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「今週の数字はどうなっている?」とは聞かない…伝説の営業マネジャーが"今週"の代わりに使う意外な二文字

プレジデントオンライン / 2024年2月19日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

チームの成績を上げるにはどうすればいいのか。元プルデンシャル生命保険のトップマネジャーで営業コンサルタントの川村和義さんは「メンバーを呼び出してアドバイスをするのではなく、用事がないときでも世間話をしていた。『私はあなたを気に留めていますよ』という意思表示をすることが大切なのだ」という――。(第1回/全3回)

※本稿は、川村和義『コミュニケーションを変えればチームが変わる』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

■「マネジメントの正解って、なんなんですか?」

山口さん(29歳)マネジャー歴半年

中堅広告代理店のセールスマネジャーとして、6名のメンバーを持つ。

営業マン時代の成績は優秀で、同期の中ではいち早くマネジャーへと昇格したが、メンバーとの意思疎通がうまく図れない。その状況からなんとか脱却しようと、マネジメント関連のビジネス書を手当たり次第に読んでいるが、どのノウハウが正しいのか判断できず、迷子になっている。

セミナーに参加したのをきっかけに、そのメインスピーカーだった川村に、個人コンサルティングを申し込んできた。事前に送られてきたメールには、「どのビジネス書の通りにやってもダメだった」と100冊近くの読書リストが添えられ、ある問いで締めくくられていた。

「いったい、マネジメントの正解って、なんなんですか?」

■「○○くん、ちょっといい?」でメンバーを呼んでいないか

【川村和義(※本稿の著者。以下、川村と表記)ところで、山口さんのほうから、メンバーに声をかけることって、よくあるんですか?

【山口】もちろんですよ。部下から報連相がないんですから、僕のほうからどんどん行かないと。

【川村】ほう、いいじゃないですか。どんなふうにですか?

【山口】えっ? どんなふうにと言いますと? 普通に「○○くん、ちょっといい?」って、私のデスクに呼ぶだけですけど。

【川村】普通に? それが山口さんの普通なんですね。

【山口】だって、他にどんなやり方があるんですか?

【川村】山口さんはドカッとデスクの前に座ったままで、メンバーは横に立っているわけですか?

【山口】いえいえ、この丸椅子に座ってもらいますよ。

【川村】そうなんですね……。自分から行くって話でしたけど、呼びつけるってことですね。

【山口】……。

【川村】一つお聞きしたいんですけど、そもそも山口さんは、どうしてメンバーに「ちょっといい?」って、声をかけるんですか?

【山口】えっ、どうしてって、それはもちろん用があるからですけど。

【川村】用? たとえば、どんな用ですか?

【山口】それは、もちろん勤怠のこともありますし、最近活動量が減ってるなとか、数字も上がってないしな、とか……。

【川村】お小言を言うために、呼びつけるわけですね。

■メンバーのデスクまで行って隣に座り…

【山口】そんなつもりはもちろんありませんけど、メンバーの現状を把握して、私なりのアドバイスをしたいとは思っています。

【川村】なるほど。でも、それって唐突だと思いません? 「ちょっといい?」って呼びつけられるのって、メンバーからしたら、「なに言われるんだろ……」って、身構えちゃいますよね。

【山口】ああ、川村さんの言いたいことはわかりました。他の部下たちが見ている前では叱らないで、こっそり会議室とかに呼べっていうやつですか。

【川村】ハハハ。どこかのビジネス書にそう書いてありましたか。

【山口】……。じゃあ、川村さんは、どんなふうに声がけをしてたんですか?

【川村】そんな、たいした声がけはしていませんよ。ただ、山口さんとは2つ違いがあります。一つは、僕のデスクに呼びつけるのではなく、自らメンバーのデスクまで行って、隣に座ります。

オフィスにデスクが並ぶイメージ
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/gyro

【山口】……なるほど、自分から行くってことですね。あと一つはなんですか? 私との違いって?

【川村】さっき、どうしてメンバーに声をかけるのかと僕が聞いたとき、山口さんはこう言いましたよね。「もちろん用があるから」って。

【山口】はい、それがなにか問題なんですか?

■「山口、昼メシはどこで食べたの?」

【川村】僕の場合は、とくに用事がなくても、声をかけていましたから。

【山口】え? どういうことですか?

【川村】「おっ! 山口、今朝はいい顔してるなー。昨日なんかいいことあったの?」とか「山口、昼メシはどこで食べたの? おっ、天山飯店の肉野菜炒めか。いいねー。お母さん、元気だった? オレもあとで行こー」って感じかな。

【山口】ただの世間話に、なんの意味があるんですか?

【川村】意味? この会話に意味なんて必要ですか。そんなことより、用事があってもなくても、「いつも私はあなたを気に留めていますよ」という意思表示をすること自体が大切なんです。

【山口】うーん。そういうのって、むしろメンバーから、ウザいって思われそうなんですけど……。それ、しなきゃダメですか?

【川村】ハッハッハッ!

【山口】……。

【川村】ごめんなさい。ちょっとウケちゃいました。「しなきゃダメです?」って。別にしなくても、僕は困りませんよ。ただ、山口さんのメンバーたちの困っている現状が変わらないのは残念ですけど。

【山口】いやいや、困ってるのは私のほうなんですよ。だから、こうして相談に来てるんじゃないですか。

【川村】いえいえ、だから、あなた以上に困っているのは、メンバーだってことなんです。

【山口】え、どういうことです?

