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「メールの通知」は真っ先にオフにする…圧倒的な集中力が手に入る「スマホ断ち」のために"やるべき設定"

プレジデントオンライン / 2024年1月31日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/EnDyk

時間ができると、ついスマホをいじってしまう人がいる。科学ジャーナリストのキャサリン・プライス氏は「スマホ依存症から抜け出すためには、プッシュ通知を切ってしまうのが一番いい。メールアプリの通知もオフにすることだ」と指摘する。著書『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(角川新書)より一部を紹介しよう――。

■なぜ私たちはついスマホをいじってしまうのか

『習慣の力〔新版〕』〔渡会圭子訳、早川書房、2019年〕という良書で、ジャーナリストの著者チャールズ・デュヒッグは習慣を次のように定義している。「ある時点までは自分で選んでいるが、しだいに考えなくても毎日のように実行することになる行動」。デュヒッグいわく、あらゆる習慣は三段階のループ構造になっている。

1.きっかけ(引き金とも呼ばれる) 脳を自動操縦モードに切り替えて、特定の行動を実行するよう促す状況や感情
2.反応 反射的に起きるふるまい(習慣的行動)
3.報酬 脳が欲するもの、また、その“習慣のループ”を記憶に残すのを助けるもの

つまり、こういうことだ。ある日、あなたは退屈だと感じ、テーブルに置いたスマホに目を向け(感情と身体による引き金)、そのままスマホを手に取った(反応)。すると、気がまぎれて楽しく過ごせた(報酬)。脳のなかでスマホと退屈さの解消が結びつけられ、やがて少しでも時間ができれば、スマホに手を伸ばすようになる。

習慣はときに有用だ。反射的に作業や決断をおこなえるからこそ、脳は他のことに力を割く余裕ができる。一歩ごとに全神経を集中する必要があったなら、家まで歩いて帰るのがどれほど大変かを想像してほしい。一方で習慣が害をもたらし、依存症にまで発展することもある──たとえば、食事の終わりと煙草とが脳内で結びつけられたとしたら、どうだろう。

■いちばんの方法は、習慣のきっかけを作らないこと

いい習慣でも悪い習慣でも、そのどちらでもなかったとしても、習慣を断ち切るのはきわめてむずかしい。しかも習慣がいったん依存症の域にまで達すると、認識できないほど些細なことでもきっかけになりうる。

2008年に学術誌『PLOS ONE』に発表された研究では、ペンシルベニア大学の依存症研究センターの研究者が、22人の治療中のコカイン依存症患者に対し、脳スキャナーに横たわった状態で、依存行動のきっかけになりうるものの画像(吸引パイプ、コカインの塊など)を見せた。

画像の表示時間は33ミリ秒(まばたきの約10分の1の時間)だったが、被験者の脳の報酬中枢は、薬物の使用器具を認識可能なほど長く目にしたときと同じ反応を示した。

嫌な情報だ。一方でいいニュースもある。習慣を完全に取り除くことはできないが、変えることはできる。もっとも簡単に始められるのは、習慣のきっかけに出会わないように生活や環境を整えることだ。そして、きっかけになるとわかっている状況に遭遇した場合に備えて、どう対処するかを事前に決めておくことだ。今週、私たちはそれに取り組んでいく。

■スマホ依存の私たちはまさに「パブロフの犬」

ロシアの生理学者イワン・パブロフの、かの有名な実験を覚えているだろうか。ベルの音を耳にすると犬が唾液を出すようになったというものだ。餌をやるときにかならずベルを鳴らすようにしたところ、犬たちの頭のなかで(ドーパミンのはたらきにより)ベルの音と餌がもらえることが結びつけられた。最終的に犬たちは、ベルの音を耳にするだけで、期待感からよだれを垂らすよう条件づけられた。

プッシュ通知を許可すると、まさに同じことが私たちのなかでも起きる。プッシュ通知とはホーム画面やロック画面に一日に何度も現れる、あの通知のことだ。きっかけと報酬を結びつける脳本来の機能(それと、不確実性に対する不安)を利用し、スマホをチェックしたい衝動を引き起こす。

通知を見聞きするたびに、新しくて予測不可能な何かが、自分を待っていると知らされる──人が強く望むよう本能に刷りこまれているふたつの特性だ。

その結果、通知に抗うのはほぼ不可能になり、時間が経つにつれて“パブロフ反応”、つまり条件反射を起こすようになる。スマホが近くにあるだけで期待/不安を覚えるようになる(そして、注意散漫になる)のだ。

