冒頭に加えるだけで急に相手が聞く耳を持つようになる…仕事のデキる人が使う"マウンティング枕詞"8選
プレジデントオンライン / 2024年3月31日 8時15分
※本稿は、マウンティングポリス『人生が整うマウンティング大全』(技術評論社)の一部を再編集したものです。
■マウンティングで人心を掌握する
仕事をスムーズに進めるうえでは、人と組織を上手に動かす必要がある。そのためには、社内外の関係者に「味方になってもらう」スキルが必要不可欠である。
仮に世の中の課題を解決する素晴らしいアイデアを着想したとしても、そのアイデアを評価してもらえなければ何も始まらない。また、そのアイデアが承認されたとしても、社内外の関係者の共感がなければ、十分なサポートが得られなかったり、さまざまな抵抗を受ける可能性もある。仕事で何らかの成果を残すうえで、あらゆるビジネスパーソンは人と組織の問題から逃れることはできないのだ。
ただ、これが想像以上に難しい。人間は常に合理的な判断を下すわけではないし、「人間心理」はさまざまな要因で変化するものだからだ。それゆえ、あらゆるビジネスパーソンには人間心理を深く理解し、社内外の関係者に「味方になってもらう」スキルが求められる。このスキルが不足していると、人と組織を動かすうえで、さまざまな困難に直面することになる。
逆に、人間心理を深く理解し、社内外の関係者を味方につけることができれば、あらゆる仕事をスムーズに進めることができる。そして、そのための最も効果的な方法の1つが、「マウントさせてあげる」スキルなのである。
「マウントする」のではなく「マウントさせてあげる」──相手のメンツを適切に設計することによって、自分の味方になってもらう──この「マウンティング人心掌握術」を習得できれば、あなたはさらに超一流のビジネスパーソンに近づくことができるだろう。
「マウントさせてあげる」ためには、発言の冒頭に適切な「マウンティング枕詞」を加えるといい。このマウンティング枕詞にはいくつかのパターンがあるが、その中から「尊敬型」と「謙遜型」を紹介しよう。
■尊敬型:相手の経験やスキルに対して尊敬している態度を示す
①こんなことを○○さんの前で申し上げるのは釈迦に説法ですが、
「釈迦(しゃか)に説法」という言葉は、「それは釈迦に説法だよ」とだれかをたしなめる際に用いられることがある。一方で、目上の人に対して恐縮・謙遜しながら何かを提案する際に使われることもあり、その意味でマウントポジションを提供する際に有効に働く場合がある。
「釈迦に説法」──この言葉を冒頭に持ってくるだけで、相手は魔法にかかったかのようにあなたの意見や提案に耳を傾けてくれるようになるだろう。
「こんなことを○○さんの前で申し上げるのは釈迦に説法ですが、このプロジェクトの成功には社員全員の協力が絶対的に必要だと思います」
「こんなことを○○さんの前で申し上げるのは釈迦に説法ですが、我々はこの新製品の品質向上に注力すべきだと思います」
「こんなことを○○さんの前で申し上げるのは釈迦に説法ですが、この企画の成功にはより明確なロードマップが必要だと考えています」
②いただいたご指摘を踏まえ、改めて考え直してみたのですが、
プライド高めな上司に対して、自分の提案を通す際に使えるフレーズ。「いただいたご指摘を踏まえ、改めて考え直してみたのですが」という前置きを冒頭に持ってくることで、「私はあなたの意見を重視していますよ」「あなたに対して私は忠実ですよ」ということを示しつつ、議論を進めたい方向に誘導することができる。
「いただいたご指摘を踏まえ、改めて考え直してみたのですが、このプロジェクトには新たな視点からのアプローチが必要かもしれません」
「いただいたご指摘を踏まえ、改めて考え直してみたのですが、社員のモチベーション向上のために、福利厚生により注力すべきだと思います」
「いただいたご指摘を踏まえ、改めて考え直してみたのですが、我々の経営戦略にはもっとユーザー視点を取り入れるべきだと思います」
③この点については○○の専門家である○○さんに伺いたいのですが、
相手を専門家としてみなしていることを意図的に示すことで、相手のメンツを立てるテクニック。会議や商談の場面で主導権を握りたい場合に有効である。
類似の事例としては、次のものが挙げられる。
「○○のプロである○○さんからすれば当たり前の話なのかもしれませんが」
「○○さんのような国際的な感覚をお持ちの方からすれば当たり前の話かもしれないのですが」
「この点についてはDXの専門家である○○さんに伺いたいのですが、新製品の販促に関してどのような戦略が効果的だとお考えですか?」
「この点については財務の専門家である○○さんに伺いたいのですが、今後の予算配分について、何か具体的な提案はありますか?」
「この点については人事の専門家である○○さんに伺いたいのですが、社員の意欲を向上させる方法にはどのようなものがありますか?」
④○○さんの洞察の深さには及ぶべくもありませんが、
「及ぶべくもない」は、「及ぶはずがない」の意味。「私とは比較にならないほどあなたの洞察力は優れている」ということを明示的に伝え、相手の洞察力に対して最大限に敬意を払うことによって、相手のメンツを立てるテクニック。商談において、自分の意見を通すための下地をつくる際に有効な枕詞と言える。
