理論的には6時間で花粉症を100%撃退できる…東大名誉教授が断言「ツラすぎる花粉症に効く最強の食材」
プレジデントオンライン / 2024年3月23日 13時15分
※本稿は、小柳津広志『東大の微生物博士が教える 花粉症は1日で治る!』(自由国民社)の一部を再編集したものです。
■花粉症は炎症反応による病気にすぎない
すべての病気は炎症を起こしますが、炎症に登場する免疫細胞はさまざまです。花粉症の炎症は、I型アレルギーというものです(図表1)。
人の皮膚や粘膜に存在するマスト細胞は、花粉を認識すると、大量のヒスタミンを放出。ヒスタミンは鼻では鼻水を出させ、目では痒みを生じます。
花粉症の人は常に花粉に対するIgE抗体を提示するマスト細胞を粘膜に持っていますので、花粉がつくとすぐにヒスタミンが出て、くしゃみをして鼻水を垂らします。
I型アレルギーはすぐに反応するため、即時型アレルギーと呼ばれています。子どもが蕎麦を食べるとアナフィラキシーショックを起こし、スズメバチに一度刺された人がもう一度刺されるとアナフィラキシーショックを起こすのも、I型アレルギーです。
アレルギー反応は、大きく4種類あります(図表2)。「すべての病気は炎症を起こす」と言いましたが、アレルギー反応は獲得免疫が関わっている炎症反応の一つなので、誤解しないようにしてください。
![【図表】アレルギーおよび腸が関与する疾患の種類と特徴](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/4/4/1200wm/img_44b7fceadb2586065b33dbe6f969e43b766821.jpg)
免疫反応は侵入した外部の生き物や物質を攻撃するシステムですが、生まれた時に持っている免疫反応は自然免疫と呼ばれています。
自然免疫の担当者はマクロファージ、樹状細胞、好中球などの貪食細胞とナチュラルキラー細胞(NK細胞)です。獲得免疫は生まれた時には侵入者に対する攻撃態勢が用意されておらず、侵入者に応じて作られて記憶される免疫です。
■アレルギー反応には4つの類型がある
獲得免疫の担当者はBリンパ球とTリンパ球です。マクロファージ、樹状細胞、好中球は獲得免疫にも関わっています。
I型以外のアレルギーは、さまざまな自己免疫疾患を起こす炎症です。
![鼻をかむ人のイメージ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/1200wm/img_2f9003e3b26bb69e9c1d64c86ba22370497285.jpg)
まずは、アレルギー4種類の違いを理解してください。
「II型アレルギーは自分の細胞成分や侵入した物質に対する抗体ができ、これに補体(抗体の攻撃を強めるタンパク質群)がくっついて抗原を攻撃する」と憶えてください。
「III型アレルギーは自分の細胞成分や侵入した物質に対する抗体ができ、抗原、抗体、補体がくっついた免疫複合体が組織に沈着して障害を起こす」と憶えてください。
「IV型アレルギーは自分の細胞に外来の物質が侵入して細胞障害性T細胞(Tc細胞)や活性化マクロファージが攻撃する」と憶えてください。
II型とIII型はさまざまな自己免疫疾患、しかも重篤な疾患を起こします。これらの病気の治療法を開発すれば国内の数百万人の患者を救うことができます。I型アレルギーは比較的軽症な疾患ばかりですが、これに苦しむ国民は推定6000万人と言われています。I型はII型、III型アレルギーよりけた違いに多く、私たちの生活の質を著しく下げています。I型アレルギーは欧米の先進国でも罹患(りかん)率が非常に高く、大変問題となっているのです。
■花粉症を治すにはどうすればいいのか
大腸で酪酸菌が増えていると、I型アレルギーをほぼ抑えることができます。
酪酸の増加がI型アレルギーを抑えるメカニズムはよくわかっていませんが、私はTレグ細胞の増加が関係している可能性が高いと考えています。Tレグ細胞は、免疫の暴走を抑える作用があるという報告もあります。
