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毎日遅くまで残業しているのに、成績は足を引っ張っている…そんな部下に上司がするべき"超シンプルなこと"

プレジデントオンライン / 2024年2月21日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/IPGGutenbergUKLtd

高い成果を出せるチームは何が違うのか。元プルデンシャル生命保険のトップマネジャーで営業コンサルタントの川村和義さんは「成績だけを称賛するチームよりも、プロセスにも焦点を当てて称賛するチームにしたほうがいい。プロセスは自分でコントロールできるからだ」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、川村和義『コミュニケーションを変えればチームが変わる』(CCCメディアハウス)の一部を再編集したものです。

■メンバーたちを思うように育てられない

香坂さん マネジャー歴5年

生命保険会社のセールスマネジャーとして、10名のメンバーを持つ。

セールスパーソン時代の成績はつねにトップクラス。マネジャーとしても数字にこだわり、そこそこの結果を残している。だが、メンバーたちを思うように育てられず、人の入れ替わりも激しく、チームの雰囲気は重々しい。数字にも陰りが見えてきた。

「女性支社長育成プロジェクト」の一環として会社からの要請を受け、始業前の勉強会〜朝のミーティングに参加し、その後、川村がコンサルティングをすることになった。期末の締め日まで残り1カ月となったその日、社内の空気はピリピリしていた。

■「時間のムダ」と思うミーティングをなぜ続けるのか

【川村和義(※本稿の著者。以下、川村と表記)ミーティングは毎回、今朝のような感じですか?

【香坂】はい。今日は月曜日なので、会議室で30分じっくりやりました。先週の一人一人の数字の発表もありますし、今週の活動予定と業績のヨミも一人一人確認したいので、時間を長めにとっています。他の曜日は毎朝10分程度ですけど。

【川村】他の曜日は、どうして10分なんですか?

【香坂】連絡程度で済ませて、なるべく早く外に出てほしいので。

【川村】なるほど。で、どうして毎日やってるんですか?

【香坂】えっ、うちの会社は昔からこうですから。

【川村】昔から……ですか。会社の慣例ってことですか。

【香坂】入社当時から、ずっとこうですから。

【川村】なるほど。香坂さんは営業メンバー時代に、その毎朝あるミーティングをどう感じていましたか?

【香坂】正直、時間のムダだなーと思うことも多かったです。「連絡事項と数字の確認だけなら、メールで十分なのに……」って。

【川村】ですよね。だとしたら、どうしていまは、メールだけで済まさないんですか?

【香坂】い、いや、私なりには、時間のムダだと感じられないようにやっているつもりなんですけど……。

■このところ数字が厳しいメンバーがいる

【川村】また、つもり……ですか。まあ、いいでしょう。今朝のミーティングでは、先ほどおっしゃったように、業績と活動の結果報告、そのあと今週のヨミをやっていましたね。

【香坂】はい。

【川村】今週のヨミの確認をしているところは、かなりビリビリした空気感でしたね。僕もちょっと逃げ出したくなったくらいですよ。ハハハ。

【香坂】やっぱり期末ですし、緊張感を持たせたかったので。川村さんもそうだったんじゃないですか?

【川村】いやあ、それが期末が近づくほど、支社キャンペーンで盛り上がっていて、メンバーと一緒に毎週爆笑していましたよ。

【香坂】……。

【川村】ところで、その緊張感を持たせるために、あの一人のメンバーに厳しくあたっていたんですか?

【香坂】ああ、堺のことですか。

【川村】確かに彼女の数字はこのところ厳しいようですが、先週も一週間ずっと、サボりっぱなしだったんですかね?

【香坂】いえいえ、そんなことはありません。

■毎晩一番遅くまでオフィスに残って勉強していた

【川村】彼女はどんな活動をしていたんですか?

【香坂】午前中からお昼までは毎日、飛び込み営業を続けていました。

【川村】なるほど、他にはなにかやっていましたか?

