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なぜ本当に頭のいい人の説明はわかりやすいのか…頭のいい人が無意識に使っている「魔法のフレーズ」

プレジデントオンライン / 2024年2月20日 7時15分

「頭がいい人」は人の手柄を取らない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/howtogoto

頭がいい人の説明は、なぜわかりやすいのだろうか。教育学者の齋藤孝さんは「頭がいい人は物事を的確で具体的な例を用いて説明できる。抽象的で一般化しづらい概念ほど、上手にアレンジして伝える必要がある」という――。

※本稿は、齋藤孝『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社)の一部を再編集したものです。

■「頭がいい人」は人の手柄を取らない

会議をしているときなどに、他の人が提案した話に乗っかり、それをさも自分のオリジナルの考えであるかのように話を進めようとする人がいますが、頭のいい人はこうしたことは絶対にしません。

「先ほどAさんもおっしゃっていましたが、私もたしかにそのとおりだと思います」

と、あえてAさんの名前を出し、「Aさんの意見を引用させてもらった」ということを全員の前で示すことが大切です。

要は、無理やり自分の「手柄」にしてしまわずに、正しくAさんの「手柄」にするということ。

これにより、Aさんにとってあなたは「味方」「同士」「意見を共有できる仲間」という存在になりますし、引用されたこともシンプルにうれしいと感じるはずです。

■名前を呼ばれると親近感をもつ

何より、その提案が「Aさんから発意されたもの」であるという事実が、そこで参加者全員に共有されることになり、その後の議論が正しく進められます。

これは文脈力にも通じるもので、長時間にわたる会議を侃々諤々(かんかんがくがく)とやっていると、その話の発端がどこにあったかわからなくなるときがあります。

そうした混乱の中でも、「起点はAさんである」ことをきちんと整理して押さえられている人は、文脈を正しく読み取る力も備わっている人といえます。

名前をあえて出すという行為は、相手との心理的な距離を近づける効果もあります。

これは「ネームコーリング」と呼ばれるコミュニケーション法のひとつとして認知されており、人は自分の名前を呼んでもらうと、その相手に親近感をもつと考えられています。

名前とはその人のアイデンティティと密接なつながりがあるのです。

■「活字>ユーチューブ」と決めつけてはいけない

「人の話は素直に聞きましょう」などと言われたら、「何を当たり前のことを」と思うのではないでしょうか。

しかし、人は先入観で生きています。これまでの体験がその人の思想や偏見となり、その枠から外れて考えることは難しいのです。

「こうであるはずだ」と決めつけてしまい、趣旨を取り違え、場合によっては解釈が正反対になってしまうこともあります。

活字世代を生きてきた人が、「ユーチューブ」と聞いた瞬間に嫌悪感を抱き、脊髄反射で「ネットの世界なんて」と否定してしまうのは、正しい選択とはいえません。

素直に話を聞ける人は、ネットを偏見で括(くく)らず、ユーチューブの何がおもしろいのか、どんなことができるのかなど、知識を前向きに吸収するのです。

YouTubeのロゴのiPad画面
写真=iStock.com/ozgurdonmaz
「活字>ユーチューブ」と決めつけてはいけない(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/ozgurdonmaz

■相手の話は心を空っぽにして聞く

経営の神様・松下幸之助氏は、「素直の初段」という言葉を著書に記しました。

すなわち、素直な心でものを見れば本当の姿がわかるが、囚(とら)われた心で見ると白も黒く見えてしまう、虚心坦懐(きょしんたんかい)に見る心を養えば、人はようやく素直の初段に到達するというのです。

