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中学受験に失敗しても全く問題なし…「開成校長→北鎌倉女子学園長」が指摘する進学後に激伸びする子の特徴

プレジデントオンライン / 2024年2月3日 11時15分

撮影=プレジデントオンライン編集部

子供を賢く育てる家庭の共通点は何なのか。日本一の東大合格者数を輩出している開成高校の元校長・柳沢幸雄さん(現北鎌倉女子学園長、東京大学名誉教授)はSAPIX YOZEMI GROUP共同代表・髙宮敏郎さんとの対談の中で、「生徒には『潜在能力としては十分なものを持っている』と言い聞かせています。すると、本当に伸びる。高3から急激に伸びて2ランク上の大学に合格する生徒も増えている」と語っている――。

※本稿は、髙宮敏郎『「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること 最難関校合格者数全国No.1 進学塾の教育理念』(総合法令出版)の一部を再編集したものです。

■ほめることの教育的効果

【髙宮】先生は、開成の校長時代に「日本の18歳は世界一だ」とおっしゃっていました。開成の生徒たちが“世界一”なのでしょうか。それとも、日本の子どもたち一般にも当てはまることなのでしょうか?

【柳沢】開成は、偏差値的に見ると非常に優秀な学校です。それに比べると、北鎌倉女子学園は遠く及びません。ただ、そこで教えていても、やっぱりその思いは確実にあるのです。「日本の高校生は優秀だ」と。開成の生徒は、激しい競争試験を打ち勝ってきています。「私は勝ったんだ」という強烈な成功体験が根っこにあるので、自己肯定感の高い子が多い。

ところが、北鎌倉女子学園の生徒は、これまでそういう自己肯定感を得られる場が少なかった。だから、常々「君たちは、潜在能力としては十分なものを持っているんだよ」と生徒に言い聞かせています。そうすると、生徒たちは本当に伸びるのです。

これは今年(2023年)の3月に卒業した生徒の話ですが、高校3年生の6月に私のところへやってきて、「先生、小論文の書き方を教えてください」と言いました。私は「ああ、いいよ」と、すぐに引き受けました。北鎌倉女子学園は何しろアットホームで、塾のように個別指導ができる学校ですからね。

すると、芋づる式に20人ぐらいの生徒たちが集まってきました。受験する学校がそれぞれ違いますし、まとめて教えるわけにもいかないので、いくつかのグループに分けて指導しました。そうすると、本当に成績が上がりました。私の感触としては、当初彼女たちが志望していた大学よりもワンランク、ツーランク上を狙える力がついたのではないかと思います。

【髙宮】子どもたちには、それだけ伸びしろがあるということですね。

【柳沢】そうです。伸びしろがいっぱいあります。先の例で言えば、私のところに来た生徒の、ほぼ全員が第一志望校に受かりました。要するに、大切なのは「いかに自信をつけさせるか」「自信を感じさせるか」ということです。偏差値が高いとされている学校では、入学試験の競争が非常に厳しいので、その試験に受かって「勝った」という実感があれば、誰かに後押しされなくても自己肯定感が育まれます。しかし、そうでない学校の生徒については、誰かがきちんと自己肯定感や成功体験を確信できるようにしてあげなければなりません。

それなのに、日本ではそういう教育が学校でもできていなければ、家庭でもできていない。親はたいてい、「あんたなんて、どうせダメでしょ」「どうして、いつもそうなの?」と言うだけです。子どもは「親のほうがダメなんじゃないの?」と言いたくなるけど、それを口にするとケンカになるから言いません(笑)。

■なぜ開成は中1の6月に相模湖でカレー教室をするのか

【髙宮】そうすると、開成の校長先生として「日本の18歳は優秀だ」「世界に通用する」と考えていらしたのは、少なくとも開成の子たちには自信があり、勉強ができるという理由からだったんですね。

しかし、立場が変わって、偏差値としては開成に及ばない学校の生徒でも、「自信を持たせればもっと伸ばせる」というように考えが変化したということでしょうか。

【柳沢】いいえ。その発言も、開成の生徒だけを念頭に置いていたわけではありません。当時から、いろいろな学校で講演をしたり、模擬授業をしたりして、さまざまな生徒と接する中で感じていたことです。日本の18歳は本当に優秀なのです。

