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1泊70万円の外資系ホテルに、年間10泊2891万円の"新型別荘"まで登場…富裕層が「ニセコの次」と期待する場所

プレジデントオンライン / 2024年1月31日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nikola Spasenoski

ニセコは今や国内外の富裕層が集まるスキーリゾートだ。本州では白馬のブランド化も進む。金融アナリストの高橋克英さんは「ニセコや白馬の地価が加熱しているなか、富裕層の間では次の投資先となるリゾート地を探す動きがある。そこで注目されているのが、安比、妙高、水上の3つのスキーエリアだ」という――。

■ニセコに加えて白馬のブランド化が進んでいる

スキーシーズン真っ只中だ。日本を代表する世界的なスキーリゾートとして君臨する北海道のニセコでは、世界最高のパウダースノーを求め、豪州やアメリカ、フランス、香港やシンガポールなど数多くの富裕層で溢れている。

ルイ・ヴィトンの期間限定店やモンクレールを扱うセレクトショップもあり、パークハイアットやリッツ・カールトン、ヒルトンといった外資系ブランドホテルや飲食店などには、外国人スタッフも多く、会話は基本英語だ。インバウンドの訪問数や宿泊延べ数はコロナ前の賑わいを越えて、過去最高を更新する勢いだ。

本州においては、白馬のブランド化が進んでいる。10のスキーリゾートからなる「白馬バレー」は、長野冬季オリンピック(1998年)開催地でもあり、インバウンドにも知名度は抜群だ。円安による割安感もあり、外資系ラグジュアリーブランドホテルの進出も続いている。

シンガポールのカノリーホテルズは、2022年12月、「カノリーリゾーツ白馬」を開業した。1日1組限定バトラー付きプライベートヴィラの広さは400m2を誇り、食事は、内廊下で繋がる隣接のステーキレストランや、ミシュランの星を持つ都内予約困難店の鮨職人による出張料理を堪能することもできる。ピーク時には例えば1泊素泊まりでも70万円(※筆者が公式サイトから調べた時点での金額)と高額ながら、今スキーシーズンはほぼ予約で埋まっている盛況ぶりだ。

この先も、外資系ラグジュアリーホテル&ホテルコンドミニアムの「バンヤンツリー」や「ラヴィーニュ白馬 by 温故知新」の開業が予定されている。

■「安比、妙高、水上」に注目している

ニセコでも、外資系ラグジュアリーホテルやホテルコンドミニアムの建設ラッシュが続くものの、地元の倶知安町では2023年10月、リゾート開発に関する規制を見直し容積率規制や高さ制限などを強化した。白馬においても、ホテルコンドミニアムや別荘新設で地価も上昇するなか、過熱化で不動産価格の割高感もみられ、ゲレンデの混雑も進む。こうした状況下、「第二のニセコ・白馬」として注目されるスキーリゾートがいくつかある。

①パウダースノーに代表される雪質やゲレンデのスケール②新幹線や空港など交通の便③温泉や飲食店街など街並みといった要素から、北海道では富良野、ルスツ、本州では、安比、蔵王、苗場、志賀高原、妙高、水上、野沢温泉、軽井沢などがその候補地の1つとして挙げられよう。

筆者は、そのなかでも、安比、妙高、水上の3エリアを次なる世界基準のラグジュアリースキーリゾートの候補地として注目している。

いずれのエリアでも、外資系資本や国内大手資本によるラグジュアリーホテルや別荘の開発が進んでおり、首都圏の国内富裕層から華僑など海外富裕層までを主要ターゲットにすることで、日本に新たなる世界水準のスキーリゾートが誕生する予感が感じられる。

■全寮制インターナショナルスクールも開校

<安比高原スキーエリア>

最初の候補地は安比高原スキーエリアだ。東北新幹線で東京駅から最速で2時間11分の盛岡駅から車で約50分に位置する岩手県八幡平市のスキーリゾート「安比高原スキー場」は、全21コースあり、総滑走距離は4万3100メートルだ。ゲレンデの雪質は「奇跡のシルキースノー」とも称されている。レモンイエローのホテル、「APPI」のロゴ、うさぎなどのグラフィカルなデザインが、バブル期には一世を風靡(ふうび)した。

安比高原スキー場
岩手ホテルアンドリゾートプレスリリースより
安比高原スキー場 - 岩手ホテルアンドリゾートプレスリリースより

2022年8月には、映画「ハリー・ポッター」の撮影地としても有名な450年の歴史を持つ英国名門校「ハロウスクール」をモデルにした、「ハロウインターナショナルスクール安比ジャパン」が開校している。日本の小学校6年生~高校3年生にあたる子供を対象とした全寮制の学校となる。授業料や寮費などを含めて、学費は年間約1000万円になるという。

