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5時間より10時間睡眠のほうが早死にしている…90年超の研究が証明「中高年の睡眠時間の正解」

プレジデントオンライン / 2024年2月13日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/show999

中高年が健やかに過ごすために、睡眠時間はどれくらい必要か。三代にわたって90年以上睡眠研究を続ける睡眠医療専門家の遠藤拓郎さんは「我々は子どもの頃から『8時間は寝なさい』と教えられてきたが、それは中高年にそのまま当てはまるわけがない。歳を取ったら、ご飯の量を少なくするように、睡眠指導や睡眠習慣も変化させていくべきだ。中高年になったら『8時間は寝ないといけない』ではなく『ぐっすり8時間も眠れない』が正解である。」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、遠藤拓郎『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(横浜タイガ出版)の一部を再編集したものです。

■病気に侵されていた可能性を排除したデータで比較する

図表1をご覧ください。

これは北海道大学大学院の玉腰暁子教授が、日本全国の40~79歳の男女、約11万人を対象に「睡眠時間の長さ」と「10年後の死亡率」の関係を調べたグラフになります。

図表1のグラフは「10年以内に死亡した人の割合を示したデータ」です。

一方、図表2のグラフは、図表1のグラフから「直近の2年以内に死亡した人を除いたデータ」になります。

なぜ、「2年以内に死亡した人」をデータから除いたのでしょうか?

少し分かりにくいと思いますので、噛み砕いて説明しましょう。

【図表】「睡眠時間の長さ」と「10年後の死亡率」
出典=『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』
【図表】図表1より「2年以内に死亡した人」を除外
出典=『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』

例えば、「直近の2年以内に亡くなってしまった人」というのは、すでにガンなどの病気に侵されていた可能性があります。

そうなると「ガンの影響で睡眠時間が短い」とか、逆に「ガンの影響で睡眠時間が長い」といった可能性が出てきます。

「睡眠が寿命に与える影響」のみを知りたいわけですから、「健康状態が睡眠と寿命に与える影響」は、できる限り排除したいわけです。

そこで、「直近の2年以内に亡くなった人」をデータから除くことによって、「致死的環境が睡眠に与える影響を排除できる」という、あくまでも「建前」で作られたデータが、図表2のグラフになるのです。

■7時間より10時間睡眠のほうが早死にしている

少し複雑かもしれませんが、ここまでをご理解いただいたうえで、改めて図表1と2のグラフをご確認ください。

「直近の2年以内に亡くなった方」を除いても、データの傾向としては、それほど変わらないことがお分かりいただけると思います。

どちらのグラフとも、10年後の死亡率が一番低いのは7時間睡眠ですが、5~7時間の睡眠は、それほど死亡率が変わりません。

ですから、睡眠時間が多少短いのは、あまり気にする必要がないということになります。

問題なのは、7時間以上の睡眠です。

8時間、9時間、10時間と睡眠時間が増えるにつれて、死亡率がどんどん上がっていきます。

つまり、長く寝る人ほど、早死にしているのです。

ちなみに「4時間以下の睡眠」の人たちがどうなるのかと言うと、死亡率が大幅に上昇します。

ですが、玉腰教授のデータをもとに私が作成したグラフでは、あえてその部分にマスキング(データを覆い隠す手法)を施しました。

その理由は、4時間以下の睡眠の人は、全体の0.7%しかいないからです。

他と比べて、母数があまりにも少なすぎるため、マスキングを施しました。

あえて付け加えておくと、現在の日本において、「過労死」という考え方が当てはまるのは、主にこの「4時間以下の睡眠」に属する人たちです。

社会的な問題を抱えているのは、まさにこの方たちです。

過労死の問題を放置しておいていいはずがありませんし、4時間以下の睡眠は非常に危険ですから、ただちに是正されなければなりません。

時計を抱えて寝る人のイメージ
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/baona

■「8時間は寝なさい」は中高年に当てはまらない

しかし、データをご覧いただければ分かるように、過労死の危険がある「4時間以下の睡眠」の人たちは、11万人中の数百人程度で、全体の1%未満にすぎません。

言わば特殊例であって、特殊例に通用する概念である「睡眠負債」を、特殊例以外の99%以上の人たちに当てはめることは危険だと思います。

玉腰教授のデータが示すとおり、99%以上の方たちにとっては、「睡眠不足」よりも「寝過ぎ」の方が、はるかに大きな問題なのです。

10年前、私は『4時間半熟睡法』という本をビジネスパーソン向けに書きましたが、この本にも書いたとおり、短時間睡眠の限界は「4時間半」です。

この本で、私は「睡眠の質が良ければ、4時間半の睡眠で問題ない」という主旨のことを書きましたが、玉腰教授のデータからも、その正しさが実証されたと感じています。

我々は子どもの頃から「8時間は寝なさい」と教えられてきました。

ですから、大人になってからも、「8時間は寝ないといけない」「最低8時間は寝たい」と思い込んでいましたが、実はここに大きな落とし穴があったのです。

これから成長していく子どもと違い、大人、特に中高年は体がどんどん衰えていくわけですから、「子どもに対する睡眠指導」=「8時間は寝なさい」が、中高年にそのまま通用するわけがありません。

■中高年になったら「ぐっすり8時間も眠れない」

例えば、歳を取って、代謝が落ちてきたら、摂取カロリーを少なくしなければなりませんよね?

好き放題に食べていると、肥満になり、生活習慣病になってしまいます。

遠藤拓郎『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(横浜タイガ出版)
遠藤拓郎『75歳までに身につけたいシニアのための7つの睡眠習慣』(横浜タイガ出版)

歳を取ったら、ご飯の量を少なくするのは、当たり前の話です。

ところが、睡眠に関しては、なぜかそうはなりません。

実際に眠れなくなっている中高年に対して、「もっと寝なさい」と言っているようなものです。これは歳を取り、食が細くなって、「もう食べられません」と言っている中高年に、締めのラーメンなどを無理矢理食べさせているのと同じ行為なのではないでしょうか?

中高年になったら、「8時間は寝ないといけない」ではなく、「ぐっすり8時間も眠れない」が正解です。

年齢に応じて体が変化していくわけですから、それに応じて、睡眠指導や睡眠習慣も変化させていかなければならないのです。

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遠藤 拓郎(えんどう・たくろう)
スリープクリニック調布院長
慶応義塾大学医学部特任教授、医学博士。東京慈恵会医科大学卒業、同大学院医学研究科修了、スタンフォード大学、チューリッヒ大学、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。東京慈恵会医科大学助手、北海道大学医学部講師を経て、現職。祖父(青木義作)は、小説『楡家の人々』のモデルとなった青山脳病院で副院長をしていた時代に不眠症の治療を始めた。父(遠藤四郎)は、日本航空の協賛で初めて時差ボケを研究。祖父、父、息子の3代で90年以上、睡眠の研究を続けている「世界で最も古い睡眠研究一家」の後継者である。

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(スリープクリニック調布院長 遠藤 拓郎)

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