うまく引っ張ってあげると、良いところがたくさん出てきます。それなのに、家庭も教員もその素質を十分に引き出してあげられていません。なぜなら、たいていの親は、子どもが自分の知っている枠の中に収まっていれば安心するからです。

【髙宮】具体的に、家庭ではどのようなことに取り組めばよいのでしょうか。

【柳沢】もちろん、それは子どもの年齢にもよります。脳科学者によると、子どもの前頭葉の活動が主に成長するのは10歳くらいからだといわれています。脳は後ろのほうから順に成長するらしいのですが、その部分は、運動を司る脳幹や小脳です。つまり、その年齢までは、自分の意思と体の動きを一致させることが大事というわけです。

例えば、卵を割るときに、グシャッとつかんだら潰れてしまいますが、ちょうどよい力加減で、チョンチョンと叩いて殻にヒビを入れ、パカッと開けばきれいに割れます。このように、自分の意思と体の動きをシンクロさせることが、10歳までの課題と言えます。10歳は小学校4年生ですから、それまでは体を動かしておけばいいのです。

【髙宮】受験があるからと言って、ただ机に向かわせるのは逆効果だと。

【柳沢】はい。では、何をやらせたらいいか。それは、家のお手伝いです。

【髙宮】開成の現校長である野水勉先生の、カレー教室の話を思い出しました。開成の子どもたちは、中学1年の最初にカレーを作るそうですね。

【柳沢】はい。6月に実施する学年旅行中の恒例イベントです。最終目的地は富士山ですが、その前に相模湖に行き、カレー教室をやります。それも、ただ作って終わりではありません。今はSDGsの時代ですから、「ゴミの量を最小にしたチームが勝ち」というルールを設けて、グループ対抗で競います。

【髙宮】そこでも競争させるわけですね(笑)。

【柳沢】まず別々のクラスから7人を選んで1グループをつくり、ほぼ初対面のチームでカレーを作ってもらいます。不慣れなため、水を入れすぎてスープカレーになってしまう班が多いのですが、食べ残すとゴミになるので、最後にスープをごくごくと飲み干す生徒もいます(笑)。それぞれの性格や個性が見えて、面白いイベントです。

キャンプでカレーを作る
写真=iStock.com/Yue_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yue_

■東大新入生の小さい頃の思い出1、2位は「親との交流」

髙宮敏郎『「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること 最難関校合格者数全国No.1 進学塾の教育理念』(総合法令出版)
髙宮敏郎『「考える力」を育てるためにSAPIXが大切にしていること 最難関校合格者数全国No.1 進学塾の教育理念』(総合法令出版)

【髙宮】生徒たちの手元が危なっかしいなどということはありますか?

【柳沢】特にそう感じたことはないですね。例えば、東大の新入生に小さい頃の思い出についてインタビューすると、一番多いのが「親がよく話を聞いてくれた」という答えです。次点が「家事をしていた」という答えです。小さな子どもは、親が掃除機をかけていると、その周りにまとわりついて、自分でやりたがりますよね。それを面倒がらず子どもに任せると、親も楽できますし、子どももほめられて自己肯定感が上がります。

家事には、ほめるポイントがたくさんあります。卵を上手に割れなくて、殻ごと食べたようなところから、だんだんと上達して、上手に割れて、次第にだし巻き卵が作れるようになる。そこまでのステップを一つひとつほめていけばいいのです。

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髙宮 敏郎(たかみや・としろう)
SAPIX YOZEMI GROUP共同代表
1974年、東京都生まれ。1997年に慶應義塾大学経済学部を卒業後、三菱信託銀行(現・三菱UFJ信託銀行)に入社。2000年、学校法人高宮学園代々木ゼミナールに入職。同年アメリカ・ペンシルベニア大学へ留学し、教育学博士(大学経営学)を取得。帰国後、財務統括責任者を務め、2009年より現職。学校法人高宮学園代々木ゼミナール副理事長、株式会社日本入試センター代表取締役副社長も兼務。「教育はサイエンスであり、アートである」をモットーに、これからの時代を担う子どもたちの教育を支える活動を行っている。本書が初の著書となる。

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(SAPIX YOZEMI GROUP共同代表 髙宮 敏郎)

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