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日本人の生活習慣は「世界最悪」である…職業、年齢、性別を越えて共通する「座りっぱなし」という悪習慣

プレジデントオンライン / 2024年2月12日 7時15分

出所=『1日1万歩を続けなさい』

健康で長生きするにはどうすればいいのか。医師の大谷義夫さんは「京都府立医科大学大学院の調査によると、持病がない場合でも、日中座っている時間が2時間増えるごとに死亡リスクは15%上昇する。イスに長く座ることはやめて今すぐ歩き始めるべきだ」という――。

※本稿は、大谷義夫『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)の一部を再編集したものです。

■座っている時間が長いほど死亡リスクが高い

太ってきた。
健康診断で「運動しなさい」と言われた。
高血圧で薬を飲んでいる。
心も体も、なんとなく不調。

多くの人がこうした悩みを抱えています。

そして誰もが「体を動かした方がいい」のはわかっています。でも、できない。それが現実ではないでしょうか。

特にここ数年は、新型コロナウイルスの影響でリモートワークが増え、通勤の手間がなくなったぶん、座る時間が増えたという人も多いのではと思います。

もちろんデスクワークによる「座りっぱなしの弊害」は、これまでも指摘され続けてきました。ただこれはビジネスパーソンに限った話ではありません。

職業、年齢、性別を問わず、現代人の多くは座りっぱなしです。テレビ、スマホ、ゲーム、動画配信サービスと「座ったままで楽しめること」がいくらでもある便利さが、歩かない世界を作り出しているのでしょうか。高齢になるにつれ「のんびり座ってテレビの前で1日を終える」人も増えています。

ずっと座り続けることには、私たちが思う以上に多くの深刻なデメリットがあります。

たとえば京都府立医科大学大学院が6万人を対象に行った調査によると「座っている時間が長ければ長いほど死亡リスクが高い」ことが判明しました(※1)

持病がない場合でも、日中座っている時間が2時間増えるごとに死亡リスクは15%増。

これだけでも恐ろしいのに生活習慣病があると、さらに死亡リスクは上昇することがわかっています(糖尿病27%増、高血圧20%増、脂質異常症18%増)。

■「ダイエットに成功した人」の共通点

生活習慣病の持病があり、降圧剤を飲みつつ「メタボなんだよね」と軽く考えている人は、脅かすようで恐縮ですが座ったまま死に近づいていると言えるかもしれません。

シドニー大学が行った研究によると、日本は世界20カ国のうち「座りっぱなしの国ワースト1」の1つに入っています(※2)

日本の成人は1日平均約7時間、多い人だと10時間も座っており、その他の国と比べると、かなり嬉しくない1位です。

カリフォルニア工科大学の調査(※3)には「ダイエットに成功した後リバウンドしない人は、座っている時間が短い」という報告があります。

ダイエットに成功して3年以上やせたままでいる人が座っている時間は、太ったままの人より3時間短く、コンピューターを使ったりゲームをしたりしている時間も1時間短くなっていたそうです。

座りっぱなしはさまざまな病気の死亡リスクを高めることもわかっています。

こうしたことを理解したら、イスに長く座ることはやめて今すぐ歩き始めてください。

■筆者が実感した「ウォーキングの効果」

かつて私の健康とストレスの解消法は「水泳」で、長年、診察が終わるとジムに行ってプールで泳ぐ習慣がありました。

研究や執筆、テレビ局に依頼された健康番組の企画案など、泳ぎながらアイデアを練ることもしばしば。

ところが新型コロナウイルス感染症発生からの3年間は患者さんが激増し、私が診察室で座る時間は1日12時間超。

帰宅したらクタクタ。悲しいことに多忙でボロボロ。体重もすっかり増えていました。

そこで水泳ではなくランニングを始めたところ、50代という年齢もあってか体力的にはなかなかつらい。

困り果てた私は、いわば消去法でウォーキングを始めたのですがこれが驚くべき効果をもたらしました。

毎朝、昼、夜にとスキマ時間でウォーキングをするうちに、体重は減り、体調がよくなっていったのです。

大谷義夫さんと愛犬の「プー」
撮影=笹井恵里子
大谷義夫さんと愛犬の「プー」 - 撮影=笹井恵里子

■「歩くとひざが痛くなる」はウソ

ただ私は医師であり論文マニアでもあります。

自分の経験だけで「ウォーキングが最高の健康法だ」と断言することはできません。

そこでエビデンスを求めて科学論文を調べたところ、ウォーキングの効果については『ランセット』など、査読の厳しさで知られる権威ある学術誌に掲載されているものも多く、改めてその効果に感嘆しました。

「歩くだけで健康になれるというのは朗報だ」

これは私自身の実感でもありますが、有酸素運動の代表とも言えるウォーキングにはたくさんのメリットがあるとともに、特筆すべきデメリットがないのも見逃せない「メリット」。

