受験勉強と同じ方法は「人生」には通用しないのに…落ちこぼれがたまたま入った医学部で覚えた強烈な違和感
プレジデントオンライン / 2024年3月20日 17時15分
※本稿は、青笹寛史『凡人でも「稼ぐ力」を最大化できる 努力の数値化』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■違和感を覚えた医学部同級生たちの真面目ぶり
医学部に入学できたことで、「どうにかこうにか、エリートの下っ端にしがみつけたぞ」という、ある種の達成感が芽生えました。
しかし入学してからしばらく経つと、私は周りの同級生たちに対して、妙な違和感を覚えるようになっていきました。
みんな、とにかく真面目なのです。
もちろん、真面目であるのは素晴らしいことです。ただそれにしても、授業では先生の発言の一語一句をノートにとり、板書もすべてきれいに書き写しています。「授業の内容を一生懸命ノートにとろうがとるまいが、結局はテストでいい点を取れば進級できるし、取れなければ留年するだけなんでしょ」と悟っていた私は、周りの真面目さにドン引きし、周りの同級生たちは、私のだらけっぷりにドン引きしていました。
■過去問を利用すれば効率的にテスト勉強ができる
「授業を真面目に聞いていなければ、テストでいい点も取れないだろ」と感じた人もいるかもしれません。実は、これにはカラクリがあります。
医学部のテストは、ほとんどの科目で「過去問」がストックされています。その過去問は、誰もが自由に閲覧し、コピーできるようになっています。
そして、ここからが重要です。
実際のテストでは、過去数年間に出た問題とほぼ同じか、場合によってはまったく同じ問題が出題されることがほとんどなのです。
テストが過去問から出題されるのなら、過去問を徹底的に勉強し、わからないところは個別に先生に聞けばいい。私はそう考えていましたが、同級生たちは違いました。
「まずは授業の内容をすべてノートにとり、教科書の内容もすべて頭に入れた上で、最後の実戦練習として過去問に挑む」という、ある意味オーソドックスなアプローチでテストに臨んでいたのです。
しかしテストの結果は、私のほうが高得点であることがほとんどでした。
「なぜあいつは、授業中に楽をしているはずなのに、真面目にやっている人たちよりも高得点を取るのか」と、同級生たちは次第に、私に一目置いてくれるようになりました。
■がむしゃらに勉強の量を増やしても意味はない
授業中も、テスト勉強も、私より同級生のほうが明らかに努力しています。
そして確実に、私より同級生のほうが、高校時代までの成績もよかったはずです。
それなのに、大学のテストでは、私のほうが点数が高い。
その原因はひとえに、同級生が日々積み重ねている「努力の方向性」が間違っているからにほかなりません。
テストはほとんど過去問から出題されるとわかり切っているのですから、素直に過去問を「教科書」として勉強すればいいのです。
しかし、私の「素直な」勉強法は、同級生たちにとっては斬新だったようです。「その発想はなかった」と、みんな口をそろえて言います。
繰り返しますが、テストは過去問から出ることは誰もが知っていて、その過去問は誰もが自由に閲覧し、コピーできる状態になっているのに、です。
今まで自分が決してかなわなかったであろう人たちより、自分のほうが結果を出し始めたことで、私は自分のある能力に自信を深めていきました。
その能力とは、「努力の方向性を定める能力」です。
■受験勉強と同じやり方で努力していても壁にぶつかる
大学受験までは、「努力の方向性を定める能力」はさほど必要ではありませんでした。
公教育も充実していますし、塾も予備校も参考書も豊富にあります。「この方向が正しい」という道しるべが明確ですから、その方向へ力任せにグングンと突き進んでいれば、それで結果が出たのです。
ただ、そのやり方では、いずれ壁にぶつかるときがきます。人生には道しるべなどないからです。
大学に入り、急に道しるべがなくなった中、同級生たちは「今まではこの道が正しかったから」と、高校までと同じ勉強の仕方をして結果が出ず、私は「どの道が正しいのか」を考えて、道筋を自分で定めてから行動に移したから、結果が出た。テストの点数の差は、たったそれだけの差なのだと私は思います。
■自分で「どの道が正しいのか」を見つけなければならない
かつては、大人になってからも、「努力の方向性」を定める能力がさほど重要ではない時代がありました。
とにかく「つぶれない会社」に就職さえしてしまえば、一生安泰。真面目に毎日会社に通勤するだけで、年々給料が上がり、出世していく。老後も年金が手厚い。「みんなができること」を「みんなより多くやること」が努力であり、やればやるほど評価が上がった――そのような時代が確かにあったのも事実です。
しかし、時代は変わりました。
終身雇用や年金神話は遥か昔に終わりを告げ、今や国が率先して、副業や投資を勧める時代です。
AI(人工知能)の発達もすさまじいものがあります。これまで人間がやってきた仕事も、どんどんAIに任されるようになるでしょう。そのほうがコストもかからず、正確だからです。加えてAIは、疲れ知らずです。
誰もができるような仕事を大量にこなして評価される時代は、もう終わってしまいました。そのようなことはもう、努力とは呼ばれなくなってしまったのです。
これからの時代を生きる人に求められるのは、「正しい努力は何なのか」を探し出し、その方向に進み出す力です。
国や会社に依存しきれない社会だからこそ、正しい努力を積み重ねて「個」の力を磨き、自分ならではの強みを発揮していく必要があるのです。
組織に所属せずに働く「フリーランス」も増えました。自分ならではの得意分野を武器に収入を得て食べていける時代になったのは、「かつてより自由な時代になった」ということでもあります。厳しい世の中にはなりましたが、個性は発揮しやすくなりました。だからこそ、自分なりに「どの道が正しいのか」を見つけ出し、正しい努力を積み重ねる重要性が増したともいえます。
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アズール代表取締役
2016年、島根大学医学部医学科入学。在学中に起業して動画マーケティングコンサル業務を開始。医師国家試験に合格するも卒業後は医師にならず、動画編集者教育の分野へ。全国で動画編集者を育てる「動画編集CAMP」を主催し、これまでに延べ5000人を超える動画編集者を指導する。YouTube「令和の虎」にも出演。
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(アズール代表取締役 青笹 寛史)
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