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「死にたい」と子どもに言われたらどう返すか…「そんなこと言っちゃダメ」をグッと飲み込むべき理由

プレジデントオンライン / 2024年2月7日 15時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fizkes

子どもから「死にたい」と言われたら、どう返せばいいか。児童精神科看護師のこど看さんは「とっさに『死にたいなんて言っちゃダメ』と言いたくても我慢したほうがいい。なぜそう思うのか、“TALKの法則”を使って真剣に話を聞くべきだ」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、こど看『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■子どもから「死にたい」と言われたらどうするか

もし、子どもから「死にたい」と言われたら、あなたならどうしますか?

なかなかないことではありますが、びっくりして「死にたいなんて言っちゃダメ」と説教するでしょうか。「おいしいものでも食べに行こう!」と話をそらすでしょうか。

これらは、子どもの気持ちを無視し、子どもの「死にたい気持ち」を認めたくない自分の安心を優先した対応といえます。とはいえ、このような対応をとりたくなる大人の気持ちも十分理解できます。大切な子どもから突然「死にたい」と言われたら、誰だって大きく動揺し、悲しみや不安でいっぱいになり、冷静な対応なんてできないでしょう。

では、子どもから「死にたい」と言われたときの対応法を知っていたとしたらどうでしょう? 少なくとも、子どもの発言を否定するような対応にはならないはずです。子どものためを思い、この記事を読んでいただいているみなさんにこそ、子どもの「死にたい」を冷静に受け止めるための方法を知ってもらいたいのです。

■笑いながら「死にたい」と言われても軽く扱わない

まずは、子どもに「死にたい」という気持ちが出てくるのはどんな背景があるのかをお話ししましょう。子どもは大人に比べて問題に対処する力が未熟で、他者に相談する経験も少ないことから、ひとりで悩み事を抱えやすい傾向にあります。そして、この状態が積み重なってしまうと、「どうがんばっても解決できない」という状況に追い込まれ、「死にたい」気持ちが出てくることがあるのです。

子どもが「死にたい」気持ちを打ち明けてくれたとき、深刻度を正確に把握することは専門家でも難しいので、軽く扱わない対応が重要です。知っておくといいのが「TALKの原則」です。泣きながらの「死にたい」でも、笑いながらの「死にたい」でも、TALKの原則を意識して真剣に話を聞かせてもらう対応が望ましいでしょう。

■「どんなときに『死にたい』と思うの?」と聞いていい

TALKの原則とは、「Tell」「Ask」「Listen」「Keep safe」の頭文字からできている対応方法です。

Tell:心配していることを言葉にして伝える

「元気なさそうに感じたんだけど、ちょっと心配だよ」「最近あんまり眠れてなさそうだけど、つらくない?」など、「私はあなたを心配している」という思いを言葉にして伝えましょう。遠回しにではなく、ストレートに言葉で伝えることが大切です。

Ask:「死にたい」気持ちについて率直に尋ねる

「どんなときに死にたいって思うのかな?」「死にたい気持ちはどのくらい強いのかな?」のように、子どもの「死にたい」気持ちについて率直に尋ねましょう。これは子どもの「死にたい」気持ちを受け止め、知ろうとする誠実な対応です。けっして死にたい気持ちを助長するような対応ではありません。

Listen:絶望的な気持ちに傾聴する

子どもの話を最後まで遮らずに聞きましょう。その子はすでに絶望的な気持ちで「死にたい」と言っているかもしれません。子どもが「死にたい」と言ってきたときに必要なのは、あなたの価値観に基づいたアドバイスや説教、正論などではなく、その子の「死にたい」をありのまま受け止める、受容的な態度です。

Keep safe:安全を確保する

その子が置かれている環境や状況が危険なのであれば、すぐさまそこから子どもを引き離しましょう。もし、自分ひとりで子どもの安全を確保できない場合は、誰かに助けを求めましょう。子どもを助けるために、あなたが助けを求める必要があります。

以上が「TALKの原則」です。もし、あなたのもとに「死にたい」と言ってきた子がいたとしたら、その言葉を否定したり、話をそらしたりせず、「死にたい」と言えた子どもの勇気を讃え、受け止めてほしいと願っています。そして、「あなたが大切」「あなたを心配している」ということを言葉でも行動でも伝えてください。あなたのサポートが、子どもを救うかもしれないのです。

