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「業績のわりに給与が低くないですか」人事考課"密室面談"でデキる部下からの逆襲に上司がすべき対応

プレジデントオンライン / 2024年1月29日 11時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

社員の昇進昇格や給与の判断材料となる業績評価・人事考課。その役割を担う管理職の上司はどのように部下に対処しようとしているのか。世界で40年以上読まれ続ける『マネジャーの全仕事』から、知られざる「人の上に立つ人」の意識や価値観を紹介しよう――。(前編/全2回)

※本稿は、ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック、ゲイリー・S・トプチック『マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)の一部を再編集したものです。

■人事考課の“密室面談”で上司が部下に話すこと

業績の評価といっても、ただ「いい仕事ができているね」などと伝えるだけのものから、詳細にレポートを作成して正式に面談を行うものまで、やり方には幅がある。

誰もが自分の仕事について評価を知りたいのは当然だ。年に1〜2回、振り返り面談が設定され、そこで業務状況を話し合うというように、正式な手順の規定があるのが望ましい。形式が決まっていない場合、やらなくても変わらないような意味のないものになりがちだからだ。

上司の側は「部下とはよくコミュニケーションできているので、部下は現在の立ち位置をきちんと理解できているはず」と自信を持っていても、部下の側に話を聞いてみると、コミュニケーションが足りないと感じていることがよくある。

いまだに「何も言われないのは、うまくやれている証拠」というモットーで管理職を務めているマネジャーもいるが、これではうまくいかない。特に上級管理職には、緊急で対応の必要な案件以外、話したがらない人が多い。評価など末端の兵隊のためのもので、幹部には不要だと思っているのだ。

上級役員ならいちいち訊かれなくても、自己コントロールも状況の制御もできるに決まっている、という理屈だ。これは真逆である。経営に関わる人こそ、トップが自分の仕事をどう評価しているかを確認する必要がある。

業績評価は、マネジメント上の強力なツールなのだが、うまく使えないまま無視されがちだ。はっきり言って、業績評価をするのが苦手なマネジャーは多い。それで、下手な評価や面談をした結果、部下も業績評価で嫌な思いをすることになる。業績評価をうまく使えば、リーダーとして成果が上げられる。きちんと活用しないのは、チャンスを無駄にしていることだ。

そればかりか、あなたや組織が要らぬ法的責任を負うリスクさえある。業績評価を定期的に設定して漏れなく実施するのは、自分のためなのだ。そうすれば、マネジメントもうまくいき、同じ職階のマネジャーの中で、抜きん出ることができる。

■業績評価で部下を驚かせない

もし面談中や査定のあと、部下に「評価に納得できません」と言われたなら、あなたがマネジャーの仕事をできていないということだ。業績評価で部下が驚くのは論外である。

年間を通じて部下ときちんとコミュニケーションが取れており、部下に本人の現在地をきちんと伝えていたのであれば、査定が寝耳に水ということはあり得ない。

部下に査定で驚かれないように、年間を通じて何度も非公式に振り返り面談を行っているマネジャーも多い。これはコーチングの一種であり、マネジャーと部下とで定期的に業務状況の振り返りを行い、話し合うものだ。これは正式な業績評価のプロセスではないため、部下の希望があれば資料に残してもよいし、資料は無くてもかまわない。こうしたコーチングの場を活用すれば、部下に対して、目標の修正、新たな目標の追加、職責やタスクの追加、あるいは削減などの業務調整が可能になる。

企業の中には、従業員の期待値と査定に齟齬(そご)が生じないよう、四半期ごとの振り返り面談をマネジャーに課しているところもある。業績評価は、「人事考課」「成果評価」「勤務評定」「業績考査」などとも呼ばれる。これをしておけば、年1回の査定面談では、その期を通じてコミュニケーションしてきた内容をおさらいするだけでよい。

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写真=iStock.com/danielfela
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/danielfela

人事評価シートの項目に典型的なものを以下に挙げておこう。各項目について、「優(非常によくできている)」から「不可(要件を満たしていない)」までの3段階や10段階などで採点していく。

・業務量あるいは業務レベル
・完成度
・正確性(エラー率など)
・自主性、率先した動き
・態度
・学習能力
・チームプレーヤーとしての能力、協働
・勤怠

これ以外の項目も業務によっては追加すべきだろう。項目ごとに重み付けして、最終的に本人に提示するスコアを算出する方式もある。こうした書類はすべて、人事資料として従業員ごとに保管される。評点は、たとえば次のように示される。

・80点以上〜100点:優(非常によくできている)
・60点以上〜80点未満:良(よくできている)
・50点以上〜60点未満:可
・40点以上〜50点未満:要改善
・40点未満:不可(要件を満たしていない)

