というと、「肺が広がったり縮んだりする」と考えがちですが、肺そのものが勝手に動いてくれるわけではありません。肺の周辺にある筋肉(呼吸筋)の動きによって、呼吸は行われています。
人の肺は、胸椎(きょうつい)や肋骨、胸骨(きょうこつ)、横隔膜などで囲まれた「胸郭(きょうかく)」と呼ばれる骨組み状の箱の中におさまっています。その内側の空間を「胸腔(きょうくう)」と呼びます。胸腔が広がったり縮んだりすることで呼吸活動が行われているのですが、胸郭を動かしているのが、呼吸筋なのです。
呼吸筋が固くなって動きが悪くなると、胸郭はうまく広がらなくなります。呼吸筋として代表的なものの一つに、肋骨の周辺にある「肋間筋(ろっかんきん)」があります。肋間筋は、肋骨を取り囲むようにぐるりと背中側にもついているので、背中の筋肉が固くなると、肋間筋のスムーズな動きをさまたげてしまい、肋骨がうまく広がらなくなります。
■鼻から吸って口からフーッとラクに吐くだけていい
そうすると、もう一つの代表的な呼吸筋「横隔膜」の動きも制限されます。こうして胸郭が広がらなくなると、無意識のうちに呼吸は浅く、速くなります。筋肉はピンポイントで固くなるのではなく、引っ張り合い、連動しています。背中にある、大きな筋肉をたくさん動かしてゆるめることで、胸まわりの筋肉や呼吸筋をゆるめることができるのです。
「背中をゆるめる」→「呼吸の質を上げる」という説明をしてきましたが、実は逆のことも言えます。つまり、深い呼吸を意識することによって、背中をゆるめることもできるのです。呼吸が深くなると、酸素の供給量が上がります。筋肉にも酸素がしっかりと届くので、筋肉の柔軟性が上がって動きやすくなります。呼吸によって背中の筋肉がゆるみ、筋肉がゆるむことでさらに呼吸が深くなる……。良い循環が生まれます。
呼吸というと「腹式呼吸」がイメージされますが、私は「胸腹式呼吸」をおすすめします。なぜなら、腹式呼吸の場合、息を吸い込む際に無理にお腹を膨らませる必要があるため、不自然な動作になってしまうからです。
胸腹式呼吸は簡単です。鼻から吸って口からフーッとラクに吐くだけ。肋骨全体が広がり、特に背中側が動いていることを意識しながら行います。1日10呼吸程度でいいので、毎日続けてください。
■寝返りしやすい体が睡眠の質を上げる
背中をゆるめれば、睡眠の質が上がります。背中がゆるむと深い呼吸ができるようになり、自律神経のバランスが整うことはもちろんですが、「寝返り」がしやすくなるためです。良質な睡眠に寝返りは欠かせません。
一般的に成人は、7~8時間の睡眠中に、20~30回ほどは寝返りをすると言われています。「ぐっすり深く眠る」と聞くと、ほとんど動かずに眠り続けることをイメージされるかもしれませんが、それは逆です。睡眠中、長い時間同じ姿勢のままでいると、筋肉や骨に負担がかかってしまいます。
そこで、無意識のうちに体をひねりながら寝返りを打つことで、筋肉を動かし、体への負担を減らしているのです。血行やリンパの流れを促進したり、体温調整を助けたりする働きもあります。
ところが背中が固くなると、寝返りが打ちづらくなります。背中や肩、腰などの筋肉が収縮して可動域が狭くなると、うまく体をひねることができないからです。寝返りは無意識の動きだからこそ、体の状態がダイレクトに反映されるのです。
年齢を重ねて筋肉の柔軟性がなくなったり筋力が落ちたりすると、寝返りの回数は減ると言われています。同様に、若くても、背中の筋肉が固いと寝返りの回数は減ってしまいます。悪い夢を頻繁に見る、夜中や明け方によく起きてしまう、朝起きても疲れが取れていない……。こんな悩みを抱えている人は、背中の筋肉が慢性的に緊張して、ガチガチになっている可能性が高いです。
背中をゆるめれば、寝返りで体は快適な状態になり、深く安定した呼吸とともにこわばりも解け、リラックスできるようになります。
■ぽっこりお腹の「おじさん体型・おばさん体型」を改善できる
特別な食事制限をしなくても、背中をゆるめるだけで人はやせることができます。ここで言う「やせる」というのは、単純に「体重が減る」ということではありません。洋服がサイズダウンする、お腹が引っ込む、スタイルが良くなるなど、「見た目が変わる」ことを指します。
そのカギは、体の「重心」にあります。ほとんどの人は、筋肉が固くなると同時に、重心が下がっているのです。人はただでさえ重力の影響を受け、常に上から押されています。さらに背中の筋肉が固くなると、縮まったまま伸ばせなくなるので、重力に負けて体の重心は下がっていきます。
重心が下がると、肋骨と骨盤の間のすきまが狭くなります。行き場を失ったお腹のお肉は前に出るしかなくなり、内臓も押しつぶされて前に出ます。だから体重が増えたわけではないのに、お腹がぽっこり出てしまうおじさん体型・おばさん体型になるのです。
逆に、重心を上げて肋骨と骨盤の間を広げると、体重を減らさなくても、自然に腹筋が使えて骨盤が立ちやすくなり、お腹はへこみます。「重心を上げる」と言っても、がんばって引っ張り上げる必要はありません。背中の筋肉をゆるめて、骨や内臓を本来のポジションに戻すことが大切です。
■老化や肥満のせいだとあきらめないでほしい
背中がゆるんで骨が正しいポジションに戻ると、見た目がガラリと変わります。太って見える原因は、やはり「背中の固さ」にあるからです。背中が固くなると、上半身も下半身も筋肉が内側に巻き込まれて、「前に前に」引っ張られるようになり、筋肉が前に広がって太ったように見えてしまいます。
老化や肥満のせいだとあきらめないでください。ただ正しい位置に戻るだけで、二の腕や太ももは細くなり、お尻は小さくなります。私の教室の生徒さんでも、3カ月でパンツがワンサイズダウンした生徒さんがたくさんいます。
もちろん特別な食事制限などはしていません。信じられないかもしれませんが、ただ背中の筋肉をゆるめるだけで、長年のコンプレックスが改善できるのです。
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ウォーキングコンサルタント
歩き方コーチ。「ORO(オーロ)ウォーキングスタジオ」代表。「オーラをまとう歩き方レッスン」主宰。愛媛県松山市出身。「正しい歩き方」ではなく、「心地よい歩き方」を探求し、これまでに述べ6000人以上に指導し、肩こり・腰痛、猫背、坐骨神経痛など、体が抱える数々の悩みを改善してきた。開催する講座やセミナーは1000回を超える。
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(ウォーキングコンサルタント 犬飼 奈穂)
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