なぜ、すぐプレゼンの準備に取りかかれないのか -「先送り症候群」6タイプ別病状と処方箋【1】完璧主義タイプ
プレジデントオンライン / 2012年12月9日 13時0分
わかっちゃいるけど取りかかれない。その心理的メカニズムを理解すれば、突破口は必ず見える。すぐやる人になるための簡単な仕掛けを紹介する。
グズは、アメリカで盛んに研究されているテーマである。アメリカの大学で心理学を研究した経験を持つ、心理学ジャーナリストの佐々木正悟氏が言う。
「アメリカでは1970年以前から、グズ、つまり『先送りの心理』の研究が行われています。なぜなら、アメリカは個人主義の国なので、いくら仕事を先送りしても誰も責めないからです」
誰も責めないかわり、誰も面倒を見てくれない。グズのレッテルを貼られてしまえば、仕事をクビになるだけだ。だから、自分自身でグズを矯正していくしかない。アメリカがグズ研究の先進国であるのは、こうした過酷な個人主義のカルチャーがあるからなのだ。
ではなぜ、先送りしてしまうのか。その心理的要因は日米同じであり、グズは人類共通の悩みであると指摘するのは、心理カウンセラーの笹氣健治氏だ。
「グズは心理学でいうタイプA、すなわち責任感も向上心もあり、几帳面な人が多いですね。仕事の先送りは多かれ少なかれ誰でもやりますが、このタイプはそんな自分を何とかしたいと思って悩む。グズの問題とは、この悩みからいかに抜けだすかという問題ともいえます」
以下、タイプ別にグズ脱出の処方箋を探っていこう。自身が勉強嫌いの元グズで、自ら編み出した勉強法で高卒時の偏差値37から東大の修士課程を修了した平本あきお氏のアドバイスも心強い。
週明けの会議でプレゼンテーションをやらなければならない。それはわかっているのに、どうしても取りかかれない。焦るばかりで時間だけが過ぎていく……。
「プレゼンの準備が苦手な人には、完璧主義の人が多いですね。パワーポイントやスライドを完璧に仕上げなくてはと思うあまり、なかなか手をつけられない。中途半端なものをつくるぐらいなら、やらないほうがマシ。完璧主義の人はこうした心理にはまって、身動きが取れなくなってしまいがちです」(佐々木)
佐々木氏によると、完璧主義タイプは、後に述べる心配性タイプ同様、常に緊張感が高い人だという。緊張感の高い人は、高いモチベーションで行動したがる特徴を持っている。
「モチベーションが高いため、ものすごいものをつくらなければ気が済まないのですが、それには膨大な時間が必要になります。しかし、まとまった時間はなかなか確保できないので、どうしても仕事の先送りをしてしまいがちなのです」

佐々木正悟氏
完璧を期すのは、決して悪いことではない。しかし、締め切りに間に合わなければ意味がない。さて、どうするか。
笹氣氏は完璧主義タイプに限らず、グズに陥る原因は信条体系が引き起こす「自動思考」にあると説明する(図参照)。
「たとえば、完璧主義の人は100点を取らなければいけないと思い込んでいます。これがその人の信条体系です。こうした信条体系を持った人は、何かに取りかかろうとしたときに、『うまくできるだろうか』という思考が自動的に浮かび上がってきます。この自動思考が不安や自信のなさにつながり、行動をためらってしまうのです。本当に100点である必要があるのでしょうか?
プロ野球選手でも、10割バッターなんて存在しない。3割打てれば上々です。思い切って『できるに越したことはない』くらいまでハードルを下げれば、楽な気持ちで仕事に取りかかれます」(笹氣)
佐々木氏の表現を借りると、「100点を取らなければならない」というのは、あくまでも「自分の内側にある基準」だ。
「完璧主義の人は、自分の内側の基準に照らして納得できるかどうかしか考えていない。では、外側の基準に照らしてみたらどうなのか。完璧な仕事など求められていないかもしれません」(佐々木)

笹氣健治氏
外側の基準とは、さし当たり上司の評価だろう。上司が「これでいい」と言ってくれれば、仕事としてはOKなのだ。
「TODOリストを樹形図にするのも効果的です。樹形図的に仕事を分解していって隙間時間にひとつずつこなすようにすると、まとまった時間は取れなくても、自分がすごい仕事をやりつつあるという感覚を持つことができます」(佐々木)
「メール一本でも、完璧に書こうと思うと時間がかかりますね。私は、メールを先送りしそうになったら、思い切って電話します。早く書かなきゃと焦り続けるのは、精神衛生上よくないです」(笹氣)
電話で用件が済んでしまったら、メールの文面に凝っていた自分は一体何だったのかということになる。完璧主義とは、自己満足の別名なのだ。
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1973年、北海道生まれ。獨協大学、アヴィラ大学心理学科卒。『いつも先送りするあなたがすぐやる人になる50の方法』など、著書多数。ブログ「ライフハック心理学」を主宰している。
心理カウンセラー 笹氣健治(ささき・けんじ)
1967年、宮城県生まれ。国際基督教大学教養学部卒。人が行き詰まる様々な心理問題の解消をテーマに執筆、講演、セミナーを行う。『なぜあなたはその仕事を先送りしてしまうのか?』など著書多数。
メンタルコーチ 平本あきお(ひらもと・あきお)
1965年、兵庫県生まれ。東京大学大学院修士課程修了。北京五輪の金メダリスト、石井慧選手などのメンタルコーチ。多数の民間企業、官公庁の研修を行う。著書に『すぐやる!すぐやめる!技術』。
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(ノンフィクションライター 山田 清機 川本聖哉=撮影)
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