現象学を提唱した哲学者のエトムント・フッサールも、人は偏見や「先入見」に汚染されている生き物で、それらを取り除く訓練(エポケー)の必要性を説いています。

多様性が重視される今こそ、相手の話は心を空っぽにして聞くことが大切です。

■東大入試でも問われる

人が話していることや、目の前にある文章を、別の表現に置き換える作業のことを、ここでは「言い換え力」と呼びたいと思います。

「言い換え力」は、物事を理解できているかどうかを判断する重要な指標です。

相手の話を言い換えられるということは、その話を自分のものにできているということ。すなわち理解できているということです。

『「東大国語」入試問題で鍛える! 齋藤孝の読むチカラ』(宝島社)という、東大の国語の入試問題だけの解説をする本を書いたことがあります。

東大の国語の問題というのは、例文のどこかに傍線が引いてあり、それをわかりやすく説明させるというものがほとんどです。

これはまさしく、「言い換え力」を求めるもので、文章の意味が理解できているかどうかを試しているわけです。

東京大学
写真=iStock.com/winhorse
東大入試でも問われる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/winhorse

■「自分の言葉で話す」は「思いついたことを言う」ではない

面接官などが「これを自分の言葉で表現してみてください」と言ってきたとしたら、それはあなたがその概念をきちんと理解できているかをたしかめているのです。

たまに「自分の言葉で」と言われて、思いついたことだけを話してしまう人もいますが、言い換えとは、もとの言葉や文章を「ニアリーイコール(≒)」すなわち「おおよそ同じ」といえる表現に置き換えるという作業です。

そこを誤解しないようにしましょう。

言い換え力を磨くには、たとえばお題となる文章を読み、その文章からキーワードを3つほど拾い出し、その3つを使って自分の文章で書き換えてみる練習をしてみましょう。

選んだワードをつなぐには文脈力が求められますし、何よりワードを選ぶ理解力が必要です。つまり、言い換え上手な人は語彙(ごい)力もある人なのです。

■頭のいい人が使う「要約」

頭のいい人は説明も上手だといわれますが、その理由として、物事を的確で具体的な例を用いて説明し尽くす力があることが挙げられます。

つまり、要約する力があるのです。

抽象的で一般化しづらいような概念は、資料をつくったり図版をつくったりして、時間をかけて説明するよりも、身近でわかりやすいひとつの言葉に要約し、置き換えて説明したほうが、はるかにわかりやすいことがあります。

「中央銀行の量的金融緩和」について説明をするのに、「えーと、まず景気や物価を下支えするためにマネタリーベースを増やしてだね、さらに……」と説明を続けるより、「ひとことで言えば、お札をたくさん刷って市中のお金を増やすということだよ」と言ったほうがピンとくる人は多いでしょう。

■要約にかかる時間は5秒程度

この「ひとことで言うと」あるいは「要するに」などの副詞のあとに、本質をズバリと突く文章やワードが選べるかということです。

齋藤孝『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社)
齋藤孝『本当に頭のいい人がやっている思考習慣100』(宝島社)

お笑い芸人さんが、ファンから「どうしたらあんなネタが思いつくのですか?」と聞かれたとき、自分の生い立ちから話し始めたり、一般論を話したりしても、相手にはなかなか真意が伝わらず、聞いていても飽きてしまうでしょう。

「ひとことで言えば自分の体験談ですよ」と言えば、実際に体験してきた印象的な話を、上手にアレンジしながらつくっていることが要約されて伝わります。

多くの場合、この要約作業にかかる時間は5秒程度、場合によっては3秒から1秒です。

「そんな無茶な」と思うかもしれませんが、実際、テレビの生放送などでは司会者が、1秒、2秒の単位で言葉を選択し使っています。

短時間でバラバラだった情報を1本の糸につないでいるのです。

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齋藤 孝(さいとう・たかし)
明治大学文学部教授
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、現職。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『孤独を生きる』(PHP新書)、『50歳からの孤独入門』(朝日新書)、『孤独のチカラ』(新潮文庫)、『友だちってひつようなの?』(PHP研究所)、『友だちって何だろう?』(誠文堂新光社)、『リア王症候群にならない 脱!不機嫌オヤジ』(徳間書店)等がある。著書発行部数は1000万部を超える。NHK Eテレ「にほんごであそぼ」総合指導を務める。

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(明治大学文学部教授 齋藤 孝)

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