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最重症レベルの糖尿病なのに元気ピンピンの理由…医師・和田秀樹が体を張って実験する「最高の健康法」

プレジデントオンライン / 2024年2月1日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Victor Manuel Mulero Ramirez

年齢を重ねても元気で過ごすにはどうすればいいか。医師の和田秀樹さんは「私は最重症レベルの糖尿病で高血圧を抱えていて、現代医学においては病気のデパートのような人間だ。しかし、とても元気で体力があり、風邪も引かなければ63歳になった今もなぜがしわができない。好き勝手に暮らしているから免疫機能が高いのだろう」という――。

※本稿は、和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)の一部を再編集したものです。

■「病気のデパート状態」の私はどう過ごしているか

2022年5月から「サンデー毎日」(毎日新聞出版)誌上で「『幸福の100年』を生きる和田秀樹の健康教科書」と題した連載を始めたところ、読者からかなりの数のハガキが編集部に届いたそうです。

その中で多かったのが、私自身が日常、何を食べ、どんな運動をし、何に気をつけて、どんなことをしているか、という質問でした。

実際、人様に年をとったら検診なんて受けるなとか、血圧や血糖値は高めのほうがいいなどと言っておいて、自分は検査データにこだわって、数値を下げるために薬を飲んでいるなら、まさにダブルスタンダードです。

実は、私は現代医学においては病気のデパートのような人間です。

2019年、風邪をひいたあと喉が渇いて仕方がないので、私が非常勤で勤務していた病院の院長に血糖値を測ってもらったら660mg/dl。正常値とされる数値が空腹時70〜110mg/dlですから、まさに最重症レベルの糖尿病です。

インスリン注射だけは嫌だったので、北海道で開業し、インスリンを使わない糖尿病治療の本を書いている同期の医師に連絡して、東京でインスリンをなるべく使わない治療を行っている医師を紹介してもらいました。

■血圧170でコントロールすると心不全に

あれこれと薬を試してもなかなか血糖値が下がらなかったのですが、スクワットで下がるという本を見つけ、下肢の筋肉をつけるのが一番と知り、それまでほとんど歩きませんでしたが、1日30~60分は歩くようにしたら、ヘモグロビンA1cの値が9~10%、早朝血糖値は300mg/dlを切るくらいまで下がりました。

通常ならもっと下げろと言われるところですが、自分の信念もあり、また、喉が渇かなくなったので、現在はこのくらいの数値でコントロールしています。

血圧のほうは10年来、たまに測ると上の血圧が200mmHgを超えているのは気づいていましたが、血圧が高いほうが頭が冴(さ)えているので放っておきました。

ところが、やはり同級生がやっているクリニックで心臓ドックを受けると、冠動脈は何でもなかったのに、心筋の肥大が激しいと言われました。

血圧が高いのを放っておくと心臓が常に激しい運動をしていることになるので、筋肉が分厚くなってくる。すると心臓の血を溜めておく部分が狭くなるので、最終的には心不全といわれるポンプ機能不足の状態に陥ってしまう。ちょっと歩いただけで息が切れるというわけです。

それではまずいので、やはり薬で血圧を下げることにしましたが、正常値まで下げると頭がフラフラするので、今は170くらいでコントロールしています。

それで大丈夫と思っていたら、1年ほど前に飛行機から降りると激しい喘鳴(ぜんめい)(編集部注:呼吸をするときに「ヒューヒュー」「ゼーゼー」など音がすること)がしたのです。知り合いの病院で緊急の検査をしてもらうと、心不全と診断されました。

心臓のあたりが痛くて、手で押さえている男性
写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ake Ngiamsanguan

それ以来、利尿剤を飲み続け、おかげで息が切れることはなくなりました。

■健康を害するより話がつまらなくなるほうが怖い

コレステロール値はいつも300mg/dl前後で、中性脂肪は600mg/dlくらいのことが多いです。基準値はコレステロール値が220mg/dl未満で、中性脂肪は30〜149mg/dl(空腹時)ですから、かなり高いほうです。

これについては高いほうがいいと信じているので、薬はもちろん使っていないし、肉を食べる生活も毎晩ワインを飲む生活も変えていません。

ただし、中性脂肪が1000mg/dlを超えたときには、世の中で一番痛いといわれる病気、急性膵炎(すいえん)になるぞと脅されて薬を飲むことにしましたが。

私は2023年6月で63歳になりましたが、この年代で、これだけ病気を抱えていると、さぞ不健康でヨボヨボしていると思われそうですが、自慢じゃないが、とても元気で体力があります。

仕事に関しては、大学の教員、勤務医、自分のクリニック、そして教育産業の経営を続けているし、2021年から本が売れたこともあって書籍や雑誌、ネット記事などの執筆依頼も殺到していますが、それもどうにかこなしています。

