「同世代より稼げていない自分は終わってる」と絶望していた元芸人が、人気YouTuberになれた理由
プレジデントオンライン / 2024年3月14日 15時15分
※本稿は、ニートと居候とたかさき『嫌なこと全部逃げてみた アラサー男3人のがんばらない日常』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■お笑い芸人からクリエイターへ、コロナ禍で転職
居候……南
たかさき……たかさき
家主の「たかさき」です。
クリエイターとして、主に映像制作の仕事をしています。
クライアントは、企業や行政など様々。セミナーの仕切りや配信、登壇まで僕が担当している案件もあります。ほかには農家さん向けのCMをつくったり、ミュージックビデオをつくったり……。映像ソフトの動画教材を制作したこともあります。それからポップアップイベントの主催、洋服のデザインから販売までなど。いろんなことをやってます。
改めて仕事内容を羅列すると多岐にわたっているように見えますが、一つひとつの仕事は意外と誰にでもできることだと思います。
ただ、昔からずっとクリエイターをしているわけではありません。この仕事をするようになったのは、2020年の半ばから。コロナ禍が深刻化してきた時期です。
当時、僕は26歳。今はうちの居候である南と「サンプル」というコンビを組んで芸人をしていました。テレビに出るなど少しだけ結果を残すことができましたが、コロナ禍に入り、僕は壁にぶつかりました。
■「同世代より稼げていない自分は終わってる」
芸人の仕事がなくなって何もしない時間が増え、きちんとお金を稼いでいる同世代と自分を比べてしまったのです。
結果を出せないまま芸人を続けてきて、もうアラサー。「稼げていない自分は終わってる」と悩む毎日……。この時期は、毎晩のように「終わった、終わった」と言いながら家のまわりを深夜徘徊(はいかい)していました。
さらに、当時の「サンプル」はものすごく仲が悪かった。南のことは面白いと思うけど、コンビという関わり方だと上手くいかないと思ったのです。それで、「サンプル」を解散することになりました。
解散をきっかけに「ちょっと違うことをしてみるか」と取り組み始めたのが、今の仕事に繋がる「動画編集」でした。知識のある芸人仲間にノウハウを教わり、ひたすら勉強。「給付金の10万円がなくなるまでに稼げるようになる」と決意し、バイトを辞めて退路を断ちました。タイピングもできないような状態から、死に物狂いでパソコンに向かう日々。
■住人の3分の2が働いていない家でモチベーションを保つ
僕の仕事場は、リビングに接しています。がんばる僕の横で、ルームシェアしているニートの野尻は「Apex」や、友達を呼んで麻雀に興じていました。「ツモォォォ!」とか聞こえたときは、めちゃくちゃムカつきましたね(笑)。
そんな状態にも今は慣れ、生活音があったほうがむしろ仕事がはかどるようになりました。いきなり『ドラゴン桜』の話をして申し訳ないんですけど、この漫画でも「子どもはリビングで勉強させたほうがいい」といっていました。向き・不向きはあると思いますが、自室にこもるよりオープンな場所で作業したほうが集中できる人もいるそうですよ。
同居している野尻と南が働いていないので、「その状態でどうやって働くモチベーションを保っているの?」と聞かれることがあります。
その答えは、「すごい人になりたい」から。
僕は多趣味の野尻とは違って、酒と散歩くらいしか趣味がありません。
むしろ仕事が好きだし、「すごい人になりたい」ならやるしかない。そういう思いで働いています。
■「やりたいこと」はやっていくうちに見つかるもの
「夢」がないことにコンプレックスを感じる人、けっこういますよね。僕は、夢なんて「普通ねぇよ」と思います。逆に、明確にやりたいことがある人のほうが噓なんじゃない? と思っています。
たとえば「野球選手になりたい」という夢を持っている人。
野球選手になりたくて野球を始めたのではなく、「たまたま上手だったから」楽しくなってきて、目指しただけの可能性があります。野球がめっちゃ下手なヤツが、いつまでも野球を愛して「選手になりたい」と思い続けているほうが、個人的には異常だと思います。
普通、やりたいことって後から見つかるものだと思うんです。やってみたら、結果「やりたいこと」になった。そっちがスタンダードなんじゃないかな。最初から「夢」にできるほど好きって、むしろ怖い。
だから、まずはやってみたらいいんじゃない? ……というのが僕の考えです。
僕は「夢なんて普通はない」派ですけど、仮に「夢」があるなら、それを追い続けることは否定しません。
