1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

映画では「物語の2割」しかわからないけど…ハリポタ好き芸人・ニシダが「原作厨ですみません」と謝るワケ

プレジデントオンライン / 2024年2月2日 17時15分

撮影=プレジデントオンライン編集部

お笑いコンビ「ラランド」のニシダさんは、『ハリー・ポッター』シリーズの大ファンで、自らを「原作厨」と称している。どこに魅力があるのか。原作の魅力と映画との違いについて聞いた――。(後編/全2回)

■「週刊少年ジャンプ」的な王道ストーリー要素

(前編から続く)

――なぜ、『ハリー・ポッター』シリーズはこれほどまでに愛され続けているのでしょうか?

【ニシダ】ハリー・ポッターは、ひょっとしたらあるかもと思えるような魔法世界を描いています。ちょうどいいファンタジーと言えばいいでしょうか。

例えば『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのように今の世界とは完全に分離した異世界ファンタジーという話ではないし、『スパイダーマン』シリーズのように、なぜ蜘蛛男になったのかをSF的に説明している話でもない。

ただ自分がいる世界のちょっと脇道に行ったら展開されている、そんな身近さを感じられるファンタジーなんです。

学園モノとして主人公たちの成長を描く青春ストーリーという側面と、仲間と協力して巨悪を打ち倒す王道バトルがあるのも人気の理由でしょう。日本人が好きな『週刊少年ジャンプ』的な王道ストーリーですよね。

そういうキャッチーな要素がありながら、細かい世界の設定がものすごく深く設定されているし、一人ひとりのキャラクターは人間臭くて存在感があります。

だから、フィクションとわかっていても身近な出来事のように感じられる。だから読者・視聴者は自分ごとに感じ、魔法世界にのめり込めむのでしょう。

■原作厨とはいえ映画は面白い

――映画の良さはどんなところでしょうか?

【ニシダ】原作厨とはいえ、映画はすべて見ています。やはり世界的に大ヒットしたのは映画の功績が大きいと思います。

みんなが頭の中に思い描くハリー・ポッターはダニエル・ラドクリフだろうし、ハーマイオニーはエマ・ワトソンです。それだけ強烈な画の力をあの映画は持っていたと思います。

ハリーが魔法学校に通う道具を買い集めたダイアゴン横丁やホグワーツ魔法魔術学校など、原作の世界観は忠実に再現されていたと思います。

特に、魔法の映像表現などは本当にかっこいい。ダンブルドアとヴォルデモートが戦うところで、ガラスが飛び散るシーンがあるのですが、僕の脳内で思い描いていたシーンをはるかに超えてきました。

■「屋敷しもべ妖精解放運動」

――それでも映画に不満を感じるのでしょうか?

やはり原作のストーリーの力が人気の最大の要因だと僕は思いたい。前編でも話しましたが、映画は小説で描かれた2割程度しか描いていない。

1、2作目はまだいいんですが、どうしても4作目以降の映画は、小説のダイジェスト版みたいになっています。キャラクターの性格を表すエピソードが省略されているため、人物の深掘りができていないので、ストーリーに入り込めない部分があると思うんです。

映画版でカットされたエピソードに「屋敷しもべ妖精解放運動」というのがあります。

ハリー・ポッターの世界に、「屋敷しもべ妖精」というキャラクターがいます。魔法使いや魔女の家庭に仕え、解放されない限りは主人の言うことに必ず従わなければいけない妖精です。映画版では主にドビーというキャラクターのみが登場しますが、原作では大量に存在する姿が描かれている。

4作目『炎のゴブレット』で主人公のひとりハーマイオニーは、この屋敷しもべ妖精を開放すべきだと主張し、社会運動を学校内で始めるんです。

とはいえ、この妖精は原作内では主人に従うことしかない生き物なのです。だから、妖精側もこの運動に困惑するし、親友のハリーやロンにも「もうそんなことしなくてよくない?」と距離を置かれるんです。

ハーマイオニー・グレンジャー役のエマ・ワトソン、ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ(右)、ロン・ウィーズリー役のルパート・グリント。J.K.ローリング原作の映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』より。2007年12月19日撮影
写真=SPUTNIK/時事通信フォト
ハーマイオニー・グレンジャー役のエマ・ワトソン、ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフ(右)、ロン・ウィーズリー役のルパート・グリント。J・K・ローリング原作の映画『ハリー・ポッターと謎のプリンス』より。2007年12月19日撮影 - 写真=SPUTNIK/時事通信フォト

■原作と映画で違うハーマイオニー

【ニシダ】ハーマイオニーは、原作だと、思想が強く少し厄介な人間なんです。正義感が強くて、自分の行動を疑わない。「あ〜、こういうヤツ大学にいたな」なんて思いますよ。大学の授業と関係ないところでビラ配ってきそうなタイプ。実際いたら絶対仲良くなれないでしょうね。

とはいえ、そんな完璧ではない性格だからこそ作品にリアリティが生まれるんだと思うんです。そもそもが地味な子という設定なんで、役を演じたエマ・ワトソンはかわいすぎましたね。

映画では解放運動のシーンはカット。ハーマイオニーは「聡明で正義感の強い美女」で終わってしまいます。

――このほかに、映画では描かれなかったエピソードはありますか?

