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年収2000万円の人は1年にいくら稼ぐのか…給料が高い人が当たり前にやっている「自分の価値」の高め方

プレジデントオンライン / 2024年2月25日 13時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Andrii Dodonov

キーエンス社員の平均給与は2000万円を超える。キーエンス出身のコンサルタントである田尻望さんは「高い給与を支払うには、従業員一人が1時間で生み出す価値を高める必要がある。そのためには他企業に“相見積もりされない状態”を作らなければいけない」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■キーエンス社員は1人でいくら稼いでいるか

私がかつてコンサルティングエンジニア・販売促進技術職・海外販売促進技術職として在籍していたキーエンスは、営業利益50%超、平均社員給与が2000万円を超える驚異的な会社です。

2023年2月に提出されたキーエンスの決算書(2023年5月発表「2023年3月期 第3四半期決算短信〔連結〕」)によると、売上高は9224億円、営業利益は4989億円です。

キーエンスの全世界の総従業員数は約1万人です。単体では、約2800人です。

総従業員数で営業利益を割ると、一人あたりの営業利益は4000万円以上となります。

つまり、営業利益ベースで考えても、全世界の従業員がそれぞれ年間4000万円以上を稼いでいるという状態です。

もちろんこれは、キーエンスの高額な給料を支払ったあとの数値です。

平均年収2000万円超といわれる給料を含めると、キーエンス単体の一人当たりが出している利益は1.6億円くらいになるのではないでしょうか。

■「叶えている顧客ニーズの量」が収入を左右する

社会に価値を提供すれば、会社はその見返りとして、社会からお金をもらう仕組みになっています。

つまり、キーエンスは社会に提供している「一人あたりの価値」が非常に高い企業なのです。

キーエンスよりも大きな売上高の企業はたくさんあります。

ただ、従業員一人が1時間で生み出している価値の金額では、キーエンスは製造業においては圧倒的な状態です。

一人あたりが生み出す価値の大きさは、従業員の収入の高さにつながります。

日本の労働市場における大きな問題として「給料が安い」ことが挙げられます。

給料が安いのは、キーエンスとは対照的に、一人が1時間で生み出す価値、つまり叶えている顧客ニーズの量が少ないために起きている問題なのです。

キーエンスの場合、一人の従業員が叶えているお客様のニーズの量が非常に多いと言えます。

より正確に表現すると、「高い価値を持つニーズを叶えている」と言えるでしょう。

■営業先が「本当にほしいタブレット端末」は何か

ニーズには、「顕在ニーズ」「潜在ニーズ」に加え、相手のさらに深い部分に存在するニーズ、つまり、顕在ニーズと潜在ニーズの裏側にある「ニーズの裏のニーズ」があります(第1回参照)。

「ニーズの裏のニーズ」を追うためには、「プロービング(曖昧、不完全な回答に対する深掘り)」、徹底的なヒアリングを行う必要があります。

どのようなヒアリングをするのかについて、一般企業の例で説明しましょう。

ある企業でタブレット端末を導入するときに、「起動が早い」「いつでもネットにつなげられる」というニーズがあったとします。

深掘りをするために、営業が次のような質問をしたとしましょう。

営業「起動が早いというのは、どれくらいでしょうか?」
お客様「ポチッと押したら、すぐに起動できるといいな。0.1秒くらいだね」
営業「0.1秒でよろしいですか?」
お客様「うん、いいよ」

ここで、質問が止まってしまいます。この営業はこれ以上深掘りができません。

他の質問も考えてみましょう。

営業「いつでもネットにつなげられるというと、どれくらいの範囲での接続ができればいいですか?」
お客様「ドコモの回線ぐらいかな」
営業「他にはありますか」
お客様「ドコモレベルだったら、他にはいらないね」

再び、深掘り質問が止まってしまいました。

■最終ゴールは「営業の生産性を上げること」

どのようにすれば、ニーズを深掘りすることができるのでしょうか。

次のような質問の仕方で「ニーズの裏のニーズ」を深掘りしていけるのです。

営業「起動が早くて、いつでもネットにつなげられることが必要なのはなぜでしょうか? どのような成果を求められていますか?」
お客様「うちのセールスって出張が多いんだよ。でもセールスってせっかちでしょう? パッと開いてくれないと入力を後回しにしちゃうんだよ。でも情報共有と書類作成は速くしてほしくて、営業の効率を上げたいんだよね」
営業「なるほど、セールスの情報共有と書類作成を速くされて、営業の効率を上げて、生産性を上げたいんですね」
お客様「そうそう」
営業「そうすると営業の生産性を押し下げていそうなことに、他に何か思い当たることはありますか?」
お客様「ああ、情報共有にまだメールを使っているんだけど、本当はチャットのほうがいいと思っているんだ」
営業「なるほど、ではグループワーク用のチャットを提案に入れておいたほうがいいですね。生産性を押し下げていそうなことは、他にはありますか?」
お客様「うーん」