■「プッシュ通知」こそが依存を加速させる元凶である

それどころか、テーブルに置いてあるだけでも、親密感や一体感、会話の質に悪影響を及ぼすことがわかっている──集中力を必要とする作業で効率が悪くなるのは当然だろう。

さらに、プッシュ通知は幻聴も起こす。ミシガン大学の2017年の研究によると、大学生の80%以上がスマホのバイブレーションや通知音の“幻”を体感したことがあった。

通知は注目を奪う手段としてもかなり優れている。マーケティング用の解析サービスを提供するロカリティクス社は、自社ブログの「プッシュ通知が増大した年」と題した記事で、次のような報告を記している。「2015年、プッシュ通知を許可したユーザーの一月あたりのアプリの起動回数は、平均14.7回だった。

一方で、通知を許可していないユーザーでは、その数は5.4回にとどまった。……すなわち、プッシュ通知を許可したユーザーは、不許可のユーザーと比べて平均して約三倍多くアプリを起動した」

以上のことをまとめると、通知音やバイブレーションは脳内で化学反応を引き起こし、私たちが実行中のこと(や、いっしょにいる人)に向けている注意を無理やりそらさせ、スマホを確認せずにはいられなくする。それも、たいていは他のだれかの利益のために。プッシュ通知でスマホはスロットマシーンになり、いま私たちが改めようとしている習慣のループそのものを強化する。悪の元凶であり、消してしまうにかぎる。

■メッセージアプリとカレンダー以外の通知は全てオフ

スマホの通知の設定画面へいき、電話と(どうしても必要なら)メッセージアプリとカレンダー以外のすべての通知をオフにしよう。

このまま永久にオフにしておく必要はないが、いったん最小限まで減らすことは必要なステップだ。それはなぜか。ほんとうに必要なものがどれかを自覚したうえで、オンにもどすことができるからだ。

(メッセージアプリの通知は厄介だが、残すのもアリだ。いまや生身の人間とのリアルなコミュニケーションに代わるものだからだ。カレンダーの通知も残していいものだ。これで病院の予約に遅れても、私のせいにしないように)

新しいアプリをインストールすると、そのたびに通知を許可するかと確認される。さらりとノーを突きつけよう。

1.特定のアプリでは、通知を消したほうがチェックの回数が増えることがある。その状態になっていると気づいたら、通知はオンにもどしてかまわない。けれど、できれば一日、二日は様子を見よう──チェックしたい気持ちが高まっているのは離脱症状の一種で、ときが経てばおさまる可能性もあるからだ。

2.通知は音やロック画面上のメッセージとして現れるものだけではない。アプリのアイコンにつく、小さな赤い吹きだし/バッジもそうだ。新しいメッセージや情報があることを明示して確認を促す。これもオフにしてしまおう。

オフィスで働いているビジネスマン
写真=iStock.com/Georgijevic
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Georgijevic

■「メールはさすがに…」と思っても勇気を出して

3.“通知を消そう”にはメールの通知も含まれる──アプリの赤バッジも、新着メールの受信を告げる通知音もそうだ。メール中毒の私が保証しよう。通知を消しても、あなたがチェックを忘れることはない(いちばん手っ取り早い通知の消し方は、メールアプリの自動受信設定をオフにすることだ。これで新しいメールがあるかをバックグラウンドで確認しにいかなくなる)。

メールといえば、この機会にSNSのメール通知についても見なおしておこう。自分のアカウントの設定画面へいって、イベント招待など自分がほんとうに関心のある通知だけをメールで受信するように変えるのだ(スマホのSNSアプリは削除済みのはずなので、この設定はパソコンでしなければならない──申しわけない!)。

すべてのカテゴリの新着が見られるのは、自分でアカウントにログインしたときだけだ。これでメールチェックが、いつの間にかSNSスパイラルに変わる可能性を減らせるだろう。

熟練ユーザーからのアドバイス VIPの力
メールの通知を消すことに、抵抗がある人もいるかもしれない。気づかないと困るだれかさん(たとえば、ボス)のメールが来るのが理由だろうか。解決策は、VIP(Very Important People:非常に重要な人たち)を、連絡先でグループ分けしておくこと。
そして、このグループのメールについては、スマホの通知をオンにしておくことだ。

■思考がクリアな人のホーム画面はこれだ

変更できるスマホの設定項目は、たいていどれも使用時間を(減らすのではなく)増やすためのものだ。設定を変えるときは、自分の目的にかなっているか、しっかり見きわめながら進める必要がある。まずは残しておきたいアプリがどれかを判断することから始めよう。

まずやるべきは、次のふたつの観点からアプリをふるいにかけることだ。注意を奪う恐れがあるか(つまり、没頭してしまうか)、日常生活の質を向上させうるか(日々の雑務をこなしやすくしたり、喜び/楽しさをもたらすか)。これで大きく六つのカテゴリに分類されるはずだ。

1.ツール系アプリ[アプリの具体例 地図、写真管理、カメラ、パスワード管理、ライドシェア(相乗り)、エアコン操作、セキュリティ・ウィルス対策、銀行、天気、音楽、電話]