孤児のハリーは、魔法学校に入るまで親戚のダーズリー家で過ごします。

ダーズリー家には散々意地悪をされ、彼らを好きな人はいないでしょう。ハリーもダーズリー家から出て行ってせいせいしているといった感じなんですが、小説では最終的にハリーはダーズリー家と和解しています。

そのほか、省略されたシーンはたくさんありますが、映画は映画で好きです。なにより僕は、映画に対して文句があるんじゃないんですよ。

僕はただ、映画だけ観てわかった気になっている人たちに文句があるんです。

「ハリー・ポッターの世界のことなんもわかってないよ」「なんでスネイプが死んで泣いてんの?」「これだけの情報で泣ける?」みたいな。作り手ではなく受け手に対しての文句です。われながら厄介なヤツですね。すみません。

■映像よりも原作の挿絵のほうが大事

――としまえん跡地にできた「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京‐メイキング・オブ・ハリー・ポッター」や、USJ内の「ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッター」はどう思っていますか?

【ニシダ】実は僕は行ってないんですよ。というのも、施設を楽しんでいる人たちにいろいろ言いたくなっちゃうんですよね。

「このシーンのことわかってる?」とか「俺よりハリーのこと知らないのになんで楽しんでるの?」とか。

ウィザーディング・ワールド・オブ・ハリー・ポッターのホグワーツ城
写真=iStock.com/Filmcameraaddict
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Filmcameraaddict

僕にとって映画は原作の世界観を補完してくれるものです。なので、そこまで映画が映し出した世界観を見たいわけでもないんです。映像よりも原作の挿絵のほうが大事だし、それで完結しているし……。

でも、僕みたいな厄介な古参ファンのせいでコンテンツの拡がりが閉じるんですよね。自覚しているのに、思うことは止めらない。だから、行かないようにしています。

■原作に忠実なドラマに対する不安

――原作ファンとして、『ファンタスティック・ビースト』をどう見ていますか?

【ニシダ】ハリー・ポッターの世界の70年前を舞台に描かれたスピンオフ作品です。本編シリーズではあまり描かれなかったダンブルドアとグリンデルバルドの関係性を描いた映画で、作品としてはもちろん面白い。『ハリー・ポッター』の原作者のJ・K・ローリングさんも脚本に入っていますからね。

ヴォルデモートみたいなわかりやすい巨悪がいるわけではないので、本編よりちょっと難解かもしれません。ただそこも噛み応えがあると思ってほしいですね。

まぁ小説が原作としてあるわけじゃないので、ハリー・ポッターシリーズとしては邪道として観ているファンもいるかとは思いますが。

「良くないこととはわかっていても、映画ファンにはモヤモヤするんですよね」
撮影=プレジデントオンライン編集部
「良くないこととはわかっていても、映画ファンにはモヤモヤするんですよね」 - 撮影=プレジデントオンライン編集部

――最近では、ハリー・ポッター映画版のキャストを一新したドラマを制作するというニュースがあります。

【ニシダ】先月末(1月22日)に、脚本家の決定に向けて動き出したというニュースがありましたね。

僕はちょっと不安ですね。映画よりも原作を忠実に描くことを謳っていて、原作小説1つを1シーズンとして描くとされています。こうなると原作ファンとしてはより粗探しを始めてしまう気がします。「はい、ここ描かれていません〜!」みたいな。また、映画ファンからしても映画との違和感を指摘されてしまう恐れはありますよね。

完璧に細部まで描くとすると、たとえば原作にある「薬草学」だけで一話が終わる、つまらない回も出てきてしまう。でも、それを面白くしようと改変すると「ほら、やっぱりちゃんと描かれていない!」となっちゃう負のループが生まれる。

■「原書厨」という存在

――ハリー・ポッターを英語版の原書を読んでいる人たち、通称「原書厨」はどう思いますか?

【ニシダ】目の上のたんこぶですね。日本語訳の間違いや不十分さを指摘するまとめサイトもあるくらい熱心な人たちもいます。

原書厨もさらに細分化していて、同じ原書でもアメリカ英語のものとイギリス英語のものがあるようで、それはイギリスのほうが偉いそうです。もうそこまでいくとよくわかんないじゃないですか。

このインタビューを原書厨が読むと「原作厨がなんか言ってらァ! 原書のほうが偉いんだよ!」ってなりそうで、いまからすでに怖いですね。僕たちのYouTubeでハリー・ポッターの話をした時も、いろいろとご意見はいただきましたからね。

とはいえ僕も映画しかみていない人たちに対して結構文句を言っていますからね、人を呪わば穴二つです。

突き詰めると、著者のJ・K・ローリングさん以外は何を言っても叩かれる話になるんです。まあ、僕は日本語訳で十分楽しいし、それでいいかな。

----------

ニシダ お笑い芸人 ラランド
1994年7月24日生まれ、山口県宇部市出身。2014年、サーヤとともにお笑いコンビ「ラランド」を結成。著書に『不器用で』(KADOKAWA)がある。

----------

(お笑い芸人 ラランド ニシダ)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください