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なぜ「勉強しなさい」と言ってはいけないのか…ブッダが「頑張りすぎてしまう親」に説いた言葉

プレジデントオンライン / 2024年2月2日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Thai Liang Lim

受験期を迎えた子どもに、親はどのように接するべきか。福厳寺住職でYouTuberの大愚元勝さんは「親からの高すぎる期待や要求は、子どもにストレスや不安を与え、悪影響を及ぼす。『子どものため』と、親自身が頑張りすぎてはいけない」という――。

■「石を全部取り除け!」と怒る父親

私は境内にある幼稚園で10年、空手道場で20年、現場で子どもと関わる中で、頑張りすぎてしまう親をイヤというほど見てきた。

私がここでいう「頑張りすぎる」とは何か。

我が子に一所懸命になりすぎて、親が自分自身を見失ってしまうこと。

例えば幼稚園での出来事。

自然豊かな寺の境内山林には、あちこちに木の切り株があったり、石が転がっていたりする。子どもたちの中には、夢中で遊んでいるうちに、それらにつまずいて転ぶ子どもが出てくる。

子どもは、そこでつまずいて転ぶことによって、次からは転ばなくなる。それこそが、教室で先生が教えられない貴重な学習であるがゆえに、必要以上に石を取り除くことはしない。

ところが、子どもが石につまずいて転んだときに「石が悪い!」と、石に当たる母親がいる。あるいは、ケガして帰った子どもを見て「なんでそんな危険な石を放っておくんだ。全部取り除け!」とものすごい剣幕で電話をかけてくる父親がいる。

■空手の試合に負け、さらに親にぶん殴られる

例えば空手の大会での出来事。

新型コロナウイルスのパンデミック以前は、子どもの全国大会ともなれば、出場選手は1000人を超える。毎日3時間、週5日稽古してきた選手たちが、大人顔負けの試合を繰り広げる。

タイトルを狙えるような子どもたちは、本人以上に先生も必死だし、親も必死だ。

そんな大人たちの期待を背負った選手が負けるとどうなるか。なんと会場の隅で、親にぶん殴られているのだ。

これらは、一部の親による極端な例に思われるかもしれない。

けれども子どもの受験となれば、多くの親が知らず知らずのうちに、頑張りすぎてしまう傾向がある。

■親の頑張りは子どもを潰しかねない

特にコロナパンデミックが、受験期において頑張りすぎる親を大量に生み出したようだ。

コロナ禍にあって在宅勤務となった父親たちが、母親のそれに輪をかけて、子どもの受験に過剰に関わるようになったという。

「我が子のことになると、つい力が入ってしまう」それが真っ当な親だ。

しかし、過ぎたるは及ばざるが如し。親が自分を見失ってしまうほど頑張れば、子どもを潰してしまうことにもなりかねない。

親の頑張りすぎは、子どもにとってプレッシャーでしかないのだ。

テストスコアの悪い子供とリビングルームの両親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■「勉強しなさい」が勉強嫌いにつながる

子どもは親が思っている以上に、親からのプレッシャーに敏感だ。

親からの高すぎる期待や要求は、子どもにストレスや不安を引き起こし、次のような影響を及ぼすことがある。

1、子どもの気力や免疫力の低下

親からの受験プレッシャーは1~2カ月で終わるわけではない。少なくとも1年以上、長ければ3年にわたって子どもに影響を及ぼす。長期にわたってプレッシャーを感じ続けるうちに、子どもの心身は確実に疲弊する。ストレスが続けば、やる気が下がり、免疫力も低下する。

2、子どもの自信喪失

親からの受験プレッシャーが過剰な場合、子どもの自分自身に対する自己評価は大きく低下する。また、失敗を許容できず、完璧主義に追い込まれれば、その後の子どもの人生は確実に生きづらくなってしまう。

3、対人関係への影響

受験勉強に集中する、という理由で、家族や友達と過ごす時間が減り、人間関係が希薄になる可能性がある。

いくら「子どものため」とはいえ、親から長期にわたってプレッシャーをかけられれば、大人であってもストレスを抱えて心身を病んでしまう。

それが結果的に子どもを勉強嫌いにさせたり、親への反発を煽ったりすることになれば、何のための受験だったのか分からなくなる。

■親のエゴを戒めるブッダの言葉

受験期は、多くの親にとって非常にストレスフルな時期だ。子どもの将来を思い、最善の未来を提供したいという願望が、親自身を追い込んでしまう。

ブッダは、そんな頑張りすぎる親のために、次のような戒めを残している。

「わたしには子がある。わたしには財がある」と思って愚かな者は悩む
『ブッダの真理のことば・感興のことば』(岩波文庫19頁)

