「ダメだったら医者になればいい」医学部生が在学中に動画ビジネスで1億円稼ぎ出せたワケ
プレジデントオンライン / 2024年3月23日 10時15分
※本稿は、青笹寛史『凡人でも「稼ぐ力」を最大化できる 努力の数値化』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■国家資格を取りながら医師の道に進まなかった理由
私は大学医学部在学中に起業し、初年度から年間1億円の営業利益を出しました。
そしてそのまま医学部で勉強し続け、医師の国家資格を取得して卒業しました。
この経歴を話すと、「なぜ、実業でやっていけるメドが立っていながら、医師の国家資格を取ったの?」とか、逆に「なぜ、医学部を卒業したのに医師にならなかったの?」といった疑問を持たれることが多くあります。
私が医師の道を断ち、実業一本に絞らない理由。それはひとえに、私が臆病だからです。
「背水の陣」を敷いてうまくいくイメージが、どうしても湧きません。
先日私は、大学生でありながらすでに営業代行で十分な収入を得ている後輩から、「もう大学を辞めて、フリーランス一本でやっていこうと思うんですけど、どう思います?」と相談を受けました。
そのときも私は、「背水の陣」を敷かない選択を勧めました。
大学を辞めず、これまでどおりに「学生兼フリーランス」として働いて、卒業するよう勧めたのです。
■迷ったときは常に「巻き戻し可能」なほうを選択する
大学を辞めた後で仕事がうまくいかなくなり、「あぁ、やっぱり大学を続けていればよかったなぁ」と後悔したところで、もう戻れません。しかし、大学を続けながら「辞めたいなぁ……」と思い続ける分には、実害はゼロです。
迷ったときは、常に「巻き戻し可能」なほうを選択すれば、実生活のダメージを最小限にとどめることができるわけです。
進むべき目標を定めるにあたって、選択肢が多いのは、とてもありがたいことです。自らその選択肢をつぶす必要はありません。
■退路を断つことは覚悟の表れではない
自ら選択肢をつぶすことを「意気込み」や「覚悟」と同義ととらえる人もいますが、私はそうは考えません。
意気込みや覚悟が表れるのは、あくまでも努力の「質」と「量」においてです。
自ら選択肢をつぶす行為は単に、「自ら選択肢をつぶした」以外の意味を持ちません。
さきほどの大学生も、「大学を辞めて起業しました。背水の陣です」と宣言すれば「おお、いい覚悟だ」と褒めてくれる人はいるでしょうが、いざというときに本当に頼りになるのは自分自身だけです。窮地に陥ったとき、かつて褒めてくれた人に「あのとき、『いい覚悟だ』と言ってくれたじゃないですか!」と言ったところで、助けてくれるとは限らないのです。
「選択肢の削除」と「意気込み」「覚悟」とは切り離して考えるべきです。
■選択肢をつぶしてもいいことなんて何もない
巻き戻しできる選択をした場合は、選んだ道がたとえ行き止まりだったとしてもやり直しが利きますが、巻き戻しできる選択をしなかった場合は、前にも進めないし元にも戻れないという、にっちもさっちもいかない状態になります。いわゆる「詰み」です。
この時点で、努力の継続は叶わなくなってしまいます。
もちろん、退路を断った段階で、将来的に「詰み」に陥らないように生きるのでしょうが、それでも「後戻りできない」というのは大変なプレッシャーです。「努力を積み重ねる方向を定める」という重要な意思決定に、少なからず影響を及ぼします。「退路がないから、こっちに進むしかない」という場面も必ず訪れます。
一度、重要な場面で自ら選択肢をつぶしてしまうと、その後も「選びたい選択肢を選べない」場面がたくさん訪れるのです。大きな損失です。
そのために私は、たとえ周りから「臆病者だ」「ずるい」「潔くない」と言われても、自分から選択肢をつぶすようなことはしないほうがいいと考えているのです。
■両親には「今やっているビジネスは部活の代わり」と説明
また、私が「医師としての道も残しつつ、実業にも力を入れる」という選択をした背景には、「子ども4人のうち、誰かひとりでも医師の道に進むことを、両親がおそらく望んでいたであろう」という、私の個人的な事情もあります。これも無視することはできません。
