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新NISAは「オルカン一択」と決めつけてはいけない…「全世界への分散投資」を選んではいけない人の条件

プレジデントオンライン / 2024年1月31日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Nyantanan

今年1月から新NISAがスタートした。独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)の五十嵐修平さんは「オールカントリーは分散投資の王道だが、だれにでもお勧めできるというわけではない。途中の値動きが大きすぎると不安になる、定期的な収入が欲しい、といった場合は別の選択肢を考えたほうがいい」という――。

■旧NISAは「このまま放置」でいいのか

2024年から新たにスタートしたNISA制度(以下、新NISA)。非課税期間が無期限になり、2023年までのNISA(以下、旧NISA)とは別に、一人あたり1800万円の「生涯投資枠」が設けられました。

「つみたてNISA」の非課税投資上限額は年間40万円、「一般NISA」では年間120万円でしたが、新NISAでは年間120万円の「つみたて投資枠」と年間240万円の「成長投資枠」をフル活用することで、最大年間360万円の投資が可能になりました。

投資する側にとってより魅力的な制度になったことは間違いありませんが、旧NISAで運用してきた金融商品の取扱いについて気になっている方も多いと思います。そこで、今回は旧NISAで保有している商品はどうすればいいかについて解説します。

■いますぐ旧NISAを売却すべき人とは

旧NISAではロールオーバー(NISA口座の非課税期間が終了後、翌年の非課税投資枠へ移管すること)が可能でしたが、2024年以降はロールオーバーができなくなりました。

そのため、旧NISAで保有していた商品が新NISAに切り替えられることはなく、5年間(つみたてNISAの場合は20年間)の非課税期間の終了後は課税口座に自動的に払い出されるので注意しましょう。課税リスクを避けるためには、それまでに売却しておくことをお勧めします。

たとえば、2019年に旧NISA(一般NISA)で100万円分の投資信託を購入しており、23年末時点の評価額が150万円であれば、150万円が取得価格となり、課税口座に払い出されます。将来の売却時に金額が150万円を超えていれば、超えた部分に対して約20%の税金がかかります。

もし、新規資金で新NISAを年間360万円の限度枠いっぱいまで運用する予定がない方は、いったん売却して新NISAの成長投資枠で買い直すと無期限で非課税の恩恵を受ける事ができるので、非課税終了を待たずに買い直したほうが良いでしょう(ただし、旧NISAと新NISAでは投資可能な金融商品に違いがあります)。

また、年末時点の評価額が80万円となっていた場合は80万円が取得価格となりますので、売却時に買付金額の100万円に戻ったとしても、20万円が利益とみなされ課税されてしまいます。そのため、値下がりしている場合も早めに新NISAで買い戻すほうが良いと言えます。

ただし、新規資金で年間最大投資枠360万円を5年間で使い切るという考えであれば、旧NISAはそのままにしておいて問題ないでしょう。

■「新NISAに自動で引き継がれる」は間違い

すでに旧NISAを運用していた方は、24年1月に自動的に新NISAの口座が開設されているので開設の手続きは不要ですが、前述した通り、保有商品が自動的に新NISAに切り替わることはありません。旧NISAの保有商品の売却手続きを行い、新NISAで新たな買い付け手続きが必要になります。

投資枠の拡大に合わせて金額や商品を変更する場合も、当然手続きをしなければなりません。「もともとNISAをやっていたから、何もしなくてもいい」と考えている方は注意が必要です。

つみたてNISAで積立設定していたものはつみたて投資枠に自動的に移行され、一般NISAで積立設定していた場合は成長投資枠に自動的に移行されます。積立運用であればつみたて投資枠を利用し(対象銘柄は決まっています)、成長投資枠は投資信託の一括購入や株式の買付用として残しておくなど、異なる使い方をすることで選択肢が広がってきます。

ブタの貯金箱と増えるコイン
写真=iStock.com/marchmeena29
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marchmeena29

金額については個人によって異なりますが、旧NISAの売却金額分を成長投資枠で一括購入しても良いですし、値動きが気になる場合は積立設定で分けて購入しても良いと思います。

■つみたて投資枠はじっくりこつこつ

旧NISAから切り替える場合も、新規資金で運用する場合も大切なのは「非課税金額が毎月30万円まで増えたから○○万円積立しよう」だとか、「YouTubeでおすすめされていたから」など周りの情報に合わせて決めるのではなく、全体資産のバランスやご自身のリスク許容度などを考えた上で決めることです。

つみたて投資枠は、旧つみたてNISAと同じ金融庁の基準を満たした投資信託、REIT(不動産投資信託)などが投資対象で、成長投資枠は、上場株式投資信託、投資信託、REITなど旧一般NISAと同じ金融商品(①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型の投資信託等を除外したものに限定されます)が対象です。

簡単にお伝えすると、つみたて投資枠の使い方は従来の「つみたてNISA」と同じような使い方が良いでしょう。つまり、将来のために積立をしてじっくりと資産を形成するという手法です。月々5万円積立ができる方であれば1年間で60万円、10年間で600万円という形でつみたて投資枠を使う事ができます。

■成長投資枠なのに課税されてしまう設定方法

成長投資枠については、従来の一般NISAの120万円の枠が240万円に拡大したので、使い方の選択肢が増えました。将来のための資産形成をしたい方は成長投資枠の部分も積立投資として活用する事もできます。

一方、今の生活を充実させたいと考える方もいらっしゃると思います。その場合は高配当株を保有する事で半年に一度、配当金がもらえ、しかも全額非課税となります。そのお金で美味しいご飯を食べに行ったり旅行をするのも良いでしょう。

この際に見落としがちなのが、配当金を証券会社で受け取る比例配分方式でないと非課税にならないという点です。銀行振り込みやゆうちょ銀行で受け取る場合には課税されてしまうので、要注意です。

■「オルカン」は決して万能ではない

ここまで、旧NISAの取扱いや新NISAの活用方法についてお伝えしましたが、そもそもの運用内容を見直すきっかけにもなります。運用を始めてみたものの値動きが気になるなどご自分のリスク許容度に合っていないものは避けたほうが良いと思います。

逆にバランスファンドにしていたけど意外と値動きは気にならないし、10年以上使うお金でないという方は、株式ファンドに変えてリターンを狙ったほうが合っているかもしれません。

また、旧NISAで5年の非課税終了が近く、利益が出ている状態であれば、急な値下がりで損をしたまま課税口座に払い出しされないように早めに売却しておく、という選択肢もありだと思います。

投資のアドバイスを仕事にしているとよく聞かれる質問が2つあります。1つ目は「オールカントリーを買ったほうがいいか」という質問です。オールカントリーとは、簡単に説明すると全世界の株式に分散投資した時の値動きを表す指数で、こちらの指数に連動するインデックス型の投資信託は最近非常に人気です。

オールカントリーは分散投資の王道とも言えますが、だれにでもお勧めできるというわけではありません。全世界に分散投資を行い、15年ほど運用を継続するとマイナスだった事が過去にはないというデータから、長期で運用する方はオールカントリーに連動する投信で問題ないです。

■不安症の人は値動きをマイルドにすべき

しかし、運用期間をそこまで長く確保できない、途中の値動きが大きすぎると不安で投資を続けられない、定期的な収入が欲しいという方はオールカントリー一本だけで投資をしていくことはお勧めできません。

長期的にはプラスになっても当然、短期的にマイナスになることがありますので、その際に解約すると大きな損失になってしまいます。大きな値動きが気になり、途中で解約してしまうような方々は、債券やREITなどを組み合わせて値動きをマイルドにするような資産運用方法が良いでしょう。

そして、定期収入が欲しい方は高配当株や債券を組み合わせて運用するのがお勧めです。長期投資を行わなくても定期的に投資の果実を得られるのが大きな魅力でしょう。

■日本の個別株を買うなら高配当株を

2つ目は「今伸びている株を買ったほうがいいか」という質問です。こちらは、私はお勧めしていません。個別株の場合は個別企業の要因で大きく下がってしまう事もあります。順調に上昇すればもちろんいいですが、損切りする際にNISAの場合は他の利益が出ている商品と損益通算する事ができません。NISAのメリットを全く活かせない可能性があるため、お勧めできないのです。日本の個別株でしたら、高配当株を私はお勧めします。

金融市場グラフ
写真=iStock.com/Diego Thomazini
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Diego Thomazini

新NISAはあくまで資産形成の手段の一つです。

預貯金に偏っていてインフレ対策ができていない、逆に投資に偏って生活防衛資金が少ないなど全体資産のバランスを考えることも大切です。

また、株式ファンドは最終的に大きなリターンが期待できますが、時には30~40%程度の値下がりも想定されます。ご自身の運用期間やリスク許容度も考えた運用方法を選択することをお勧めします。

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五十嵐 修平(いがらし・しゅうへい)
独立系ファイナンシャルアドバイザー
株式会社バリューアドバイザーズ代表取締役社⻑。⼤学卒業後、東証⼀部上場の証券会社に⼊社。お客様と⾦融機関の利益相反をなくし、独⽴した⽴場で提案したいとの想いを叶えるべく、2013 年に会社を設⽴。毎年海外視察をする中で、マーケットの予想を繰り返す⽇本の⾦融サービスとは異なる、お客様と⽬的・⽬標を共有しゴールに向かって運⽤する欧⽶の⼿法に感銘を受け、独⾃のコンサルティング⼿法を考案。IFA(独⽴系ファイナンシャルアドバイザー)として、お客様⽬線で価値ある提案を常に⼼がける。多数のセミナーを開催し、多くの顧客から信頼と⽀持を集めている。⽇本経済新聞、週刊ダイヤモンドなどメディア出演も多数。著書に『55歳からでも失敗しない投資のルール』(クロスメディア・パブリッシング)などがある。

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(独立系ファイナンシャルアドバイザー 五十嵐 修平)

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