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ロンドンでもパリでもない…「客単価5万円の高級レストラン」が海外初進出に選んだ意外な都市の名前

プレジデントオンライン / 2024年2月20日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Zastrozhnov

「WAGYUMAFIA」といえば、野太い威勢のいい声で「いってらっしゃい!」と掛け声をかけながら料理を提供する姿が有名だ。どうしてこのようなスタイルになったのか。代表の浜田寿人さんは「和牛のおいしさはもちろんのこと、楽しんでもらうために始めたが、『これぞWAGYUMAFIAのパフォーマンスだ』と、すっかり世界中で支持を受けている」という──。(第4回/全5回)

※本稿は、浜田寿人『ウルトラ・ニッチ』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

■独特のパフォーマンスはエンターテインメント

和牛のおいしさはもちろんのこと、楽しんでもらうという点で、これぞWAGYUMAFIAのパフォーマンスだとして支持を受けているのが、野太い声の「いってらっしゃい!」です。

にらみつけるようなポーズで、お客さまに光り輝く和牛を見てもらう。WAGYUMAFIAのレストランや、ワールドツアーやポップアップなど、世界各国で開催しているイベントでも、お馴染みのパフォーマンスです。

外国人には「EAT-N-SHOUT」(イートゥンシャウト/いってらっしゃい)」という意味だと説明しています。一種の語呂合わせのようなものですが、日本の和牛を世界に知ってもらうためのエンターテインメントの一環だと考えています。

■香港発、世界市場へ

このパフォーマンスを広く世界に知ってもらううえで、大きな役割を果たしたと思えるのが、海外出店でした。2018年11月、WAGYUMAFIA初の海外出店が、香港でした。

もともと金融市場のある都市は、和牛を食べてもらうという点で、とても魅力があると考えていました。富裕層が多くいますし、また、金融の世界にいる人たちは世界を飛び回っているので、WAGYUMAFIAを知ってもらえれば、彼らが世界中にその情報を持って行ってくれるという狙いがありました。

そこでWAGYUMAFIAを作るとき、僕は世界10の都市への展開を考えたのでした。ワールドツアーをしたのは、どの場所が10都市にふさわしいかを見極めるという目的もありました。

和牛は高価です。支払い能力が高い人たちが、たくさんいる場所=都市でなければ、やはり出店は難しい。

ブランディング的な価値はあるけれど、本当に利益を出せるか、続けられるか、ということは、現地のイベントパートナーなどに確認していきました。そこはシビアに見極めなければならないと思っていました。

■一人500USドルの価格帯で勝負できるか

ツアーでいろいろな都市を回りながら、その都市の可能性を肌感覚で掴んでいく必要がありました。

美食の街パリも、そこまでの高単価な店が数多くあるわけではありません。イタリアでもミラノぐらい。スペインではマドリード以外は難しい。

デンマークのコペンハーゲンからもオファーをもらいましたが、大きなハードルがありました。デンマークというのは、とても税金が高いのです。税金を加味した金額を、多くの人に落としてもらえるかどうか。疑問符がつきました。

僕らの価格帯は一人500USドルがアベレージです。この金額を出せるか出せないか、ここが大きなポイントとなりました。

欧米を強く意識していた中で、僕は最終的にまずはアジアに出すことを決断します。まずは地の利。アジアのほうが近いからです。お店で使うための和牛の輸出という観点でも、僕の物理的な移動という観点でも、魅力があった。

そしてアジアで金融都市といえば、香港。富裕層がたくさんいる中国の玄関口というイメージもある。グローバルでやっていくとき、この場所は理想なのではないかと思いました。そして何よりも香港は食の都、そして日本に旅行でやってくるローカルが多い。

香港の食通の日本食理解度は、はっきりいって日本人でもかないません。それぐらい日本食についての造詣が深い。ここもショートカットできるポイントとしては大きかった。

■香港を選んだ理由はビジネスパートナーの存在

ただ、香港を選んだ最も大きな理由は、パートナーとの出会いです。ジェラルド・リー。ニックネームでジェロと呼んでいます。香港で、当時カフェチェーンを10店舗ほど展開している元弁護士の若き起業家でした。

彼がインスタグラムで和牛カツサンドを見つけて、「コラボレーションをしたい」と言ってきたのです。ただ、僕はカフェにカツサンドを出すつもりはありませんでした。そこで、難しいと伝えると、わざわざ日本まで飛んできて、僕に会いに来てくれたのでした。

