日焼け止めをケチケチしてはいけない…肌の再生医療の専門家が「1日にゴルフボールぐらい使って」という理由
プレジデントオンライン / 2024年3月24日 11時15分
※本稿は、北條元治『40代の壁を乗り越える美容トレ 「肌の再生医療の専門家」が忖度なしで教える最高のエイジングケア』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
■海辺よりもスキー場のほうが日焼けしやすい
肌の劣化や老化を防ぐには日焼け(紫外線)対策が大事ということは多くの人が常識として知っているだろう。
私は肌の再生医療の専門家として、5000人以上の患者さんを診てきました。患者さんから日焼けに関するご相談を受けることも多いのですが、そのやり方に関して間違っている方が多数います。
たとえば、日焼け止めは効くのに時間がかかるので外出の15分前につける方が良いとされています。また、実は海辺よりもスキー場の方が日焼けしやすいなどの事実もあり、間違って認識しやすい事柄が多くあります。
本稿では、正しい日焼け対策や日焼けしてしまった時の対策などをご紹介したいと思います。
■日焼け止めは「外出の15分前」に塗る
日焼け対策は美肌のために重要ですが、そもそもなぜ重要かわかりますか。
日焼けは太陽からの太陽光、いわゆる放射線の一種みたいなものから引き起こります。太陽光の中にはUVA・B・Cがあって、一番厄介なのはUVAです。真皮部分のコラーゲンやエラスチンを破壊し、さらに細胞毒性もあるので、これらを作る真皮線維芽細胞というものまでも破壊してしまいます。
表皮のみでしたら、ターンオーバーで消えたりレーザーを当てたりして何とでもやりようがありますが、UVAによって破壊された真皮というのはもう絶対に戻ってきません。だから肌のたるみやしわに対して、日焼け対策は必須なのです。
「アメリカ皮膚科学会」という権威ある学会も提唱している日焼け止めの塗り方を参考にしつつ、日焼け止めを使用するときのポイントを4つ簡潔にご紹介いたします。
①SPFが30以上で耐水性があり広範囲を塗りやすいもの
無理にSPF(Sun Protection Factor)50を使わなくてもSPF30でも十分な保護が期待できます。
②屋内で塗り、15分経ってから外出する
日焼け止めが効いてくるのは15分後と言われています。バーベキューする方、海に行く方は、外に行ってから塗るのでは遅く、15分ほど無防備な時間ができてしまいます。これは一番大事なポイントだと思いますので、完璧に防御してから外に出ましょう。
■朝1回塗るだけでは効果は出ない
③十分な量を塗る(全身を塗る場合は約30g)
日焼け止めはケチケチしてはいけません。大体全身を覆うのであれば、約30g必要で、これはゴルフボールくらいの量です。日焼け止めはたっぷりめを意識しましょう。これはステロイドなどを使う時も一緒で、使用する量は多めを意識しましょう。
④2時間おきに塗り直す
2時間以内に塗り足すのが理想とされています。塗り足す時は、外に出ていても問題ありません。
これらのポイントを守ることで、日焼けによる肌のダメージを効果的に防ぐことができます。日焼け止めは夏の必需品と言われますが、冬でも日差しの強い日は多くあります。
年中無休のスキンケアとして考えるのがベストです。肌を守るためにも、これらのポイントをしっかりと実践しましょう。
またもうひとつ、日々気をつけることと、もし日焼けをしてしまったときの対処法もご紹介します。
屋外にいる人は、上空からの紫外線を浴びるだけでなく、地表面で反射された紫外線も浴びています。実際に浴びる紫外線量には地表面での紫外線の反射する割合も考慮に入れましょう。
■日焼けしても、化粧水をつけてはいけない
雪上は、紫外線が上からも下からも来ますので真っ黒に焼けます。草地やアスファルトの反射率は10%もしくはそれ以下ですが、砂浜では25%、新雪では80%にも達すると言われています。
冬のウィンタースポーツこそやはり日焼け対策をやったほうがいいかなと思います。もし、日焼けしてしまった場合のケアとしては、すぐに「冷やす」のがベストですね。化粧水をつけるのはやめてください。化粧品に薬理作用は無く、逆に悪化を引き起こします。
