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「怒りそうになったら深呼吸」なんてできない…そんな人に伝えたい「この前も言ったよね」の言い換え方

プレジデントオンライン / 2024年3月5日 7時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AH86

子育てをしていれば、子どもを叱る場面は避けられない。では、どんな叱り方をすべきなのか。受験指導専門家の西村創さんは「多くの親がつい言ってしまうけれど、できれば避けたい叱り方がある。だが言い方を改善することはできる」という――。(第3回/全4回)

※本稿は、西村創『中学受験のはじめ方』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

■「怒りそうになったら大きく深呼吸」と言われても…

・わが子をむやみに叱っても効果はない
・避けたい叱り方と、叱り方のポイントを把握する

よく「怒りそうになったら、とりあえず大きく深呼吸しましょう」などといわれますが、本当に効果があるのでしょうか。大きく息を吸い込んだら、そのぶん大きな声で叱ることになっている方もいるのではないかと思います。期待しているわが子だからこそ、親もつい熱が入って言いすぎてしまうものです。

そこで、多くの親がつい言ってしまうけれど、できれば避けたい叱り方と、どういうふうに言えばいいのかという改善ポイントをお伝えします。

■「この前もそれで失敗したでしょ?」はダメ

NG1 過去を引き合いに出す叱り方

まず避けたいのは、「この前もそれで失敗したでしょ?」という叱り方です。今まで穏やかに注意し、冷静に諭してきたのに一向に改善されず、今回もまた同じことをやらかした。そうなると、一気に怒りが爆発してしまいますよね。

これは、大人と子どもの時間感覚の違いが引き起こす問題です。

大人は1年前のできごとでも結構最近に感じるものですが、子どもにとっては1年前なんて、記憶に残っていない大昔です。同様に、大人にとって1カ月前、1週間前というのは「最近のこと」ですが、子どもにとっては、「ずいぶん前のできごと」という感覚です。大人は「この前言ったばかり」と思っていても、子どもはそう感じていないのです。

また、親が重要だと思って伝えたことでも、子どもはそう感じていないこともあります。「前にこれをやって注意された」という意識が薄いから、また同じことをやってしまうわけです。そうした意識の面でも、大きな開きがあります。

■過去ではなく、未来に目を向けた声かけをする

子どもを叱るときには、過去ではなく未来に意識を向けましょう。「次に同じことをくり返さないために、できることは何か」を、親が一方的に決めて言い聞かせるのではなく、子どもに考えさせるようにするのです。

子どもに考えさせることによって、「親が何か言っている」という受け身の姿勢から、「自分がどうにかしないといけない」と主体的に受け止めて考えるようになります。

とはいえ、子どもが出してくる改善案は、大人からすると無理があると感じることが多いです。それでも、「それは無理があるでしょ」と思ったままを口に出さずに、まずは「なるほどね」と受け止めましょう。そのうえで、「こうするともっと良さそうじゃない?」と提案してみましょう。

大人でも、自分で考えて腑に落ちたことでないと、これまでの行動を変えるにはなかなか至らないですよね。子どもも同じです。過去ではなく未来に意識を向け、親主体ではなく、子ども主体で改善策を考えさせてみましょう。

過去、現在、未来と書かれた付箋のイメージ
写真=iStock.com/marekuliasz
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/marekuliasz

■「そういう考えだからダメなの!」は可能性を狭める

NG2 価値観を否定する叱り方

子どもの価値観を否定する叱り方も避けたいです。ここでいう価値観とは、「物事のとらえ方、どんなことに重きを置くかという考え方」のことです。小学生ともなれば、もう、その子なりの価値観を持つようになってきますよね。

血のつながったわが子であっても、親子の価値観にはギャップがあります。生まれた時代も親子で異なりますし、当然のことです。それなのに「そういう考えだからダメなの!」なんて言ってしまうと、その子の可能性を狭めてしまいかねません。

時代ごとに価値観が180度変わることは、歴史が証明しています。前の時代で「善」とされていたことが、次の時代では「悪」になり得るのです。わが子が大人になる頃には、今の多くの常識的な価値観は、きっと非常識なものになっていることでしょう。親自身が、自らの価値観を絶対的なものだと思わないほうがいいです。

■まずは子ども自身に解決法を考えさせる

親であれば、自分がこの世からいなくなった後も、わが子が新たな時代の荒波の中で、しなやかに自分を生かしながら、人生を主体的に生きてほしいと願っているはずです。

ですから、わが子の価値観を否定するのではなく、現時点でベストだと思われる方法を子どもに考えさせてみましょう。

「その考えを実現するために、どうすればいいと思う?」とか、「そうすると、こんなことになりそうだけど、それはどうしようか?」というような声かけが効果的です。

私の生徒指導の経験上では、意外と「そんなことを考えたのか、なるほど!」と感心させられる答えが返ってくるものです。そこまで感心できる答えが返ってこなくとも、叱ったり否定したりする前に子どもに改善策を考えさせるようにすると、いずれ自分で考えて行動する子になっていきます。

