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新NISA「成長投資枠」をどう使うか…投資家が「業績安定・高利回り・値上がり期待の一石三鳥」と推す金融商品

プレジデントオンライン / 2024年2月7日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/jxfzsy

新NISAの成長投資枠では何を選べばいいのか。個人投資家の山口貴大さんは「40代後半以降ならインカムゲインの確保を目指したほうがいい。おすすめは米国の高配当株ETFだ」という――。

※本稿は、山口貴大『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■成長投資枠をどう活用するかで資産運用が変わる

新NISAのつみたて投資枠600万円(年間120万円)では、バランス型ファンドや日本国内の株価指数に連動するインデックスファンドを買う選択肢もありますが、やはりS&P500か全世界株式のインデックスファンドにつみたて投資するのが最適解です。

しかし、成長投資枠に関しては選択肢がたくさんあるため、逆に迷ってしまう人も多いはずです。

新NISAの投資枠1800万円の3分の2を占める成長投資枠をどう活用するかで、資産運用の中身も結果もガラッと変わってくるのです。

まだ20代、30代の資産形成期で、何も考えずほったらかしで「とにかく資産をじっくり、大きく増やしたい」という人は、成長投資枠でもつみたて投資枠同様に、分配金再投資型のインデックスファンドに投資するのがベストの選択肢でしょう。

もし、新NISAの運用益を日々の生活費として使いたいなら、成長投資枠ではS&P500や全世界株式に連動した国内ETFを購入するのもいいでしょう。国内ETFなら、分配金を外貨(主にドル)から日本円に両替したり、二重課税の確定申告をしたりする手間がかからないので便利です。

一方、長期運用を志向するなら、運用コストが日本の投資信託やETFより安い米国ETFを購入するのも選択肢です。この場合、ドルで支払われた分配金を使って、米国の個別株や、さまざまなインデックス(「ナスダック100」など)に連動するものなど、つみたて投資枠では買えない投資対象に連動した米国ETFに投資して、資産運用の幅を広げてみるのがいいでしょう。

■40代後半以上なら米国高配当株ETFという選択肢もある

成長投資枠の投資候補として、インデックスファンド以外に私がおすすめしたいのが米国の高配当株ETFです。

インデックスファンドと米国高配当株ETFの、どちらがいいかは、あなたの年齢にもよります。

まだ20代、30代で投資できる余裕資金が少ない人は、やはりS&P500や全世界株式に連動するインデックスファンドで資産を複利運用して、時間をかけて大きく増やしていくことを目指したほうがいいと思います。

一方、すでに40代後半から50代で老後が間近、もしくはすでに60代、70代で年金以外に収入がない方にとっては、資産自体を増やすより、保有する資産からより多くの現金を受け取って豊かな老後生活のために使うことのほうに、投資の重点も移っているはずです。

そういう方は、成長投資枠の上限1200万円を米国高配当株ETFで運用して、豊富なインカムゲイン(現金収入)を確保する選択肢もあります。

■老後生活の理想は「年金+分配金>生活費」

労働収入がなくなったあとの老後生活の理想は、「年金収入+新NISA口座の高配当株からの年間配当収入>毎年の生活費」という状態です。

もし、年金と株主配当金や分配金収入だけで日々の生活費をまかなえているとしたら、もう株価の上下動、すなわち投資資産の評価損益を気にする必要がありません。

年金と資産運用から得られるインカムゲインだけで生活できれば、投資元本を取り崩して目減りさせることなく、優雅な老後が過ごせるでしょう。

むろん、世界的な大不況が来れば、投資している高配当株や高配当株ETFの株主配当金や分配金が減額されるリスクはありますが、より景気後退の悪影響を受けやすいインデックスファンドやグロース株に比べればローリスクといえます。

■日本の大企業の高配当株なら減配リスクを避けられる

高配当株からのインカムゲインを日本円で受け取りたいという人は、日本の高配当株に投資するのもいいでしょう。

たとえば、時価総額1兆円以上の大企業の中から配当利回り4%以上という条件でスクリーニングすると、図表1のような銘柄がピックアップされました。

【図表1】日本の高配当株(時価総額1兆円以上・配当利回り4%以上)
『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)より

業績や財務が安定した大企業の高配当株なら、業績悪化による減配(配当金が減ること)リスクを避けられる可能性も高いでしょう。

2023年3月末には、日本株市場を運営する東京証券取引所(東証)が、株価が低迷して会社の解散価値を下回っている企業に対して、株価を上げるための努力をするよう、異例の要請を行いました。

これを受けて、PBR(株価純資産倍率)が1倍を割り込んでいるような割安な高財務企業は、相次いで増配や自社株買いの方針を打ち出し、株価を引き上げるような努力を始めています。そうした割安高配当株を狙うのもいいでしょう。

■おすすめは一石三鳥の米国高配当株

ただし、業績が安定していて、配当利回りが日本株以上に高く、しかも株価の値上がりにも期待できるという一石三鳥を目指すなら、日本株以上にスーパー高配当株の多い米国高配当株に投資することを私はおすすめしています。

米国株の場合、毎年株主に支払う配当金を引き上げる増配を行い、その期間がすでに数十年に達している連続増配株もたくさんあります。

図表2は時価総額500億ドル(7兆円)以上、配当利回り4%超で、しかも連続9期以上の増配を続けている米国の有名企業をピックアップしたものです。やはり、世界中の誰もが知っている米国高配当株のほうが日本株以上に安心感があります。

