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「子供の前で夫婦喧嘩をしても問題ない」という小児科医が「これだけは絶対に禁止」と力説するNG話題

プレジデントオンライン / 2024年2月23日 6時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Natali_Mis

子供の前で夫婦喧嘩をしてもよいのか。小児科医の成田奈緒子さんは「両親が喧嘩をしても、そばで見ている子供にとっては『そうか、こう反論できるな』と学ぶ機会になるため、隠れて争う必要はない。ただし、子供のいる前では争わないようにした方がいいこともある」という――。

※本稿は、成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■男の子と女の子の脳育ての違い

「男の子と女の子で、脳育てに違いはありますか?」と聞かれることがよくあります。

男女の脳には違いがある、という話は90年代ごろから盛んに言われていましたが、最近は、さほど個々人の人格に影響がないことがわかっています。

脳の器質的な男女差として唯一挙げられるのは、「脳梁(のうりょう)」という、脳の左右の半球をつなぐ神経細胞の束が女性のほうが太いことです。

そこから、女性のほうが右脳と左脳の情報交換が多いためマルチタスクが得意な傾向があり、男性は一つのことに集中しやすい傾向がある、と示唆されることもあります。

とはいえ、集中力の高い女性もいれば、マルチタスクが得意な男性もいることはご存じの通り。脳育ては性差ではなく、「個人差」にフォーカスするのが妥当と言えるでしょう。

乳児期に一つだけ言えるとしたら、男の子にはとくに「フルセンテンス」に力を入れるのがおすすめです。男の子のほうが一般に、言葉の初出が遅めだと言われているからです。赤ちゃんの目を見つめて、しっかり口を大きく開け閉めして話しかけることで、言語を司る脳の育ちを促すことができます。

■「性差」でなく「個人差」で育てたいこと

一方、男女差を無くした方が良い点もあります。

日本では、女の子には家事を教えるのに男の子には教えない、という家庭がしばしば見られます。これはおそらく「家事は女性がするもの」という古い価値観に基づくものだと思われます。

しかし、「おりこうさんの脳」は家庭生活の中で役割を持つことで育ちます。男の子にだけそのチャンスを与えないのは、脳育ての観点から見ても「不平等」です。

また、たまに見られるのが、女の子には前述のマルチタスク的な作業を求め、男の子には集中して何かをさせる、といったアプローチです。ここも性別ではなく、本人がどちらの傾向が強いかを見極めましょう。

集中が得意なタイプならば好きなことに集中させる、同時進行が得意なら「家事をしながらその日の出来事を話す」という風に、本人の能力をさらに伸ばすのが基本です。

その一方、ときには苦手なこともさせてみましょう。集中タイプの子にマルチタスクをさせたり、マルチタスクの得意な子を一つのことに集中させたりすることで、苦手なことも「そこそこ」できるくらいに育てていくのが良い方法です。

■「兄弟の不平等」はあっていいのか

二人の男の子を持つお母さんが、ある日こんなことを言いました。

「お兄ちゃんを見てあげられなくて、本当にかわいそう」

まだ幼い弟さんに手がかかってお兄ちゃんに手が回らないことを、そのお母さんは悩まれていました。

私がそのとき伝えたことは二つ。一つは、「かわいそうと思ってはいけない」ということです。思った瞬間、それは本人に伝わってしまうからです。

親に「かわいそう」だと思われている子が、幸せを感じられるでしょうか? おそらく逆でしょう。「僕は親にかわいそうだと思われるような、不幸な人間なんだ」と。

私に言わせれば、お兄ちゃんはまったくかわいそうではありません。親に世話をしてもらえないぶん、生活力がついて自立が促進されるからです。

そしてもう一つ、お母さんに伝えたのは、「兄弟間の不平等」は気にしなくていい、ということです。

赤ちゃんの頭をなでる男の子
写真=iStock.com/kohei_hara
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kohei_hara

■「自分はラッキーだ」と思わせる声がけを

年齢によっても、手のかかり具合によっても、関わりに濃淡が出るのは当たり前。兄弟に差をつけてはいけない、などと思わなくていいのです。

そこを理解すると、兄弟それぞれにかける言葉も変わってくるはずです。お兄ちゃんには、「ラッキーだね! 小さい弟がいると、将来子供ができたとき、きっと上手に子育てできるよ」と言えますし、弟にも、「ラッキーだね! いいお兄ちゃんがいてよかったね」と言えるでしょう。

