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スマホとSNSは最悪の組み合わせ…世界的精神科医が「スマホでSNSを見てはいけない」と警告する理由

プレジデントオンライン / 2024年2月7日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

心の健康を保つためには、なにに注意するべきか。スウェーデンの精神科医、アンデシュ・ハンセンさんは「スマホを触る時間はコントロールするべきだ。特にSNSを長時間見ると、私たちの脳は強いストレスを感じやすい」という――。(第2回)

※本稿は、アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

■なぜ人間の脳は「孤独」を嫌うのか

歴史上、群れから追い出されることは確実に死を意味しました。人間にとってグループはそれほど大事なので、なぜ脳が孤独を大きな危険だとみなすのかも理解出来ます。

長期間孤独でいると、脳は「何かあった時に誰も助けてくれない」と受け取ります。そのため普段以上にその人を警戒させ、常に最悪の事態に備えさせるので、深く眠れなくなります。

また「闘争か逃走か」の状態に入るので、脳に「他の人は自分に敵意を持っているかもしれない」というシグナルが送られてしまいます。誰も助けてくれないのですから、油断するよりも警戒しておいた方が良いのです。

狩猟採集民ならそれで命が助かったかもしれませんが、現代の私たちには悪い影響の方が大きくなります。周りから見ると、その人はとげとげしく、疑ぐり深く、思い切り嫌な人に見えてしまうことがあるからです。

■引きこもりになってしまうきかっけ

他人をネガティブに捉えるようになると、長期的には引きこもってしまう恐れもあります。

「みんなで集まる時にも私には来てほしくないんだろうな。だったら行かないでおこう」そんな風に考えてしまうので、簡単に負のサイクルに陥ります。その結果誰からも誘われなくなり、それを脳は「やっぱりそうだった」と解釈するのです。

「ほらやっぱり、私には来てほしくなかったんだ――」そうしてますます引きこもるようになっていきます。

大切な友人が連絡を取りたくなさそうだったり、誘っても興味がなさそうだったりした場合でも、その人が本当に人付き合いを避けたいのではなく、孤独のせいかもしれないということを知っておくといいかもしれません。

それでも根気よく連絡を取り続け、集まる時には誘いましょう。楽しいことをする時に誘わないと、「あなたはもうグループに属していない」というシグナルになってしまいます。

■「孤独」と「一人」の違い

辞書で「孤独」という単語を調べるとこんなことが書かれています。「望んでいる社会的接触と実際に感じている社会的接触のレベルに差があり、不安になること」。

難解な説明ですが、大事なことが2つ書かれています。「孤独が不安を生む」こと、そして「実際にどのくらい社会的接触があるのかと、どのくらい望んでいるのかという本人の感覚の差がポイント」だということです。

つまり、「オットーは7人しか友人がいないから孤独だ」とは言えないのです。オットーはそれ以上友人をほしいと思っていないかもしれません。それならば希望の人数と実際の人数に差はないので、不安も生まれません。

メンタル的に元気でいるために、それほどたくさんの友人は要らないという人も多いでしょう。一方で、15分以上誰とも連絡を取らないとパニックになるような人もいます。

また、1人でいても他の人と親密さを感じていることもあれば、たくさんの人に囲まれていても孤独だと感じる場合もあります。つまり、「あなたが孤独だと感じるなら孤独」なのです。孤独だと思わないなら孤独ではありません。

■病気の確率が上がるケース

孤独を感じているせいで身体が病気になることもありますし、うつにつながることもあります。孤独な人はそうでない人よりも寿命が短いことも証明されています。

ですが、あわてないでください。病気の確率が上がるのは長い期間、何年も孤独でいた場合です。それにあくまで「確率が上がる」だけです。孤独な人全員が病気になるという意味ではありません。

違いをはっきりさせておきましょう。1人でいたくて1人になるのは「1人でいる」だけで、たまたま1人きりになったとか1人がつらくない場合です。

一方、「孤独」というのは1人がつらい場合に使う言葉です。なお、孤独感は生物として自然な感情で、誰もが時々感じるもの――そう、まさに「不安」と同じような存在なのです。

■現代ほど自分がダメに思える時代はなかった

連帯したグループから追い出されないよう、脳は常に「私はこのグループに適している?」「私で大丈夫?」「私にはここにいさせてもらえる価値がある? そのくらい賢い? 面白い? かっこいい?」と問いかけています。

しかし現代の私たちが生きる環境は脳が進化した頃とはまったく違っています。今ほど自分がダメに思える理由が多い時代はいまだかつてありません。

SNSでは常に、見た目には完璧な人生を見せつけられます。友人の修整済みの写真投稿(誰だって1番素敵な自分を見せたいですし、満足した写真しかのせません。それは皆同じです)、さらには何千人というインフルエンサーのキラキラした人生が連続投下されてきて、それと自分を比べてしまいます。

後ろに見えている景色からインテリア、化粧、照明まですべてプロの手を借りていると頭ではわかりつつも、です。

写真はもちろん編集されていて、ちょっとした難点くらいいくらでも隠せます。その結果、とてもではありませんが自分には手の届かないようなレベルになっています。

自分にとっての自分(脳が見せる自分のイメージ。お世辞にもイケてるとは言えません)と他の人(彼らが見せたい素敵なイメージ)を比べたら、いつだって自分が負け犬、もう本当に完敗です。