IPEX症候群という遺伝病がありますが、この病気の人はTレグ細胞を作れません。IPEX症候群は非常に稀な遺伝病です。なぜなら、幼児期に重篤な自己免疫疾患やアレルギーになって死んでしまうからです。
幼児期に亡くなってしまうと、子孫が残りません。ですから、IPEX症候群の欠損遺伝子はどんどん減少していきますので、非常に稀な遺伝病なのです。IPEX症候群の人が幼少期にさまざまな重篤な自己免疫疾患やアレルギーになるということから、Tレグ細胞の欠損がこれらの病気を起こすことはほぼ間違いありません。
■腸内で酪酸菌を増やす方法
人が分解・吸収できない食物繊維は、大腸でほとんどが分解され、不溶性の食物繊維である木の繊維であるセルロースも、ほとんどが大腸で分解されます。ほとんどの食物繊維は大腸で分解され、作られた物質は大腸で吸収されるのです。
実験動物として使用されているハツカネズミはマウスと呼ばれていますが、マウスを用いた実験では、面白いことがわかっています。マウスの子どもを帝王切開で出産させて、注意して細菌に触れさせないように育てると、腸の中に細菌のいない“無菌マウス”というものができます。
無菌マウスを、無菌のまま育てたマウスと親マウスの便を食べさせたマウスで成長を比較すると、便を食べたマウスの体重のほうがはるかに重くなります。これは、腸内細菌が無菌マウスでは分解できない物質を分解・吸収させたことが原因です。
また、人の話に戻ります。大腸で多糖やオリゴ糖(糖が3~10個くらいつながった多糖)が分解されると、脂肪酸が生成されます。酢酸、酪酸、プロピオン酸、乳酸などです。これらの脂肪酸は短鎖脂肪酸と呼ばれています。酪酸、プロピオン酸、乳酸は酢酸と比べて大きな分子で、酪酸は酪酸菌が作り、プロピオン酸はプロピオン酸菌が作り、乳酸は乳酸菌やビフィズス菌が作ります。
酪酸、プロピオン酸、乳酸は放っておくと、最終的に小さな分子である酢酸まで分解されますが、その前に大腸細胞によって吸収されます。また、酢酸も吸収されます。
■フラクトオリゴ糖が最も効果が高い
前に説明したように、吸収された酪酸はTレグ細胞を増やします。さまざまな食物繊維で酪酸を増やす効果が検討されてきました。その結果、フラクトオリゴ糖が最も効果が高いことが明らかとなりました。
フラクトオリゴ糖は、1分子の砂糖に1~10個程度のフラクトース(果糖)がつながったオリゴ糖です。フラクトースが10個以上たくさんつながったものはイヌリンと呼ばれていますが、イヌリンは低分子のフラクトオリゴ糖より酪酸菌を増やす効果が弱いことがわかっています。
フラクトオリゴ糖とイヌリンは、タマネギ、ニンニク、ゴボウ、キクイモ、ヤーコン、バナナ、アスパラガスなどさまざまな野菜に含まれていますが、これらに含まれるフラクトオリゴ糖類(イヌリンも含む)は低分子から高分子まで、さまざまな大きさの混合物なのです。
![大量のゴボウのイメージ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/2/3/1200wm/img_239ca78ba60702c3bb7c7fb930365ade766708.jpg)
ここでは、一括してフラクトオリゴ糖と呼びますが、日常生活で、私たちは1~3グラムのフラクトオリゴ糖を食べています。しかし、この量では自己免疫疾患とアレルギーを抑えるには不足しています。私たちは、フラクトオリゴ糖を含む食品をもっと多く摂る必要があるのです。
■ゴボウが「最強の食材」と言える理由
花粉症対策は数多くありますが、私は花粉症の人には毎日ゴボウを食べることをおすすめしています。ゴボウを食べれば間違いなく花粉症は治るのですが、完璧に治すためには大量に食べる必要があります。
目安としては、毎日、ゴボウ1本です。もちろん、毎日ゴボウを食べることは簡単ではありません。しかし、ゴボウを食べることで、腸内細菌の働きを改善=「腸活」(大腸の働きを活発にすること)し、花粉症によって起こる炎症を抑えることによって、花粉症はほぼ100%治ってしまうのです。