夢を追いかけること自体が楽しいなら、追いかければいい。
ただ、そればかりになって人に迷惑をかけたり、追いかけた時間相応の“結果”を求めたりするのはちょっと違うと思います。「こんなにやっているんだから夢は叶うはず」みたいなことを言う人がいたら、「そんなこと言う前にもっと頭使え」と思っちゃいますね。個人的には「結果が出なかったらやる意味はない」という考え方なので、夢を“叶える”ことに比重を置くなら、やり方を変えたほうがいいと思います。
■ひとつの夢を諦めたら意外な得意分野が見つかった
僕は、美容師や芸人に挑戦する過程を経て、自分の才能を発揮できる分野にたどり着けただけだと思っています。
美容学校への進学を決めた頃の僕は、具体的に美容師になる未来を思い浮かべていたわけではありませんでした。ファッションが好きだったので、浅い気持ちで「美容師って楽しそうかも」というノリが大きかったと思います。
国家資格を取ることはできましたが、就職に失敗。第1志望の美容室に落ちたのを機に、僕は美容師になることをやめました。
今の仕事も、「クリエイターになりたい」と思って就いたわけではありません。
自分自身、まさか仕事になるほどデザインができるとは思っていませんでした。環境を変えるために初めてのことに挑戦して、やみくもに努力した結果、自分に向いていたというだけ。
「芸人」の世界で発揮できる才能は、僕にはあまりなかった。
その世界で戦うことをやめてみたら、思ってもみなかった得意分野を見つけられた。……そんな感覚です。
■自己肯定感が低いからこそ向上心が生まれる
最近、「自己肯定感を高めよう」みたいな風潮がありますよね。
でも僕は、「自己肯定感は高くなくていい」派です。
僕は元々、コンプレックスだらけの人間です。でも、だからこそ努力ができていると思います。
自分に自信がないから「デザイン力を高めたい」とか「もっとすごい仕事がしたい」という、向上心が生まれているんです。
コンプレックスは、僕にとって「モチベーションの素」。
僕は、野尻や南みたいにありのままの自分に満足できるタイプではないからこそ、「楽しい」と思える仕事ができているってこと。
逆に、自己肯定感の高い野尻や南は、悩みがないから向上心があまりないんだと思います。
人には得意・不得意があって、多くの人は「できないこと」のほうが多いと思います。だから「自己肯定感が低い」ことを悩んで自信をなくすって、本末転倒です。
自信がないゆえに努力ができて、少しずつ結果が出て、自信がついていくんだから、『自信をつける方法』みたいな本を読むのがミス!
僕の原動力は、100%“負”の感情です。嫉妬とか、失敗とか、悔しさとか。
感情の起伏があるから、今の僕ができあがっている。そう思えば、自己肯定感の低さもコンプレックスも、恥じるものではありません。
■自分が持っているものでどう戦えるか、考えるほうがいい
以前Instagramでお悩み募集をしたとき、この「コンプレックス」についての質問もたくさんもらいました。
自分の頭がよかったら、運動ができたら、面白かったら、もっと人生上手くいったんだろうな……。
僕自身もコンプレックスがあるから、その気持ちすごく分かります。
もちろん、人それぞれの事情があるし、一概には言えないけれど、僕は「自分の持ってるカードで勝負しようよ!」と思います。
欠点を気にするのではなく「自分の持ってるもので戦おう」っていうマインドで生きているんです。
たとえば、この世の中、たしかに顔のかわいさで得する局面もあるのかもしれません。
でも、顔面をどうこうする前にもっとできることがあるはず。むしろ「顔に自信がない」を言い訳にしていること自体がナンセンスで、その人の魅力を減らしてしまっているんじゃないかと思うんです。
現状を嘆いている時間はもったいない! その負の感情を燃料に、まずは自分の強みだと思う部分を磨くとか、好きなことを思いっきりやるとか、別のところを強化してみるといいんじゃないかな。
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元芸人で現クリエイターのたかさき、たかさきと高校の同級生でニートの野尻、解散したコンビの相方の家で居候をする芸人(仮)の南、3人のルームシェア生活を毎日配信する。
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(YouTuber ニートと居候とたかさき)
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