「わたしには子がある」とは、「子どもは私のもの」と考えて固執してしまう親のエゴへの指摘だ。

いくら父の種を受けて、母から生まれたとはいえ、子どもは自分の所有物ではない。子どもには子どもの意思があり、能力があり、感性があり、人生がある。

天から一時的に「預かった」命だと思えば、もっと落ち着いて、客観的に子どもと向き合えるはずだ。

■親の本当の願いは「大学合格」ではない

そもそも受験は何のためにするのか。大学に入るためだ。では、なぜ大学に進学するのか。それは、将来より良い仕事についたり、人生の選択肢を広げるためだ。

しかし大学進学は、子どもにとって人生のゴールではないし、親にとっても子育ての最終ゴールではない。

子育てのゴールは、子どもが親元を離れて自立することだ。自分でご飯を食べていくことができるようにすることだ。

受験はその過程に過ぎない。

そして今や、弁護士や医師といった師士業に就くのでもない限り、大学に行くことが最良の進路選択ではないかもしれない。

仮にどこの大学にも合格できなかったとしても、仕事は得られるし、何なら自分で起業すればいい。

いずれにしても社会に認められ、愛される人になってほしい。それが親の本当の願いのはずだ。

だとすれば、親が親らしくあるためにできることは、熱くなって子どもの受験に口出しすることではない。

■親の習慣が子どもの成長を大きく左右する

よほど子どもを上手く導ける親ならまだしも、ほとんどの親にとって勉強の指導は、プロに任せたほうが効果的だ。

だから親はもっと、親だからできること、例えば人としての基本や躾を意識したほうがいい。

実際、勉強でもスポーツでも、成績が伸びない子に共通するのは、子どもの能力ではなく、親の習慣だったりする。

例えば、時間にルーズだったり、独りよがりだったり、子どもに話すスキを与えず、親ばかりが話してしまったり……。

このような親の習慣は、子ども自身の感性や能力の育成を阻んでしまうし、子どもの成長を一緒になって助けてくれるはずの、学校や塾の先生たちにとっても、マイナスに働く。

■子どもに内仕事を教えるのが親の役割

親が親であるために、私がお勧めしているのが、「内仕事の分担」だ。

仕事には2種類あって、外貨を稼ぐ外仕事と、生活を営んでいくために欠かせない内仕事がある。

掃除、洗濯、食事の準備などが内仕事だ。

窓を掃除する女の子
写真=iStock.com/visualspace
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/visualspace

昔は子どもであっても、内仕事を分担するのが当たり前だった。

私も子どもの頃は、朝起きて寺の掃除をして、朝ごはんの準備をしなかったら、試験や部活の試合にも行かせてもらえなかった。

それが今は、普段から子どもに内仕事をさせず、さらに受験ともなると、まるで王子様、王女様に仕える僕(しもべ)のように、親が子ども部屋に食事を運んだり、生活の世話をする。

それは全く受験勉強の助けにならないどころか、子どもの生きる力そのものを奪ってしまう。

勉強の成績はそこそこいいが、自信がなく、生活能力が低く、応用力のない人間を作ってしまう。

受験とは何か。

そもそも親の果たす役割とは何か。

その根本的な問いを親自身が忘れなければ、子どもはもっと親の呪縛から解放され、伸び伸びと、自分自身の意志と努力によって、自らの将来を切り開いてゆくことだろう。

親は、親自身の楽しみやチャレンジに取り組めばいい。子どもはその背中を見て、やる気や勇気をもらうのだから。

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大愚 元勝(たいぐ・げんしょう)
佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表
空手家、セラピスト、社長、作家など複数の顔を持ち「僧にあらず俗にあらず」を体現する異色の僧侶。僧名は大愚(大バカ者=何にもとらわれない自由な境地に達した者の意)。YouTube「大愚和尚の一問一答」はチャンネル登録者数57万人、1.3億回再生された超人気番組。著書に『苦しみの手放し方』(ダイヤモンド社)、『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社)、『思いを手放すことば』(KADOKAWA)、『自分という壁』(アスコム)などがある。

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(佛心宗大叢山福厳寺住職、(株)慈光グループ代表 大愚 元勝)

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