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「社長がいないとダメだよね」と言われるのが大好き…「会社を崩壊させる社長」の残念な共通点

プレジデントオンライン / 2024年3月13日 8時15分

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tadamichi

うまく機能する組織と崩壊する組織の違いは何か。エッグフォワード代表の徳谷智史さんは「トップに立つ人の考え方や価値観が左右する。たとえば、社長が部下を信用していないタイプの人だと、いくら優秀な人材が入ってきても定着しない」という――。

※本稿は、徳谷智史『経営中毒 社長はつらい、だから楽しい』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

■経営陣を信用せず、次々とクビにする社長

組織が崩壊する原因を突き詰めていくと、多くの場合、「ある問題」に行き着きます。

あるスタートアップでは、新たに策定したミッションやバリューに、社長自身が本気で腹落ちしているとは言えませんでした。かといって、人事担当者が頼んだ外部の理念策定コンサルの言うことを否定するわけでもなく、気づいたら、よその会社で見たような平凡なミッションと会社制度が出来上がっていました。

こうなると悲惨です。行動規範(バリュー)の一つに「相互信頼」を意味する言葉を掲げたのに、社長自身は誰も信用していないから、経営陣を次々とクビにしていく始末。

ギスギスした雰囲気が組織に充満し、社員は上を見て仕事をするようになります。それでも事業が回っているうちは良かったのですが、社長がバリューと矛盾したスタイルを貫くので会社のコアメンバーはどんどん離反してしまいました。

■「社長のおかげ」という構造が大好き

この社長は、これまで育ってきた環境の中で人を信用できず、創業してからも当初から苦労して一緒にやってきた人が、会社が苦しいときに離れていった経験をしていました。

その影響からか、「人を信頼している」と口では言うものの、本音では信頼しきれていませんでした。再び裏切られるのが怖くて、仕事を任せきれていなかったのです。

また、優秀な仲間が増えることは嬉しかったのですが、本音では「社長がいないとダメだよね」「社長のおかげで仕事が回っている」という構造を好んでいました。その背景には、自分が承認されたいという潜在的欲求があり、「社長がいなくても問題ないですね」と言われることが我慢ならなかったのです。

■優秀な人材がすぐにいなくなってしまう理由

だから、優秀な人材が入って活躍し、「社長がやるより良いですね」という反応が周囲で起こると、社長は「俺のほうができる」という態度を無意識のうちにとっていたのです。

つまり、組織の課題はうすうす感じていながらも、社長自ら人が定着しない構図をつくり出していたわけです。「社長の孤独」が間接的に悪影響を与えてしまった典型例です。

こうした社長の行動は潜在意識から来るものなので、本人に自覚はありません。でも言葉の端々からにじみ出る「自分のほうができる」という本音は、組織に伝わっていくものです。何年も同じような組織の課題を抱えているのに一向に解消しない場合は、たいがい社長に何らかの問題があると考えて良いでしょう

* 本人が自覚していない潜在意識からの行動を、氷の大半が水中に沈んでいることにたとえて「氷山モデル」と言ったりします。コンプレックスゆえに自分で気づくのは難しいため、我々が社長と対話をしながら自覚を促していくのです。

■社長自ら変わろうとする気持ちがあるか

ただ、このようなケースでも、社長だけが完全に悪いかというと、そうとも言えません。

たとえば役員に一部の業務を任せたけれども成果を出せないことが続くと、本当に仕事を任せていいのか不安になってきます。

任せた人が期待以上の成果を出せないだけでなく、その仕事を投げ出して会社を辞めることがあれば、気落ちもしますし、「リスクをとって任せたけど、うーん、これだったら自分が見たほうがいいかな」という考えが生まれます。

従業員や株主への責任、業績が下振れすることへの潜在的な恐れなどもあることを考えると、そうなるのも致し方ないところです。

しかし、そうやっていつまでも仕事を任せないでいると、本当の右腕は育ちません。

任される側のスキルやマインドが障害になっているのであれば、相互理解の場づくりや、お互いの考えの開示が必要です。任せる業務があまりに漠然としているようなら、タスクを細分化してわかりやすくするべきでしょう。