■3万3000円のリフト券に、ラグジュアリーリゾートホテルの誕生

安比では、既存のスキー場施設を生かしながら、リニューアルや新サービスの導入が進められている。例えば、リフト券では、今シーズンから「BLACK PASS」が導入され、一日券3万3000円とかなり高額ながら、リフトやゴンドラの優先乗車は無論、フードコートにも優先レーンや優先席を確保。オープン前の新雪ゲレンデを独り占めしたり(ファーストトラック)、専用のキャット(雪上車)の利用も可能だ。

レンタルステーションもリニューアルされると共に、「Executive Lounge」も新設され、サロモンやアトミックなどブランドモデルのレンタルの他、ブーツフィッティングには、カスタムインソールも導入できる。なお、3点セット(板・ブーツ・ポール)一日の料金は1万2000円とこちらもかなり高額だ。将来的には、ゴンドラなどの設備のリニューアルも予定されているという。

東北初の外資系ラグジュアリーリゾートホテルとして2022年2月に開業したANAインターコンチネンタル安比高原リゾートは、旅行業界のアカデミー賞とも称される「ワールド・ラグジュアリー・ホテル・アワード」を2年連続受賞(2023年10月時点)している。同ホテルは岩手ホテルアンドリゾートがIHGホテルズ&リゾーツと契約して開業したものだ。

安比にて同ホテルなど3ホテルを所有・運営する岩手ホテルアンドリゾートは、安比高原を「観光・教育・健康」の3要素が調和した、定住者1万人のグローバルな街にすることを目指す「安比バレー構想プロジェクト」を2020年に発表しており、外資系ブランドホテルの開業や、インターナショナルスクール開校に続き、商業施設、定住型別荘などを整備していくという。

ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート
岩手ホテルアンドリゾートプレスリリースより
ANAインターコンチネンタル安比高原リゾート - 岩手ホテルアンドリゾートプレスリリースより

■「シャンパンスノー」を楽しめる妙高スキーエリア

<妙高スキーエリア>

次なる候補地は、妙高スキーエリアだ。妙高スキーエリアは、主に9つのスキー場(赤倉観光リゾートスキー場、赤倉温泉スキー場、妙高杉ノ原スキー場、斑尾高原スキー場、タングラムスキーサーカス、アルペンブリックスキー場、関温泉スキー場、ロッテアライリゾート、休暇村妙高ルンルンスキー場)から成る。標高差、コース数、リフトの数、最長滑走距離などで日本最大級のスキーエリアである。

妙高は「シャンパンスノー」と呼ばれる雪質を誇り、世界屈指の豪雪地帯のため、年間降雪量16メートルを誇り日本のスキー場の降雪量ランキングでは常に上位にある。東京から車で約3時間、東京駅から妙高高原駅までは約2時間半だ。

東京駅
写真=iStock.com/StockByM
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/StockByM

■コロナ禍前からオーストラリア人を中心に人気だった

西武ホールディングスは2023年11月、妙高杉ノ原スキー場をシンガポールの不動産投資ファンドのペイシャンス・キャピタル・グループ(PCG)に売却した。

シンガポール政府投資公社(GIC)の日本支社代表を務めたケン・チャンPCG代表によると、妙高エリアに、米国のベイルやフランスのクーシュベルのような世界的なラグジュアリースキーリゾートを創るという。PCGはすでに妙高高原周辺地の他、2022年には斑尾高原スキー場も買収済みであり、妙高杉ノ原スキー場と斑尾高原スキー場を中心とした一体的な開発が可能となる。投資総額は、約10年で約14億ドル(2100億円)を見込んでおり、2026年までに、外資系ブランドホテルを新設する計画だ。

日本経済新聞(2023年10月28日)によると、シンガポールのソネバホールディングスは、2027年にも日本でヴィラタイプのリゾートホテルを開業する計画だという。妙高市でも土地を取得する計画であり、スキーを楽しむ海外富裕層を主要顧客に想定し、1泊25万円以上を見込むという。

妙高は、コロナ禍以前から、既にオーストラリア人を中心に人気のスキーリゾートとなっており、外資系資本の相次ぐ投資により、ブランド化の流れが加速しそうだ。

■東京からヘリコプターでスキー場へ

<水上スキーエリア>

ラストを飾る候補地は、群馬県みなかみ町の水上スキーエリアだ。みなかみ町観光協会によると、水上には主に9つのスキー場(ノルン水上スキー場、水上高原スキーリゾート、藤原スキー場、群馬みなかみほうだいぎスキー場、奥利根スノーパーク、ホワイトバレースキー場、みなかみ町営赤沢温泉スキー場、谷川天神平スキー場、苗場スキー場)がある。

東京からのアクセスの良さが特徴で、車で都心から約2時間半、新幹線とバスで東京駅から約1時間半で到着する。

水上エリアの雪質も非常にいい。日本海側で発生した湿った空気が山にぶつかり、みなかみ町に届くころには乾いた上質なパウダースノーとなるからだ。妙高エリアとともに、水上エリアは日本屈指の豪雪地域であり、パウダースノーを存分に楽しめる。