あとは、一番いいのが日焼けをしてしまってI度熱症ぐらいになって痛いとか、ひりひりするぐらいまで日焼けしてしまったのであれば、皮膚科に行ってステロイドのスプレーをもらって熱症を治すということもひとつかと思います。薬局でステロイドを含んだスプレーなどが医薬品として売っている場合もあるかもしれません。
日焼けによって黒くなる理由は、表皮の皮膚角化細胞とその隣にある色素細胞の働きの色素沈着が表皮に限定して起こっているからです。それをターンオーバーで剥がれ落ちていって、夏に焼けた場合は冬頃にはまた白くなります。
■肌をツルツルにしたければ「保湿とUVケア」しかない
日焼けしてしまった時、一番やってはいけないのが抗炎症作用のある化粧水をつけることです。ひりひりするけど、つけ続けるというのはやめた方がいいです。ひりひりしてしまい、肌への刺激があるだけで、化粧品には抗炎症作用という薬理作用はありません。抗炎症作用という薬理作用を求めるのであれば抗炎症の薬を飲むとか、ステロイドのスプレーをするとかそういうような方法になりますね。
下からの紫外線にも気をつけて、日焼けしてしまった後の対策を間違わないように注意しましょう。
日ごろのケアで、一番したほうがいいと思っていることはシンプルに2つ。
それは「保湿とUVケア」を大事にすることです。これに限るといっても過言ではありません。これまで気を使ってきた方はそんなのは当たり前だと思うかもしれませんね。
しかし、当たり前のことこそが大事であり、これを継続してやるだけで美容を気にせず生活する人よりも老化のスピードをゆるやかにできます。では、もうお伝えすることはないのではと思われる方もいるかもしれませんが、この当たり前の答えを知っていても、やり方が間違っている方がたくさんいらっしゃるのです。
化粧水などのつけかたはもちろんですが、水分を中から摂ることも重要です。何をどう摂ればいいのか、保湿で気をつけることは何か、医者もやっている医学的な方法を説明いたします。
■保水力の高いスポンジが薄くなっていくようなもの
加齢とともに乾燥することが増えるのは、一言で言うと肌のバリア機能の低下が原因です。バリア機能というのは、角質の上に張っている油膜みたいなものです。年を取ってくると、皮脂が足りなくなってきて紙がめくれないことが起きます。
紙をめくるための皮脂が無くなっているだけでなく、皮膚全体を覆っている脂分が少なくなっています。
もう一つの原因に、真皮部分の菲薄化があります。皮膚や人体の70~80%が水分です(その他はコラーゲン・エラスチン)。保水力の高い大きくて分厚いスポンジだったものが、年を重ねていくと、薄っぺらくなります。前者だと水を多く溜めていられますが、後者はほとんど溜められませんよね。ですので、年を取った皮膚というのは、油膜が無くなって水分が蒸発しやすくなっています。
そして、真皮部分で水を含んでいる層が薄くなっているので、保水率が凄く低くなります。皮膚の水分含有量が少なくなっていますので、水分が蒸発して乾燥します。ですので、加齢と乾燥はセットで考えられます。
ではどう予防すればいいのかというと、水分を摂る・皮脂を補うことが重要です。ただただ化粧水などで補った水分は角質だけにしか留まらず、真皮部分の水分というものは化粧水から補給されません。
■水や麦茶を1日2L飲むようにする
ですので内部からきちんと水分補給するようにしてください。塩分濃度の高い食べ物を食べてしまうと尿となって出てきてしまうので、普通の水やお茶を飲むのが良いかと思います。目安としては1日水2Lほどを推奨します。
また乾燥を避けるためにクリームを顔や手に塗って乾燥を防ぎましょう。肌の乾燥は顔だけではなく全身に起こるので、かかとなどにクリームを塗って保湿してあげることも重要です。
上記でも説明しましたが水分補給は健康のためにも肌のためにも大切です。「のどが渇くなあ」という口渇感は、高齢になるほど鈍くなるので、熱中症などを引き起こす場合もあります。ですので40代、50代、60代と年を経るにつれて、より水分の摂取が必要になってきます。「水中毒」というのもありますけど、水中毒になるには、30分で10Lくらい飲まないといけません。多少の飲みすぎは気にしなくて大丈夫です。