NG3 感情的な叱り方

「何度言ったらわかるの!」という叱り方も避けたいです。もちろん、親だって怒りたくて怒っているわけではないでしょう。感情的に叱りたくなる、むしろ気づいたときにはもう叱っているというのは、それだけ大事なことだからですよね。

叱る大人となく子どものイメージ
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_

一時的に怒るのをガマンしても、堪忍袋の緒が切れるのは時間の問題です。大きな期待をかけ、大切に思うわが子だからこそ、感情的になってしまうのは当然です。

■時には感情的に叱っていいが、メリハリをつける

私は、時には感情的に怒ってもいいと思っています。しょっちゅう感情的に叱っていると、それが日常的になって子どもが慣れてしまって効果が薄くなりますが、たまには感情を出して伝えないと、本気だということが伝わりませんからね。

ただ、感情的に怒った後には、「まあ、そうやって怒ったけれど、ここでひとつ提案ね」というように、がらっと調子を変えて穏やかに伝えてみましょう。そうすると、意外と子どもは素直に聞くものです。

■「○○ちゃんはクラスが上がったのに…」は逆効果

NG4 他人と比べる叱り方

「○○ちゃんはクラスが上がったのに、それに比べてあなたは……」という叱り方も避けたいです。具体的な誰かの名前を挙げて比べることで子どもに発奮させたいのだと思いますが、たいていは逆効果です。

子どもに「スマホ買ってよ。○○ちゃんもスマホ買ってもらったんだよ」と言われても、「よそはよそ、うちはうち」と言いますよね。親の理想に近づけたいために誰かを引き合いに出しても、子どもの反発心をかき立てるだけです。

反発しなかったとしても、子どもの自信を打ち砕きます。大人でも、他人と比べられると自分が否定されたような気持ちでやるせなくなりますよね。しかも、それがどうでもいい他人ではなく、いちばん認められたいと思っている親から比較されるのですから、子どもは切なくて屈辱的な気持ちになるのです。

■叱るときには他人を引き合いに出さない

叱るのであれば、その行為自体を叱りましょう。叱る理由として他人を引き合いに出さないことです。他人がどうあれ、悪いものは悪いと理解させることで、子どもに次はその行為をしないようにしようと思わせることにつながるのです。

NG5 抽象的な叱り方

抽象的な叱り方もプラスの効果が薄いです。抽象的な言い方というのは、「何をやらせても続かないな」「やることなすこと、どうしてそう雑なの」というような叱り方です。こんなふうに範囲が広すぎる叱り方をされた子どもは、何をどう直せばいいのかわかりません。わからないどころか、人格否定につながります。そうなると、子どもの自己肯定感を大きく下げて、親の期待する理想像からますます離れていきかねません。

■「どういう状況で」「どうするとダメなのか」説明する

西村創『中学受験のはじめ方』(KADOKAWA)
西村創『中学受験のはじめ方』(KADOKAWA)

子どもの行動を変えるには、どういう状況で、どうするとダメなのか、その子の理解度に合わせて理由を説明しながら諭すことが必要です。性格や能力を否定するのではなく、できるだけ具体的に直すべきポイントを指摘して、どういうやり方なら直せるのかを説明するのです。

そして、一回言ってわからないようであれば、言い方を変えて再度伝える。それでもわからないようであれば、また言い方を工夫して伝える、ということをくり返しましょう。子どもの行動を変えるのは簡単なことではありませんが、あきらめずに、わが子に響く伝え方を模索していきましょう。

■ 叱るときに過去を持ち出すのではなく「これからどうすればいいか」を親子で考える。
■ 価値観の否定や、他人と比べるような叱り方は避ける。
■ 抽象的な言葉で叱るのではなく、具体的な指摘をする。

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西村 創(にしむら・はじめ)
受験指導専門家
早稲田アカデミー、駿台、河合塾Wingsなどで指導歴25年以上。 新卒入社の早稲田アカデミーでは、入社初年度に生徒授業満足度全講師中1位に輝く。 駿台ではシンガポール校講師を経て、当時初の20代校長として香港校校長を務め、過去最高の合格実績を出す。 河合塾Wingsでは講師、教室長、エリアマネージャーを務める。 現在はセミナー講演や書籍執筆、「にしむら先生 受験指導専門家」としてYouTube配信などを中心に活動。 著書は『中学歴史が面白いほどわかる本』(KADOKAWA)など多数。

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(受験指導専門家 西村 創)

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