【図表2】米国高配当株(時価総額500億ドル以上・配当利回り4%超)
『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)より

ただ、いかに米国を代表する高配当株といえども、あまり銘柄を絞ってしまうと、投資した企業の業績が悪化したり、業種自体が古びて人気がなくなったりすると、株価が大きく下落して、配当金も減配されるリスクがあります。

やはり、超優良な高配当株といえども、分散が大切です。

たとえば、業種の違う米国の高配当株10社程度を選び、成長投資枠1200万円を10分割して120万円ずつ投資するのもいいでしょう。ただ、個別株投資の場合、決算発表をいちいちチェックしたり、その企業の業績や財務、株価の推移を調べたりして、自分自身で銘柄入れ替えを行う必要があります。

その点、米国は、たくさんの優良な高配当株を集めた高配当株ETFの品ぞろえが日本のETFに比べて圧倒的に充実しています。米国高配当株ETFの中には、10兆円近い巨額の純資産総額を誇るものもあり、経費率も0.0何%台と安く、投資ニーズにあわせたETFを選ぶことができます。

何よりETFの基準価額がずっと右肩上がりで上昇し続けているので、高利回りの分配金をもらいながら、値上がり益にも期待できる点が大きな魅力です。

■高配当株ETF選びでは保有期間を意識することが大切

では、HDV、SPYD、VYMという米国高配当株ETF3銘柄のうち、どれを選べばいいのでしょうか。

山口貴大『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)
山口貴大『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(KADOKAWA)

単純に分配金利回りが4%台後半~5%台前半と高いSPYDを選びたいところですが、高配当株ETF選びでは「どれぐらい、そのETFを保有するか」という保有期間を意識することも大切です。

保有期間が長いほど、組み入れ銘柄の直近の配当利回りより、業績や将来性、ETFの増配率(分配金の毎年の増加率。数年間の平均値を見たほうがいい)に注目してETFを選んだほうがトータルリターンの向上につながるからです。

2023年7月のHDV、SPYD、VYMの分配金を加味した基準価額の上昇率をみると、VYMが115%(16年1月比)と最も高く、次いでSPYDが89%、HDVが86%となっており、VYMのパフォーマンスがかなり優秀です。

ただ、より短期的な2021年~2022年のパフォーマンスを比べると、この時期は下げ相場で高配当株に人気が集まったこともあり、分配金利回りが高いSPYDの成績が最もよくなっています。そう考えると、

●2年以下の短期保有なら分配金利回りが5%前後のSPYD
●5年以上の長期保有なら分配金利回りは3%台なものの基準価額の上昇に期待できるVYM

というのが銘柄選びの参考基準になります。

■HDV、SPYD、VYMそれぞれのメリットとデメリット

VYMのメリットは組み入れ銘柄が462銘柄に達していて分散効果が高いこと、毎年、分配金が増額されていて、安定した増配率に期待できること、さらに基準価額が3つのETFの中で最も上昇していることが挙げられます。

運用開始直後の分配金利回りは3%台と低くなります。

しかし、投資期間が長くなると、毎年、分配金が増額されていくので、自分が購入したときの投資元本に対する分配金利回り(ここでは「自分利回り」と呼びます)がどんどん向上していきます。

これこそ、増配率が高いETFの魅力です。自分利回りの向上だけでなく、増配を好感した基準価額の値上がりによるキャピタルゲインも見込めます。

一方、SPYDのメリットは、とにかく投資開始時点の分配金利回りが5%台前後と高いこと。手っ取り早く、高額な分配金が欲しいという要求を満たしてくれます。

SPYDの組み入れ銘柄は80銘柄で、分散効果は普通レベルといえるでしょう。ただ、組み入れ銘柄の多くは高配当ではあるものの成長性が乏しいため、増配は期待薄。分配金込みのトータルリターンはHDVよりわずかに高いものの、基準価額自体の上昇はあまり見込めません。

HDVはVYMとSPYDの中間に位置するようなETFです。組み入れ銘柄は75銘柄で、分散効果が低い点が難点かもしれません。そこそこ安定した増配に期待でき、しかも投資開始時点の分配金利回りが通常はVYMより少し高い点が魅力といえます。

私個人としては、銘柄分散効果が高く、安定した増配にも期待できるVYMを一番おすすめしたいです。

少しリスクは高くなりますが、HDVも悪くはありません。

投資開始時点でできるだけ高い分配金利回りを求めるならSPYDもあり、というのが結論です。

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山口 貴大(やまぐち・たかひろ)
Financial Free College代表
ネット関連会社などに勤務後、独立してサービス業関連会社を興す。2018年に売却、その売却益を米国株を中心に運用する。2019年、YouTubeチャンネルを開設し、「ライオン兄さんの米国株FIREが最強」を運営中。2020年、金融・起業のマネースクール「Financial Free College」を設立。SNSでは「ライオン兄さん」名義で活動。著書に『年収300万円FIRE 貯金ゼロから7年でセミリタイアする「お金の増やし方」』、『【新NISA完全攻略】月5万円から始める「リアルすぎる」1億円の作り方』(ともにKADOKAWA)がある。

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(Financial Free College代表 山口 貴大)

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