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仕事に邁進する人は一流にはなれない…脳科学者が「隙間時間に仕事を詰め込むな」と断言する理由

プレジデントオンライン / 2024年3月6日 17時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/onuma Inthapong

仕事で成果を出すには脳をどのように使うといいか。脳科学者の茂木健一郎さんは「脳を休ませてアイドリングさせる時間がなければ、クリエイティブなことは思いつかない。アーティスト集団『チームラボ』の代表を務めている猪子寿之氏は一見すれば常に余裕を持っているように見えて、実は世界的に大きな成功を収めているという好例だ。日々の仕事の隙間時間に『ボーッと何もせずに余裕を持つ』ことを意識的に取り入れてみるといい」という――。

※本稿は、茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

■「ボーッと過ごす」がクリエイティブに生きるカギ

「ただただ、ボーッとした時間を過ごす」

こんなことを聞くと、「やる気がない」「時間がもったいない」などと考えてしまうビジネスパーソンが多いようです。

ところが、最新の脳科学では「ぼんやりと過ごす」ことの重要性が浮かび上がってきています。

ただただ、ボーッとした時間を過ごす目的はいうまでもなく、脳を休めることです。なぜ、脳を休ませるのかといえば、一時的に集約された情報や記憶を整理するためです。

脳を休ませてアイドリングさせる時間がなければ、クリエイティブなことは思いつかないといっても過言ではないのです。

「ただただ、ボーッと過ごす」という時間をどれだけ確保できるかが、クリエイティブに生きるカギになるわけです。

ボーッとするということは、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク」(脳の別の領域同士が同期して、協調して活動し、1つの機能を果たしていること)を働かせることにもなります。

すると、これまで思いつかなかったような「ひらめき」が生まれることになるのです。

■ひらめきに必要なのは集中とリラックス

ひらめきというのは、ただオフィスの机に向かっていれば浮かんでくるものではないということは、誰もが経験していることではないでしょうか。

ひらめきに必要なのは、「集中とリラックス」のバランスです。

ひらめきやアイデアは、基本的に脳がリラックスして脳がアイドリングしている状態でなければ生まれにくいといわれています。

たとえば、何時間も何時間も考えぬいた末に疲れ果て、お風呂に浸かった瞬間「ひらめいた!」という経験をした人もいるかもしれません。

これがまさに「ただただ、ボーッと過ごす」ということの効果です。

このとき注意しなければならないのは、集中、リラックス、集中、リラックスというメリハリのあるサイクルをまわすことを意識するということです。ただただ何もしない時間をつくるだけでは意味がありません。

お風呂でくつろぐ女性
写真=iStock.com/pondsaksit
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/pondsaksit

アインシュタインは、台所でバイオリンをボーッと弾きながら物理の問題を考えていたという有名なエピソードがあります。

こうした行為は、「完全に遊んでいる」と思われがちですが、とんでもありません。このときにこそ、最もクリエイティブなことをやっているといえるのです。

多くの日本のビジネスパーソンは仕事の集中の仕方は心得ていても、リラックスしたり、休んだりするということが、苦手なようです。

このことが、日本企業にイノベーションが起こりにくいということに少なからずつながっているような気がしてなりません。

■私たちの脳には、「何もしない」「先延ばし」が必要

「何もしないでいるよりも行動を起こすべき」
「何もしていない自分に価値を見出せない」

こんな考えを持って仕事をしているビジネスパーソンも多いのではないでしょうか。

実際に、「何もしない」、あるいは「先延ばし」といったことは、世の中では「悪」ともとられてしまうことが多々あります。

ですが、私たちの脳には「何もしない」、あるいは「先延ばし」の時間が必要なのです。すなわち、時々脳を自由にして、日々の出来事を処理する時間をつくってあげることが大事だということです。

たとえば、皆さんが道を歩いているときに空き地を見つけたとしましょう。

その空き地を見て、「こんなに広い土地をそのままにしておくなんて、もったいないな」と思うかもしれません。

それと同じように、脳のなかの空いたスペースがあれば、「何かやれることがあるはず」と考えてしまうのではないでしょうか。

これが、脳のなかの種がしっかりと育っていかない大きな要因になっているのです。

そんな状態で、いくら脳のスペースを埋めようとしても、その種は大きく育つわけはなく、もやしみたいなものにしかなりません。

脳のなかの種を大木にしたいのであれば、「何かすべき」と考えるよりも、日常生活のなかで余裕を持って生きている雰囲気というのが大事だということです。

というのも、一見すれば何も考えていないように見える人が、世の中で成功を収めているケースがほとんどだからです。

そうした人というのは、実は最も自分自身や物事を振り返って考えているのです。

■ボーッとしているから、世界的に大きな成功を収められる

親しくしている友人で、アーティスト集団「チームラボ」の代表を務めている猪子寿之という人物がいます。

彼はまさに、一見すれば常に余裕を持っているように見えて、実は世界的に大きな成功を収めているという好例です。

彼は、「年に何回かパソコンをなくす」ということを、ツイッター(現X)で公言していました。

単なるおっちょこちょいといえなくもないですが、そんなボーッとしている時間こそが、彼にとって脳のなかの種への水まきの時間になっているのではないかと思うのです。

だからこそ、チームラボでの活躍ぶりは目を見張るものがありますし、私たちが想像もできないような発想が出てくるのではないでしょうか。

■脳は曜日に関係なく休ませる

こうした余裕を持って過ごす時間は、一見すればムダに見えるかもしれませんが、実は脳にとっては必要不可欠なものなのです。

茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房〕
茂木健一郎『脳をしっかり休ませる方法』(三笠書房)

すると、次のように考えてしまう人がいるようです。

「月曜日から金曜日までガッツリ集中して働いて、土日に一気に脳を休ませる」

なるほど。確かに、これなら誰にでもできそうですね。

ですが、このようなやり方は、脳科学的な見地からも、あまりお勧めできることではありません。

なぜなら、私たちビジネスパーソンの脳というのは、曜日に関係なく四六時中働いているからです。

そう考えれば、やはり脳を休ませるのも曜日に関係なく、四六時中行うべきなのです。

たとえば、1時間ほど集中して働いたとすれば、その後の1時間集中するために、10分の振り返りタイムを設けてみる。

あるいは、仕事の合間に、トイレに行く時間を使ってボーッとしてみる。

そういった、ちょっとした隙間時間に「ボーッと何もせずに余裕を持つ」ということが、脳を休ませる上での重要なファクターになってくるのです。

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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、同大学院理学系研究科修了。クオリア(感覚の持つ質感)を研究テーマとする。『脳と仮想』(新潮社)で第4回小林秀雄賞を受賞。近著に『脳のコンディションの整え方』(ぱる出版)など。

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(脳科学者 茂木 健一郎)

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