子供は素直なので「かわいそう」だと言われれば「僕はかわいそう」と思うし、「ラッキーだね」と言われれば「僕はラッキーだ」と思うもの。親から言われたことそのままの自分像を持つのです。

とすると、「ラッキー」はまさにマジックワード。「自分はラッキーだ」という認知を持って生きると、それからの人生でどのような困難に出合っても、そこにラッキーな要素を見つけようとしますし、見つけるのが上手になります。

はたから見ると「それのどこがラッキーなんだ」と言いたくなるようなロジックをたてることもあるでしょう。しかしそれによって困難を乗り越えられるのですから、何ら問題ありません。

その素地を今からつくってあげるのが、親の役目です。通常ならネガティブだと思われる状況でも、まず「ラッキー!」と口にだし、理由は後から無理やりにでもくっつければいいのです。「かわいそう」と言われて育つより、はるかにいい人生が送れること間違いなしです。

■子供の前での夫婦喧嘩はOKだが…

子育てにおいては、両親の夫婦仲が円満であることがもちろん理想です。

とはいえ、夫婦喧嘩をしてはならないわけではありません。

喧嘩をしているとき、人間の前頭葉はめっぽう活性化しています。お互いに相手を論破しようと、さかんに思考力を働かせているからです。ですから両親が喧嘩をしても、そばで見ている子供にとっては「そうか、こう反論できるな」と学ぶ機会になると言えます。

ただし例外もあります。夫婦喧嘩のテーマが「子供のこと」であった場合、それは子供を非常に苦しめます。夫婦間で子育ての方針に違いがあっても、子供のいる前では争わないようにしましょう。

成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所)
成田奈緒子『子育てを変えれば脳が変わる こうすれば脳は健康に発達する』(PHP研究所)

そのほかのことなら、隠れて争う必要はありません。さらに言えば、隠れて争うこと自体が、子供に悪影響を及ぼします。一番良くないのが、子供の前でだけ仲良しなふりをすることです。実は夫婦仲は冷え切っているのに、「子供のために」円満を装う夫婦がよくいますが、子供は動物的な勘で、不穏な空気を感じ取ります。

食卓についているとき、一見和(なご)やかな会話が交わされつつも、両親が決して目を合わせない……といったことに気づくと、子供は強い不安を感じます。そこに親の「ウソ」を感じ取り、不信感も持つでしょう。

そんなストレスを与えるくらいなら、「お母さんとは意見が合わないんだ」「お父さんとは考え方が違うの」と、きちんと伝えましょう。

もちろん子供は傷つくでしょう。しかしそれも「社会」を知る大事な学びです。家庭という社会の中でも「合わない人間関係」というものは発生しうる、ということをそのとき子供は知るのです。

子供の前で喧嘩をする夫婦
写真=iStock.com/xijian
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/xijian

■「子供のために離婚しない」という選択はすべきでない

「子供のために」離婚しない、といったこともするべきではありません。一般の社会では、合わない会社ならば辞めて転職するのが自然ですね。誰かのためにその会社にい続ける、などということはないはずです。

誠実に経緯を伝えて、「お父さんとお母さんはもう一緒には暮らせないんだ」と伝え、子供の思いを受け止め、「ごめんね」と言いましょう。

辛いけれど、仕方のないことが世の中にはある。子供は心を痛めながらも、そのことを学ぶでしょう。

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成田 奈緒子(なりた・なおこ)
文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表
小児科医・医学博士。公認心理師。子育て科学アクシス代表・文教大学教育学部教授。1987年神戸大学卒業後、米国セントルイスワシントン大学医学部や筑波大学基礎医学系で分子生物学・発生学・解剖学・脳科学の研究を行う。2009年より現職。臨床医、研究者としての活動も続けながら、医療、心理、教育、福祉を融合した新しい子育て理論を展開している。著書に『「発達障害」と間違われる子どもたち』(青春出版社)、『高学歴親という病』(講談社)、『山中教授、同級生の小児脳科学者と子育てを語る』(共著、講談社)、『子どもにいいこと大全』(主婦の友社)など多数。

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(文教大学教育学部 教授、「子育て科学アクシス」代表 成田 奈緒子)

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