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貧乏な人ほど「高い保険料」でさらに貧乏になっている…「保険で得をするかも」という考え方がヤバい理由

プレジデントオンライン / 2024年2月8日 16時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/maruco

お金持ちは何を節約しているのか。韓国で100万部を売り上げた実業家キム・スンホさんの著書『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)より、一部を紹介する――。

■保険とは貯蓄ではなく、ゲームである

月収が25万円ほどある友人がいる。

ところが、彼は毎月の保険料に8万円払っており、いつも大変そうだ。なぜそんなに高額な保険料を払っているのか聞くと、彼は保険を貯蓄だと考えていた。しかし、保険とはそもそも契約当事者が保険料を支払い、財産や生命、身体に関わる事故が起きた場合に備え、安全網を構築することを目的にしている。

ところで、保険会社は生命保険や損害保険のような日常の危険に対する保険だけを販売しているわけではない。

保障性保険や貯蓄性保険をはじめ、定期保険、終身保険、変額保険、ユニバーサル保険、個人年金保険なども販売している。

保険とは、リスクに基づいた確率のゲームだ。

保険会社、つまり商品を開発する会社は、危険や損失が生じる領域を探し出し、その領域の実際の損失発生件数を計算して保険額を決める。

たとえば、人口1万人の町で「ひとり当たり1万円」ずつ集めると、1億円になる。年間の交通事故死者数がそのうち5人だとすると、それを5人に2000万円ずつ分配するというわけだ。自分がその5人に含まれるかもしれないという不安があれば、年1万円払うと、万一事故に遭っても残った家族は生活できるので、悪くない制度だと言える。

■高額な保険料のカラクリ

この1万円は、この商品の原価となる。これは国や非営利団体が無料でおこなっている事業ではなく、利益を追求する私企業がおこなっている。

彼らは自分たちで保険商品を開発し、宣伝して、事故が発生すれば審査もおこなう。営業費用も必要だ。

さらに保険は積極的な売り込みが必要な商品なので、乗合代理店などを通じて営業、販売されている。乗合代理店では各保険会社の商品を比較分析し、それを消費者に勧める。

ひとつの商品を売るために巨大な会社組織が必要となり、管理費や宣伝費、販売経費がかかるので、原価の1万円にマージンを乗せる必要がある。

問題は、保険会社が各種手当を含め、多い場合は月の保険料の4~10倍もの金額を代理店に手数料として支払っている点だ。つまり、保険料のほとんどが販売手数料として保険外交員に支払われているわけだ。

これだけではない。乗合代理店には最大6倍まで手当が支払われることもある。これを含めると、保険加入者が支払う毎月の保険料の最大16カ月分が手当として出ていく計算だ。保険の解約が難しく、中途解約時に元本割れするのはこのためだ。

■その実態は保険よりも投資に近い

さらに、保険会社はこのように多くの手当を支払うとともに、自社の社員の給与、オフィスの賃貸料、宣伝費などを保険料に含める必要がある。そういうわけで、原価1万円の保険の場合、その保険料は多い場合は月に4万円以上にもなる。

これはちょうど、原価が飲食店の原材料費のようになったと考えればいいだろう。お金持ちなら毎食のように外食できるだろうが、保険に入るのは自分の資産が心配だから保険に頼るような人たちだ。毎日3食を外食するようなぜいたくはできない。

だが、問題はこれで終わりではない。保険会社は保険の名でさまざまな金融商品をも扱っている。これらの商品は、じつは保険というよりも、保険会社で扱っているような商品を保険に見せかけて、顧客のお金で投資をするものだ。

保険に貯蓄や年金が付帯している商品はすべて同じだ。

保険商品にはVIP、スマート、安心、ファースト、一生のような単語が頭についているが、これは私にはこう聞こえる。

「我々はスマートに、一生、何よりも我々のことを第一に考え、顧客をVIPのようにもてなすふりをするので、安心せよ」

韓国ではこれらの商品の予定利率は2.5%ほどになっているが、10年間の利益率が20%を超えるものはほとんどない。

■保険会社が「終身保険」を積極的に勧めるワケ

貯蓄性保険は加入してから7年間は、代理店のインセンティブなどの経費を差し引いた金額だけが投資されるので、保険料全体を基準に見ると、予定利率と実際の利益率に大きな差が出るのだ。したがって元本をベースに見れば、加入後5~6年まではほとんど赤字になる。

特にテレビコマーシャルでよく見る終身保険は、保険会社にとっていちばんうまみの大きい商品だ。加入者は一生涯、保険料を支払わねばならないが、保険料が高額なので、5~7年ほどのあいだに7割の人が解約し、元本割れしてしまう。保険会社のほうは解約による利益がかなりあるため、最も積極的に販売を奨励し、代理店の手当も高い。

生命保険は、あなたがいま家族を養う必要があり、収入のすべてが給与所得であれば、加入すべきだ。

しかし、給与とは別に資産所得があるなら必要ない。自動車保険は強制保険だけでもかまわない。アメリカの一部の州では、10万ドルのデポジットさえあれば、別途に任意保険に加入しなくてもよい。