2023年の6月には7冊、7月には5冊の新刊書が刊行されました。2022年7月からは作家の林真理子さんの推薦を受けて、日本大学の常務理事の職に就いています。

よく疲れないねと言われますが、少なくとも書きものについては書きたいことを書いているので、むしろストレス発散になっています。

落ち目にならないかぎり、70歳くらいまでは、このスタイルで仕事を続けるつもりです。健康を害するより話がつまらなくなって落ち目になるほうが、よほど怖いことです。

■好き勝手に暮らしているから免疫機能が高い

糖尿病も高血圧も心不全も検査上での病気ですが、2020年に帯状疱疹(たいじょうほうしん)、2021年に五十肩をやったくらいで(これも当座はかなりつらかったが)、なぜか風邪もひきませんし、PCR検査で陽性になったことは3度ありますが、これだけの基礎疾患があるのにすべて無症状でした。

好き勝手に暮らしているから免疫機能が高いのだろうと信じています。

そして、いつも周囲の人に言われるのですが、歩くのは速い。青信号が見えるとすぐに走ってしまう。自分でも心不全とは思えません。

歩行者用信号機
写真=iStock.com/laymul
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/laymul

周囲のお世辞を真に受けているのかもしれませんが、見た目も若いようです。確かにずっとボツリヌス毒素(ボトックス)の注射はしていましたが、コロナ禍になって3年ほどやっていなくても、なぜかしわができません。

私が、健康というのは検査データが正常値を指すことではないと主張できるのは、たくさんの高齢者を診てきたことだけが理由でなく、自分の肌感覚からそう言えるからなのです。

■5年後10年後はわからないから今の幸せを大切にする

とはいえ、これだけの異常値を実質放置して、好きなものを食べ、ワインを毎日飲む暮らしをやめないのですから、今はよくても、5年後、10年後のことはわかりません。

平均寿命まで生きられないことや、腎臓を悪くして透析を受けるなどということも十分あり得る話です。

実は、私はこの暮らしを、自分を使った人体実験のつもりで続けています。

「フィンランド症候群」という言葉があります。フィンランド政府保健局が首都ヘルシンキ在住の40~55歳の男性で、心臓疾患系の危険因子を抱え、生活習慣が似ている1222人を対象として、15年にわたって行った調査研究のことです。

被験者の男性を二つのグループに分け、一方には「高血圧対策の投薬や生活指導などの介入」を行い、もう一方には「なにもせずに様子を見守」った。その結果、生活指導の介入を行ったグループのほうが、死亡率や自殺率等が高かったというのです。

この話には異論もありますが、私は長年の高齢者の臨床経験から、検査データの異常値より心理的ストレスのほうが体に悪いと信じるようになりましたから、この結果に頷(うなず)けます。

ただ、日本で同じような研究はなされていません。強いて挙げれば財政破綻で市民病院が閉院になり、総合病院がなくなった北海道夕張市で、かえって三大疾患の死亡率が下がったという事実があります。

いずれにせよ日本では血圧や血糖値を下げることで寿命が延びたり、病気が減ったりするという大規模な比較追跡調査はありません。欧米のデータを鵜呑(うの)みにしているだけで、彼らと日本人とでは生活様式も食生活も疾病構造もまったく違います。

どちらが正しいかわからないなら楽で気分がいいほうがいい、ということに私は賭けて、自分を使って実験をしているわけです。

この答えは20年くらい経たないとわかりませんが、信じているから自分でできるのも確かなことです。

■薬は自分の苦しみを取るために飲む

とはいえ、私が医療のお世話になっていないかというと、実はそうではありません。血圧の薬は多少飲んでいますし、心不全の治療のための利尿剤も飲んでいます。慢性下痢なので毎日数種類の胃腸薬も飲んでいます。

実は1年くらい前まで毎朝頭痛がするので、鎮痛剤を飲み続けていました。近藤誠先生(編集部注:『患者よ、がんと闘うな』などのベストセラー多数の医師。2022年8月死去)と雑誌で対談した際に、いかに鎮痛剤が体に悪いかを聞いてやめてみたら、思ったほど頭痛が悪くならなかったので、今はやめることができました。

大きなカプセル錠剤をひとつ、手に持っている
写真=iStock.com/Roman Choknadiy
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Roman Choknadiy

私の場合、原則的に検査データを正常にするより自分の苦しみを取るために薬を飲んでいます。それが本来の使い方だと信じているからです。

ただ、それ以上に心がけているのが「足し算医療」です。年をとるほど、体の中で足りないものが出てきます。ならば、薬を使って高い値を下げていく引き算医療より、体に足りなくなったものを足したほうが元気になれるはずです。