【香坂】午後はオフィスに戻ってきて、過去に取引のあった引き継ぎのお客様をリストアップして、毎日、片っ端から電話をかけていました。

【川村】なるほど、なかなか頑張っていましたね。他にはなにかやっていませんでした?

書類を囲む人たちのイメージ
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kazuma seki

【香坂】夜は一発逆転を狙って法人へのアタックをするために、先輩から教えてもらったり専門書で勉強したりして、毎晩一番遅くまでオフィスにいたようです。

【川村】堺さんって、すごく頑張り屋さんなんですね。

【香坂】……。

【川村】いまの話を聞いて僕はそう思っただけなんですけど、香坂さんのチームでは、そのくらいやるのが当たり前のことなんですか?

【香坂】朝昼の飛び込みや夕方の訪問などは、みんなが当たり前にやっていますけど、引き継ぎのお客様に毎日連絡し続けたり、夜に法人営業の勉強を継続したりしているのは、うちのオフィスでも彼女しかいないと思います。

【川村】堺さん、いつか大化けしてくれそうですね。

【香坂】……そうなってくれたら、こっちも苦労はしないんですけど。

■メンバーの前で「プロセス」をほめてほしい

【川村】ちなみに、いま言われた堺さんの頑張りは、チームの他のメンバーはご存じなんですか?

【香坂】午後にオフィスに帰ってこない人も多いですし、子どものお迎えや家事があるので夕方早めにあがったり直帰したりする人も多いですから、彼女の勉強する姿を見ている人はほとんどいないと思います。

【川村】そうなんですね……。香坂さん、一つ提案があるんですけど。来週の月曜朝のミーティングで、堺さんのことをすごくほめてくれませんか。とくに、引き継ぎのお客様へのテレアポの継続や、夜に法人営業の勉強をしていることを。

【香坂】えっ、チームの足を引っ張ってる堺をですか?

【川村】いえいえ、結果の出ていない堺さんだからこそ、やってあげてほしいんです。

【香坂】……。

【川村】もし、香坂さんがいまの堺さんの立場だったら、日々どう感じていますかね。

【香坂】……すごくつらいとは思いますけど……。

頭を抱える会社員のイメージ
写真=iStock.com/key05
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/key05

【川村】ですよね。会社に行きたくないかもしれないし、メンバーと顔も合わせたくないかもしれない。ミーティングではまた厳しいことを言われちゃうんだろうなぁ……って。

【香坂】ええ……。

■周りのメンバーにも良い影響を与える

【川村】ところが、成績を非難されるどころか、プロセスにスポットライトを当ててもらえて、「うちのチームでいま一番、引き継ぎのお客様へのテレアポを頑張ってて、法人営業の勉強も毎晩遅くまで頑張ってるのよ」って、マネジャーからみんなの前でほめてもらえたら、どんな気持ちになりますかね?

【香坂】「こんなに売れてない私を、きちんと見てくれていたんだ。結果だけじゃなくて、行動も見てくれてたんだ」って、驚くと思います。

【川村】ですよね。すごく感謝して信頼してくれると思いますよ。

【香坂】それは、間違いなく……。

【川村】堺さんの頑張りを聞いたメンバーは、どう感じますかね?

【香坂】堺さん、頑張ってるな、とは感じると思います。

【川村】僕がメンバーだったら、こう思うかもしれません。「お、堺さん、なかなか頑張ってるじゃん」「俺も最近サボってたから、一緒にテレアポして追い込んでみるか」「ちょうど、法人営業の勉強が中途半端になってたから、一緒にイチからやってみるか」って。

【香坂】……。

【川村】香坂さん、どうでしょう。成績だけを称賛しているチームと、結果だけでなくプロセスにも焦点を当てて称賛しているチーム、どちらがいいチームになっていきそうですか?

【香坂】それは後者だとは思いますが……。ただ、川村さんは、数字よりもプロセスが大事っておっしゃりたいんですか。

■「プロセス」は自分でコントロールできる

【川村】もちろん、数字へのこだわりは大切です。ただ、数字って簡単にコントロールできますか?