■「自傷行為=“かまってちゃん”アピール」ではない

想像したくないかもしれませんが、子どもは心に大きな痛みを感じたとき、自分の体を傷つけることでその痛みを克服しようとすることがあります。

「子どもの自傷」と聞くと、親として驚くのは当然ですし、わが子の自傷をイメージするだけでも耐えられないという方もいらっしゃると思います。そんな方にこそ、子どもがつらくなったときはいつでも手を差し伸べられるように、子どもの自傷について知っておいてほしいのです。

まず、みなさんは「自傷」についてどのようなイメージをお持ちでしょうか? もしかすると、「“かまってちゃん”(周囲の人の気を引くような言動を繰り返す人)のアピール的な行動」というイメージを持たれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。ですが、本当にアピールのための行動なのであれば、人通りの多い場所や、自分が大切だと思っている人の前でするはずです。

しゃがみ込む子どものイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

■子どもが傷跡を見せてきたらどう対応するか

しかし実際は、自傷する人の約9割が誰の目にも触れることなく、たったひとりで行っています。つまり、自傷はそのほとんどがアピールとしての行動ではないことをまず理解してください。人間関係でのつまずき、将来への不安、自分自身に対する不快感など、自分ではどうにもできない、強烈な不快感情に抵抗するための、孤独な対処法が自傷なのです。

では、子どもが自傷した傷跡を見せに来たとしたら、親としてどのような対応を取るのがよいのでしょうか? それは、「もうしないと約束しなさい」とその場で約束をさせることでも、「自分の体を大切にしなさい」と頭ごなしの説教をすることでもありません。大人にしてほしいのは、勇気を出して傷を見せてくれたその子に、「よく来てくれたね、傷を見せてくれてありがとう」と伝え、いたわることです。

そして、ていねいに傷を処置をしながら、その子が抱えている「目に見えない傷」に思いを馳せ、話を最後まで聞いてください。

■「もうしないと約束して」は言ってはいけない

傷を処置しているときに、「もうしないと約束して」という言葉がのど元まで上がってくるかもしれませんが、そんなときに思い出してほしいのは、「その子は自傷をすることで自分を保っていたかもしれない」ということです。自傷によって自分をなんとか保ってきた子に対して、「もうしないと約束をさせる」ということは、「その子の頼みの綱をその場で切る」ということでもあります。だからこそ、自傷したことを責めるのは避けてほしいのです。

では、自傷を肯定するのかというと、そうではありません。その子自身も自分を傷つける行動が長期的に見てよい対処方法ではないことくらいわかっています。なので、自傷について話した最後に、このように伝えてみてください。「もしまた、自分を傷つけたくなったときは、今ここで話したことを思い出してほしい」と。そして、またいつでも傷を見せに来たり、自傷した跡について話ができることを保証してあげましょう。

■重要なのはその場での解決ではなく頼れる相手になること

もうひとつ、みなさんには「誰にも頼らない」という自傷もあるということを知っておいてほしいと思います。自分の傷を見せたときに不快感を示す大人や、もうしないという約束を強引に交わそうとしてくる大人と出会ったとき、子どもは「誰に頼ってもムダ」という信念を強めることでしょう。これはつまり、親や友達などの「人」ではなく、カッターナイフや市販薬などの「物」に頼ることを選択しやすくなるということです。

こど看『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)
こど看『児童精神科の看護師が伝える 子どもの傷つきやすいこころの守りかた』(KADOKAWA)

これを防ぐためにも、子どもが自傷を告白しに来たときには、前述のように「よく来てくれたね、傷を見せてくれてありがとう」と伝え、ていねいに傷を処置するという対応を取ってほしいのです。何よりも大切なのは、その場での強引な解決ではなく、次もまたその子が来てくれることです。

最後に、もし止血できないほど傷が深かったり、過量服薬(オーバードーズ)など身体的な医療処置が必要な場合には、救急外来のある病院を受診する必要があります。そうでなければ、精神科を受診することを考えてみてください。子どもを受診させる際には、「あなたは今調子が悪いから受診しよう」といった一方的な伝え方ではなく、「あなたが心配だから、受診をしてほしい」と自分が心配していることを伝えてください。

そして受診の際には必ず大人が付き添ってくださいね。

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こど看(こどかん)
精神科認定看護師
精神科単科の病院の児童思春期精神科病棟に10年以上勤める。現在も看護師として病棟勤務しながら、「子どもとのかかわりを豊かにするための考え方」をSNS等で精力的に発信中。メンタル系YouTuberの会所属。一児の父。

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(精神科認定看護師 こど看)

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