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史上最高値の株価は「下落」濃厚…バブル崩壊の中国リスク、「もしトラ」リスクの他にあるヤバい"3月の爆弾"

プレジデントオンライン / 2024年3月2日 11時15分

日経平均株価の終値を示すモニター=2024年2月26日午後、東京都中央区 - 写真=時事通信フォト

34年ぶりに日経平均株価が最高値だが、死角があちらこちらに見え隠れしていると警告する専門家は少なくない。ジャーナリストの浅井秀樹さんは「株価は今後、調整局面に入る可能性がある。日経平均株価の上昇が急ピッチだったことや、不動産バブル崩壊の中国経済の影響、海外投資家が日本株の売り越しに転じる可能性、また、3月末の決算期末に向けて巨額資金を運用する組織が売りに出る可能性がある」という――。

■日経平均34年ぶり高値更新は急ピッチ過ぎ…「下落」可能性大

株式市場が活況で、日経平均株価は34年ぶりに最高値を更新した。企業業績が好調と思いきや、経済が減速する中国での事業不振を受けて希望退職者を募集する日本企業も出ている。最近の株価上昇には「死角」もあるとの指摘が専門家から相次いでいる。

日経平均株価は2月22日に3万9000円台に乗せ、バブル期の1989年12月につけた最高値3万8915円を更新した。円安で輸出産業を中心に企業業績が好調など、株価上昇にはさまざまな要因があるようだ。ただ、上昇があまりにも急ピッチで、目先は調整局面(株価の値上がりが続いた後、一時的に下落)を迎えるとの見方も出ている。

日本企業は業績好調ばかりでもない。大手電機メーカーのオムロンは2月26日、国内外で2000人規模の人員削減などを柱とする構造改革プログラムを発表。中国経済の減速で、工場などで使う制御機器の事業業績が悪化しているのだ。世界第2の経済大国で、不動産バブルが弾けた中国が抱える問題はやがて、さまざまな形で日本を含めた世界経済に大きな影響を及ぼすとみる指摘もある。

「日経平均株価には過熱感があり、目先は調整する可能性があります。株価は少し、しゃがんでから上値に向けて、再挑戦したほうがいい」

こう話すのは香川睦・楽天証券チーフグローバルストラテジスト。日経平均株価が今年中に4万円超えとなるシナリオには変わりないが、当面の株価は調整局面になる可能性があるとみている。

現在の日経平均株価は「日本経済への期待先行の表れで急ピッチに上がってきた」と話すのは、みずほリサーチ&テクノロジーズ調査部の酒井才介主席エコノミスト。特に、「中国経済は24~25年にかけて減速基調を強め、調整が長引き、日本経済への期待が剝落する可能性があります」という。

今後の日本経済や株価動向を見るうえで、具体的にどんなリスクが潜んでいるのだろうか。香川さんは中国リスクを含め、3つほどあると指摘する。

■「エヌビディア3兄弟」のおかげで日経平均も上昇

まず、日経平均株価の上昇が急ピッチなこと。株価は日々大きく変動するため、たとえば過去100日間の平均値を算出してグラフ化した移動平均線の動きと比較する分析手法がある。日経平均株価の動向を100日の移動平均と比べると、その乖離(かいり)が大きくなっており、「短期的に過熱している」という。

株価は米国でも上昇し、それを好感して日本株も上がっているが、日米の株式市場はAI(人工知能)・半導体ブームの様相となっている。日経平均株価が史上最高値を更新した際に注視されていたのが、人工知能コンピューティングで世界をリードする米半導体メーカーのNVIDIA(エヌビディア)の決算だった。この決算好調を確認して、日本を含めて世界の株価がさらに上昇したと、香川さんは指摘する。

「日経平均株価には値がさ株のハイテク銘柄の上昇が大きく影響しています。日本経済の実態以上に日経平均株価が押し上げられてきました。折からのドル高・円安もあり、スポーツ競技でいえば『追い風参考記録』のようなものです」(香川さん)

日経平均株価を構成する225銘柄のなかでも株価水準が高く、その変動が日経平均に大きな影響を与える銘柄を「値がさ株」と呼ぶ。

今回の日経平均株価を押し上げた値がさのハイテク株のうち、特にソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストを株式市場では「エヌビディア3兄弟」と呼んでいる。米国のエヌビディアの業績が好調で、その3兄弟の株価も年初から急騰して、日経平均株価の上昇をけん引してきたと、香川さんはいう。