これらは注意を奪うことなく日常的に役立つアプリだ。こういうアプリだけがホーム画面に残していいものと考えよう。

それはなぜか。特定の用途に特化した実用性があるうえに、誘惑になることもないからだ。つまり、ブラックホールに吸いこまれる恐れはない。

メールやゲーム、ショッピングにSNSといったアプリは、すべてブラックホールになりうる。ホーム画面にはぜったいに置かないようにしよう。同じくニュースアプリもはずしたほうがいい。インターネットブラウザについては判断をお任せする。

■「メールアプリはジャンクフード」と心得よ

アプリがたくさんありすぎてホーム画面におさまらないようなら、使う頻度で優先順位づけをおこなうのがおすすめだ。入りきらないアプリは、ホーム画面に専用のフォルダをつくって入れておこう――もしくは、(本気で誘惑を最小限にするのであれば)アプリはすべてフォルダに入れてしまおう。これで個々のアイコンが判別できないくらい小さくなる。

それから、ひとつ覚えておいてほしい――ホーム画面はアプリで埋めつくさなければならないわけではない。

2.ジャンクフード系アプリ[アプリの具体例 SNS、ニュース、ショッピング(通販)、インターネットブラウザ、メッセージ、不動産・部屋探し、ゲーム、メール]

こうしたアプリは節度をもって使えば楽しく有益だが、いったん見始めると途中でやめるのがむずかしいものだ。日常の質を改善することもあるが、のめりこむ恐れもある。

整理する鍵は、メリットよりデメリットが大きいか、反対に注意が奪われるリスク以上に生活の質をあげてくれるか、という観点で判断することだ。リスクのほうが大きければ削除しよう(踏ん切りがつかないときは、いつでも再インストールできるのだと思い出して)。リスクより喜びが勝るなら、そのアプリはホーム画面の次のページのフォルダに入れておこう。

理想を言えば、フォルダの名前は開こうとしたときに注意を促すものがいい。多くの人にとって、メールはジャンクフード系アプリだ。

■SNS、マッチングアプリ、通販アプリ、ゲームは最悪

3.スロットマシーン系アプリ[アプリの具体例 SNS、マッチング、ショッピング(通販)、ゲーム]

キャサリン・プライス『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(角川新書)
キャサリン・プライス『スマホ断ち 30日でスマホ依存から抜け出す方法』(角川新書)

スマホのアプリは、基本的にどれもドーパミン放出のきっかけになる──けれど、なかでもスロットマシーン系アプリは最悪だ。日常をよりよくすることはなく、そのうえ注意もかっさらっていく。

スロットマシーン系/ジャンクフード系アプリの特徴は、次のようなものだ。

・アプリを開くときに期待感がある。
・使い始めると、なかなかやめられない。
・使い終わったあと、落胆、不満、自己嫌悪を感じる。

ひどいものだ。消してしまおう。

4.がらくたアプリ(アプリの具体例 2012年にインストールして以来、目にした覚えのない二次元コード読み取りアプリ)

こういったアプリはもう二度と使わないだろう。注意は奪われないし、生活の質をあげることもない。

■開きにくいフォルダに入れて見えなくするのも一手

がらくたアプリをどうするかには、えてして実生活での不用品に対する姿勢があらわれる。あっさり不要だと判断して捨てられる人もいる。そういうタイプでなかったら、ホーム画面の3ページ目にフォルダをつくって入れておき、あふれかえったクローゼットと同様に見て見ぬふりを決めこもう。どちらが私のおすすめかは推して知るべし。

5.機能特化型アプリ

アプリのなかには、特定の目的に特化しているが、ツール系に分類するほど日常的に役立つわけではないものがある(たとえば、iPhoneを探すアプリ、洗濯機が発する謎の電子音を聞き取って問題が何かを教えてくれるアプリ)。こういったアプリも、ホーム画面の3ページ目のフォルダに入れてしまおう。

6.削除できないアプリ

なかには削除できないアプリもある。スマホがそうできないようにしているのだ──私に言わせれば言語道断だ。こういうものも3ページ目のフォルダに放りこんでしまおう。フォルダ名はお好きにどうぞ。

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キャサリン・プライス 科学ジャーナリスト
イェール大学卒業、カリフォルニア大学バークレー校大学院を修了後、ワシントン・ポスト・マガジン、ニューヨーク・タイムズ紙など多くの新聞や雑誌で活躍している。本書の原著『How to Break Up with Your Phone』(Ten Speed Press)は世界34カ国で出版された。著書に『Vitamania:How Vitamins Revolutionized the Way We Think About Food』(Penguin Books)や『The Power of Fun:How to Feel Alive Again』(The Dial Press)などがある。

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(科学ジャーナリスト キャサリン・プライス)

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