私は保険無用論者だ。

原価1万円の商品をわざわざ4万円で購入したり、低い運用益のために貯蓄性の保険に投資したりする理由はまったくない。原価と販売価格のあいだに、あまりにも大きな差があるからだ。

■子供のがん保険まで払っていたら老後はもたない

家族や友人たちと、仲間内で保険をつくることもできる。信用があって計算が上手な人が中心になって、数年も賭け金を貯めれば、かなりの金額になる。先ほど紹介した友人がこれまでに払った保険料の総額は1700万円。彼が住むマンションの保証金よりも多い(韓国には、家賃を払う代わりに高額の保証金を家主に預けて家を借りる伝貰(チョンセ)という制度がある)。

彼の息子が生まれたときに加入した子どもがん保険も含めて、加入している保険は8本にもなる。その子はもう18歳だ。だが、解約すれば元本を割ってしまうという心配で、むやみに解約もできないでいる。

英字の保険契約書類のイメージ
写真=iStock.com/designer491
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/designer491

人生100年時代、老後の心配をする人は多い。

しかし、2018年の統計庁の発表では、韓国人の平均寿命は82.7歳で、前年と変わっていない。もちろん、平均寿命がこの200年間で急速かつ着実に伸びてきたのは事実だ。人類の平均寿命は、1800年代にはわずか40歳だったが、1900年代初頭には60歳に達し、2000年代に入ると80歳になった。

しかし、これは石鹸の普及や栄養状態、住環境の改善、各種予防接種の発明と普及にともなう乳児死亡率の低下がもたらした結果だ。だから、平均寿命はどこまでも伸び続けるわけではない。伸び率が頭打ちになったのは2011年からだが、この傾向から見て、今後は平均寿命が1年伸びるのに12年程度かかると考えられる。

■損害保険、旅行保険、認知症保険、がん保険も要らない

仮に2100年に平均寿命100歳が現実になるとしても、読者のなかでそれまで自分が生きていることを心配して保険料を払う人は少ないだろう。人生100年というキーワードは、保険会社が打ち出したスローガンでも最高のヒット作だ。運が悪ければ100歳まで生きてしまうかもしれない、という意味だ。

事実、私は自分の会社の健康保険と自動車保険以外にいかなる保険にも加入していない。

住宅に火災保険もつけていないし、生命保険にも入っていない。損害保険、旅行保険、認知症保険、がん保険にも加入していない。

私は韓国とアメリカにそれぞれ30万円ほどの健康保険料を支払っているが、過去10年間の医療費支出は10万円にもならない。運転もほとんどせず、二十数年前に接触事故があったきりだ。それも後ろから追突されたものだ。

人は最悪のケースを心配して保険に加入するが、その保険料、二十数年分を預金しておけば、確率上は自己保険(預金)のほうが有利だ。なぜなら、保険会社のどの商品も、そもそもあなたに不利なように設計されているからだ。貯蓄型とか、非課税とか、更新型とか、魅力的な誘い文句がついていても、結局は顧客にとって不利な商品でしかない。

■お金持ちになってしまえば保険は要らない

さらに保険会社には、自社にとって損になりそうな顧客を拒否する権利もある。病歴があったり、高齢だったり、特定の危険な職業に就いている人は加入を断ることができるのだ。

キム・スンホ『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)
キム・スンホ『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』(サンマーク出版)

それでも、保険で得した人も多いはずだという反論もあるだろう。しかし、カジノで儲かる人だって48%いる。全員が損をしたら、誰もカジノに行かなくなるだろう。

読者のみなさんには、ぜひ保険に対して考え直すことをお勧めしたい。起こる確率の低い事態を恐れて、自分の経済力を超えた保険料を払うのは本末転倒だ。自分で保険を設計したり、家族や親戚と家族保険通帳をつくって共同投資したりして、自ら資産を管理できそうなら試してみよう。

実際、お金持ちになったら保険は不要になる。資産の一部が十分に保険の役割を果たしてくれるからだ。だからお金持ちのところには、さらにお金が貯まるのかもしれない。

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キム・スンホ(きむ・すんほ)
スノーフォックスグループ会長
韓国人として初めて、アメリカでグローバル外食企業を成功させた実業家。創業したスノーフォックス社は、世界11カ国に3900の店舗と1万人の従業員を抱えるグローバル企業。年間売り上げ1兆ウォンの目標を達成、米ナスダック上場を控えている。最近5年間で3000人あまりの事業家を養成し、「社長を教える社長」として知られる。1100万回以上再生された動画「伝説のお金の授業」を書籍化した『お金は君を見ている 最高峰のお金持ちが語る75の小さな秘密』は、2023年まで4年連続でベストセラーとなり、100万部に到達した。

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(スノーフォックスグループ会長 キム・スンホ)

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