その後、今度は僕が香港に会いに行って、いろいろな話をしているうちに、年齢が近いこともあって仲良くなりました。

そこで聞いたのは、なぜ彼がコラボレーションをしたいのか、でした。彼は上場を考えていたのですが、事業ポートフォリオを戦略的に考えたとき、日本の有名な食ブランドを入れておきたいと感じるようになった、というのです。それも新しいブランドを持ってきたい。

これまでやってきたのは、すべて自分たちのプライベートブランド。そんな中で、初めての海外コラボレーションに、日本で最もクールなブランド、WAGYUMAFIAを担ぎたい、ということでした。

■「ハンズオン感」が何より大事

ジェロの提案は光栄なこと。そういう背景があったのなら、と僕は熟考の末に引き受けると決断しました。

彼は元弁護士であり、緻密な人ですが、黒服のボーイからスタートした苦労人で、カナダ育ちの香港っ子です。

浜田寿人『ウルトラ・ニッチ』(ダイヤモンド社)
浜田寿人『ウルトラ・ニッチ』(ダイヤモンド社)

僕は店作りやメニュー作りなどに細部までこだわりますが、半年にわたる僕の毎日の細かな修正作業やオーダーにも嫌な顔をせず、さらに部下に振ることもなく、自らが担当して各チームに落とし込んでくれました。このハンズオン感が何よりも良かった。

こうしてできたのが、「WAGYUMAFIA HONG KONG」でした。2018年11月のことです。

尾崎牛、神戸ビーフを扱い、おいしい和牛を食べてもらうと同時に、WAGYUMAFIAならではのパフォーマンスも楽しんでもらえる店にしました。「いってらっしゃい」のみならず、さまざまなパフォーマンスがあります。

■客席25席で年商6億円…

この店舗が、想像を超えるヒットになりました。客席数は25席ながら、初年度から年商が6億円を超えたのです。客単価は日本の5万円を超える7万円。

すぐにわかったのが、口コミで情報が広がっていったことでした。トップレベルの富裕層の人たちは、口コミこそが最強の情報ツールなのです。

世界中の人たちが集まるのが、金融都市・香港。香港で初めてグローバルなWAGYUMAFIAの姿を見せることができたことで、「これを自分たちの都市でも展開したい」という人たちが次々に現れることになったのでした。

さらに、香港のWAGYUMAFIAに触れて、「やはり本家のWAGYUMAFIAが見たい」と、香港をきっかけにインバウンドで日本に来る人たちも増えました。

■まずは近くの海外を狙え

改めて思うのは、これがもしロンドンが最初だったら、ちょっと遠すぎたかもしれない、ということです。

世界10都市を狙うとはいえ、まずは定期訪問可能な身近なロケーションに海外店舗を構えることが大切。さらに、世界展開するうえでは、主要ハブ空港が存在する都市に展開していくことがポイントです。

そこにはVIPの往来もありますし、人だけではなく情報も伝播していくというメリットがあります。

■2024年、ラスベガスにWAGYUMAFIA誕生

今はコロナ禍でストップしていた海外のプロジェクトもようやく再開し、中東ではサウジアラビアの首都リヤド、そして周辺の主要都市にも展開します。

そして、いよいよアメリカ上陸です。2024年にはラスベガスにWAGYUMAFIAが誕生します。

そのきっかけを作ってくれたのがこの香港の躍進であることは間違いありません。

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浜田 寿人(はまだ・ひさと)
WAGYUMAFIA JAPAN 代表取締役、WAGYUMAFIAエグゼクティブシェフ
1977年生まれ。米国留学の後、20歳でソニー本社最年少入社。カフェグルーヴを22歳で立ち上げる。映画メディアCINEMACAFEを創立し、会員制フレンチレストランのプロデュースを経て、ハリウッドの食ドキュメンタリー映画『フード・インク』の買付・配給を契機に和牛の世界へ。2014年より和牛の本格輸出を開始。2016年に友人の堀江貴文とともにWAGYUMAFIAを立ち上げ、ワールドツアーを世界100都市にて敢行する。WAGYUMAFIAの活動を通して、「世界で勝てる日本の食ビジネス、日本の高級商材は他にもたくさんある」と、日本に眠る未来の和牛のようなウルトラ・ニッチを発見し、育成、応援することをライフワークとしている。また、才能溢れる若手シェフなどの海外展開へのアドバイスなども積極的に行っている。

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(WAGYUMAFIA JAPAN 代表取締役、WAGYUMAFIAエグゼクティブシェフ 浜田 寿人)

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