最悪の場合「緑内障」になってしまう…「最近、視力が落ちている」という人が飲み過ぎてはいけない飲み物
プレジデントオンライン / 2024年2月21日 14時15分
※本稿は、井上賢治『いちばん親切でくわしい緑内障の教科書』(世界文化社)の一部を再編集したものです。
■気を付けたい「緑内障になる生活習慣」
緑内障の原因はわからないことも多いですが、多くの生活習慣病と同じく、加齢や体に負担となる生活習慣が関わっているのは確かです。
実は、毎日特に意識することなく繰り返している生活習慣の中に、眼圧を上げてしまったり、目に負担をかける可能性があるNG行動があります。
それは、かたよった食事や、運動不足、喫煙やストレス、睡眠不足といった生活習慣などです。これらが糖尿病や動脈硬化、心臓病や脳卒中などの病気につながってしまうことは、皆さんもよくご存知でしょう。
年齢を重ねるのは止められませんが、生活習慣を改善することで、老化スピードを落としたり、病気を予防したりすることはできます。
健康的な生活習慣は、目のためにも大切なことなのです。
■「うつ伏せ」で緑内障リスクが高まる
NG行動で特に重要なのは、直接的に眼圧を上げてしまう可能性がある行動です。
うつ伏せやうつむく姿勢、逆立ちなど、目の前面や頭を下にするような姿勢は、眼圧を上昇させるためできるだけ控えましょう。
仕事の合間に眠くなって、机につっぷして居眠りする。
腹ばいになって本を読んだりタブレットで動画を見たりする。
そんな何気なくしている行動が、眼圧を上げてしまうかもしれないのです。
■イライラすると眼圧が急上昇
また、現代人は誰もが多少のストレスを抱えています。ストレスはあらゆる病気と関係していますが、緑内障も例外ではありません。
ストレスが血圧を上げ、眼圧に影響することも考えられます。
網膜への血流も悪くなり、視神経にもダメージを与えることがあるかもしれません。
急に興奮したりイライラしたりすることで眼圧が急上昇し、緑内障発作を引き起こすこともないとは言えません。
完全にストレスのない生活を送るのは難しいものですが、ストレスのもとになることを避けたり、ストレスを解消する術を身につけておきたいですね。
避けたいNG行動をご紹介します。すべてをやめるのは難しいでしょうから、できる範囲、続けられる範囲で試してみてください。
緑内障と診断された人は点眼薬による治療をしっかり続けながら、生活習慣を改善し、悪化を防ぎましょう。
■暗いところでものを見てはいけない理由
暗いところでものを見るのはNG行動です。暗いとよく見えないだけでなく、眼圧にもよくありません。
暗いところでは、光をたくさん取り込もうとして瞳孔が開きます。瞳孔が開いているとき虹彩は縮み、厚くなっています。そして虹彩が厚くなることで隅角が狭くなり、房水の流れが妨げられて、眼圧が上がってしまうのです。
本を読んだり細かい作業をしたりするときは、手元や部屋を十分に明るくするようにしましょう。
■「うつむく姿勢」にならない
読書や動画の視聴に夢中になって、うつむいた姿勢をとり続けることはありませんか?
顔が下を向くと、水晶体が下=目の前方に落ちてきて、虹彩を前方に押し、隅角を狭くしてしまいます。
そのため長時間その姿勢でいると、眼圧が上がってしまいます。
手元の作業をするときは、うつむいた姿勢にならないように椅子や机を調節し、背筋を伸ばしたよい姿勢を保ちましょう。
また、ときどき目を閉じて上を向き、休憩するのもおすすめです。
■喫煙者は緑内障発症リスクが高い
喫煙者は、非喫煙者に比べて緑内障や加齢黄斑変性などの病気の発症リスクが何倍も高いことがわかっています。
また、喫煙後に眼圧が5mmHg以上、上がる人は、「健康な人に比べて原発開放隅角緑内障患者が多かった」という報告もあります。
さらに、喫煙によって上強膜静脈の血管が収縮して房水の排出が減ったり、視神経乳頭への血流が悪くなるとも考えられており、目の健康を守るうえでは禁煙は絶対条件です。
■「コンタクトレンズをつけて寝る」とどうなるか
強度近視は緑内障のリスクです。緑内障の患者さんでコンタクトレンズを使っている人は多いと思います。
コンタクトレンズは目の外に装着するので、緑内障の原因にはなりませんし、緑内障になってもコンタクトレンズは使えます。
ただし、緑内障の手術をした場合、その方法によっては、術後、コンタクトレンズを使えないケースもあります。
また、コンタクトレンズは使用方法を守り、清潔に扱うようにし、装用時間は長くても12時間程度にとどめます。
つけたまま寝ると、角膜が酸素不足になり、視神経がダメージを受ける可能性があります。
点眼薬は、コンタクトレンズがハードかソフトか、どんな点眼薬かによってレンズの上からさせるかどうかが違いますので、医師の指示に従うようにしてください。