【香坂】もちろん、そう簡単には……。

【川村】だからこそ、自分でコントロールできるプロセス〈行動〉に集中してもらうんです。

【香坂】プロセスに集中する……。

【川村】はい。先週、一番業績が良かったのは立花さんですよね。すごい拍手が起こっていましたから、僕にも十分伝わりました。そのとき香坂さんは、みんなと一緒になって拍手するだけでなく、なにをすれば良かったと思います?

【香坂】ただ結果だけを称賛するのではなく、立花さんにプロセスも発表してもらえば、良かったんでしょうか。

【川村】まさに、その通りです。どういう経緯でそのお客さんにアプローチして、どんな提案をして、どこが一番響いたのか。他のメンバーが一番知りたかったのは、そこだと思いますけど。

STEPとGOALのイメージ
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

【香坂】確かに……。

【川村】僕もそこが一番聞きたかったんですけど。

【香坂】……。

■「一人一人の存在理由をつくる」ことが大切

【川村】つまり、結果が出ている人って、プロセス自体がノウハウの宝庫じゃないですか。だからメンバー全員で共有する。一方で、頑張ってるのに結果が出ていない人は、どこが間違ってるかを見極めて早めに修正してあげるのがもちろん大切。ただ、もう一つ大事なことがありますよね?

【香坂】はい。きちんと頑張っているプロセスにスポットライトを当ててあげることですね。

【川村】香坂さん、いい感じになってきましたね。

【香坂】いえいえ。ただ、ミーティング一つとっても、こんなにいろいろ考えさせられるなんて……。

【川村】僕のミーティングの目的はいろいろありましたけど、その中でも大切にしてきたことは、チームの中での一人一人の存在理由をしっかりとつくってあげること。売れていようがいまいが、努力してようがサボってようが、みんなチームの大切な一員。誰か一人が欠けてもチームとして成り立たないんです。

■毎日メンバーの「人間観察」をやるだけでいい

【香坂】一人一人の存在理由をつくってあげる?

【川村】はい。一セールスパーソンとして、ただ数字を求めるのではなく、一人の人間として、見てあげることなんです。

川村和義『コミュニケーションを変えればチームが変わる』(CCCメディアハウス)
川村和義『コミュニケーションを変えればチームが変わる』(CCCメディアハウス)

【香坂】川村さんの話を聞いていると、堺をはじめ、苦しんでいる人たちに申し訳なくなってきました……。

【川村】香坂さん、大丈夫ですよ。今日から一週間、メンバー一人一人の発言や行動や顔つき、またはメンバー同士の会話や笑い声をしっかりと感じてください。

【香坂】はぁ……。

【川村】きっとその中に、「今週のMVPは誰かな?」って、ミーティングを盛り上げてくれるヒントがいっぱい転がっていますから。だから、毎日、チームのメンバーの人間観察をしっかりやるだけでいいんですよ。

【香坂】人間観察をやるだけ?

【川村】これが、本当に飽きないんです。今日の香坂さんの観察も、かなり楽しませてもらってますよ。ハハハ。

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川村 和義(かわむら・かずよし)
オールイズウェル代表取締役社長
1963年大阪生まれ。立命館大学経営学部卒業後、株式会社リクルート入社。求人広告営業としてトップセールスとなった後、川崎営業所を事業部No.1へと導く。94年プルデンシャル生命保険株式会社入社。ライフプランナーとして活躍した後、営業所長として2001年に年間営業成績でトップを獲得。2008年、2009年 支社部門でも2連覇。本部長を経て、執行役員常務。社内初のティーチングフェロー(学び・教育の専門職)となり、ゼロからオンライントレーニングを使った教育の仕組みを構築。2015年オールイズウェルを設立し、現職。「夢と勇気と笑いと感動あふれる組織づくり」を支援するため、営業コンサルティング、リーダー研修、セミナーなどの活動を行う。

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(オールイズウェル代表取締役社長 川村 和義)

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