この点を軽んじてはなりません。

なぜなら健康法というのは、継続・習慣化してこそ意味があり、デメリットがないことは大きなメリットであるからです。

たとえば「ウォーキングとひざ痛の因果関係は認められない」という調査結果も、世界的に有名な医学雑誌に発表されていることです(※4)

ウォーキングはエビデンスの面からも、メリットの面からも、また私自身の実感からもほんとうにおすすめできる運動です。

■食後の急激な眠気やだるさは危険

通常、食事をすれば血糖値はゆっくり上がりゆっくり下がるものですが、甘いものや食事を一度に食べすぎると、血糖値は急激に上がります。

すると体はその急上昇を抑えるために、すい臓が大量のインスリンを出し、これを一気に下げにかかります。しかし実はこのインスリン、血中の糖分を脂肪に換えて体に溜め込む働きももっているため、過剰に分泌されると脂肪を溜め込みやすく、太りやすい体をつくります。

これが私たちが「太る理由」のひとつです。

食後に血糖値が急激に上がり急激に下がる状態を「血糖値スパイク」と言いますが、この状態に陥りがちな人は空腹時の検査では正常な人が多いことから「隠れ糖尿病」と言われています。

血糖値スパイクを起こすと、体は一気にインスリンを出しますが、この働きが弱いと食後2時間経っても血糖値が下がらなかったり、逆に過剰に出すぎると急激な眠気やだるさ・頭痛の他、イライラや吐き気をもよおすこともあります。

ですからこれらの意味からも食後きちんと血糖値を下げることは非常に大事になってきます。

そこでご紹介したいのが、ドイツ体育大学の実験です。

ドイツ体育大学では、ドーナツを食べた学生を「食後すぐ歩くグループ」と「じっとしているグループ」に分け、その血糖値を比較しました。

靴ひもを結ぶ人のイメージ
写真=iStock.com/Rossella De Berti
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rossella De Berti

この実験によると、カロリーの高いドーナツは、食後に血糖値の急上昇を招いたものの、すぐに歩いたグループの血糖値は、じっとしていたグループに比べて早く下がることがわかりました。

■ウォーキングは「食前」「食後」どちらが有効?

そこでみなさんにご提案したいのは、食べたらすぐに歩いて余分な糖はさっさと使い、血糖値をできるだけ早く下げてほしいということです。

大谷義夫『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)
大谷義夫『1日1万歩を続けなさい』(ダイヤモンド社)

先日あるテレビ番組が密着取材で我が家にこられ、私が毎日、東武デパートに行って家族のためにケーキを買う様子を取材していかれたのですが、「毎日ケーキを食べて大丈夫ですか?」という質問に、私は「食べたらすぐに歩く」を強調させていただきました。

血糖値を安定させるには「食前」と「食後」どちらのウォーキングが有効かといえば、先の実験結果の通り食後のウォーキングがおすすめです。

ちなみに「食前」のウォーキングには、脱水に陥るリスクがあるというデメリットもありますのでご注意ください。

私たち人間は1日の必要水分量のうちのかなりの部分を食事からとっています。

ですから食事前のウォーキングで汗を大量にかいてしまうと、脱水に陥るリスクが高まるのです。

その意味からもウォーキングは「食前」「食後」どちらにするかを迷ったら「食後」にするのがおすすめです。

【参考文献】
※1 Koyama T, et al. Effect of Underlying Cardiometabolic Diseases on the Association Between Sedentary Time and All‐Cause Mortality in a Large Japanese Population: A Cohort Analysis Based on the J‐MICC Study. J Am Heart Assoc. 2021 Jul6;10(13):e018293. doi: 10.1161/JAHA.120.018293. Epub 2021 Jun 14.
※2 Bauman A et al. The descriptive epidemiology of sitting. A 20-country comparison using the International Physical Activity Questionnaire (IPAQ). Am J Prev Med. 2011 Aug;41(2):228-35. doi: 10.1016/j.amepre.2011.05.003.
※3 Roake J, et al. Sitting Time, Type, and Context Among Long-Term Weight-Loss Maintainers. Obesity. 2021 Jun;29(6):1067-1073. doi: 10.1002/oby.23148.
※4 Gates LS, et al. Recreational Physical Activity and Risk of Incident Knee Osteoarthritis: An International Meta-Analysis of Individual Participant-Level Data. Arthritis Rheumatol. 2022 Apr;74(4):612-622. doi: 10.1002/art.42001.

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大谷 義夫(おおたに・よしお)
池袋大谷クリニック院長、呼吸器内科医・医学博士
1963年東京都生まれ。日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医。1989年群馬大学医学部卒業。九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年に池袋大谷クリニックを開院。全国屈指の患者数を誇る呼吸器内科のスペシャリストとして、テレビ等でも情報発信を行う。著書に『絶対に休めない医師がやっている最強の体調管理』(日経BP)など多数。趣味はウォーキング。

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(池袋大谷クリニック院長、呼吸器内科医・医学博士 大谷 義夫)

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