2023年12月には、Space Aviationが、スキーシーズン限定で、東京ヘリポート~群馬・みなかみ間を、最短48分で移動可能となるチャーターフライトの手配を開始している。6人乗りの中型機での日帰り往復で117万6000円+駐機代3万円だという。渋滞知らずのヘリコプターでスキー場にアクセスできる、ヘリタクシーの提供が始まったのだ。

AIROSでも東京ヘリポートと水上温泉を結ぶチャーターフライトを提供しており、民間企業の動きには期待したい。

水上エリアには新たなヘリポート設置も検討されており、おカネより時間が大切だったりする富裕層の、水上エリアにダイレクトアクセスしたい、東京から最短で移動したいといったニーズを叶えることになろう。

群馬みなかみほうだいぎスキー場ヘリポート
Space Aviationプレスリリースより
群馬みなかみほうだいぎスキー場ヘリポート - Space Aviationプレスリリースより

■「シェア購入できるハイエンドな別荘」も進出

2021年9月には、まちづくり推進のため、オープンハウスグループ、みなかみ町、群馬銀行、東京大学が、産官学金包括連携協定を締結し、水上温泉街の廃虚の取り壊し、土地の有効活用、群馬みなかみほうだいぎスキー場・キャンプ場の経営再建、新たな関係企業との事業誘致、観光イベントの企画運営などを展開している。

その一環として、オープンハウスグループは、新しいタイプのリゾート投資スタイルとなる「NOT A HOTEL MINAKAMI」の共同開発を行っている。

NOT A HOTELの特徴は、世界的な建築家やクリエーターが手掛けるデザイン性と快適性を両立させたハイエンドな別荘を、毎年10泊分から必要なだけシェア購入ができ、使わない期間はホテルとして貸し出し運用できる点にある。日々の清掃や建物の維持管理などは全てNOT A HOTELが行うため、別荘にありがちな維持・管理の手間も一切ないという。また、いわゆるリゾート会員権ではなく、「所有権」の購入となるため、減価償却や相続などが可能な「資産」として保有できるだけでなく、一定期間経過後は売却も可能である。

NOT A HOTEL MINAKAMI
画像提供=NOT A HOTEL
NOT A HOTEL MINAKAMI - 画像提供=NOT A HOTEL

さらに、北軽井沢や那須、福岡や青島、石垣島、瀬戸内など、全国に広がるNOT A HOTELとも相互利用が可能である。

リゾートホテル会員権やホテルコンドミニアムとは違う、ネットワークと拡張性がある新しいタイプのリゾート投資スタイルといえよう。

■インバウンド富裕層への認知度が高まるかが勝負だ

なお、NOT A HOTEL MINAKAMIは、2025年8月開業予定だが、都心や北関東在住の経営者層、30代後半から50代を中心に販売は好調だ。都心からのアクセスの良さ、温泉・プール・サウナがプライベートで利用できる設備や非日常的な眺望が決め手となっているという(オープンハウス ウェルス・マネジメント事業部)。ちなみに、年間10泊の利用の場合は2891万円、同30泊の場合は7948万円、一棟(360泊/年)の場合は9億5370万円で販売されている。

この先、水上エリア内での共通リフト券の販売やスキー場間の移動手段の確保、統一されたホームページの作成や海外プロモーションの強化などによって、富裕層を中心としたインバウンドへの認知度が高まってくれば、水上エリアに外資系ラグジュアリーホテルやホテルコンドミニアムの新設といった話も増えてくることになりそうだ。

■ニセコや白馬が高い今、次の投資先を探す動きがある

言うまでもなく、将来性がある割安な土地に投資することは、不動産投資の基本であり、スキーリゾート地であっても同じだ。ニセコや白馬の地価が過熱し割高となることで、次のリゾート地、投資先を探す動きが水面下で進んでいる。

地元にとっても、外資系か国内資本かにかかわらず、既存のスキー場やホテルの設備などがリニューアルされ、投資や消費が増えることで、雇用や税収が増えれば恩恵のある話だ。

今回取り上げた3つの候補地である、安比や妙高、水上においても、この先、ニセコや白馬のように、別荘やホテルコンドミニアムなど良質な不動産の投資機会が供給され、国内外の投資家や富裕層が集まることで、ブランド力が更に高まり、資産価値の上昇により、更なる開発や投資が行われるという、投資が投資を呼ぶ好循環が生まれる可能性があり、注目していきたい。

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高橋 克英(たかはし・かつひで)
株式会社マリブジャパン 代表取締役
金融アナリスト、事業構想大学院大学 客員教授。三菱銀行、シティグループ証券、シティバンク等にて銀行クレジットアナリスト、富裕層向け資産運用アドバイザー等で活躍。2013年に金融コンサルティング会社マリブジャパンを設立。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スター・ウォーズ」の著名コレクターでもある。1993年慶應義塾大学経済学部卒。2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。日本金融学会員。著書に『銀行ゼロ時代』(朝日新聞出版)、『いまさら始める?個人不動産投資』(きんざい)、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(講談社)、『地銀消滅』(平凡社)など多数。

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(株式会社マリブジャパン 代表取締役 高橋 克英)

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