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「手作りでもお惣菜でも栄養価は変わらない」小児科医が「子どもの食事がお惣菜でも罪悪感は不要」と言うワケ

プレジデントオンライン / 2024年2月16日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuppa_rock

お惣菜や加工食品などを使うと、「手抜き」と批判されがちだ。しかし、小児科医の森戸やすみさんは「お惣菜や加工食品が手作りより劣るというわけではないので、上手に利用すれば問題ない」という――。

■食の「手抜き」は非難されがち

小さいお子さんがいると特に、毎日の食事の調理と片付けは大変ですね。今は昔と違って共働き家庭のほうが多く、仕事はもちろん、他の家事や子育ても両立しなくてはいけません。

うちの子どもたちはもう大きいので、私の帰宅までに夕食を作っておいてくれたり、私が料理をした際は鍋や食器を洗ってくれたりして、とても助かっています。でも、小さいときはとても大変でした。レトルト調味料や冷凍食品を使うこともあったし、お味噌汁や煮物などは2食分作り置きしておくこともありました。こうした便利な食品やお惣菜、外食などをうまく使うと少しはラクになりますよね。

ところが、便利な加工食品や調味料、お惣菜などを利用すると、なぜか「ラクをしている」「手抜きだ」「子どもがかわいそう」などと非難されがちです。同じ親でも父親は言われにくく、母親が標的になりやすいようです。実際、以前、X(旧Twitter)で、子連れの女性がスーパーでお惣菜のポテトサラダを買おうとしたところ、見知らぬ男性に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われたという話が話題になりました。面と向かって意見されなくても、母親自身が自分で「手作りしないのはよくない」と罪悪感を持っている場合も多いのではないでしょうか。

■家庭料理は普遍的なものではない

さて、そもそも「食事は母親が手作りするもの」という考え方は、普遍的なものでしょうか。海外には、屋台や店などで外食するのが一般的という国も少なくありません。ハムやチーズなどの切って出すだけの冷たい食べ物が主で、毎日決まったメニューという国もあります。私はYouTubeでいろいろな国の食事を見るのが好きなのですが、日本ほど栄養バランスや品数、彩りにまで気を配って、日々の食事を手作りしている国はなかなかないと思います。手間のかかり具合が違うのです。

すると「日本の伝統的な食文化は素晴らしい」なんて言われがちですが、そもそも母親が料理するのが昔からの文化なのかという点も疑問です。厚生労働省が「子どもが小さいうちは母親が家にいて世話をすべき」だという「三歳児神話」に合理的な根拠がないと否定したのが1998年。『増補 母性神話の罠』によると、三歳児神話のルーツは大正時代にあるようで、むしろ当初は声高に「母親が家で子どもの面倒を見るように」と言わないと定着しなかったそうです。

それまでの日本は、大家族で、地域ぐるみで子育てしていました。大勢で子育てしていたわけですから、母親ではない人が作った料理を食べることも少なくなかったでしょう。実際、母親が作らないといけないわけではありません。父親が作ってもいいし、他の人が作ってもいいし、買ってきてもいいのです。

■食の安全を守る「食品添加物」

現代は昔と違って各家庭に冷蔵庫があり、コールドチェーンのような流通も発達し、さまざまな冷凍食品や加工食品、レトルト食品などが手に入るようになり、とても便利になりました。便利な食品やお惣菜を利用して、調理の手間を省くのは悪いことではありません。でも「食品添加物が入っているから危険」「脂分や塩分が多いから体に悪い」などと言う人がいて気になりますね。それは本当でしょうか。

食品添加物とは、食品の製造過程または加工・保存の目的で使用されるもので、「保存料」「甘味料」「着色料」「香料」などがあります。日本では内閣府の食品安全委員会が食品添加物の安全性について評価し、人の健康を損なうおそれのない場合に限って成分の規格や使用の基準を定め、厚生労働省が使用を許可しています。