見出しに踊る「日経平均」の文字
写真=iStock.com/y-studio
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

■巨額資金運用の年金基金がいったん売る可能性

株価リスクの2つ目について、香川さんは「米国株の上昇も、短期的には過熱感が否めない」と話す。米国株が調整局面に入ると、それにつられて上昇してきた日本株に対し、上昇相場をリードしてきた海外投資家が株価上昇で一定の達成感もあって「日本株の売り越しに転じてくる可能性がある」という。

海外投資家が日本株の買い越しから、売り越しに転じる可能性のほか、香川さんは「公的年金や企業年金の運用資金のリバランス、つまり資産再配分の売りがかさんでくる可能性もある」と話す。

3月末の決算期末に向けて、株式投資も含めて巨額の資金を運用している年金基金が、日本株の上昇により一定の達成感が出たため、まずいったん売って、値が下がったところで買い直す可能性もあるとみている。実際に売却しなくても、「年金基金が日本株を売るかもしれないという観測だけで、日本株が下がる可能性もあります」と香川さんは指摘する。

■バブル崩壊の中国リスク+「もしトラ」リスクのWパンチ

株価リスクの3つ目は中国問題。中国は不動産バブル崩壊で経済が減速している。日本の企業業績が好調な中でも、冒頭で紹介したオムロンのように、中国ビジネスに特化してきた企業は業績が悪くなっている。香川さんは「資生堂やNIDEC(ニデック)など中国向け事業に力を入れてきた企業は調子が悪い」と話す。

東京電力の福島原発の処理水問題などを受けて、中国では化粧品の不買の動きもあるとされる。資生堂は中核の中国事業に影響が出ており、昨年後半に今期業績予想を下方修正している。

世界トップの総合モーターメーカーのニデックも、中国の電気自動車市場で価格競争が激化していることなどから、今期業績予想を今年に入り下方修正している。

「中国の景況感が悪化しています。日本が経験したバブル崩壊後の構造不況にも似ており、中国リスクは見逃せません」(香川さん)

酒井さんも「中国の国内消費マインド低迷が継続します」と指摘し、「中国経済の弱さが思った以上だと、24年前半にかけて日本株の調整があるかもしれません」と話す。

株式市場のグラフと中国の紙幣
写真=iStock.com/claffra
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/claffra

中国リスクについては、米大統領選挙で共和党の有力候補のトランプ前大統領のリスクも指摘されている。トランプ前大統領は選挙に勝って就任すると、中国から米国への輸入関税を60%に引き上げたいと主張している。

香川さんは「トランプさんお得意の駆け引きなのでしょうが、彼は日本にも付き合えと言ってくるでしょうし、そうなると中国は報復措置を取り、被害をこうむるのは対中ビジネスをしているところ。新米中冷戦の影響が株式市場に不確実性をもたらしてきます」という。米大統領選は「もしトラ・リスク」が「ほぼトラ・リスク」になってきているとも。

酒井さんも「米中対立でサプライチェーン分断のリスクがあります」と指摘する。サプライチェーンとは原材料や部品・資材などの調達網のことで、製造業は中国を含めたサプライチェーンの上に成り立っている。中国経済についても「24~25年にかけて成長率が鈍化していく可能性があります」とも話す。

こうして「中国リスクは今後、株式市場の不安要因になってくる可能性がある」と香川さんはいう。特に、トランプ候補の米大統領就任の可能性が高まれば、高まるほどだ。

著名投資家のウォーレン・バフェット氏が率いる投資・保険会社のバークシャー・ハサウェイでは手元現金水準が過去最高を更新したとされ、いま魅力的な投資先が見つからないのが理由と報じられている。バフェット氏の投資スタンスについては、世界の金融市場関係者が注視している。香川さんは「バフェット氏が米国株について『カジノ状態』と発言したようで、過熱感があります。米国株はスピード調整を経たほうが健全になるとみています」と話す。

米国株が調整に入れば、日本株も影響を受ける。34年ぶりに最高値を更新してきた日経平均株価だが、死角があちらこちらに見え隠れしている。

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浅井 秀樹(あさい・ひでき)
ジャーナリスト
米国証券会社調査部を経て東洋経済新報社、米通信社ブルームバーグなど国内外の報道機関で30年以上にわたり取材・執筆。森林文化協会の月刊「グリーン・パワー」で森林ライターも続ける。

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(ジャーナリスト 浅井 秀樹)

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