一方で、社長の考え方に問題がある場合は、制度を整えるだけでは改善しません。そのままのワンマンスタイルで続けるか、自分の潜在的な価値観を改めるか、社長自身が本気で自分の心と向き合うことが必要です。

自分を変えるのが難しいのは誰しも同じです。私自身も実感していますが、組織のフェーズが変わってくると、それでも社長自身が変わらなければなりません。そのことは強く意識したほうが良いでしょう。

■中途半端な現場介入はすごくやりづらい

社長の考え方や価値観が原因で、組織の崩壊に至るケースは他にもあります。

それは、社長の「感度」が高すぎるために、現場に口を出しすぎてしまうことです。

組織が成長して大きくなってくると、仕事のクオリティにバラつきが生じるようになります。これは社長がいなくても組織や事業が回る構造になりつつある証なので、喜ばしいことでもあるのですが、社長はそれを見過ごせません。

特に創業社長は資金繰りやメンバーとの衝突などで苦しいシーズンを乗り越えながら育ててきた会社・事業への想いが強いので、仕事を雑にすることに対する抵抗感が異常に高かったりします。だからこそ、現場に足を運んでは、細かいところが気になってしまい、アレコレと口を出してしまうのです。

部下に指示するアジア人実業家
写真=iStock.com/mapo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

社長から突然マネジャーに電話がかかってきて、「この店舗の洋服の並び、どうなってんだ」と叱られる、なんていう「スカッドミサイル」が飛んでくるという話も聞きます。

そうやって中途半端に現場に介入すると、現場の社員は任されているのか任されていないのかよくわからなくなり、すごくやりづらくなります

* 社長がすべてに介入するスタイルで組織がぐちゃぐちゃになる会社もある一方、これがハマって伸びていく会社もあります。それも一つの組織のあり方なのでしょう。しかし、社長が介入しすぎると人が育ちにくいため、一定規模以上には成長しにくいというのが、現場で見ている私の感覚です。

■社長のコピー、上司のコピーは作れない

すると、社長の下の役員やマネジャー層が、すべてにおいて社長にお伺いを立てるようになる。役員やマネジャーからすると、自分が意思を持って指示をしても社長が全部ひっくり返すので、「それなら最初から社長にお伺いを立てよう」となり、現場の意思決定が揺らいでしまうのです。

このように、現場に介入したくなる社長はどうすれば良いでしょうか。「とにかく口を出さないように我慢するしかない」と考える人が多いのではないかと思います。

たしかに、すべてに口を出していては、いつまで経っても人は育ちません。

それに、部下に対して社長と同じ能力を求めても、それは不可能です。これは社長に限らず上司全般に言えることですが、部下のスタイルやキャラクターは上司とは違いますから、上司のコピーを求められても、完全に同じようにはできません。

■「譲っていいかどうか」のボーダーライン

しかし、社長の常人離れした価値へのこだわりや執着心があったからこそ、他と異なる価値を持つプロダクトやサービス、店舗などが提供でき、お客様に支持されてきたのも事実です。

そうしたこだわりや執着心を捨ててしまえば、会社の価値の源泉がなくなってしまいます。全体の雰囲気も緩むでしょう。

そう考えると、大切なのは、会社として「絶対譲ってはいけないこと」と「譲ってもいいこと」をはっきりさせることです。方法論のレベルではなく、本質的な考え方のレベルで具体的に落とし込むのです。

アパレルショップの服のたたみ方を例に挙げると、「縦に折って横に折って斜めに折る……」といったルールを守らせるのではなく、「こういうたたみ方をするのは、お客様が手に取ったときに扱いやすいから」といった本質的な考え方を共有するのです。接客や営業、顧客に向き合う姿勢などすべて同じです。

それが社内に浸透すれば、メンバーは、単にマニュアル通りにやろうとするのではなく、「こういうふうにたたむと、もっと良いんじゃないか」という会話を交わすようになります。