ベッドに横たわり、スマホを使用する女性
写真=iStock.com/recep-bg
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/recep-bg

■SNSが心の健康に与えている影響

そして私たちの多くが、起きているほとんどの時間スマホを手にしているため、常に自分よりもかっこよく、賢く、リッチな人気者がいることを思い知らされることになります。

その影響で、私たちはヒエラルキーの下へ下へと落ちていき、グループから追い出されるリスクが高まったように感じるのです。それを脳は何よりも恐れているはずなのに。

とはいえ「人間はこれまでもずっと自分を他人と比較してきたのでは?」と思うかもしれません。それはそうなのですが、昔はグループも小さくてぱっと見渡せるくらいのサイズでした。

ところが現代の私たちは世界中の人と競っているのです。

SNSを見ている時間やインフルエンサーの存在がどれだけ影響を与えているのか、正確に証明することはできませんが、グループのヒエラルキー内で自分の地位が下がり続けていると感じると、心の健康を害するのは実に当然のことです。

■脳が勘違いする

様々な調査で、1日に4~5時間SNSをやっている若者は「自分に不満を持っている」「不安や気分の落ち込みを感じている」ことが示されています。

とりわけ10代の女子にそれが顕著なのは、女子の方がスマホを見ている時間の多くをSNSに費やしているからかもしれません。

アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮新書)
アンデシュ・ハンセン『メンタル脳』(新潮新書)

平均的に言うと、同世代の男子はもっとゲームをしています。調査対象になった15歳女子の62%が心配、腹痛、不眠といった長期的なストレスの症状を訴えていて、80年代に比べてその数は倍になっています。

私たちは必死でグループに属していようとした人たちの子孫です。1日に何時間も他人の完璧な生活と自分を比べてしまうことで、脳は「自分はヒエラルキーの1番下にいる。グループから追い出されるかも!」と勘ちがいしてしまうのです。

それならば、自分にそんなメッセージを送る時間を制限する、つまりSNSを見る時間を減らすのが良いでしょう。

不安には深呼吸が効くというアドバイスをしましたが(67ページ参照)、ここでは「SNSに費やす時間を1日1時間に留める」というのがアドバイスです。そうすれば心が元気になる可能性も上がります。

■セロトニンの大事な役割

脳の中でつくられる「セロトニン」は驚くべき物質で、メンタルの様々な仕組みに影響するため、その役割も複雑です。しかし最も重要な仕事は、私たちが「どのくらい引きこもりたいのか」を調整することでしょう。

セロトニンのレベルが低いとその人は自信を無くし、後ずさり、自分の殻に閉じこもってしまいます。これはうつによくある行動なので、一般的な抗うつ剤にはセロトニンのレベルを上げる効果があります。

セロトニンの役割を理解するために、わかりやすい例を2つ挙げてみましょう。

①セロトニンのレベルを上げる薬の混ざった水に小さな魚を入れると、魚たちは自信満々になります。慎重ではなくなるので、大きな魚に食べられてしまう危険が上がります。

逆にセロトニンのレベルを下げる薬の入った水に入れると魚は隠れてしまい、飢え死にする危険があるほど慎重になります。つまりセロトニンのレベルがちょうど良くないと自然界では命に関わるのです。


②カニはよくケンカをしますが、たいていは優勢な方のカニが相手を引き下がらせます。しかし劣勢なカニにセロトニンのレベルを上げる薬を与えると、そのカニは自分がヒエラルキーの上にいると思い込み、引き下がろうとしません。

サルや人間といった大型生物のセロトニンもほぼ同じように機能します。ヒエラルキーの上位にいる個体は、人間でも脳のセロトニンのレベルが高いようです。それが社会的な自信につながっているのでしょう。

■「自分が思っているヒエラルキーの位置」=精神状態

さてここで、「グループの中の居場所を失うのが怖い」という話に戻ってみましょう。もうわかると思いますが、その恐怖はセロトニンのレベルが下がったことからきています。

セロトニンのレベルを上げる薬を飲むと、多くの人のメンタルが回復するのもよくわかります。なぜこんな寄り道をしてまで魚やカニの話をしたかというと、「自分が思っているヒエラルキーの位置」と「その人の精神状態」は大いに関係があることを示すためです。

先ほどの「SNSの時間を限定する」というアドバイスを思い出し、自分のメンタル改善に役立てましょう。

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アンデシュ・ハンセン(あんでしゅ・はんせん)
精神科医
ストックホルム商科大学で経営学修士(MBA)を取得後、ノーベル賞選定で知られる名門カロリンスカ医科大学に入学。現在は王家が名誉院長を務めるストックホルムのソフィアヘメット病院に勤務しながら執筆活動を行い、その傍ら有名テレビ番組でナビゲーターを務めるなど精力的にメディア活動を続ける。『運動脳』は人口1000万人のスウェーデンで67万部が売れ、『スマホ脳』はその後世界的ベストセラーに。

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(精神科医 アンデシュ・ハンセン)

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