「○○さんの経験と洞察の深さには及ぶべくもありませんが、今回の財務計画については長期的な視野で見直すべきだと私は考えています」
「○○さんの経験と洞察の深さには及ぶべくもありませんが、新技術の導入の前に現状の技術基盤の強化から始めるべきだと考えています」
「○○さんの経験と洞察の深さには及ぶべくもありませんが、本件については私たちはもう少しリスク管理に注視すべきだと考えています」
⑤○○を成功に導いた経験をお持ちの○○さんにご意見を伺いたいのですが、
相手の成功体験に対して敬意を示し、「私はあなたの実績を高く評価していますよ」という認識を明らかにすることによって、有意義な意見を引き出すテクニック。部門横断型の全社プロジェクトなどで他部署のキーマンを押さえる際に効果的な枕詞である。
「大規模なマーケティングキャンペーンを成功に導いた経験をお持ちの○○さんにご意見を伺いたいのですが、今回のプロモーション戦略についてどのようにお考えでしょうか?」
「ITシステムの移行プロジェクトを成功に導いた経験をお持ちの○○さんにご意見を伺いたいのですが、我々の技術的課題に対する解決策について、何かアドバイスはありますか?」
「組織再編のプロジェクトを成功に導いた経験をお持ちの○○さんにご意見を伺いたいのですが、私たちの現状のアプローチについてどのようなお考えをお持ちですか?」
■謙遜型:自分に至らない点があると認める態度を示す
⑥門外漢なもので大変恐縮ですが、
自分自身を「門外漢」と称することで、相手が「専門家」であることを強調するテクニック。「門外漢なもので大変恐縮ですが」「素人質問で恐縮ですが」などといった枕詞を会話の冒頭に持ってくることで、「私は素人であり、専門家であるあなたに教えを請う立場であることを理解しています」というスタンスを強調することができるため、議論をスムーズに進めやすくなる。
ただし、「素人質問で恐縮ですが」については、状況次第では皮肉っぽい言い方になってしまう場合もあるため、注意が必要である。
「門外漢なもので大変恐縮ですが、今回のマーケティング戦略について、もう少しユーザー視点を強調したほうがいいのではないでしょうか?」
「門外漢なもので大変恐縮ですが、この技術的な問題に対する解決策について、ほかにも選択肢はあるのではないかと思うのですが」
「門外漢なもので大変恐縮ですが、この新サービスはもっとシンプルで直感的なほうがユーザーにとって理解しやすいのではないでしょうか?」
■自分の立場を低く保つ
⑦私の理解力が追いついていないせいかもしれませんが、
自分の理解力に疑問を投げかけることで、自分の立場を低く保ち、質問や議論をスムーズに進めるテクニック。
類似の事例としては、次のものが挙げられる。
「安易な質問なのですが」
「私の提案は○○さんのように洗練されていないのですが」
「私の理解力が追いついていないせいかもしれませんが、今回の組織再編の最終的な目的は何でしょうか?」
「私の理解力が追いついていないせいかもしれませんが、このプロジェクトの目標について再度ご説明いただけますか?」
「私の理解力が追いついていないせいかもしれませんが、このマーケティング戦略の中心的な考え方は何でしょうか?」
⑧うまくお伝えできておらず恐縮ですが、
相手とのコミュニケーションで行き違いが生じた際に使うと効果的なフレーズ。
「先日もお伝えしたとおり」「何度もお伝えしていますが」「ご説明したとおりではございますが」などのフレーズを使うと、嫌味っぽくなってしまい、相手との関係性が悪化してしまう可能性がある。
一方、「うまくお伝えできておらず恐縮ですが」という前置きを活用すれば、「こちらの伝え方が悪かった」ことを明示でき、相手との関係性の悪化を最小限に食い止めることができる。
「うまくお伝えできておらず恐縮ですが、このプロジェクトの期日管理についてはもう少し柔軟さが必要であると感じています」
「うまくお伝えできておらず恐縮ですが、私の意見としてはこの新製品のデザインはもう少しシンプルさを追求すべきだと考えています」
「うまくお伝えできておらず恐縮ですが、今回のマーケティング戦略に関して、より多くの顧客の声を取り入れるべきだと思います」
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「人間のあらゆる行動はマウンティング欲求によって支配されている」「マウンティングを制する者は人生を制する」を信条に、世の中に存在するさまざまなマウンティング事例を収集・分析し、情報発信に取り組むマウンティング研究の分野における世界的第一人者。「だれもが自分らしくマウントを取ることができる豊かな社会」の実現に向けて、我が国のマウンティングリテラシーの向上に努めることを人生のミッションとして掲げている。
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(マウンティング研究者 マウンティングポリス)
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