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なぜか「感じのいい人」はここが違う…話し手を気持ちよくさせる「なるほど」「そうなんですね」のうまい使い方

プレジデントオンライン / 2024年3月4日 15時15分

交渉相手が内面を開示してくれる(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/takasuu

なぜか「感じのいい人」はどこが違うのか。弁護士の保坂康介さんの著書『心理カウンセラー弁護士が教える 気弱さん・口下手さんの交渉術』(日本実業出版社)より一部をお届けする――。

■相手から言葉を引き出す「パッシブリスニング」

交渉相手は時として、「とにかく自分の話を聴いてほしい。わかってほしい」と強く思ってはいるものの、なかなかうまく言葉にできない状況になることがあります。

そんなときに、あなたが「ああですか?」「それともこうですか?」と質問をしても、交渉相手は、聞かれることすら煩わしく感じたりします。

このとき相手は、「自分の感じていること、話したいことを好きなタイミングで話させてもらいたい」、あるいは「話さないでいることも許容してもらいたい」と思っています。

気弱さん・口下手さんなら、そのあたりの気持ちがよくわかるのではないでしょうか。

パッシブリスニングは、まさにそうしたときのための聴き方なのです。

■交渉相手が内面を開示してくれるようになる

この聴き方は、①交渉相手から話を引き出すのに役立つとともに、②交渉相手から思いを引き出すのに役立ちます。

「①交渉相手から話を引き出す」ための聴き方として「沈黙」と「相づち」があります。また、「②交渉相手から思いを引き出す」ためには「ドアオープナー」という聴き方があります。

パッシブリスニングをすることによって、交渉相手が内面に持っている出来事、悩み、感情などに気づけるようになり、それを聴き手に開示してくれるようになります。

「でも、そんな聴き方は悩み相談なんかのときだけで、交渉には必要ないんじゃない?」と思われるかもしれません。

そんなことはありません。

交渉の際にも相手が悩みやモヤモヤを抱えていることは当然にありますし、そもそもトラブルにならないための聴き方の1つとして身につけておくことはとても重要です。

■「自己一致」した人には安心感を覚える

この聴き方をする際に重要なことが、「自分の状態」です。

心理学の領域では「自己一致」と言われるものです。自己一致とはつまり「自分のありのままの状態を理解し、受容して、それを隠すような状態をつくっていないこと」です。

なぜでしょう? 相手は、聴き手がどのような人であれば自分のありのままを伝えることができると思いますか?

それは聴き手が聴き手自身のありのままを受け入れて、許容できている人です。そうした聴き手に対しては、交渉相手も「ありのままの自分を出しても大丈夫」という心理的な安心感を覚えるのです。

少し難しいかもしれませんが、気が弱くても話がうまくなくてもできる聴き方と言えます。

緑色の背景に心臓のオブジェクトをのせる子供の手のひら
写真=iStock.com/takasuu
「自己一致」した人には安心感を覚える(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/takasuu

■沈黙という聴き方

「沈黙という聴き方」と言われると、「沈黙していたら交渉が進まないじゃないか」と総突っ込みが入るかもしれません(笑)。

もちろん、最初から最後まで沈黙を貫いて何も話さなくてよいと言っているわけではありません。

ここでお伝えしたいのは、交渉相手の話を聴くときの姿勢の1つとして沈黙が効果を発揮するときがあるよ、ということです。

交渉もコミュニケーションですから、交渉相手の言ったことに対してこちらの思ったことや意見、希望を伝えるのが基本です。でも、つねにこの基本型で対応すればよいわけではありません。

■隠れている感情に寄り添う

例えば、以下のようなケースです。

①交渉相手が明らかに何かを伝えたそうだけれど、なかなか言葉が出てこないとき

こんなときは、沈黙したまま次の言葉が相手から出てくるのを待ちますよね。また、

②交渉相手が感情的になっている、例えば悲しそうだったり辛そうにしているとき

こんなときも沈黙して相手の話を聴くと思います。「相手の感情的な話をずっと聞いていたら時間がいたずらに経過するだけで何の生産性もない」と思われる気持ちもわかりますが、ここは腰を据えてじっくり相手の言動の裏に隠れている感情に寄り添ってみてください。

そして先の2つのケースでなくても、交渉相手が沈黙しているときは沈黙をしてみてください。

交渉相手からさらに話を引き出すために、あえて沈黙を続けるというのも有効な手段の1つなのです。

■沈黙は相手の熟考を助ける

相手が単に沈黙している、は先の「①相手が明らかに何か伝えたがっているとき」とは少し違います。つまり交渉相手が明らかに何か言いたそうにしているわけではなくても、黙ったままでいてみるのです。

こんなとき(交渉相手が沈黙しているとき)、気にしてしまうタイプのあなたとしては「相手が沈黙しているのはもしかして自分がいけないんじゃないか」とか、「自分が話し出すのを待っているのかな。何か話さなくちゃいけないのでは」と勘ぐってしまうかもしれません。

