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上司も部下も「外向型」のチームは営業成績が最悪…注目される「内向型人材」のすばらしき潜在能力

プレジデントオンライン / 2024年2月29日 14時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Rawpixel

なぜ人類は存続できているのか。米国の精神科医である大山栄作さんは「約200万年もの長い間にわたって人類が存続し、繁栄してきたのは、外向型ではなく内向型が人類を支えてきたからだ」という――。

※本稿は、大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

■利己的な人ばかりでは生き残れない

冷静さ、思慮深さ、洞察力、客観力、独創性、集中力、傾聴力、共感力……。「2人に1人いる」とも言われる「内向型」。近年、世界の研究機関で次々と、内向型の「潜在能力」が科学的に証明されてきている。

外向型だけでは組織は成立しないことは、人類の約200万年の歴史からも裏付けられます。これほどの長い間にわたって人類が存続し、繁栄してきたのは、外向型ではなく内向型が人類を支えてきたからなのです。

当たり前ですが、人間も生き物です。弱肉強食の世界を生き残らなければなりません。ですから、私たちは時に利己的になります。学校や職場で自己主張が非常に強い人は皆さんの周りにもいるはずです。

ただ、人類の歴史は教えてくれます。利己的なふるまいをしていては生き残れなかったのです。

21世紀の今、日本はもちろん、食べるのに困らない国が大半です。ただ、人類史を俯瞰(ふかん)すれば、それは200万年の中でも最近100年くらいの現象です。食糧が安定的に供給されなかった時代があまりにも長く続きました。

利益を一時的にも最大化するには利己的にふるまうことが合理的ですが、それだと種は存続できません。利己的な人ばかりでは潰し合うことになります。

■「調整する役割の人間」がいたから存続できた

例えば、狩りに出て、二人で協力して獲物を狩れたのに、独り占めしようとしたら争いが起きます。もしお互いが譲り合わなかったら殺し合いになりますね。ですから、私たちは旧石器時代から食糧を集団で分け合ってきました。分け合うメリットもあります。もし、自分が獲物を狩れなくても、安定的に食糧が供給されます。飢え死にしません。

つまり、はるか昔から、人の意見を聞き、思慮深く全体を考えて調整する役割の人間が存在したのです。そして、以上のようなグループを束ねる資質を考えれば、リーダーは内向型だった可能性が極めて高いはずです。少なくとも、自分の利益を最大限に追求する外向型リーダーばかりではなかったのは明らかでしょう。

内向型のリーダーの知恵のおかげで今の私たちが存在していることは間違いありません。内向型の人間がいたからこそ、私たちは存続し、進化してきたのです。

また、進化生物学者のデイヴィッド・スローン・ウィルソンは、人間を含めた生き物の大半の種において、種全体の20%は外部からの刺激に対する反応が極めて慎重であり、そうした個体が進化にとって大きな意味を持っているのではと指摘しています。

■会社のアクシデント対応にも「内向型」人材が欠かせない

すぐに反応せず、注意深く周りを観察して動くことで捕食されずに、身を守り、進化してきたのではないかと推測しています。これは私たちの今の暮らしに当てはめても納得できる仮説です。

会社でも危機につながりそうなアクシデントが起きた場合、誰もが勢いよく反応してしまったら致命傷を負いかねません。例えば、自社の製品の不具合が相次いで問題になったとしましょう。社内調査の結果、自社の品質に過失はなかったとします。

ただ、だからといって、記者会見などで「うちの製品に問題はない」と反射的に反応してしまったら、批判を浴びるでしょう。状況を観察して、分析して、行動する人がいることで危機を回避する可能性が高まります。

マイクを持って話す人
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/takasuu

自社の品質に問題がなかったのに、なぜ不具合が起きたのか。もしかするとユーザーがこちらの意図していない使い方をしたのではないか、想定していない条件下での使われ方があったのではないかなどと観察し、分析した上での発言が求められます。こうした過剰に反応しない内向型の人が、組織の円滑な運営には欠かせません。

■「外向型の上司」×「積極的な部下」の組み合わせは最悪

外向型が衝突して、対立してしまうのは多くの論文で示されています。そのひとつにアダム・グラント、フランチェスカ・ジーノ、デビッド・A・ホフマンがアメリカの宅配ピザチェーン57店を対象に実施した調査があります。

3人は「外向的な上司は積極的な従業員と衝突する」と仮説を立て、実験しました。最初に各店舗の上司に自分の外向性を、主張の強さ、饒舌さ、大胆さ、活力の観点から評価してもらいました。

一方で、各店舗当たり平均6~7人の従業員にはアンケートに協力してもらい、チームとして改善の提案、店舗の戦略、より良い業務プロセスの構築などにどれくらい関与しているかを答えてもらいました。

その後、7週間にわたり各店舗の利益を調査した結果、従業員が非積極的で上司が外向的な店舗では、内向的な上司の場合よりも利益が16%高くなりました。

ところが、従業員が積極的で上司が外向的な店舗では内向型の上司の場合よりも利益が14%低くなったのです。予想通り、外向的な上司と積極的な部下、つまり外向型同士は組み合わせとしては極めて不利であるという結果が導き出されました。

■人の意見に耳を傾け、他者の能力を引き出す

外向型がぶつかりがちなのはマズローの欲求5段階説でも説明できます。私たち人間は根源的な欲求が満たされると、さらに高い欲求を満たそうとする性質が備わっているとされています。食欲や睡眠欲など生きていくための欲求(第一欲求)が満たされれば、身の安全など安心感を持って生きていきたい(第二欲求)と考えるようになります。

安心感を持って生きられれば、人と関わりたいと思うようになります(第三欲求)。群れたいと考えるのです。群れて所属感を得られると、そこで認められたい、承認されたい気持ちが湧いてきます。褒められたい、好かれたい、尊敬されたい、出世したい、すべてはこの承認欲求によるものです。当然、承認欲求を多くの人が抱けば衝突します。

大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)
大山栄作『精神科医が教える「静かな人」のすごい力』(SBクリエイティブ)

人間には、群れなければできないこともたくさんあります。群れることはある意味、必然です。ただ、群れることで承認欲求を強く抱く者が増えれば、メンバー同士でぶつかり合います。学校も会社もすべてこの承認欲求によるぶつかり合いがさまざまなトラブルを起こしています。

強い自信とカリスマ性と社交性だけでは組織は回りません。これをうまく束ねるのが内向型です。人の意見に注意深く耳を傾け、提案を受け入れ、他者の能力を引き出せる内向型がいることで組織も社会も成立しています。

人間の不変の欲求に折り合いをつけ、人類を進化させてきたのは内向型のDNAなのです。

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大山 栄作(おおやま・えいさく)
精神科医
米国・精神科医。自身も内向型。マンハッタン精神医学センター精神科医。安心メディカル・ヘルス・ケア心療内科医。米国精神神経学会認定医。米国精神医学協会(APA)会員。1993年東京慈恵会医科大学卒業。聖路加国際病院 小児科、慈恵病院 精神科を経て、埼玉県立越谷吉伸病院 精神科医長。2005年よりシティ・オブ・ホープ・メディカル・センター、ハーバーUCLAメディカルセンターにて、精神疾患の分子生物学的研究に従事。2012年マウントサイナイ医科大学精神科研修修了、現在に至る。日本で10年以上、米国で10年以上の臨床経験をもつ。

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(精神科医 大山 栄作)

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