水以外には、麦茶はミネラルを含んでいますしおすすめです。私はジャスミンティーやルイボスティーなどもよく摂ります。その際はカフェインレスのものを選びます。
アルコールを含んだビール、カフェインが豊富なコーヒーは利尿作用が多いので、水分としてはカウントはしないようにしましょう。
■毛穴の黒ずみは除去しようとしてはいけない
自宅で簡単に毛穴を治す方法はやはり「長いスパンでしっかり保湿すること」です。
まず、毛穴が目立つ一番の原因は何だと思いますか。それは、保湿不足です。表皮は保湿不足だと縮んでくるんですね。肌は水分の含有量が少なくなると、萎縮して、干からびてくる。そして、そのような状態が長く続くと、毛穴が開いた状態で固定するような現象が起こります。
皮脂腺の動きが活発な人というのは、皮脂腺が大きな毛穴にこびりついて、保湿しても中々縮まなくなります。それからブラックヘッドといって、感染や酸化が起こって黒い形のものができてしまうという現象が起こります。体質や生まれつきが半分くらいあるかもしれませんが、そのもう半分は保湿によって予防できます。毛穴が開いていたりブラックヘッドがある状態から、今日、明日保湿したらすぐに治るというものではないんです。
しかし、皮膚(角質)というのは1カ月で完全に全部置き換わるものですから、長いスパンで1~2カ月保湿を真剣にやるようにしてみてください。
■乾燥肌の人は特に加湿器が必要
ではどういう保湿がいいのかということですが、高価な化粧水でなくて大丈夫です。「自分に合った」低刺激で保湿力の高めの化粧水を、肌が乾燥する前に意識的に使ってみることが重要です。ネットで評判だったから、インフルエンサーがおすすめしていたからということよりも重要なのが「自分に合っているか」ですので、そこはお気を付けください。
そして、無理にギュッと押しつぶして角栓を出そうとするような刺激を与えるのも良くないです。また紫外線にも注意して生活しましょう。
体質の問題や鼻の頭などは保湿によって改善していくというのは難しい部分もあると思いますが、何より悪化させないという観点で毛穴のケアをしてみてください。
最後に簡単に変えられることとしては、部屋の環境に注意しましょう。
部屋の環境で特に気をつけたいのは「加湿」ですね。私自身も、乾燥肌ですので大きめの加湿器を2台つけています。冬は特に加湿器をフルで使用するようにしています。湿度は60%程度がベストだとされていて、40%以下だと肌が乾燥してくるかなと思います。ホテルなども乾燥がひどくて大変ですね。全館統一型のエアコンは特に乾燥していますので、注意が必要です。
日常のささいなことではありますが、加湿器を取り入れるなど、少し意識してみてください。
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医学博士
1964年、長野県生まれ。医学博士。東海大学医学部非常勤講師。株式会社セルバンク代表取締役。弘前大学医学部卒業。信州大学附属病院勤務を経てペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。帰国後、東海大学にて同研究と熱傷治療に従事。2004年に細胞の製造・保管や再生医療の技術・導入支援を行う株式会社セルバンクを設立し、2005年に肌の老化防止(肌の再生医療)専門の医療機関RDクリニックを開設。創業ドクターとして、5000人以上もの女性の肌の悩みを解決している。現在は社長業と共に再生医療の普及に従事するため、YouTuberとしても活動中。YouTube登録者数30.1万人(2024年3月現在)。
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(医学博士 北條 元治)
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