■栄養は「余る」より「足りない」害のほうが大きい

私のアンチエイジングの師匠であるクロード・ショーシャ先生は、ジャッキー・チェンをはじめ、世界のセレブリティの老化予防の主治医を務める、その道の第一人者ですが、私は彼の処方するサプリメントをずっと飲み続けています。

ショーシャ先生のクリニックでは、尿の検査をして、さまざまな代謝産物や有毒な物質を分析して足りないものを見つけ出し、一人一人違うサプリメントを処方してくれます。私は足し算医療として10種類以上のサプリメントを飲んでいますが、そのせいか調子はいいです。

自分のクリニックで行っている男性ホルモンの補充療法も、足し算医療としてずっと続けています。これはサプリメントと比べてはるかに即効性があります。頭も冴えるし、意欲も保たれる。さらに筋肉もつきました。歩くのが速いのはそのためではないでしょうか。

もちろん、栄養も十分摂るようにしています。前述の血糖値やコレステロール値を見るとほかの医者なら許さないような摂取量ですが、栄養についても余る害より、足りない害のほうが大きいと信じています。

実は、私はこの「足し算医療」もここ2、3年提唱しているのですが、これについても自分が実験台のつもりでいます。そして体にいいとされているものは、あれこれと試し、調子がよくなったものだけを残しています。

検査データはかなり悪いところが多いですが、主観的には元気でいることができています。

■社交を絶やさず、脳を若々しく保つ

ほかに私が心がけていることといえば、脳を若々しく保つことです。そのひとつが、前頭葉を使うことです。

コロナ自粛に反対したり、ウクライナ戦争の報道姿勢が偏っていないかと提起したりするのも、人が言っていないことを考えることが前頭葉にいいという信念のもとに行っています。

『テレビの重罪』(宝島社新書)、『マスクを外す日のために』(幻冬舎新書)などの本を立て続けに出したのも、自分の前頭葉のトレーニングにもなるはずだし、読者にとっても前頭葉を刺激するはずだと信じているからです。

前頭葉を使うという意味では、私の場合、コロナ禍でも社交を絶やさないようにしていました。頻度は減りましたが、ワイン会はずっと続けています。

いろいろな人と会って話すことの脳への刺激は、格別です。

たまたま、本が売れて珍しく経済的に余裕のある状況になっていますが、前から欲しかったワインを次々に買うので、貯金が増えません。

ハングリーなほうが働く気になりますので、今の状況は私にとってちょうどいいと思っています。ワインのコレクションが心を豊かにしてくれますし、いつ誰と飲もうかを考えるとワクワクすることもできます。

■人に相手にされ続けることが、私にとって最高の健康法

自分自身、多くの人の老いざまを見てきたおかげで、「こんなトシヨリにはなりたくない」「こんなトシヨリになりたい」というイメージが、50代くらいからだんだん固まってきました。実は、それを2022年5月末発売の『老いの品格』(PHP新書)という本にまとめました。

私が本に書いているのは、自分が実践していることより、努力目標である場合が多いです。たとえば『感情的にならない本』(新講社)という本がベストセラーになりましたが、自分が感情の起伏が激しいことを自覚していましたので、努力目標として書いた側面が大きいのです。

『老いの品格』にも、自分の努力目標、自分がなりたい高齢者像を書いています。結論的には、私にとって老いの品格とは、品がいいこと、賢いこと、面白いことです。

品がいいというのは、自身の老いを素直に認め、ジタバタしたり、不安に振り回されたりせずにおおらかに生きることです。そういう人は妙なオーラを醸し出し、それが品のように思われるのです。

賢くというのは、物知りということではなく、酸いも甘いも噛み分けてきた人ならではの発想ができることです。

和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)
和田秀樹『老いたら好きに生きる』(毎日新聞出版)

世の中、理屈通りにいかないということを人生経験で知ってきた人なら決めつけもしませんし、多様な考え方ができるのです。そういう賢さを私も身につけたいものです。

日本は同調圧力が強く、意見や世論が斉一化しやすい社会ですが、高齢者が人生経験から世論とは違ったことを言えると面白いと思われるはずです。

人が話を聞きたがるのは、そういう面白い高齢者だと信じていますので、私もなんとか人様に面白いと言われるようになりたいし、面白くなくなったと思われないように努力するつもりです。

人に相手にされるようなトシヨリであり続けることが、私にとっての最高の老化予防法なのです。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪市生まれ。精神科医。東京大学医学部卒。ルネクリニック東京院院長、一橋大学経済学部・東京医科歯科大学非常勤講師。2022年3月発売の『80歳の壁』が2022年トーハン・日販年間総合ベストセラー1位に。メルマガ 和田秀樹の「テレビでもラジオでも言えないわたしの本音」

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(精神科医 和田 秀樹)

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