なぜ子どもは勉強をイヤがるのか…勉強ギライほどハマる「ヒマつぶしドリル」にかけてある学びの仕掛け
プレジデントオンライン / 2024年3月20日 14時15分
■勉強ギライの子が喜んで取り組むパズル
――なぜ算数の指導にパズルを取り入れたのですか?
【田邉】子どもが喜んで解くからです。
僕は2000年にりんご塾を開業しました。当時の僕のように無名の者が塾を開くと、勉強が苦手な子たちが入塾するんですね。彼らは大手学習塾などの他の塾で成績が悪く、辞めてきた子なのです。だから、劣等感があり、学校でも勉強に自信がありません。
それで、彼らに自信をつけさせようと思い、学校から出る夏休みや冬休みの宿題を見てあげていました。その時に、ほかの問題は「わからないから教えて」というのに、宿題のドリルにおまけ的についているパズルや迷路は自分から解くことに気づきました。
それを見て僕は「彼らはやる気がないわけでもない、勉強したくないわけでもない。算数の問題がつまらないのかもしれない」と気付きました。そこで、小学校の単元を全部、パズルにできないかと考えました。
――パズルだけで全単元が教えられるものでしょうか?
【田邉】パズルだけだと難しいのですが、迷路やクイズにすると算数の全単元がカバーできました。
■おもしろいだけでなく理解の助けにもなるパズル
――具体的にどんなパズルなのか教えてください。
【田邉】たとえば「数字つなぎ」という問題があります。1から順に数をつないでいくパズルで、これは数がわかれば解けます。ここからひとつレベルアップしたのが「倍数つなぎ」で、これは2、4、6、8、10……など、倍数をつないでいくパズルです。
【田邉】さらにレベルアップしたのが「倍数クロス」という問題です。2の倍数と3の倍数をそれぞれつないで、6や12などの公倍数で線が重なります。
――なるほど、視覚的に公倍数を理解できるんですね。
【田邉】はい、そうです。
■能動的に学ぶから記憶に定着する
【田邉】算数は文章題が解けるように国語力をつけることも大切です。そこで国語の問題もパズルや迷路にしているのですが、国語の学習にも非常に効果的なんですね。
たとえば「思い立ったが吉日」という言葉を子どもに覚えさせようとしても、日常生活でその言葉と関わりがないため、なかなか覚えられません。ですが、迷路にしてその言葉をたどらせると、スタートからゴールまでの間に何度もその言葉を頭の中で繰り返すので、自然に覚えられます。
【田邉】たくさん並んだ漢字の中から1つだけ違う漢字を探して、それを4つ見つけると四字熟語になる「集中! 四字熟語さがし」という問題もあります。子どもにとって苦労して見つけた間違い探しの答えだから、興味を持ってくれます。
つまり、パズルを解くことで、その言葉と自分に関係ができるんです。四字熟語の読み方やことわざの意味をただ教えられても退屈ですが、パズルの答えなら知りたいということです。
このようにただ教わるのではなく、能動的に知識に触れるからこそ、記憶の定着も良いのだと考えています。
■子どもは頭を使うことが大好き
――そもそも子どもはなぜ、パズルだと夢中で解くのでしょうか?
【田邉】頭を使うからです。実は子どもは頭を使うことが大好きなんですよ。
それは『天才‼ ヒマつぶしドリル』シリーズの反響からもわかります。読者アンケートには「買って家に置いておいたら、子どもが自分から解き始めた」「夢中で時間を忘れて解いている」「問題を解いて、正解したらうれしそうに報告してきた」という親御さんの声が届いています。
■つまらないから「算数ギライ」になる
――頭を使うことが好きな子どもが、算数ギライになるのはなぜですか?
【田邉】学校の算数は丁寧に教えようとして、頭を使わない作業になってしまっているからです。2+5=7のようなわかりきったことを先生が何度も説明して、問題を解くのにも頭を使いません。
すると子どもたちは、算数は退屈だな、おもしろくないなと思うようになります。ところが、学年が上がるにつれて、問題が急に複雑になっていきますよね。すると、今まで努力せずにテストでいい点が取れていたのに、授業についていけなくなって、算数が嫌いになってしまうのです。
だから、低学年のうちから、頭を使わないと解けない算数にしておくといい。ひとひねり加えて、2+○=7のように「2+5=7を使って解く問題」にすると作業ではなくなります。2+5=7という式を頭の中に浮かべて、それをくるくる回しながら解くことは、算数の力をつける上で重要です。
自分の頭を使って、それで丸をもらうことが子どもにとってうれしい瞬間なんです。これを続けていくと、自分で考えるという勉強の姿勢が身につく。すると、成績が上がり、受験にも強くなります。
■パズルで勉強の姿勢が身につく
――なぜ、パズルで中学受験に強くなるのでしょうか?
【田邉】中学受験の特に難関校の入試問題は人から教えてもらって解けるような問題ではないんです。自分で考えて解くしかありません。
思考力やひらめきの力があるのか。何より、諦めずに粘り強く考えられるか。つまり、勉強の姿勢が身についているのかが問われます。その姿勢は、パズルや迷路、クイズのような問題を通じて養っていくことができるのです。
いまは成績が上がるという実績が周知されて言われなくなりましたが、昔はよく「算数の塾だと思って入れたのに、パズルばかりやらせている」と苦情が入ったものです。ですが、入塾して2〜3カ月後に中学受験塾大手のテストで算数も国語も点数が上がって、苦情が収まる(笑)。そういうパターンが多かったですね。
(後編に続く)
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りんご塾代表、パズル作家
1968年、滋賀県生まれ。モーツァルトとサンバが好きで声楽家を志し、名古屋音楽大学に入学するも中退。その後、ニューヨーク市立大学とペンシルバニア州立大学で学ぶ。留学中にニュートンの『自然哲学の数学的原理』に感銘を受ける。2000年9月、小学校低学年向けの「算数オリンピック」「そろばん検定」「思考力」を重視した学習教室「りんご塾」を滋賀県彦根市に設立。2024年4月には全国に約250教室を展開予定。
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(りんご塾代表、パズル作家 田邉 亨 聞き手・構成=ミアキス代表 梶塚美帆)
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