![マスクを外して呼吸する人のイメージ](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/0/c/1200wm/img_0c3afffe7a9c7de52b023f292968be34588979.jpg)
「花粉症が必ず治る」と書くと、多くの疑問の声や批判の声があがるかもしれませんが、花粉症は炎症の一種であり、炎症を抑えるメカニズムを知ることによって、年齢や性別を問わず治すことができるのです。
その治療法のカギを握るのが、「酪酸菌」です。酪酸菌は、だれもが大腸に「飼って」います。そして、その働きを活発にするには、「フラクトオリゴ糖」という水溶性食物繊維をエサとして与える必要があるのです。このフラクトオリゴ糖が最も多く含まれていて、最も手軽に食べることができるのが、食物繊維の王様である、ゴボウです。
もちろん、ゴボウだけではなく、たまねぎ、にんにく、ネギ、アスパラガスなどの野菜にも含まれています。新鮮なヤーコンには100グラムあたり13グラムのフラクトオリゴ糖が含まれており、ゴボウの6グラムをはるかに凌駕しています。
■飲み薬、目薬では根本解決につながらない
「だったら、ヤーコンを食べればいいんじゃないか!」という声が聞こえてきそうですが、みなさんの近くの八百屋さんでヤーコンは売られていますか? キクイモ100グラムにもフラクトオリゴ糖が15グラム含まれていますが、やはりキクイモも八百屋さんでは入手が困難です。
![小柳津広志『東大微生物博士が教える 花粉症は1日で治る!』(自由国民社)](https://president.ismcdn.jp/mwimgs/e/0/1200wm/img_e0f2f35f1078a204955ca5de6fc49216209614.jpg)
ですから、どこの八百屋さんやスーパー、デパートにも売っていて、日本人になじみのある野菜としてゴボウが一番手っ取り早いのです。
毎年、2月から4月の花粉症の季節になると、約4000万人の花粉症患者の方々が鼻水、くしゃみ、目のかゆみを訴え、病院やクリニックや薬局にかけこんで、注射をしてもらったり、目薬やマスクやアレルギーを抑える薬を大量に、そして長期にわたって購入しています。
その市場規模は、わかっているだけで1000億円超。しかし、そのうち9割の花粉症対策が意味をなしていません。
本書では、花粉症を炎症としてとらえ、その炎症を抑えるため、
1.食事療法
2.腸活(酪酸菌の増加)
に焦点を当て、100人の花粉症患者がいたら、すべての方の症状が寛解され、そして治す方法を教えています。極端な話、酪酸菌にフラクトオリゴ糖をエサとして与えるだけで、理論的には、たった6時間で花粉症は治ってしまうのです。
花粉症の強度によって個人差はありますが、本当に花粉症が1日で治ります。あなたが、明日から、目薬、抗ヒスタミン剤、マスクの無い、快適な鼻呼吸生活が送れることを心から願っています。
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東京大学名誉教授 株式会社ニュートリサポート代表取締役
1953年12月10日生まれ。静岡県出身。1977年、東京大学農学部農芸化学科卒業。富山大学教養部助教授、東京大学大学院農学国際専攻教授等を経て、2003年より東京大学生物生産工学研究センター教授。2016年に東京大学を退職。現在は東京大学名誉教授に就く。専門は微生物系統分類、腸内細菌学など。2017年3月、神奈川県横須賀市に高齢者を対象とした減塩カフェ「カフェ500」をオープン。著書に『東大微生物博士が教える 花粉症は1日で治る!』(自由国民社)などがある。
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(東京大学名誉教授 株式会社ニュートリサポート代表取締役 小柳津 広志)
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