食品添加物は、前回の記事で紹介した農薬と同様、国民一人当たりが1日に摂取する量を調査した上で、人が毎日一生摂取し続けても健康に悪影響がないとされる一日摂取許容量(ADI:Acceptable Daily Intake)の範囲で使われます。

過去の食品被害や公害の話を見聞きしていると怖いイメージを持つものですが、よく知ると食品添加物の使用にはとても厳しい基準があって、厳格に守られているので、市販されている食品を食べても問題はないということがわかりますね。

お弁当とお惣菜のイメージ
写真=iStock.com/karinsasaki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/karinsasaki

■無添加が危険な場合もある

少し前、「無添加」「砂糖半分以下」とうたって販売されていたマフィンが、重篤な健康被害を受ける可能性が高い「CLASS(クラス)I」に認定され、回収された事例がありました。食品を作ってすぐその場で食べるのであれば添加物は不要ですが、一度にたくさん作って輸送して販売する場合は、添加物を適切に使うことで安全性が高まります。砂糖にも細菌増殖を抑える働きがあります。

「無添加だから安心」などといっても、そのせいで腐敗していたり、カビが生えていたりしたら、とても危険です。コールドチェーンが発達したり、食品添加物ができたりする前は、今と違って食中毒になる人がとても多かったのです。食中毒は特に子どもなら命に関わることもあります。そういう意味で、食品添加物は私たちの安全を守ってくれているのです。

一方、加工食品は「脂分や塩分が多い」と言われがちですが、必ずしもそうとは限りません。近年、加工食品には成分表がついていて、脂分や塩分、カロリーなどが明記されていることが多いですね。コンビニのお惣菜やお弁当などにも詳しく書いてあるため、むしろ脂分や塩分、カロリーの摂取量を減らすのにとても便利だと思います。家庭で調理する場合、いちいち材料を計って算出するのは難しいからです。またアレルゲンも表示されていますから、かえってわかりやすく安心できる面もあるでしょう。

■無理のない範囲で作ればいい

こうして私たちの食生活はより便利で多彩になりました。地産地消で新鮮な食材を家庭で料理するのは素晴らしいことです。でも、そうしないと安全に栄養を摂取できないわけではありません。手作りすると栄養価が上がるということもありません。

先日、在宅栄養専門管理栄養士の塩野﨑淳子さんが書かれた書籍『栄養指導のスペシャリストが教える体に良い食べ物・悪い食べ物大誤解!』を読みました。「その食品の『ナチュラルさ』はどれだけ栄養価に影響がある?」「添加物は『食品加工』英知」などの項目があり、とても面白く学ぶことができました。

もちろん、家で手作りする料理のほうが優れている面もあります。お子さんは両親が自分のために料理を作ってくれたらうれしいでしょうし、家族の好みに合わせることができますし、家庭の味を教えることもできます。調理過程を見ることで、子どもが大きくなってから自分も調理ができるようになるかもしれません。でも、忙しくて手作りが難しいときもあるでしょう。ですから無理のない範囲で作ればいいと思います。お惣菜を買ってきて、野菜たっぷりのサラダ、お味噌汁やスープを合わせるといいのではないでしょうか。

前述の本の帯には「大事なのは「量」と「バランス」! “根拠ある”栄養知識でおいしく健康になる方法」と書かれています。本当にその通りで、生きていくのに欠かせない水や塩でさえ量が多すぎれば命を失うこともあります。医療と同様、栄養についても量やバランスについて正確な知識を知っていただけたらと思います。

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森戸 やすみ(もりと・やすみ)
小児科専門医
1971年、東京生まれ。一般小児科、NICU(新生児特定集中治療室)などを経て、現在は東京都内で開業。医療者と非医療者の架け橋となる記事や本を書いていきたいと思っている。『新装版 小児科医ママの「育児の不安」解決BOOK』『小児科医ママとパパのやさしい予防接種BOOK』など著書多数。

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(小児科専門医 森戸 やすみ)

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