メガネよりも角膜に傷がついたり、感染を起こしたりというリスクが高いので、正しく使うことが大切です。
カラーコンタクトレンズも含めて、眼科医に処方してもらって正規のルートで購入しましょう。
■「いびきがひどい人」は緑内障が悪化しやすい
時間的には寝ているはずなのに、寝起きがスッキリしない人、昼間にひどい眠気におそわれる人、家族に「いびきがひどい」と言われる人は、睡眠時無呼吸症候群かもしれません。
睡眠時無呼吸症候群は緑内障を悪化させる可能性があります。
メカニズムは、はっきりわかっていませんが、無呼吸によって低酸素状態になることが、網膜や視神経にダメージを与えるのではないかと考えられています。
■睡眠時無呼吸症候群のうち緑内障は7.2%
また、睡眠時無呼吸症候群の患者のうち、緑内障を有する割合は日本では7.2%で、欧米における緑内障を有する割合(2%)と比べて多かったという報告もあります。
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に10秒以上呼吸が止まる無呼吸発作を、1時間に5回以上繰り返す状態を言います。
睡眠中に舌の根元が落ち込んで気道をふさぐのが原因で、肥満や小さい顎、飲酒などがリスクになります。
治療するためには病院にかかる必要がありますが、耳鼻科や一般内科などさまざまな診療科で相談できるほか、睡眠外来がある病院もあります。
■紫外線は避けた方がいい
紫外線は体の細胞の老化を早めます。
目も例外ではなく、長時間紫外線を浴び続けると、光が通過する角膜や水晶体、光が届く網膜や視神経の細胞がダメージを受けてしまいます。
日本で紫外線が最も強いのは7〜8月ですが、真冬でも曇りの日でも紫外線は降り注いでいます。
紫外線対策をしないで外出するのは、どの季節でも控えましょう。
また、紫外線は窓を通って部屋の中にも入ってきますから、日中はレースカーテンを使うのもおすすめです。
■緑内障の人はトランペットを吹いてはいけない
トランペットを優しく吹くと眼圧が0.88mmHg/秒上がり、激しく吹くと12秒間で眼圧が24〜46mmHg上昇したという報告があります。
風船や浮き輪をふくらませるときも同様ですが、息を吐くときに圧がかかるのが問題なのです。
管楽器を演奏することがある人は、やめるのが望ましいのですが、仕事などでやめられない場合もあるでしょう。そのようなときは、どのくらい使用してよいか、どのような使い方をすればよいかなど、医師と相談してください。
目にゴミが入ったときや、花粉症で目がかゆいとき、目が乾いてゴロゴロするときなどは、目を洗いたくなりますよね。
でも、目の健康を守る意味でも洗いすぎはNGです。それは、目を守る働きがある涙や緑内障点眼薬なども洗い流してしまうからです。
涙は常に分泌されていて、目の表面を潤しています。それ以外にも、涙には水だけでなく、ナトリウムなどのミネラル、たんぱく質、酵素、脂質やビタミンなどが含まれていて、目の表面が乾燥しないように保護するほか、栄養を運び、感染を防ぎ、傷を治す働きもあります。涙はたくさんの大切な役割を担っているのです。
花粉の季節やホコリが目に入ったときなど、水や市販の洗眼剤でときどき洗うのは問題ないでしょう。でも、1日に何度も洗うのは控えましょう。また、緑内障治療のために点眼薬を使用している人は、目を洗うことで点眼薬の効果が薄まってしまうことも考えられるので注意が必要です。
■本当は怖い「カフェインのとりすぎ」
コーヒーやエナジードリンクなどに含まれるカフェインには、心拍数の増加、興奮、覚醒といった作用があります。
1日の始まりや、午後に眠気がおそってきたときに飲む人も多いでしょう。
カフェインをとりすぎると眼圧が上がるか否かは明らかになっていませんが、カフェインを多くとる人のほうが眼圧が高い傾向があるというデータがあります。
身近な飲み物でカフェインを最も多く含むコーヒーの場合、1日に1〜2杯程度なら問題ないと考えられています。
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医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長
千葉大学医学部卒、東京大学医学部大学院修了。眼科専門医。専門は緑内障。143年(創立1881年)の歴史を有する日本有数の眼科専門病院のトップを務める。著書に『視力0.1でも豊かな生活を送る 目の健康を守る本』など多数。
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(医療法人 社団済安堂理事長 井上眼科病院院長 井上 賢治)
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