■チームのモチベーションを下げる要因になっている

【川村】一つお聞きしますけど、山口さんは、メンバーを「ちょっといい?」って呼んだときの、その場のみんなの空気を感じたり、呼ばれた本人の気持ちを考えたりしたことはありますか?

【山口】まあ、多少の緊張感が走っていることくらいはわかっていますけど。

指摘する会社員のイメージ
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/chachamal

【川村】きっと周りのメンバーたちは、こう囁いているんでしょうね。「あーあ、お気の毒様」「火の粉をこっちに飛ばさないでね」「さっ、呼ばれる前に、外出外出」って。

【山口】……。

【川村】呼ばれた当の本人も「また恒例のお小言タイムか。せっかくここから巻き返そうと思ってた矢先に……」って。

【山口】……。

【川村】僕の経験から言っても、「ああ、また始まったよ」と、チーム全体のモチベーションを下げる要因にもなっていることが多い気がします。

【山口】えっ? まさか私がモチベーションを下げてる? 部下のモチベーションを上げるために呼んでるのにですか?

【川村】いやいや、まだそうとは決めつけていませんよ。ただ、次の質問をすれば、だいたいのことはわかりますけどね。

■「とにかく粘って1件でも決めてこい」でどうにかなった?

【山口】早くその質問をお願いします。

【川村】はい。メンバーを呼んだときに具体的にはどんな話をするんですか?

【山口】もちろん、うちは営業会社ですから、まずは目標に対して数字がどうなってるのかの確認をして、さらに行動管理もやりますよ。

【川村】なるほど。それって、どう切り出すんですか?

【山口】それは、普通に「今週の数字はどうなってるの?」と聞いていますよ。

【川村】それで、「今週は厳しいです」「見込みもまるでありません」って答えだったとき、山口さんはどう応じるんですか?

【山口】まあ、週の半ばだったら「あと3日もあるんだから、あきらめるな」とか、週末でしたら「とにかく粘って1件でも決めてこい」って言いますかね。

【川村】それでメンバーは、どうなりますか?

【山口】もちろん、「最後まであきらめずに追い込みます!」と気合いは入ってるようですけど。

【川村】なるほど。それで実際のところ、3日でどうにかなってます? 週末にちゃんと1件決まってくるんですか?

【山口】いやいや。結局ダメなことがほとんどですよ。

【川村】ですよね。

【山口】要は、部下のやつらに危機感が足りないんです。

■数字は急に上げられるものではない

【川村】いえいえ。僕から見ると、むしろ危機感が足りないのは「今週の数字はどう」って聞く、山口さんのほうだと感じますけど。

【山口】えっ、どういうことでしょう? マネジャーは数字の把握をしなくてもいいと言うんですか?

【川村】いやいや、数字の把握も、行動管理も、とっても大事な仕事ですよ。

【山口】だったら、なにがいけないんですか?

【川村】はい。仮に数字の把握と行動管理が仕事だとしたら、今週の数字をその週の半ばに聞くってどうなんですかね?

【山口】えっ、なにが問題なんですか。

【川村】そんなに急に数字って上げられます? 山口さんの会社では、そんなに簡単に上がるものなんですか?

【山口】いえ、簡単ではありませんけど……。

【川村】僕の経験からすると、仲のいいお客さんのところに行ってお願いセールスするくらいしかないと思うんですが。

【山口】……。

■言うべきは「来月の数字はどうなってる?」

【川村】だったら、苦しんでいるメンバーに、こう言ってあげたらどうですかね。「きっと、そうだろうと思ってたよ。ちょっと前からしんどそうだったよね。もう今月はあきらめようか。今週、来週の数字は頑張らなくていいよ」って。そしたら、メンバーはどう感じると思いますか?

川村和義『コミュニケーションを変えればチームが変わる』(CCCメディアハウス)
川村和義『コミュニケーションを変えればチームが変わる』(CCCメディアハウス)

【山口】いえ、言ったことがないので、わかりません……。

【川村】もちろん、メンバーも、今週、来週ただ遊んでいていいって話ではないことくらい、わかりますよね。

【山口】はあ……。

【川村】そこまで言ってあげると、メンバー自ら「今月は足を引っ張ってすみません。でも、来月のスタートダッシュは見ててください。今週、来週でしっかり仕込みますから!」と、前向きになってくれますけどね。

【山口】……。

【川村】だから、山口さんが言うべきことはこうなんです。「来月の数字はどうなってる?」

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川村 和義(かわむら・かずよし)
オールイズウェル代表取締役社長
1963年大阪生まれ。立命館大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。求人広告営業としてトップセールスとなった後、川崎営業所を事業部No.1へと導く。94年プルデンシャル生命保険株式会社入社。ライフプランナーとして活躍した後、営業所長として2001年に年間営業成績でトップを獲得。2008年、2009年 支社部門でも2連覇。本部長を経て、執行役員常務。社内初のティーチングフェロー(学び・教育の専門職)となり、ゼロからオンライントレーニングを使った教育の仕組みを構築。2015年オールイズウェルを設立し、現職。「夢と勇気と笑いと感動あふれる組織づくり」を支援するため、営業コンサルティング、リーダー研修、セミナーなどの活動を行う。

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(オールイズウェル代表取締役社長 川村 和義)

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