そうやって考え方を浸透させても、社長は「なんだ、このたたみ方は!」と箸の上げ下ろしまで指摘しがちですが、メンバーは考え方がわかっているので、「なぜこのたたみ方だと社長は怒ったか」を深く理解できるわけです。

もし、社長が「絶対譲ってはいけないこと」と「譲ってもいいこと」を仕分けることができなければ、社長が信頼を寄せる経営陣の誰かに差配してもらうと良いでしょう。社長一人がすべてを抱える必要はありません。

■悪い情報が上がってこないのは社長のせい

組織が崩壊する前兆として見過ごしてはいけないのが、「社長に悪い情報が上がってこなくなること」です。

「バッドニュース・ファースト」と言われるように、悪い情報ほど、素早く報告してもらうに越したことはありません。経営者として早期に手が打てるからです。

最初はそれほど問題ではなかったのに、時間が経つうちに問題が大きくなり、会社に多額の損害をもたらすことはよくあります。

ある企業の例です。CFO主導で資金調達を進めていました。財務に精通していなかった社長は、着実に資金を調達している様子を見て、そのCFOを評価していました。

■「叱られたくない」と良い報告だけするように

ところが、うまくいっているように見えたのは表面上だけで、実際は会社の魅力や成長性をまったく伝えられておらず、どちらかというと評判が良くない投資家からやむをえず調達をしていたのです。同時に、金融機関から相当不利な条件で借り入れしていました。

そうしたことを逐一、報告を受けていなかった社長は、数年経ってCFOが退任した後に、後任者から「なぜこんな条件で調達したのか」と指摘され、ようやく事の重大さに気づいたそうです。

「うまくいっていないことをなんでもっと早く言わなかったんだ」と前任のCFOを問い詰めたところであとの祭りというわけです。

もっとも、悪い情報が上がってこなくなるのは、だいたい社長に原因があります。

「悪い報告したら叱責(しっせき)される」と思って、メンバーが報告をためらったり、ポジティブな情報だけを報告したりするようになっていくのです。

■「早く報告してくれたこと」に感謝する

「厳しい批判も受け止めるので何でも言ってほしい」と言うので口に出したら、怒られた。あるいは怒られなかったけど、その後、ものすごく機嫌が悪くなった……。こうなると誰も悪い情報を報告したくなくなります。

徳谷智史『経営中毒 社長はつらい、だから楽しい』(PHP研究所)
徳谷智史『経営中毒 社長はつらい、だから楽しい』(PHP研究所)

すると「もうちょっと問題を解決してから報告しよう」と自分でこっそり火を消そうとします。ところが、それによってさらに火事が大きくなり、取り返しがつかなくなる……。よくあるパターンですね。

せっかちな人ほど、責任を個人に負わせたくなる気持ちはわかるのですが、社長自身の言動によって悪い情報が上がってこない構造をつくっているからこそ、そういう困った事態が起こるのです。

悪い情報が上がってくるようにするには、社長が、悪い情報でも「早く報告してくれたことには感謝したい」というひと言を忘れないことです。シンプルですが、とても大事な心がけです。

ただ、それでも悪い情報を積極的に話したい人はいません。なので、中間管理職が一般社員から声を吸い上げて、共有するといった具合に、悪い情報を吸い上げる仕組みや風土をつくることも並行して進めたいものです。

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徳谷 智史(とくや・さとし)
エッグフォワード代表
京都大学卒業後、大手戦略コンサルティング会社に入社。国内プロジェクトリーダーを経験後、アジアオフィスを立ち上げ代表に就任。業界トップ企業から、先進スタートアップまで数百社の企業変革や出資によるハンズオン支援を手がけると同時に、個人の可能性を最大化するべく、2万人以上のキャリア支援に従事。NewsPicksキャリア分野プロフェッサー。PIVOT社長改造コーチ、東洋経済Online連載、Podcast「経営中毒 ~だれにも言えない社長の孤独~」メインMC等を担当。

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(エッグフォワード代表 徳谷 智史)

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