私が動画編集で大きなお金を稼げるようになったのは、大学5年生のころです。当時、私は両親に、「今やっているビジネスは、部活の代わりだから。医師の道へ進むのをやめたわけではないから」と話していました。
大学では軽音部に入っていましたが、正式に所属できるのは4年生まで。でも医学部は6年制ですから、5年生、6年生は自動的に、隠居生活を強いられることになります。
つまり5年生になると、部活をやっていた時間が、まるまる暇になってしまうのです。せっかくの学生生活。いろいろなことにチャレンジできる時期なのに、ただただ隠居生活を送るのはもったいない。私は、ビジネスに打ち込むことにしました。
■予防線があるから余裕が生まれて大胆な選択ができた
「この子は本当に、医師になるのか」と両親は不安げでしたが、私は毎月、両親に収支報告をしながら「絶対、医師にはなるから」となだめ続けていました。
もちろん、本心です。
しかし会社化し、サービスの展開を大きくしていく過程で、お客さまからの「喜びの声」が私のもとにも多く届くようになりました。
自分がつくったサービスが、人を幸せにしている。この嬉しさや充実感は相当なものです。そして、頑張ったら頑張った分だけ利益が出て、展開できるサービスがどんどん大きくなります。
私は次第に、「ビジネスの世界で勝負したい」と考えるようになりました。
ただ一方で、「ビジネスがこんなにもうまくいっているのは、『もしもダメだったら医師になればいい』という予防線があるからではないか」とも感じていました。
いくら成長市場とはいえ、一介の学生が立ち上げた会社が初年度から年間1億円の利益を出すことができるなんて、奇跡です。自分なりに努力を重ねてはきましたが、もしも「医師への道を断って、ビジネス一本で勝負だ」と考えていたら決して選べないような、遊び心たっぷりの選択肢もたくさん選んできました。
「予防線」のおかげで心にいくらかの余裕が生まれ、大胆な選択肢も選べたのだと私は考えています。正しい方向に努力を重ねる上で、「退路」はとても大切なのです。
■正しい努力をして得た結果を自ら手放す必要はない
医学部に入るために3浪、4浪している人もたくさんいる中で、私は幸いにも、1浪で入学することができました。そして同じく、医学部在学中に留年する人も決して少なくない中で、私はストレートの6年で卒業し、医師の国家資格も取得することができました。
そのおかげで、医学部卒業後に、いったんは医師の道から離れている私も、平均的な医学部生よりはまだ、年齢的アドバンテージがある状態ではあります。
この後、私が本気で医師になりたくなったり、世の中の変化で私のビジネスが立ちゆかなくなったりしたときには、まだ医師の道に戻ることができます。
これは私が、努力の「質」を高め、努力の「量」を増やした結果です。
もしもあなたが、複数の選択肢を選べる状況にあるのだとしたら、それも同じく、正しい努力をした結果なのだろうと私は思います。
わざわざ自ら、正しい努力をした結果得たごほうびを手放すことはありません。
日々、世の中は変わります。自身の考え方もどんどん成熟していきます。いずれ、最適な選択肢を選べる状況になるそのときまで決断を先延ばしにするのも、決して悪いことではありません。
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アズール代表取締役
2016年、島根大学医学部医学科入学。在学中に起業して動画マーケティングコンサル業務を開始。医師国家試験に合格するも卒業後は医師にならず、動画編集者教育の分野へ。全国で動画編集者を育てる「動画編集CAMP」を主催し、これまでに延べ5000人を超える動画編集者を指導する。YouTube「令和の虎」にも出演。
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(アズール代表取締役 青笹 寛史)
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