「結論から話す」は役に立たない…会話メソッドをいくら学んでも上達しない人が見落とすたった1つの法則
プレジデントオンライン / 2024年3月19日 8時15分
※本稿は、プレジデントオンラインアカデミーの連載『ビル・ゲイツも絶賛した伝説のプレゼンターが伝授 人も結果も引き寄せる澤円流ビジネス会話の技術』の第1話を再編集したものです。
■聞き手には、「伝わらない」ことを前提に会話する
話が聞き手になかなか伝わらない――これはよくある悩みです。まずお伝えしたいのは、「最初から相手に話が伝わるとは思わない」というマインドセットを持つことの大切さです。伝わらないことを前提にしたうえで、それをいかにしてうまく伝わるようにするかという考え方が、会話には必要なのです。
たとえ気心が知れた相手でも、日によって体調が違えば、気分も違います。あなたと会話する前に、ちょっとした仕事のトラブルに巻き込まれてイライラしているかもしれません。
そんなとき、自分では伝わる話だと思っていても、お互いのあいだに意識のギャップがあるために、相手に話が伝わらないことはよく起こります。相手が話を受け止める余裕がない状態では、何をどう話してもうまく伝わらないのがあたりまえなのです。
そこで、会話をはじめるときは、まず相手に、いま話す余裕があるかどうかを確認することが必要です。話す前に、「いま大丈夫かな?」「いまこの話をしていい?」と、トピックとともに相手のコンディションを必ず確認するようにしましょう。
つまり、ただ「話すこと」を目的にしてはいけないということです。
なぜなら、誰かに話しかけるのは、あくまで自分の都合に過ぎないからです。極端に言うと、相手は「あなたの話を聞くために生まれてきたわけではない」という事実を理解することが大切です。要するに、相手には相手の都合があるということですね。
でも、会話となるとそのことを忘れがちで、「自分の考えを話さなければ」と気持ちが前のめりになってしまう場合がよくあります。しかし、聞き手にはその話を聞かなければいけない理由はないのです。
この一歩目をかけ違えてしまうと、簡単な話でもなかなか伝わりません。僕は、これが「話し方」の大前提だと考えています。
■「何のために話をしているのか」を最初に把握する
最初のかけ違いをクリアしたところで、次に「伝え方」を考えましょう。
まず、お互いにしてほしいのは、「何のために話をしているのか」を合意することです。
相手に何かの判断をしてほしいから話しているのか、ただ感想を聞きたいから話しているのか――。そんな話の目的を最初に把握しておくことが大切です。
さもなければ、相手は「いま何のために話しているんだっけ?」「それわたしに聞いてどうするの?」という反応になってしまいます。これはお互いに時間の無駄にしかならず、僕はこの状態を、会話における“いちばんの悲劇”と見ています。
でも、これって実によくある話ですよね? 特に会議などのビジネスシーンでよく起こる状況です。いったい何のために集まっているのかがよくわからず、アジェンダが共有されていない状態で突然会議がはじまってしまう……。要するに、「会議をすること」が目的になってしまっているわけです。
いまは「働き方改革」が叫ばれ、ビジネスパーソンはより生産性を上げることが求められていますが、生産性が低くなる根本原因の多くは、この「何のために話をしているのか」「何のために集まっているのか」があいまいになっているからではないかと、僕は捉えています。
もっと言うと、「何のために仕事をしているのかわからない」状態で仕事をしている人が、実はとても多いということです。
■「話し方」のメソッドにおける見落としがちなポイント
いま話しているのは、相談なのか、判断を求めているのか、雑談なのかが自分でもよくわからない。その根本の目的を把握していない状態で、ただ惰性で会話をしているから、「何のために話しているのだっけ?」となってしまう。
このような状態では、いくら「話し方」を磨いても伝わるわけがありません。
世の中には、実にさまざまな話し方のメソッドが存在します。「話す順番は結論から」などともよく言われますよね? でも、聞き手が黙って聞くことが前提のプレゼンテーションならともかく、「この話し方なら絶対にうまくいく!」というメソッドはないと考えたほうがいいでしょう。
なぜなら、それらのメソッドの多くは話し手側の論理で完結していて、聞き手側のことをあまり想定していない場合が多いから。これがいわゆる、「話し方」のメソッドにおける見落としがちなポイントになると思います。
同じ業界で働く同じ文脈を共有しているビジネスパーソン同士と、そうでない人とでは、同じ内容でも伝え方はかなり変わるはずです。考えてみれば当然のことですが、前提となる知識や条件がまったく違うからです。
誰にでも普遍的に通じるような「話し方」のメソッドに頼りすぎるのではなく、あくまで個別具体的に、目の前の相手と「話をする目的」を明確にすることからはじめてみてください。
■ワンセンテンスをなるべく短くする
僕は、会話とは「相手に伝わらない確率のほうが高い」という認識でいるくらいがちょうどいいと考えています。だからこそ、話すときは相手の状況や理解度をその都度確認しながら、丁寧に話すことが欠かせません。
具体的には、「ここまではいいですか?」「何かわからなかったことはありますか?」と、会話のなかで随時確認をしていけばいいわけです。「このことはご存じですか?」と、質問から話をはじめるのもいいですね。
その意味では、話す内容をすべて自分で用意する必要もありません。相手が事前の知識をどの程度持ち、またそのテーマを理解しているのかを、その都度探っていけばいいということです。
そうして相手をよく観察し、気持ちよく話してもらうには、やはりワンセンテンスは短くしたほうがいいでしょう。
よく自分の考えや感想を一方的に長々と話す人がいますが、そんな人に限って途中から文脈が変わりがちで、背景説明を挟んだり、一般的な意見を交ぜ込んだりして、まるで独演会のようになってしまいます。
ですが、それではワンセンテンスが長くなるだけで、言葉のキャッチボールができず、聞き手が話を理解できなくなる可能性が確実に高まってしまうでしょう。
■会話にメリハリをつける
「ゆっくり話すと伝わりやすい」ともよく言われます。でも僕自身、話すスピードは比較的速いほうです。それでもなぜ伝わるのかというと、実は話す内容に従ってスピードのメリハリをつけ、聞き取りやすさを重視しているからです。
具体的には、「ここだけは覚えておいてほしい」という部分はあえてスピードを落としたり、繰り返したりして、聞き手にメッセージを染み込ませるように話すことを心がけています。リズムを変えてメッセージを浮かび上がらせると、聞き手により印象づけられます。そんなひと工夫を意識してみてもいいかもしれません。
ただしこれも、対面なのか、オンラインなのか、電話なのか……会話の状況によって変わります。音声だけの場合、音声以外に会話を補完するものがないため、僕は全体的にゆっくりめで話すように意識しています。
一方、オンラインなら画面は小さくても表情は見えるし、資料を見せるなどして会話を補完することが可能です。同じ空間を共有する対面なら、身振り手振りやちょっとした仕草などでより強めに補完できますから、スピードは多少速くても大丈夫というわけです。
話すスピードなどの要素も、状況や相手によって随時変わることを押さえておいてください。
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圓窓 代表取締役
1969年生まれ。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て、1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報共有系コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任。2019年より現職。著書に、『外資系エリートのシンプルな伝え方』(KADOKAWA)、『マイクロソフト伝説マネジャーの世界No.1 プレゼン術』(ダイヤモンド社)、伊藤羊一氏との共著『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。 Twitter:madoka510 Facebook:Madoka Sawa
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(圓窓 代表取締役 澤 円 構成=岩川悟、辻本圭介 写真提供=株式会社圓窓)
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