ここで、止まってはいけません。

さらにこちらからの仮説の価値を当てに行くのです。

■法人顧客獲得の鍵を握る「6つの価値」

営業「例えば、すでにペーパーレス化は完了されていますか? 書類のやり取りがすべて電子化できると社内のコミュニケーション効率も大きく上がりますが」
お客様「あーそれは、全然取り組めてなかった。確かにそれは生産性が上がりそうだね」
営業「それでは、他社様の成功事例も含めて、ペーパーレス例も入れておきますね。さらにですが……」

このように、「生産性を上げたい」というニーズに終わりはありません。

BtoBにおける「ニーズの裏のニーズ」、つまり「生産性のアップ」「財務の改善」「CSRの向上」「コストダウン」「リスクの回避」「付加価値のアップ」の6つの価値の追求には終わりがありません。

生産性が上がったのなら、もっと上げたいと思います。

コストが下がったのであれば、さらに下げられないかと考えます。

リスクはできるだけ避けたいものです。

もちろん限界はありますが、「ニーズの裏のニーズ」は「終わりのないニーズ」です。

群衆と異なる創造的なアイデアの概念から目立つ、影と光緑色の背景に他の短いはしごの間で輝く最長のはしご
写真=iStock.com/masterzphotois
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/masterzphotois

■「相見積もりされない状態」をつくれる

「ニーズの裏のニーズ」に基づく深掘りを営業で行えば、「そこまで深く知っていて、聞いてくれるのはあなただけだ」という構造ができあがります。

この構造により、「相見積もりされない状態」をつくることができます。

そのためには、「そこまで考えるとは思ってもいなかった」と相手に言わせるほどの深掘りが必要です。

相見積もりは、「お客様が自分のニーズを叶えるための仕様書を持っている」ときに初めて選択できる手段です。

解決方法がわかっていれば、見積もり金額に応じて、どこに頼むのかを判断し、最も安価に解決できる相手に仕様書を渡せばよいのです。

一方で、お客様のニーズを叶えられる仕様書を持っているのが、「ヒアリングをした私たちだけ」という構造ができあがれば、必然的に相見積もりはできなくなります。

そのためには、お客様が気づいている問題だけでなく「ニーズの裏のニーズ」を捉えるために、価値の仮説を立てて、さらに深くヒアリングしていく必要があるのです。

■終わりのない価値提供の仕組みへとつながる

加えて、もう一つ重要なことがあります。

「ニーズの裏のニーズ」を深掘りすることによって、今回の商品提供だけで解決しきれない(終わりがない)という仕組みを構築できるのです。

例えば、キーエンスのセンサーによって製造工程の効率が上がり、生産性が向上したとしましょう。

すると、導入後にも「もっと生産性を上げたい」という話が出てくるはずです。

キーエンスの商品提供プロセスでは、さらに次の商品を提供し続けることを目指し、「生産性を上げるため」「財務を改善するため」「CSRを上げるため」「コストを改善するため」「リスクを改善するため」つまり、「付加価値」を向上させていくためのニーズを探し続けているという方向性性があるように見えました。

■「ニーズの裏のニーズ」を追い続ける

この考え方で言えば、新商品を企画する際にも、価値の方向性の見極め方が非常に明確なのです。

田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)
田尻望『いつでも、どこでも、何度でも卓越した成果をあげる 再現性の塊』(かんき出版)

新商品の企画時には、BtoBであれば、先ほど示した6つのポイント、そしてBtoCの場合には、生活者のよりよい生活が追うべき方向になります。

そして、アップセル、クロスセル、中長期の契約だけでなく、「新商品の種」となる「ニーズの裏のニーズ」を追い続けます。

「○○をやってほしい」という単なるニーズ、すなわち機能的・特長的なニーズには終わりがあります。一方で、BtoBの6つの価値の方向性、BtoCの生活者のよりよい生活には終わりがありません。

つまり、終わりのない価値提供の仕組みへとつながっていくのです。

この方向性が、マーケットイン型での「潜在ニーズ」が見つかる起点になります。

キーエンスという会社は、BtoBの世界で、それを常に追い続けているように感じます。

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田尻 望(たじり・のぞむ)
戦略コンサルタント
株式会社キーエンスにてコンサルティングエンジニアとして、技術支援、重要顧客を担当。大手システム会社の業務システム構築支援をはじめ、年30社に及ぶシステム制作サポートを手掛けた経験が、「最小の人の命の時間と資本で、最大の付加価値を生み出す」という経営哲学、世界初のイノベーションを生む商品企画、ニーズの裏のニーズ®までを突き詰めるコンサルティングセールス、構造に特化した高収益化コンサルティングの基礎となっている。その後、企業向け研修会社の立ち上げに参画し、独立。年商10億円~4000億円規模の経営戦略コンサルティングなどを行い、月1億円、年10億円超の利益改善などを達成した企業を次々と輩出。企業が社会変化に適応し、中長期発展するための仕組みを提供している。著書に『構造が成果を創る』(中央経済社)、『キーエンス思考×ChatGPT時代の付加価値仕事術』(日経BP)、発刊10万部を突破した『付加価値のつくりかた』(かんき出版)がある。

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(戦略コンサルタント 田尻 望)

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