数値の幅は各社の制度によって異なる。この例では50点以上〜60点未満は「可」だが、企業によっては「中位」などと呼ぶ場合もある。「可」は優しい言葉だ。「中位」や「並み」と言われて嬉しい人はあまりいない。「可」や「要改善」のほうが「並み」「並み以下」より使いやすいだろう。世の中には「並み」程度の凡庸な人間も多いはずだが、査定が「可」の従業員が、自分を凡庸だと考えていることは少ない。

業績評価について、別の点を指摘しておこう。マネジャーの中には頭の中で評価を決めてしまってから、その数字を作るために各項目の数値をいじる人がいる。これは「制度の悪用」にあたる。たいていは、上司が部下に「要改善」をつけたくなくて、これをやるのだが、厳しい判断を先送りにしていると、今後ますます厄介なことになる。

■仕事のできる部下との面談

問題のある部下との面談については、たいていのマネジャーが事前準備を怠らない。面談はスムーズに進まないだろうし、査定の根拠を説明できるよう用意しておくべきだとわかっているからだ。仕事のできる部下についても、同様に入念な準備をしておきたい。業績の良い部下との面談は褒めることしかないので順調に進むと思っていたら、ときに、恐ろしく悲惨な面談になることもある。

マネジャーとして経験を積むうちにわかることだが、優秀な従業員は、これまで黙っていた問題を面談の場にぶつけて解決しがちだ。その問題は状況により異なるが、いくつか例を挙げておこう。

「昇進のスピードが遅いですよね」
「業績のわりに給与が低くないですか」
「仕事がよくできるといつも褒めてくれますが、報酬に反映されていませんよね」
「周りの同僚は、業務水準に見合った仕事をしていません」
「マネジャーは、仕事のできる部下のことは放ったらかしですよね」
「いい仕事をしたところで、表彰もなければ、報酬への反映もないんですね」

できる部下からのこうした発言は、耳の痛い内容でもありがたく受け止めて、それに向き合おう。耳障りのいいことだけを言う部下が大半である中、本当のことを伝えてくれる人はなかなかいないので真剣に聞こう。

ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック、ゲイリー・S・トプチック『マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ローレン・B・ベルカー、ジム・マコーミック、ゲイリー・S・トプチック『マネジャーの全仕事 いつの時代も変わらない「人の上に立つ人」の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

部下の貴重な発言で、あなたが自覚できていなかったギャップを埋められるかもしれない。八つ当たりはやめておこう。あなたが気分を害したのは、伝えた人のせいではない。わざわざ教えてくれた人に嫌がらせをしても、事実は変わらない。無視したほうが楽かもしれないが、マネジャーとしてのキャリアを考えた場合には致命的である。

もちろん、その情報は部下というフィルターをとおっているため、事実と完全には一致していない可能性はある。だからといって、軽視すべきではない。現職での経験が浅いあなたには、重要事項と空騒ぎが見分けられないのかもしれない。優秀な部下がわざわざ進言すべきだと考えた内容は一聴に値する。部下としても、面談に問題を持ち込まず、無難に終わらせたほうが上司が喜ぶのは知っているはずだ。よほど問題だと思ったから、切り出したのだろう。

ときには、トラブルメーカーの部下が状況をかき回して悦に入っている場合もあろうが、そういうのはたいてい仕事ができない人だ。

■改善点を指摘する

業績評価のプロセスで大きな問題となるのが、ほぼ全員の部下に「可」か「優」をつけるマネジャーだ。実際には業績の低い部下もいるのに、である。これは軋轢を避けたい心理からの行動であるらしい。こうした罠には嵌まらないように。部下の改善すべき点を指摘しないのは、本人のためにもあなた自身のためにもならない。「誠実に評価する」という原則に反しているうえ、「仕事には問題がない」と部下に誤解を与えている。これでは今後、その部下の仕事ぶりが改善するはずがない。あなたが「問題なくできている」と部下に伝えてしまっているのだから。

さらに、その部下が同僚と評価の内容を共有する可能性もおおいにある。別の優秀な部下が、自分より明らかに仕事のできない人が似たような評価を受けているのを知った場合、モチベーションがどうなるかは予想に難くない。

おまけに、改善すべき点を指摘しなかったことで、未来にのしかかる問題を作ってしまっている。自分の部署から人員を削減せざるを得ない状況になった場合を考えてみよう。あなたはおそらく、業績の低い部下に出ていってほしいだろう。だが解雇の対象としたい相手には、訴訟を起こせるだけの根拠がある。業績評価では一切、低評価を受けていないのだから、あなたは法的に脆弱(ぜいじゃく)な状況にあり、贔屓や差別を告発されてもおかしくない。

(ローレン・B・ベルカー、コンサルタント、エグゼクティブ・コーチ ジム・マコーミック、ゲイリー・S・トプチック)

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