そして、とくに考えがまとまっていないまま、思ってもいなかったことや関係のないこと、ひいては自分にとって不利なことまでもしゃべってしまったり、ボロを出してしまったという経験はないでしょうか。これは非常にもったいないですね。

交渉相手は、沈黙をしていても何かを考えていたり、自分の内面と向き合っているときもあるわけで、あなたが話し出すのを待っているわけではないことだってあります。

そんなとき、あなたの沈黙は交渉相手の熟考を助け、相手の考えや真意が新たに言葉として出るきっかけになることもあります。沈黙はとても有効な聴き方なのです。

そもそも交渉相手が沈黙しているのであれば、あなたも沈黙してよいはずです。

堂々と沈黙するのを自分に許可してあげてください。

口の前に指を当てて静かにするよう示す女性
写真=iStock.com/4FR
沈黙は相手の熟考を助ける(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/4FR

あなたが無理に話そうとせずありのままの自分を体現できていれば、交渉相手はきっと勝手に話してくれるでしょう。

■話を引き出す「相づち」

日常会話だけでなく、交渉時においても相手に相づちを打ったり、興味や理解を示していることをアピールするワンフレーズを入れたりすることがあると思います。

こうした「相づち」もパッシブリスニングの1つの方法です。

例えば、「あー、なるほど」とか「へ~、そうなんですね」といったフレーズです。

じつは、こうした相づちのフレーズもちょっとした工夫をすることで、交渉相手との関係をさらに友好的なものにすることができるのです。

相手も自分の発した言葉に対するあなたの反応が心地よければよいほど、いろいろ聴いてもらいたいと思ってたくさん話をしてくれるようになります。

机の上で手を組んで向かい合う二人
写真=iStock.com/kazuma seki
話を引き出す「相づち」(※写真はイメージです) - 写真=iStock.com/kazuma seki

■安心感や信頼感を与える反応

では、話している人にとって心地のよい聴き手の反応とは、どういうものでしょうか?

以下の2つの方法は、相手に安心感や信頼感を与える反応といえます。

1 ペーシング

「ペーシング」という言葉を知っていますか。カウンセリングやコーチングでよく使われる方法です。

人は、早口な人もいればゆっくりペースで話す人もいます。また、高い声で話す人もいれば低いトーンで話す人もいます。ペーシングとは、交渉相手の話すスピードや声のトーンに合わせて、相づちやリアクションのためのフレーズを言うことです。

■自分のペースで話すとかみ合わない

このようにすると、交渉相手は「この人の前ではそのままの自分を出しても大丈夫だ」と信頼感を持ち、安心します。結果として、あなたはたくさんの話を交渉相手から引き出すことができるというわけです。

逆に、あなたが交渉相手の話すスピードや声のトーンと「合わないな」と思い、自分のペースやトーンを守って話すと、交渉相手も同じように感じます。

「何か、話しにくいな」とか「伝えてもわかってくれなさそうだな」と交渉相手が思ってしまい、うまく話がかみあわないこともあるのです。

■相手の身振り手振りを真似る

2 ミラーリング

交渉相手に安心感を持たせ、多くを話してもらうための手法として、ペーシングの他に「ミラーリング」という方法があります。

保坂康介『心理カウンセラー弁護士が教える 気弱さん・口下手さんの交渉術』(日本実業出版社)
保坂康介『心理カウンセラー弁護士が教える 気弱さん・口下手さんの交渉術』(日本実業出版社)

ミラーリングは、文字通りあなた自身が交渉相手の鏡となることです。つまり、交渉相手の表情や身振り手振り、姿勢などを真似るのです。

具体的には、交渉相手が悲しそうな顔をしていたら同じく悲しそうな表情をして「そうなんですね」と言ったり、相手が考えごとをするポーズをしたら、同じように考えているような仕草をしながら、「なるほど、そうですか」と言ってみるといった具合です。

これをすることで、ペーシングと同様、交渉相手はあなたに安心感や信頼感を覚えて話しやすい雰囲気になり、多くを開示してくれるようになるのです。

何より相手が心を開いてくれますから、話し合いがはじまったときの堅い雰囲気がほぐれ、あなたの考えや希望にも理解を示してくれる可能性が高まります。

ひいては、双方の妥結点をより柔軟に探ってくれるようになるのです。

話が苦手なあなたにこそ使ってほしいのが、ペーシングとミラーリングです。ぜひ自分のものにしてください。

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保坂 康介(ほさか・こうすけ)
弁護士、カウンセラー
1977年秋田県生まれ。弁護士/カウンセラー。明治大学政治経済学部卒。ドラマ「HERO」をきっかけに司法試験を目指し、2007年旧司法試験に合格。勤務弁護士として5年間の実務を経験した後、2014年10月に独立する。以降、東京都新宿区で法律事務所FORWARDを運営。著書に『心理カウンセラー弁護士が教える 気弱さん・口下手さんの交渉術』(日本実業出版社)。

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(弁護士、カウンセラー 保坂 康介)

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